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- 2024/11/16
AMPEG / HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT
ロックの歴史を作ってきたといっても過言ではない、大型真空管アンプの代名詞的存在。それがAmpegのSVTだ。このたび、2019年のNAMMショウにて発表されていたHERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVTが、ついに国内に登場した。1969年の“Blue Line”と1970年代中盤に採用された“Magnavox時代”の回路をひとつの筐体に収め、真空管や入出力系統などをアップデートしたこの記念モデルには、Ampegの伝統と革新が凝縮されている。その記念すべきモデルをいち早く自身のサウンドへと取り入れたのが、国内Ampegユーザーの代表格であるJだ。奇しくも、J自身も今年50歳という節目の年を迎え、まさに必然の邂逅となった。ここでは、そんなJにHERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVTならびにAmpegの魅力を、存分に語ってもらった。
Ampeg黄金期のサウンドが、このなかに蘇っている。
━━このたびAmpeg SVTの誕生50周年を記念したアニバーサリー・モデル、“Heritage 50th Anniversary SVT”がリリースされましたが、Jさんご自身も50歳という節目を迎えました。
そう、偶然にもね。大好きなAmpeg SVTの50周年と俺自身の50歳という年がクロスするタイミングでこういう話をするのも、不思議だなって思う。俺自身は、日々、あまり年齢を気にして生きていないというか、気がつくと“俺もこの歳になってたんだな”という感じなんだ。ただ、アンプの、SVTの50年という歴史、それはやはりロックの歴史とリンクして重みがあるよね。
━━50歳の誕生日である2020年8月12日に開催された無観客配信ライヴにて、そのHeritage 50th Anniversary SVTを導入しました。サウンドの率直な印象は?
俺自身が思っているAmpegサウンドのまさに王道、Ampeg黄金期のサウンドが、このなかに蘇っているというか。今まで、ふたつの時代のアンプがひとつになっているというアイディアは、なかなかなかったよね。だから最初にそれを聞いたときにはどういうものなのか想像がつかなかったんだけど、いざ、本物を見て、音を出して、“ああ、なるほど”と。このキャラクターの違い、そのふたつの良さが、まさにAmpegを表わしているなって、リアルに感じたね。
━━“Blue Line”と呼ばれる1969年仕様のチャンネル1と、1970年代中盤仕様のチャンネル2というキャラクターの違いですが、Jさんはチャンネル1をメインで使用していますね。
自分が持っているアンプもその世代のものが多くて、より自分の音作りに近いタッチというか、感覚で、すぐ即戦力になったんだよね。チャンネル1のほうは、ヴィンテージのアンプを探し当てて、鳴らして、リアルに感じるっていう、自分のなかのAmpeg像まさにそのまま。当然すごく無骨だし、荒々しさっていうのもそこにはあって。そういう意味では、手なずけるのにけっこう時間を要するような、そんなサウンドでもある。でも、そこが俺はすごく好きなんだけどね。一方、チャンネル2は1975年。そこから時代背景も含めてスタイリッシュになったサウンドっていうか。どっちにも良さがあるから、一概にどっちがいいって言えないんだけど。
ロックの歴史をずっと見続けているアンプ。それにはやっぱり理由がある。
━━LUNA SEA初期にはトランジスタ・アンプを使っていました。Ampegといえば真空管アンプの代名詞のような存在ですが、トランジスタ・アンプから真空管アンプへと移行していったときの自身のモードとはどのようなものでしたか?
簡単に言うと、ベースの音を聴感で感じているか体感で感じているか。自分自身のベーシストとしての成長のなかで、その変わり目があったんだと思う。ベースを始めた頃はフレーズに関しても細かいフレーズで、構築しているものが美しく見えた。全部がクリアに聴こえているものが理想だったし、その音の速度が速ければ速いほど魅力的に感じていたんだ。だけど、その反対側にある、音にならない音っていうか、風圧っていうか、そういったものの存在を味方につけてフレージングを作り始めたりする境目が、自分のなかにも生まれてきたんだと思う。そのときに、やはりAmpegの真空管サウンドの理由みたいなものを、感覚的に、自分のなかに得られたんだと思うんだ。それまでの自分にとってはすごく扱いづらかったものが、視点を変えると、自分の理想にもっともっと近づいていけるものだったんだって感じたんだよね。
━━フレーズをそぎ落としていく、音の本質に迫っていく過程で、極端な話、“ルート音一発がカッコいい音で出ればいい”というところを追いかけ始めた、と。
そう、“より”ね。より、そういった場所、理屈じゃない場所に自分を連れて行きたいっていうか。それにはチューブ・アンプの、真空管の有無を言わさない音圧。耳ではなくて魂まで響くような、体の芯まで響くようなサウンド。それにやられちゃったというか(笑)。
━━近年では、大型の真空管アンプではなく小型軽量なアンプも増えていますし、そもそも足下のエフェクターで音作りをしてアンプでの音作りを重要視しないスタイルも増えています。Jさんが大型真空管アンプを鳴らし続ける意義とは?
そうだな……性格かな。めんどくさいんだよ(笑)。足下をガチャガチャやることより、ケーブルを一発ぶっこんで爆音で鳴らしたときに最高な音が出る。どこの会場に行っても俺の気持ちに応えてくれる。そんなアンプが一番かなって。もちろん、アンプを重要視しない人の意見もわかるんだ。近年、だんだん音楽の世界がシミュレーションの世界になっているわけだけど、大型真空管アンプって、その世界とは離れて行っているもんね。でももしかしたら、俺たちの世代はその両方の良さを知っているわけだから、どっちかっていうんじゃなくて、両方のいいところを使い分けていける世代なんだとも思う。だから、必要なとき、必要なだけ、自分の気持ちに応えてくれる、そんな機材をいつも求めているかな。そりゃそうだよ、小さいスタジオでこんなアンプを鳴らしたら大迷惑だもんな(笑)。
━━最後に、JさんにとってAmpegサウンドの魅力とは?
このアンプを鳴らした人たちならわかると思うけど、すべてをなぎ倒していくようなサウンド。有無を言わさない、この“Ampegサウンド”はほかにはないからね。ロックの歴史をどんどん積み重ねているなかで、このアンプはそれをずっと見続けているわけでしょ。それにはやっぱり理由がある。その色気とか迫力とか、俺にとってはまさに最高のサウンドなんだよね。
ロック・アンプの代名詞と言えるSVTが誕生したのは1969年。その名称は“Super Valve Technology”あるいは“Super Vacuum Tube”の略だとされており、300Wというその大出力は、当時のベース界に強烈な衝撃とともに迎えられた。そのSVTの誕生50周年を記念したのが本機で、2019年のNAMMショウで発表され話題を呼んていたモデルだ。
本モデルはデザインとアッセンブルがアメリカで行なわれ、妥協のない品質を追求した同社の最上位であるHeritageシリーズにラインナップ。最大の特徴は、青色のパネル表示から、通称“Blue Line”と呼ばれる1969年モデルの回路をチャンネル1に、1970年代半ばのMagnavox社時代の回路をチャンネル2にと、ふたつの時代のサウンドをひとつの筐体に収めていること。それぞれのチャンネルのインプット端子に接続して個別に使用するのはもちろん、チャンネル1と2のインプットをたすき掛けに接続することで、両者をミックスして使うことも可能だ。
さらにXLR DIアウトプット、プリアンプ・アウト、パワーアンプ・イン、スピコン・アウトプットなど、“現代のアンプ”としては必須の機能を搭載し、単なる“リイシュー”ではなく、現代に在るべく進化した、究極のSVTと言える。
J
ジェイ●8月12日生まれ、神奈川県出身。1992年にLUNA SEAのベーシストとしてデビュー。2000年に終幕するも2010年に活動を再開し、現在までに10枚のオリジナル・アルバムなどを発表している。1997年からはソロ活動も展開し、11枚のオリジナル・アルバムなどをリリース。50歳を迎えた8月12日にマイナビBLITZ赤坂にて無観客配信ライヴを行ない、同日に通販限定シングル「MY HEAVEN/A Thousand Dreams」をリリースした。