アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Yamaha / THR30ⅡA Wireless
Yamahaのフルワイヤレス卓上型ギター・アンプTHR-Ⅱシリーズに、アコースティック・ギター版THR30ⅡA Wirelessがラインナップされた。弾き語りに最適な機能が満載ということでシンガー/ソングライター森恵に試奏してもらおう。コンデンサー、ダイナミックなどのマイク・シミュレーションを含む5種類のTONE SELECTでアコースティック・ギターの音色をコントロールでき、ヤマハ独自開発のプリアンプD-PREを内蔵したマイク端子を持つということで、その実力のほどを探った。
女性でも片手で楽に持ち運べる筐体には、9cmのフル・レンジ・スピーカーを2発内蔵。出力は30W(15W+15W)ながら、小規模なカフェなどであればこれだけでライブが成立するほどの音量が得られる。ヘッドルームも余裕があり、音量を上げても歪むことがほとんどない。その音質はナチュラルで、ギターの鳴りをリアルに再現。またヤマハ独自の“エクステンデット・ステレオ”で、広がりのある音場表現が可能になっている。本体のコントロールでは、ベース、ミドル、トレブルの他、エフェクト(コーラス、コーラス/ディレイ、ディレイ)、リバーブが調整可能で、手軽に本格的な音作りができる。さらに専用アプリ“THR Remote”を併用することで、より高度なサウンドメイクも可能だ。
Mori’s Impression
“アコースティック・ギターそのものの鳴りが、このコンパクトなサイズのアンプでもしっかり出ていることが素晴らしいですね。それにアンプのボリュームを上げ過ぎなくても、しっかりアコースティック・ギターの音が鳴ることも印象的です。思った以上に音量が上がるので、自宅では十分過ぎます。それに充電して使えてマイクも同時に使えるので、ストリートでの弾き語りやキャンプでも役立ちますね。今はYouTubeで演奏動画を配信される方も多いので、幅広いシチュエーションでも使いやすいと思います”。
本体には、ヤマハ独自のシミュレーション技術“VCM Technology”が使われた、3タイプのマイク・モデリングを含むTONE SELECTが設けられている。このツマミをまわすことで、マイクでアコースティック・ギターの生音を集音したようなサウンドから、クラシック・ギターなどのナイロン弦に適したサウンドまで得ることができる。TONE SELECTは、全部で5タイプ。原音そのままの音を出力する“FLAT”。クラシック・ギターの演奏に最適な “NYLON STR”。真空管内蔵のマイクをシミュレートし、太いサウンドが得られる“TUBE”。ミッド・レンジに特徴が出る“DYNAMIC”、そして奥行きのある “CONDENSER”。さらにシミュレートしたサウンドと原音のブレンド比率も、TONE BLENDコントロール(※FLATの際にはゲインとして機能)で調整することも可能。ウェットにまわしていくことで、シミュレートされた音質が強くなっていく。ツマミのみで完結するため操作もわかりやすく、初心者でも使いやすいはずだ。
Mori’s Impression
“本体にあるTONE SELECTをまわすことで音質を簡単に変化でき、これだけでもかなりの音作りができますね。中でもTUBEはわかりやすく、TONE BLENDをウェット方向にまわしていくと、音に丸みが出てきて私が好きな音色ですね。その時の気分や曲によっても出したい音が変わってきますし、使うギターによっても引き出したいところが変わってきたりもします。そういった状況にフレキシブルに対応できるので便利ですね。それに、すごくマイクで生のギターの音を拾った感じが出ていると思います”。
iOSとアンドロイドで使えるアプリ“THR Remote”を用いることで、携帯端末でより高度なサウンド・コントロールができることも、このアンプの大きな魅力だ。アプリに内蔵された18種類のプリセットで、あらかじめセッティングされた実用的な音色をワンタッチで呼び出し可能。さらに本体ではコントロールできない、細かなEQのセッティング、さらにコンプレッサーなどのエフェクターも使うことができる。またコーラスやディレイも緻密に音を作り込めるため、さまざまな曲に合わせた音作りが可能となっている。作った音色はプリセットすることで瞬時に切り替えることもできる。
Mori’s Impression
“アプリの操作もシンプルでわかりやすいですし、自分がイメージする音をワンタッチで見つけやすいなって思いました。プリセットもわかりやすく、例えば“Slam”はミッドが出てきます。ボディを叩いた音もしっかり鳴ってくれます。プリセットを選んでから、微調整をアンプ側で行なえば、より自分に合ったサウンドがスムーズに作れますね。“Ambient”はディレイが効果的に使われた音色で、部屋鳴りが少ないところで使えば気持ちよく弾けそうです。そこから、またさらに自分好みに本体のコントロールを調整していけるので、すごく使いやすいですね。それからコンプレッサーは、弾き語りの時に役立ちそう。弾き語りをしているとその時の感情で弾く強さが変わってきてしまうので、コンプレッサーがあればそこを補填してくれます。ディレイとコーラスもかかり具合が細かく調整できるので、エフェクト・ボードを持ち歩かなくとも、これ1台でできそうですね”。
THR30IIA Wirelessは、Line 6のギター・ワイヤレス・トランスミッター“Relay G10T” (別売)を使うことで、ワイヤレスで演奏が可能だ。さらにトランスミッターの“Relay G10T”は、本体にプラグインしておくだけで充電され、同時にチャンネル設定も行なってくれる。なおアンプ本体にはリチウムイオン電池を内蔵し、充電して使用できる。ただし内蔵電池で駆動させる際には、最大出力が15W(7.5W+7.5W)となるが、フルワイヤレス環境を実現することで、煩雑なケーブルから解放され、より自由なシチュエーションで使うことが可能だ。
さらにBluetoothにも対応し、スマートフォンなどとペアリングすることで収録されている音源を鳴らすこともでき、練習やライブ、さらには演奏動画の撮影にも重宝する。また、オーディオ分野でのAV開発技術を活用し音像再生がされるので単純にリスニング用スピーカーとしても活用できるだろう。
Mori’s Impression
“ワイヤレスなので、iPadなどに専用アプリ“THR Remote”を入れて、ライブ前にオーディエンス側から自分の音を聴きながら調整できるのがいいですね。自分が聴いている音と、誰かに聴かせている音は変わってしまうので、ワイヤレスとアプリを組み合わせることで、より届けたい音色を作ることができると思います。それにライブの時にケーブルが1本ないだけでも、スタイリッシュに見えますね。あとは、スタッフさんにお願いして操作してもらうこともできますし、曲ごとにパッと音色を選べる点もいい。ワイヤレスであることで、音作りやライブ・パフォーマンスの自由度がより増すと思います”。
ヤマハ開発の D-PRE(ディスクリート“Class A”マイク・プリアンプ)を内蔵し高音質な音質が得られ独立したリバーブも付き、これ1台で弾き語りをすることも可能だ。そのため音の広がりを変化させるSTEREO IMAGERと名づけられた機能もついている。コントロールで、NORMALからWIDE、WIDERと切り替えていくことで、別チャンネルのギターの音が左右に広がっていく。それによって、よりボーカルの抜けが良くなり、全体的な音のバランスが整う。PAがいないストリートでの弾き語りや動画撮影などにも重宝する機能だ。また、マイク端子は、コンボジャック仕様となっており、マイクだけでなく、キーボードや2本目のギター入力としても接続できる。
Mori’s Impression
“アンプの真横で聴いても、音の指向性が変わっていくのを感じます。NORMALからWIDE、WIDERと切り替えていくと、音が左右に広がっていきますね。ボーカルの抜けが良くなっていくのが、すごくわかりやすい。これは弾き語りにすごく使える機能ですね。特にWIDERはギターとボーカルの分離がすごく良くて、ちゃんと歌を聴かせながら、ギターの音も響かせたい時に威力を発揮します。インストの時にはNORMAL、弾き語りの時にはWIDERとモードを変えて使えば、ライブも作り込んでいけますね”。
本体はPCとUSBケーブルでつなぐことで、オーディオ・インターフェイスとしても機能する。さらに本体裏にはラインアウトも備えているため、出力をPAなどに送ることができ、大きなステージでのライブにも対応可能だ。また視認性の高いクロマティック・オート・チューナーも備えているため、これ1台でアコースティック・ギターのライブや練習、さらにはレコーディングまで使える機能が満載されている。購入時にDAWソフト“Cubase AI”と“Cubase LE”のダウンロード版ライセンスが付属されている点も特筆したい。
FLAT:入力された信号をそのまま出力するモード
NYLON STR:クラシックギターやエレクトリックナイロンギター演奏に最適なモード
TUBE: 真空管マイクのようなサウンドを再現、豊かなミッドレンジが特徴
DYNAMIC:ダイナミックマイクで拾ったようなサウンド、芯があって引き締まった音が特徴
CONDENSER:コンデンサーマイクで拾ったようなサウンド、自然で明瞭な音が特徴
iOSとアンドロイドで使えるアプリ“THR Remote”を用いることで、携帯端末でより高度なサウンド・コントロールができる。iPadなどをマイク・スタンドの近くにセッティングしておけば、アンプ本体へ近づいてツマミをいじる必要もない。
Line 6 Relay G10のレシーバーを本体に装備しているので、Relay G10Tトランスミッター(別売り)をギター側に取り付けるだけで、快適なワイヤレス環境が楽しめる。アンプ本体も充電式バッテリーも内蔵しており、さらにTHR Remoteアプリを活用すれば好きな場所でケーブルレスでの快適な演奏が可能となる。*注:ギターによっては一部変換プラグが必要なモデルもあります。
ヤマハがハイエンドレコーディング機器のために独自開発したプリアンプ、D-PRE(ディスクリートClass-Aマイクプリアンプ)を搭載したマイク端子。中低域に張りと艶を持たせたスムースな質感をベースとした開放感、空気感のあるサウンドが特徴。
STEREO IMAGERはギターの音像を左右に広げ、ボーカルを際立たせる機能。NORMAL、WIDE、WIDERと広げることにより、ボーカルとの分離が良くなる。
すべてのTHRシリーズが収納可能(※THR Head/Cabinetを除く)な専用キャリングバッグも別売(7,000円/税抜)されている。アクセサリー収納用外ポケット付きで、調節可能なショルダーベルト同梱だ。
“プラグインしてまず感じたことは、とにかく音がナチュラルで良い。それにマイクも本体に挿せるので、STEREO IMAGERと併用することで、自分の歌とアコギの良い音を簡単に届けることができます。それにワイヤレスで使えるので、場所を選ばずにスタイリッシュに使えるのもいいですね。今回使ったギターは、ヤマハのSTORIA IIIというモデルですが、このギターの良さもしっかりと出ています。このアコースティック・ギター・アンプは、多機能ですがすごく使いやすいと思います。自分が作りたい音も、本体とアプリを組み合わせることで作り込むことができ、いろんな場所に持って行って試したくなるアンプですね。
それからクロマティック・チューナーが付いているのも良いですね。クリップ式のチューナーは便利なのですが、ライブの時とかの見た目が好きではなくて、できれば使いたくないんです。これは本体に内蔵しているので、すごく嬉しいですね”。
本記事は、リットーミュージック刊『アコースティック・ギター・マガジンVol.87 2021年3月号』にも掲載されます。
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
森恵
広島県(福山市)で15才からストリートライブをはじめる。
2005年12月16日広島県民文化センターふくやまにて、
初のワンマンコンサート「MY COUNTRY ROAD CONCERT」開催
2007年に、ハワイでストリートライブをして話題になる。
2010年7月7日シングル「キミ」でcutting edge(avex)よりメジャーデビュー。
2013年9月には、日本人初の米国ギルド・ギターズ(Fender USA)とエンドースメント契約。
2014年1月アメリカアナハイムで行われる世界最大の楽器イベントthe NAMM show(Fender フロア)にて日本人女性初の出演をする。