AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
MJC Ironworks
2015年に設立されたアメリカのギター/ベース弦ブランド、MJC Ironworks。楽器本来のピュアなサウンドと防錆を両立したコーティング弦をラインナップし、その優れた性能は本国のミュージシャンからも支持を集めている。国内販売がスタートした今回、高田漣に2週間ほどアコースティック・ギター弦を試してもらい、そのインプレッションを聞いた。
金属弦では、耐久性と錆などによる劣化が常に問題になる。これまでも各メーカーがさまざまな素材や技術を駆使してその解決法を探ってきたが、今回Rolandによる国内販売が決まったMJC Ironworksのコーティング弦は、その問題に新たな解決策を提供する画期的な製品だ。
ディーン・マークレーを始めとする弦メーカーに携わってきた経験を持ち、自身もミュージシャンであるマイク・コノリーが2015年に設立したMJC Ironworks。その最大の特徴は、“RN PROTECTS”と呼ばれる防錆処理にある。テフロン樹脂などを使用する従来の方式は、厚みのあるコーティング膜が弦振動を阻害するという問題があった。それに対して、RN PROTECTSによるコーティング膜は分子レベルの薄さで、弦振動にほとんど影響しない。さらに、この膜には自己修復作用もあり、防錆効果もより長く保つことができるという。
MJC Ironworksの弦は、ワウンド弦の芯線に巻線を巻く時の張力や、ベース弦のような太いワウンド弦で2~4重に使用される巻線の直径比率の追い込みといった、弦製造の基本的な部分はもちろん、そのパッケージにも強いこだわりがある。丈夫で再利用可能なブリキ缶を採用し、中には弦と一緒に気化性のRN PROTECTS防錆剤を染み込ませたスポンジも入っているのだ。このスポンジと密閉性の高いブリキ缶の相乗効果で、弦の防錆効果が長期にわたって維持されるわけだ。
ラインナップは、高強度スズメッキの芯線に80/20ブロンズ(真鍮)の巻線を使用したアコースティック・ギター用、同じく高強度スズメッキの芯線にニッケルメッキの巻線を使用したエレキ・ギター用、そしてベースは4弦用から7弦用までが用意されている。ベース弦はそれぞれ、スズメッキの芯線にニッケルメッキの巻線を使用したニッケル弦と、スウェーデン製のスズメッキ六角芯線にステンレスの巻線を使用したステンレス弦がある。素材から製法、パッケージにいたるまで、細かい神経の行き届いたMJC Ironworksの弦を、ぜひとも試してみてはいかがだろう。
【アコースティック・ギター弦Line Up】
■Extra Light:.010-.014-.023-.030-.038-.048
■Light:.011-.015-.024-.032-.042-.052
■Medium Light:.012-.016-.025-.032-.042-.054
■Medium:.013-.017-.026-.036-.046-.056
コーティング弦は、登場し始めた頃から使う機会がありました。ただ従来のものは、どうしてもサウンドにも膜を張っている感じがあるというか、独特な音色だと思っていて。とは言え寿命の問題もありますし、サウンドはある程度致し方ないのかなと。だからライブはコーティング弦、レコーディングは普通の弦、と場面に応じて張り換えていました。近年、コーティング技術はどこのメーカーさんも上がっていると思いますが、 MJC Ironworksさんはその中でも群を抜いている。パッと見や手触りでは本当にコーティングされているのか疑ってしまったくらいです。あれ、間違えて普通の弦が送られてきたのでは?と(笑)。
素材は80/20ブロンズ(真鍮)ですけど、僕はフォスファーブロンズよりもブロンズのほうが劣化が如実だと思っています。でも現時点で、この弦を2週間程度張っていますけど、劣化はまったく感じないです。これはすごい! 昔のように膜が剥がれてくることも一切ない。プレーン弦が錆びにくいというのも助かりますね。
例えば炭酸飲料って、開けた瞬間はシュワーっとするけど時間が経つとおいしくなくなるでしょ。弦も同じで、キラキラした成分がなくなってくるものですが、これはずっと炭酸が抜けないような感じです。音質はピックでシャリンとコードを弾くと、全体のバランスが気持ち良いです。もちろんフィンガーピッキングも問題ないですが、僕はどちらかと言えばストロークしたくなりますね。試奏に使用したような高級ギター(マーティンD-45E Retro)でなくとも、この弦を張れば良い音がすると思います。みなさん楽器本体に気を向けがちですが、サウンドにとって弦とピックの材質こそ重要なポイントだと思うんですよ。そういう意味で、お使いのギターにこれを張れば、グレードの上がった音を楽しめるはずです。
また、テンション感もすごく良い。普段ミディアム・ゲージを張ることが多いのですが、これならライト・ゲージでも良さそう。むしろフィンガリングが楽になりそうです。おそらく芯線(高強度スズメッキ・コアワイヤー)の質が高いのでしょうね。弦は錆びもそうですが、長く使うとピッチが合わなくなってくる。特にアコギは演奏後に緩めたり、オープン・チューニングにすることも多いですよね。そこからレギュラー・チューニングに合わせようとすると、安定するまで時間がかかるようになってくる。そうなると換え時かなと思うのですが、これは安定感がバツグン。その点も芯線によるところが大きいのでしょう。……知らない間に弦も進化しているのですねえ(笑)。
価格:オープン
高田漣
たかだ・れん◎1973年、日本を代表するフォーク・シンガー、高田渡の長男として生まれる。2002年、アルバム『LULLABY』でソロ・デビュー。現在までに7枚のオリジナル・アルバムをリリース。さらに自身の活動と並行して、他アーティストのアレンジおよびプロデュース、映画、ドラマ、舞台、CM音楽を担当するなど、幅広く活躍している。