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  • Ampegな理由 ~Reason Behind Ampeg 第1回

ウエノコウジ ~アンプで結論を出しておかないと、だからAmpeg

AMPEG / HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT

大型真空管アンプの代名詞的存在であり、世代やジャンルを超えて愛用されている、ベーシストにとっての王道と言えるアンプ・ブランド=Ampeg。本連載では、第一線で活躍するAmpegユーザーたちに、それぞれのAmpeg観を聞くとともに、最新のAmpegギアをチェックしていく。記念すべき第1回には、その無骨で荒々しいサウンドで正しくパンク・ロックを体現するウエノコウジが登場だ。

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ウエノコウジ × HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT

ウエノコウジのAmpeg体験

真空管アンプのなかでも、Ampegの真空管アンプだよね。
もう俺は、この“匂い”ありきなんで。

 俺がいつも使っているAmpegはSVT-VR。現場によってアンプはいくつか使い分けているんだけど、吉川晃司さんの現場は絶対にAmpegだね。8発のキャビ(SVT-810)も直進性がすごくあるからライヴ向きではあるよね。

 昔はトランジスタのアンプを使っていたんだよ。ものすごく暑くなる現場も多かったから、アンプが壊れるのもイヤだしさ。でも、あるレコーディングのときに真空管のアンプを使ってみようとふと思って、借りてもらったんだよね。それがAmpegのSVTだったんだけど、そこからはもう真空管アンプじゃなきゃって感じだね。とはいっても、トランジスタのアンプって、実際俺は今でも好きだよ。一番苦手なのは、真空管じゃないのに真空管っぽく見せているアンプ(笑)。本物の真空管のアンプって、やっぱりそれにしかないものがあってさ。うまく言葉にできないけど、例えばカメラでも、デジタルとフィルムの違いってあるでしょ。色味とか深みというか、そこにはあからさまな違いがあって、これは弾いたらはっきりとわかることだよ。そして、その真空管アンプのなかでも、Ampegの真空管アンプだよね。この“匂い”というかさ。もう俺は、この“匂い”ありきなんで。

ウエノが所有するSVT-VR。インプットはノーマルを選択し、チャンネルはもっぱら1を使用しており、トーン・コントロールはトレブルをややカットしているものの、おおむね12時の位置にセットしている。ウルトラ・ハイ・スイッチはオンで使用するのがウエノ流。ミッド・レンジの切り替えスイッチには220Hzに黄色の、800Hzに緑のシールが貼ってあるが、これはテクニシャンがレコーディング時に貼ったもの。ウルトラ・ロー・スイッチはオフの位置に同じく緑のマークが貼られている。

 今使っているSVT-VRは20年くらい前に新品で買ったものだね。俺が最初に買ったAmpeg。ヴィンテージのアンプって、正直な話、耐久性の問題がある。やっぱり、ものすごく暑かったりものすごく湿気があったり、ときには野外で雨に降られたりっていう過酷な現場があって、ある程度ハードワークに耐えてもらえるってことを考えると、こういうリイシューのものがいいのかなと思ってさ。Ampegは現行品でも、ちゃんと俺の好きな方向を向いて作っていると思うし。楽器って、やっぱり新品は若い音がするんだよね。そこからちょっとずつ慣れていくというか、悪い言葉を使うとヘタっていく。そうすると、より味わいが出てくるんだけど、新品のものとヴィンテージを比べても、違いって、そのヘタリ具合だけだから。今、ヴィンテージとされているアンプも、例えば50年前に出たときは今の新品と同じような音だったと思うんだよね。そうだとしたら、俺はヴィンテージよりも、新しいものを自分と一緒に慣れさせていくほうが好きなのかもしれないな。自分と一緒に成長していくというかさ。俺が使っているプレシジョン・ベースだって、こんな傷ついた見た目をしているけど、ヴィンテージじゃなくて、現行で入手したものを自分の手グセで弾いてあげて、お互いに慣れていったものだし。俺のアンプもあと何年かしたらヴィンテージになるんじゃない?(笑) 楽しみだね。

 レコーディングではこのVRを買ってから何年かあとに入手したB-15を使う場合もある。レコーディングだと、マイク乗りは15インチが一番いいんだよね。ただライヴはやっぱりSVT-VRとSVT-810のセット。これは持論だけど、キャビネットは絶対重いほうがいい。810もめちゃくちゃ重いでしょ。キャビネットってもちろん“鳴る”わけだから、重いほうがしっかりローも受け止めてくれるというか。音が目の前に飛んでくるんだよね。ライヴをやるうえではこんなに気持ちいいキャビネットはないよ。確かに、SVTだってこのキャビネットだって重たいけれど、その重さに意味があるんだよね。はっきりいって、テックさん泣かせの重さだし、値段もそんなにお安くはないだろうし、もっと安くて容量のデカいアンプはあると思う。でもやっぱりAmpegを選ぶっていうのは、これにしか出ない音があるから。力加減によって歪み具合とかもちゃんとついてきてくれる感じと、うまく言葉で言えないんだけど、ガッといったらガッと出てくれる感じというのか、変にピークを抑えるんじゃなくてオーバーロードしてほしいわけ。最近のアンプになればなるほど、受け止め手の容量はデカいんだけど、それってアンプ側だけ余裕をかましている感じが、俺のなかではしていて。“俺も頑張っているんだからお前も頑張れ”みたいな感覚でいたいんだよね。SVTはお互いに頑張れる感じがするんだ。

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ウエノコウジが弾く
HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT

どうやってもAmpegはAmpegなんで。
“Ampeg臭”がイヤなんだったら買わないほうがいいと思うよ(笑)。

 俺がいつも使っているのがSVT-VRだからか、感覚は一緒だったね。だから嬉しかった。やっぱりAmpegの音が好きだから、ちゃんとその方向でいてくれるんだなってさ。

 チャンネル1のほうはチャンネル2よりもつまみもスイッチも多いから、いろんな場面に対応できるんじゃないかなと思う。セッティングについては、まずはメモリを5にして、いらないところは切っていく、欲しいところは足していくっていう風にするのが王道かな。若いときは、どんどん足していく方向が気持ち良かったりもするんだけど、キックとかほかの音との兼ね合いもあるだろうし、どこを逃がしてあげるかを考えながら必要ないところは切って、自分が弾いていて気持ちいいポイントというか、“ここを上げていくと気持ちいいんだ”ってところを見極めていく。そんなに極端に上げなくても、大まかに好きなところを決めておけば、あとはピッキングの力加減でどんな感じにも持っていけると思うよ。

 スイッチに関しては、俺は突進力というか、エッジィなところがある程度欲しいから、ウルトラ・ハイのスイッチをオンにして、アンプの受け止めの時点でブーストしているところはあるね。もちろん、親指弾きをするようなゆっくりめのテンポで温かい音が欲しいときには切ったりもするんだけど、やっぱり現場的にガリッとした音が求められることが多いので(笑)。ただ両方ともできるアンプだとは思うんだよね。ウルトラ・ローについては、俺は切っているね。Ampegのあるあるだけど、ウルトラ・ローはめちゃくちゃ出るんだよ。一番わかりやすいところのローがブワッと上がってくる。ジャンルにもよるけど、本当に重低音が欲しい人とかには便利だと思う。レゲエの人とかさ。キックよりもさらに下に行きたい人向けだよね。

 チャンネル2は、感覚的には出力はちょっと落ちたように感じて、タッチとかが如実に出るね。ミドルのつまみがないぶんシンプルで、わかりやすくハイを上げたいときやローを上げたいときには、こっちのほうがいいのかなって思う。つまみの効きもわかりやすいっていうかさ。チャンネル1で上げているハイとチャンネル2で上げているハイはなんか違うんだよね。チャンネル2のほうがもっとわかりやすいハイなような気はする。やっぱりチャンネル2にはチャンネル2の良さがあって、こっちのほうが好きな人も多いと思うな。

 あと、チャンネル1に比べると歪むポイントが違うよね。チャンネル2のほうが、もうちょっと上で歪んでいるというか。俺が好きな音の方向に持っていくと、わりとサウンドがハイのほうに寄っているように感じる。Ampeg独特のローのグッとくる感じは1のほうがあるような気はするけど、わりと素直な感じだから、例えば、足下で音を作っている人にとっては、チャンネル2のほうが使いやすいかもしれないね。足下で作った音にAmpeg色を加えたい人にはいいんじゃないかな。まぁ、俺の場合はあまり足下で音を作らないから、チャンネル1を使うんだけどさ。

 やっぱり、ひとまずアンプで結論を出しておかないと、どんなアンプを使っても一緒というか、ヘタしたらラインでもいいわけで。じゃあなんでアンプを持っていくのかっていうことだよね。アンプって、楽器を直接挿すようにできているもんだと俺は思っていて。歪み具合もタッチも、楽器ってそういう風にできている気がするんだよ。だから、まずはアンプに直接挿してみて、それが好きか嫌いかで決めるのがいいんじゃないかなと思ってる。どうやってもAmpegはAmpegなんで。“Ampeg臭”がイヤなんだったら買わないほうがいいと思うよ(笑)。俺は“Ampeg臭”が好きだから使うけど。Ampegよりも安くて容量もデカくて、匂いのしないアンプなんていくらでもあるからさ。でも、やっぱりアンプはAmpegよ。特に俺らの世代はね。

 あと、これを言っちゃうと元も子もないけど、Ampegってルックスがカッコいいでしょ? まずこのルックスが好きだもん。俺はベースでもアンプでもなんでもそうだけど、まずは見た目から入る。結局、カッコいいと思うものを使っていたらカッコいい音がするんだよね。まず、そこがすべて。カッコいいと思っているとやっぱり思い入れも入るからさ。そしてAmpegの、この真空管の“匂い”ね。ルックスも音も、俺のなかではグッとくる。弾いていて気持ちいいし。アンプについて、いろんなインタビューとかアンケートに答えさせてもらうんだけど、選ぶ理由なんて、“好きだから”としか言いようがないんだよね。でも楽器ってそういうもんだと思うし。俺は好きです。

取材時のウエノによるHERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVTのセッティング。チャンネル1はウルトラ・ハイ・スイッチはオン、ミッド・レンジは800Hz、ウルトラ・ロー・スイッチはオフ。チャンネル2はウルトラ・ロー、ウルトラ・ハイともにオン。

ウエノコウジのAmpegな理由

好きだから。ルックスも音も、グッとくる。

HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT

伝統×革新が生み出す、普遍のベース・サウンド

Front

Rear

 ロック・アンプの代名詞と言えるSVTが誕生したのは1969年。その名称は“Super Valve Technology”あるいは“Super Vacuum Tube”の略だとされており、300Wというその大出力は、当時のベース界に強烈な衝撃とともに迎えられた。そのSVTの誕生50周年を記念したのが本機で、2019年のNAMMショウで発表され話題を呼んだモデルだ。

 本モデルはデザインとアッセンブルがアメリカで行なわれ、妥協のない品質を追求した同社の最上位であるHeritageシリーズにラインナップ。最大の特徴は、青色のパネル表示から、通称“Blue Line”と呼ばれる1969年モデルの回路をチャンネル1に、1970年代半ばのMagnavox社時代の回路をチャンネル2にと、ふたつの時代のサウンドをひとつの筐体に収めていること。それぞれのチャンネルのインプット端子に接続して個別に使用するのはもちろん、チャンネル1と2のインプットをたすき掛けに接続することで、両者をミックスして使うことも可能だ。

 さらにXLR DIアウトプット、プリアンプ・アウト、パワーアンプ・イン、スピコン・アウトプットなど、“現代のアンプ”としては必須の機能を搭載し、単なる“リイシュー”ではなく、現代に在るべく進化した、究極のSVTと言える。

▲チャンネル1は、ミドルの周波数帯を上部のスイッチにより220Hz/800Hz/3kHzで選択可能。またウルトラ・ロー・スイッチはブーストに加え、カットもできる

▲チャンネル2のEQは40Hzを±12dBでコントロールするベースと、4kHzを±12dBでコントロールするトレブルのみ。ウルトラ・ハイ/ロー・スイッチも装備

▲プリ管は厳選された12AX7を5本、パワー管は特注の6550を6本採用。さらにドライバー用として、同じく厳選された12AX7×1、12AU7×2も搭載

▲充実の入出力端子の一部。右からスピコン・アウト、1/4インチ・フォーンアウト×2、トランスフォーマー・バランスド・アウト、プリアンプ・アウト、パワーアンプ・イン、スレーブ・アウト

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製品情報

AMPEG / HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT

【スペック】
■出力:300W RMS minimum continuous @ <5% THD into 2Ω or 4Ω■プリアンプ: 12AX7×5■ドライバー: 12AX7×1、12AU7×2■パワーアンプ:Ampeg Super Valve(6550×6)■コントロール:チャンネル1(ヴォリューム、トレブル、ミッドレンジ、ベース、ウルトラ・ハイ、ミッド・フリケンシー220Hz/800Hz/3kHz、ウルトラ・ロー)、チャンネル2(ヴォリューム、トレブル、ベース、ウルトラ・ハイ、ウルトラ・ロー)、スタンバイ・スイッチ、パワー・スイッチ、バイアス1、バイアス2、グランドリフト・スイッチ、プリ/ポスト・スイッチ、インピーダンス・セレクター(2Ω or 4Ω)■入出力端子:インプット(チャンネル1、同ブライト、チャンネル2、同ブライト)、スレーブ・アウトプット、パワーアンプ・インプット、プリアンプ・アウトプット、トランスフォーマー・バランスド・アウトプット、スピーカー・アウトプット(1/4インチ・フォーンアウトプット×2、スピコン・アウトプット×1)■外形寸法:610(W)×324(D)×292(H)mm■重量:38.6kg
【問い合わせ】
ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンター ギター・ドラムご相談窓口 TEL:0570-056-808 https://ampeg.jp/
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AMPEG / SVT-VR

【スペック】
■出力:300W@2or4Ω■プリアンプ:真空管(12AX7×3、12AU7×2)■ドライバー: 12AX7×1、12AU7×2■パワーアンプ:真空管(6550×6)■コントロール:チャンネル1(ヴォリューム、トレブル、ミッドレンジ、ベース、ウルトラ・ハイ、ミッド・フリケンシー220Hz/800Hz/3kHz、ウルトラ・ロー)、チャンネル2(ヴォリューム、トレブル、ベース、ウルトラ・ハイ、ウルトラ・ロー)、スタンバイ・スイッチ、パワー・スイッチ、バイアス1、バイアス2、グランドリフト・スイッチ、プリ/ポスト・スイッチ、インピーダンス・セレクター(2Ω or 4Ω)■入出力端子:インプット(チャンネル1、同ブライト、チャンネル2、同ブライト)、スレーブ・アウトプット、パワーアンプ・インプット、プリアンプ・アウトプット、トランスフォーマー・バランスド・アウトプット、スピーカー・アウトプット(1/4インチ・フォーンアウトプット×2、スピコン・アウトプット×1)■外形寸法:610(W)×324(D)×292(H)mm■重量:38.6kg
【問い合わせ】
ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンター ギター・ドラムご相談窓口 TEL:0570-056-808 https://ampeg.jp/
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プロフィール

ウエノコウジ
うえの・こうじ●1968年3月27日生まれ、広島県出身。パブ・ロックやガレージ・パンクをルーツとするサウンドで人気を集めたミッシェル・ガン・エレファントのベーシストとして、1996年にデビュー。同バンドの解散と前後して、2003年にはRadio Carolineを結成。現在はthe HIATUSのメンバーとして活躍するかたわら、武藤昭平withウエノコウジ、加山雄三が結成したバンド・THE King ALL STARS、吉川晃司のサポートなど、多方面で活躍している。

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