AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
ZOOM / G11
数々のマルチ・エフェクターを世に送り続けてきたZOOMから、技術の粋を集約した“究極のマルチ・エフェクター”ことG11が新登場。今回はJUONに登場願い、本企画のためにトラックを書き下ろしてもらい、G11のポテンシャルを徹底的に引きだしてもらった。
マルチ・エフェクターと言えばラックか大型のフロア・タイプと相場が決まっていた1990年に、小型軽量なマルチ・エフェクターの9002を発売して以来、コンパクトなものから本格的なフロア・タイプまでさまざまなマルチ・エフェクトを開発してきたZOOM。そんな同社が現時点における技術の集大成とでも言うべきモデル“G11”を発売した。ZOOMオリジナルのものを含めたエフェクターやアンプのモデリングはもちろん、スピーカーの音響特性をデータ化したインパルス・レスポンス(IR)、ルーパー、ルーパーと同期可能なリズム・マシン、iOS機器からの無線操作など、現時点で考えうる機能を網羅。さらにタッチ・スクリーンを装備し、操作性も実に明快だ。近年のマルチ・エフェクター市場への決定打となり得る注目の新製品である。
わかりやすいユーザー・インターフェースはZOOM製品の大きな特徴のひとつだが、高機能なG11では5インチという大型のタッチ・スクリーンを採用し、ドラッグ&ドロップやスワイプといったスマホやタブレットと同様の操作で素早くサウンド作りができる。エフェクターの接続順も個々のアイコンのドラッグ&ドロップで感覚的に変更可能だ。ホーム画面にはそれぞれの機能が大きなアイコンでわかりやすく表示されている。
本機のアンプ・モデリングは往年の定番アンプからハイ・ゲインを得られる現代的なタイプまで全16種類を内蔵。実在する名機を忠実に再現したアンプ・サウンドを得ることができる。それに加えて、主要な音楽スタイルに合わせてチューニングされた6種類のZOOMオリジナル・アンプ・モデリングも用意されているため、幅広い音作りに対応することが可能だ。
スピーカーが音を放出する空間の音響特性をデータ化したインパルス・レスポンス(IR)を利用すれば、アンプにマイクを立てて収録したサウンドが再現可能だ。このデータはインターネットからサード・パーティのIRをダウンロードするなどして利用することもできるが、G11にはあらかじめキャビネットとマイクの距離のバリエーションを含む70種類のIRが内蔵されているので、すぐに音作りが始められる。
床に置いたG11を操作するにはしゃがむ必要があるが、本体に超小型のBluetoothアダプター=BTA-1を接続すれば、専用アプリをインストールしたスマホやタブレットからパッチ・メモリーやバンクの作成、編集、管理、システムの設定、さらにはダウンロードしたIRのロードも行なえる。自宅やスタジオでのサウンドメイクはもちろん、ステージでのサウンド・チェックや本番でも、G11をスマートに操作できるわけだ。
レスリー風モジュレーション、“TheVibe”の音が超気持ち良い!
今回の試奏では、まずG11を使って事前にデモを作ったんです。「LED」という曲なんですが、僕はレッド・ツェッペリンとかディープ・パープルに惹かれたのがきっかけでこの道に進んだので、原点に立ち返る意味も込めましたね。
デモ曲は3部構成で、王道のロック・フレーズが出てくる第1部では、G11内蔵のオールド・マーシャル・タイプ=“MS 1959”の歪んだ音に、“HD Hall”というリバーブを少し足した音を基本にしています。メロディ・ソロのところではその音に“TapeEcho”を加えて存在感を出しました。“HD Hall”はほかの空間系を混ぜても音の輪郭がボヤけなくて素晴らしいですね。
次に少し調子を落としたファンキーな第2部では、マッチレス・タイプの“MATCH30”に切り替えて、クランチっぽいクリーン・トーンを軸に、エクスプレッション・ペダルを利用したワウの“Black Wah”を加えています。“MATCH30”の嫌味のない歪みには温かみがありますね。で、クイーンのようにハデに盛り上がる第3部では、第1部のパッチに戻りますが、今度はレスリー風モジュレーションの“TheVibe”を使って厚みを出しています。この“TheVibe”の音は超気持ち良いですよ!
高級感のある“POLLEX”は
先入観なしで試すとおもしろいと思う。
G11に内蔵された6つのオリジナル・アンプ・モデリングの印象ですが、まず“KRAMPUS”はマーシャル系の感じでありつつ、低音域が分厚い濃厚な歪みが得られますね。倍音も豊富で、音が散らずに図太いサウンドを真っすぐに出せます。“REDLOOM”は、部屋で音を出すのにちょうど良い歪み感。素直な音なので、いろいろなスタイルに応用できると思います。“VELVET”は毛羽立った感じの歪みが特徴的で、深く歪ませても芯がしっかりしていて、音の粒立ちが失なわれないのが良い。“MUDDY”は1音1音に説得力のある分厚くて重みのあるサウンドで、ブルージィなプレイに最適かな。“7 HEAVEN”は通常のギター・アンプを超えるようなレンジの広さが特徴。やはり7弦〜8弦ギターで威力を発揮しそうです。最後の“POLLEX”はドロップ・チューニングを多用するジェント系を意識したモデリングだそうですが、洗練された高級感のある音なので、先入観なしに試すとおもしろいと思いますよ。
マイクの距離感がキレイに再現されている。
これは画期的ですよ。
マイクとキャビ間の距離を“1インチ”、“12インチ”、“ROOM”で選べるIR機能を、G11オリジナル・アンプの“REDLOOM”を使って試してみました。僕もレコーディングは何千万回も経験してきましたが(笑)、これは画期的ですよ。まず、マイクとキャビの距離を“1インチ”にした状態を再現したIRでは、原音がしっかりしていて、低音も抜けていかない。全部の音がマイクの中に突っ込まれる感じが出ていました。“12インチ”はマイクとキャビの位置が遠すぎて音の輪郭が薄れてしまうこともないですし、マイクの位置が近い時に起こりがちな低音溜まりや、演奏のアラが出やすくなることもない。まさにナイスなポジションでマイキングした音がうまく再現されていますね。“ROOM”はキャビからマイクを離して録音している状態がすごくイメージしやすいようなサウンドになっています。この3種類のマイクの距離感の違いがとてもキレイに再現されているのがすごいと思いましたね。
良い音が詰まったG11は“最高の遊び道具”という感じです。
G11を使ってみて、“最高の遊び道具を知っちゃったな”という感じです(笑)。僕みたいなギター大好きっ子は、良い音が詰まったG11みたいな機材があると夢中になっちゃうんですよ。モデリングのエフェクターの中で、自分でも現物を使ったことがあるものについては初めて弾いた時の印象まで再現されています。アンプについてもメーカーによる個性の違いはもちろん、真空管の瞬発力みたいなものまで再現されているし、キャビネットもスピーカー4本の音が散る感じとか、2本のタイトな感じといった音像の違いがよくわかります。再現性が高いと、今まで知らなかった機材の価値に気付くきっかけにもなるので、これでいろいろと冒険してほしいですね!
G11と一緒に、ACアダプタ、ケーブル、SDカードなどのアクセサリを収納して、快適に持ち運ぶことができるCBG-11が発売中!
本記事は、1月13日(水)に発売されるリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2021年2月号』にも掲載されます。表紙巻頭特集は「ジミー・ペイジ」。ぜひチェックしてみてください!
JUON
じゅおん◎1985年生まれ、 沖縄県出身。3ピース・バンドFUZZY CONTROLで歌とギターを担当。また、JUONとしてソロでも活動中。スガシカオ、稲葉浩志のサポート・ギタリストも務める。