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- 2024/11/16
Line 6 / Helix、HX Stomp
Line 6の人気ギター・プロセッサー、Helix。今回、Helix/HXのファームウェアが3.0にアップデートされた。20種類以上のモデルが追加されたほか、ライブやレコーディングで力を発揮する便利な新機能も追加。発売当時からHelixを愛用するギタリストの阿部学をデモンストレーターに招き、Helix 3.0ファームウェアの実力を探っていこう。
2015年の発売以来、リアルなサウンドとスマートなインターフェース、シンプルかつ奥行き感のあるコントロールを特徴として、創造性や機能性は言うに及ばず、官能までも味わえるギター・プロセッサーとして知られるLine 6のHelix。現在ではライブはもちろん、レコーディングや配信などでも使用されるほどの業界標準として定着し、演奏に必要な機能が1台で完結できるソリューションとなっている。発売後にもバージョンアップによってさらなる機能追加が行なわれてきたが、今回はメジャーアップデートとなる3.0(本記事公開時点での最新バージョンは3.01)でも、モデリングと機能の両面で大幅な性能向上が図られている。このバージョンアップにより、エフェクト数:229、アンプ数:
まず、新たに追加されたアンプとキャビネットのモデリングはHelix Floor、Helix Rack、Helix LT、Helix NativeおよびHX Stompが対象となっている。アンプ・タイプが、フェンダーのPrinceton ReverbをもとにしたUS Princess、ディーゼルVH4のメガ・チャンネルをもとにしたDas Benzin Mega、同じくリード・チャンネルをもとにしたDas Benzin Leadの3種類。キャビネット・タイプが、フェンダーのPrinceton Reverbをもとにした1×10 US Princessと、同じアンプに12インチ・アルニコ・ブルー・ドライバーを組み込んだものをもとにした1×12 US Princessの2種類となっている。
新しいエフェクトの追加は、上記に加えてHX Effectsも対象で、ディストーション系ではHorizon DevicesのPrecision DriveをもとにしたHorizon Drive、BOSSのHM-2をもとにしたSwedish Chainsaw、JordanのBoss ToneをもとにしたPocket Fuzz、Electro-Harmonixの1973年製ビッグ・マフをもとにしたBighorn Fuzz、EuthymiaのICBMファズをもとにしたBallistic Fuzzの計5種類。ダイナミクス系では上記プレシジョン・ドライブのゲート回路部分をもとにしたHorizon Gate、EQ(イコライザー)系ではBOSSのAC-2をもとにしたAcoustic Simという内容になっている。
既存のペダルのモデリングについては以上だが、3.0の目玉はLine 6オリジナルのポリフォニック・ピッチで、モジュレーション系がPoly Detune、ディレイ系がPoly Sustain、ピッチ/シンセ系がPoly PitchとPoly Wham、Poly Capo、それに12 Stringの6種類が追加。Line 6オリジナルでは、さらにディレイ系のGlitch Delay、ボリューム/パン系のStereo Imager、ルーパー系のShuffling Looperも追加されている。
機能面では、プリセットを切り替えた時に前のプリセットのディレイやリバーブが残るTrue Preset Spilloverと、自分のサウンド創りの定番となっているアンプやエフェクトのブロックを、それらの設定ごとに呼び出せるFavorites、アンプやキャビネット、あるいはエフェクトのブロックの設定を初期設定として保存できるUser Model Defaultsが加わった。さらに、Auto Impedance機能ではGuitar Inのインピーダンス回路の挙動が変更できるようになり、Min/Max値インジケータが追加されたことで、コントローラーなどにアサインされたパラメーターの最小値と最大値が表示されるようになった。
また、HX Stompでは、同時に使用できるブロックが6個から8個に増え、マスターMIDIコントローラーとして使用できるCommand Center機能が加わっている。
まずは、新たに加わったエフェクトについて、もう少し詳しく説明しよう。
・Horizon Drive & Horizon Gate
ペリフェリーのギタリスト、ミーシャ・マンソーのアイディアをもとに開発されたPrecision Driveをモデリングにした歪みで、Horizon Driveはそのディストーション部分、同Gateはジェント系でお馴染みの切れ味鋭いリズムを刻むのに効果的なゲート部分を、それぞれ再現している。
・Swedish Chainsaw
1983年に登場したBOSSの最初期のディストーション・ペダルのひとつ、HM-2がもとになっている。
・Pocket Fuzz
1967年に発売されたファズの草分けのひとつと言えるJordanのBoss Toneがもとになっており、モデリング名は、アンプに直接プラグ・インして使用するコンパクトなデザインに由来する。
・Bighorn Fuzz
特に人気の高いElectro-Harmonixの“ラムズ・ヘッド”という愛称で親しまれている1973年製のビッグ・マフをもとにしている。
・Ballistic Fuzz
もとになったユーシミアのICBMファズも、もともとはビッグ・マフのレプリカだが、トランジスタのみで構成された“ラムズ・ヘッド”とは異なり、オペアンプICを使用していた時期の回路が採用されている。
・Acoustic Sim
BOSSのAC-2をもとにしたAcoustic Simは、エレクトリック・ギターの音からアコースティック・ギターの音を創出するエフェクトである。
3.0の目玉でもあるLine 6オリジナルのポリフォニック・ピッチは5種類。これらのポリフォニック・ピッチでは、従来のピッチシフト系の機能に比べて和音に対するピッチ変化の精度や追随性、音質も劇的に向上している点も見逃せない。また、単音で弾く場合にはもちろん、従来から備わっているモノフォニックの機能を選択できる。
・Poly Detune
コーラスに似ているが、わずかにピッチをずらした音を原音に混ぜることで、コーラスのような音揺れのないエフェクトが得られるのが特徴。
・Poly Pitch
フットスイッチを踏むと入力信号のピッチが任意の音程でシフトできるエフェクトで、ピッチをシフトする際のポルタメント効果の時間が設定できる。
・Poly Wham
エクスプレッション・ペダルでコントロールするいわゆるワーミー・エフェクトで、もちろんコードにも対応している。
・Poly Capo
その名のとおり、カポタストの機能をデジタルで再現するエフェクトである。
・12 String
こちらもその名のとおり、6弦ギターで12弦ギターのような音が得られる。
Line 6オリジナルではこのほか、弾いたコードをそのまま伸ばしたままにしてくれるエフェクトで、伸ばした音を伴奏にしてソロを弾くことができるばかりでなく、伸ばした音のピッチを変化させることもできるPoly Sustain、ディレイのエフェクトがオクターブ上下したり、リバースになったりと、ランダムに変化するGlitch Delayや、モノラルの信号から広がり感のあるステレオ信号を作り出すStereo Imager、ループを切り刻んでオクターブを上下させたり、リバース再生したりといった処理をインテリジェントに行なうShuffling Looperも追加されている。
3.0で新たに追加されたアンプは2種類で、US PrincessのもとになったフェンダーPrinceton Reverbは、出力12Wのコンパクトな練習用アンプとして開発されたが、同じフェンダーのDeluxe ReverbやTwin Reverbといった上位モデルと比べて、ボリュームを上げてクランチさせても音量が大きくなりすぎずに扱いやすいということもあり、ギタリストたちの間ではレコーディング用として人気の高いアンプである。
もう1種類は、1994年に発売された出力100Wの大型アンプで、ハイゲイン・タイプの代表格と言えるドイツ製のディーゼルVH4をもとにしたものである。オリジナルのVH4は1992年に発売されたディーゼル社にとっては最初のアンプで、現在もなお当時のままの仕様で製造されている息の長い製品となっている。このVH4には4つのチャンネルがあるが、ここではハイゲインのメガ・ディストーション・チャンネルをもとにしたDas Benzin Megaと、さらにゲインの高いディストーション/リード・チャンネルをもとにしたDas Benzin Leadの2種類のモデリングが追加されている。
キャビネットは新たに2種類が追加された。どちらもフェンダーのPrinceton Reverbのキャビネット部分をもとにしているが、1×10 US Princessがオリジナルのアンプの仕様どおり10インチのスピーカー1発入りのキャビネット、1×12 US Princessは近年になって作られたカスタム仕様で、イギリスのセレッション社製アルニコ・ブルー12インチ・スピーカー1発入りのキャビネットを、それぞれモデリングしたものとなっている。
DSPを2個搭載したHelix Floor、Helix Rack/Control、Helix LTでは、True Preset Spilloverという機能が新たに追加された。従来は、プリセットを切り替えたときに、DSPが次のプリセットをロードするまでの間、わずかながら音切れが生じていた。しかし、True Preset Spilloverをオンにすると、1個のDSPで現在のプリセットの処理、もう1個のDSPに次のプリセットの処理をそれぞれ担当させることで、タイムラグなしでプリセットを切り替えられるばかりでなく、最初のプリセットのディレイ音などがそのまま自然に減衰するようになり、プリセットの切り替えがスムーズに行なえる。ただしこの機能は、2系統の信号経路(PATH)のうちのPATH 2を処理するDSPを次のプリセットの処理に割り当てるので、PATH 2が使用できなくなるので注意が必要だ。
上記の機種に加えて、HX Effects、HX Stomp、Helix Nativeも対象となる新機能としては、FavoritesとUser Model Defaultsがある。Favoritesは、アンプやエフェクトで気に入った設定が見つかった場合、それを128個あるFavoritesのリスト項目のひとつに登録しておける機能で、これを利用すれば、新たなプリセットを組むたびにカテゴリーのリストをいちいち開かずに、Favoritesのリストから設定済みのモデリングを直接選択できるようになる。User Model DefaultsもFavoritesに似ているが、こちらはプリセットを組むために呼び出したブロックがメーカーの初期設定ではなく、自分の好みの設定になっているような状態が選択できる機能である。
Auto Impedanceの機能追加はHelix Floor、Helix Rack/Control、Helix LT、HX Stompが対象で、入力インピーダンス(In-Z)をAutoに設定した時の挙動が選択できるようになった。First Blockを選択すると、従来どおりにPATH 1Aの最初に呼び出されたブロックの入力インピーダンスが有効になるが、新たに加えられたFirst Enabledを選択すると、PATH 1Aに呼び出されたブロックのうち、最初にオンにしたモデリングの入力インピーダンスが有効になる。これにより、入力インピーダンスの低いファズ・モデルをシグナルチェーンの最初に配置している場合でも、そのオン/オフの状態によって音質変化が生じるのを回避することができる。
Min/Max Value Indicatorsも対象機種は同じで、すでにHX Effectsで実現しているように、コントローラーやスナップショットにリアルタイム・コントロールを割り当てたパラメーターのインジケーター上に、最小値と最大値が表示されるようになった。
また、HX Stompにはさらにふたつの変更が追加された。まず、ひとつのプリセットで使用できるモデリングのブロック数が、6個から8個に増強されている。DSPに高い処理能力を要求するエフェクトを使用する場合には、8個のブロックが使えないこともあり得るが、その点に注意すればサウンド創りの可能性が広がったことには間違いないだろう。もうひとつは、本体の3つのフットスイッチで、HX StompからMIDIコマンドやキーボード・ショートカットを送信してコントローラーとしても使えるようにするCommand Center機能である。
HX StompでもHelix Floorと同じプリセットが作れるようになった
僕は2015年の発売当初からHelix Floorを愛用してきましたが、バージョンアップするごとにエフェクトやアンプのモデリングだけでなく、機能もどんどん追加されて、よりプロフェッショナルな使い方ができるようになっているのがユニークだと思います。今回のディーゼルのアンプ・モデリングは待っていた人が多いと思いますし、音が良いので現場ですぐに使えますね。
個人的に、今回の3.0の追加機能でいちばんうれしかったのはTrue Preset Spilloverです。僕はスナップショットよりもプリセットを使うことが多いんですが、個々のプリセットは比較的シンプルでPATH 1しか使わないものがほとんどなので、Spillover機能もすんなり利用できます。実際、クリスタル・クリーンと呼んでいるディレイやリバーブがけっこう盛大にかかるエフェクトをよく使いますから。ちなみに、このプリセットで使っているブロックは8個なので、HX StompでもHelix Floorと同じプリセットが作れるようになったのもうれしいですね。
パラメーターのリアルタイム・コントロールも多用していますが、最小値と最大値の両方が表示されるようになったのは助かります。あと、サポートの現場ではキーを変えてくださいと必ず言われるのですが、すぐに対応できないこともけっこうあるんですよ。でも、Poly Capoがあればすぐに対応できます。ピッチを変更した時に、速いフレーズのソロやアルペジオなどのゆったりとしたプレイなどに合わせて、応答性を微調節できるのも良いですね。あと、User Model Defaultもプリセットを作る時に自分がいつも使う設定をいちいちやり直さなくて済むのですごく便利です。
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阿部学
あべ・まなぶ。 アーティストのライブ・サポートやレコーディング、セッションを中心に活動するギタリスト。Line 6製品のデモ演奏&セミナーを行なうほか、ギター・レッスンも行なっている。