BD-2
真空管アンプの歪みを再現したオーバードライブ

　1995年に発売されたBD-2。それまでのオーバードライブ・ペダルとは異なり、回路を真空管アンプ設計の視点から進化させることで、手元のコントロール操作によって迫力あるドライブ・サウンドから鈴鳴りのクリーンまでを操れるようになった、まさにアンプ・ライクなペダルである。モデル名のとおり、いなたいブルージィなクランチ・サウンドから、4×12のブリティッシュ・アンプのような歪み、さらにはファズのような荒々しい音像までも生み出せるが、歪ませた真空管アンプへのブースターとしても評価が高い。

masasucks（FULLSCRATCH／the HIATUS／RADIOTS／J BAND）
“漢なら 黙って使え BD-2”

masasucks／Photo by Miki Anzai

　たしか2000年代前半だったと思うんですけど、先輩のギタリストに借りて使ったのが最初でしたね。見た目がカッコ良くて好印象でした（笑）。でも、当時はそこまでBD-2の良さに気づけなかったんです。で、ある程度大人になっていろんな機材を使うようになっていって、歪ませたハイゲイン・アンプをプッシュするブースターとして改めてBD-2を使ってみたんですよ。そしたら“こんなにイケてたっけ！？”となり、使い方を再認識できました。BD-2は今のハイエンド・エフェクターのようなリッチさはないんですけど、速さや潔さがあって、どんな状況でもストレートに音が飛んでくれるっていうイメージです。

　オレはLEVELツマミをけっこう突っ込んでいて、踏んだらハウるくらいまで持っていくんですよ。ギターはハムバッカーのものを使うことが多いので、GAINツマミはそこまで上げず、9時手前くらいにセッティングしますね。アンプに少しだけ歪みを足してあげるというイメージで。で、TONEツマミはマスター・トーンのような使い方で調整しますが、上げるとローが減っていくので、そこは自分の耳で判断します。ちなみにドラマーがシンバルを叩いた時のハイの加減にTONEツマミでピークを合わせてあげると、オケの馴染みが良くなるんですよ。

　BD-2はSAのNAOKIさんやポール・ウェラーを始め、“いぶし銀”な男たちが使っているエフェクターという印象があります。見た目はキャッチーだけど、一緒に長い時間を過ごすとそういう雰囲気をジワジワ感じられますね。“漢なら 黙って使え BD-2”。コレ事前に考えたやつじゃなくて、今の“いぶし銀”トークで思いつきました（笑）。

【セッティング解説】GAINを抑え、LEVELを4時程度までガッツリ上げることでパワーのあるゲイン・ブースターとして使用。TONEは都度調整するが、ロー感をキープしたいため、あまり上げないそうだ

【Profile】
masasucks●FULLSCRATCHのギタリストとしてデビュー。Jや木村カエラなどのサポートとしても活躍し、2009年にthe HIATUSへ参加。2016年にはRADIOTSに加入するなど、さまざまなプロジェクトで活動中。the HIATUSの10周年公演を収録したライブDVD／Blu-ray『10th Anniversary Show at Tokyo International Forum』が発売中。

古賀隼斗（KANA-BOON）
臨機応変に対応できるエフェクター

古賀隼斗

　高校時代の先輩がBD-2でメインのサウンドを作ってライブをしていて、それがすごく良い音だったんですよ。それと雑誌を見ると有名なギタリストのエフェクター・ボードには必ずと言っていいほどBD-2が入っていた印象があって、そういう影響もあって僕も19歳くらいの時に購入しました。基本的にいろんな要素で使えるエフェクターだと思うんですけど、僕はソロなどでのブースターとして使っていて。GAINツマミをひとメモリくらいだけ上げた状態で、OD-2やTS系ペダルのうしろにつないでいたんです。そうするとリード・ギターらしい太い音が出せて重宝していました。LEVELは12時を基本に都度調整して、TONEは上げすぎると高域が出るので9時半くらいにセッティングします。ほかのエフェクターと組み合わせてもBD-2の個性が消えないので、扱いやすいんですよ。

　“メインの歪みとして使うと高域が暴れる”と悩んでいる方も多いみたいですが、BD-2はギターやアンプのキャラクターが素直に出るエフェクターなので、まずはギターとアンプの設定を決めてから音作りをしてみるといいと思います。リハスタに置いてあるモダンなマーシャル系のアンプを使う場合は、アンプ側で高域が出すぎている可能性があるので、最初にそっちを絞って、BD-2のTONEを9〜10時くらいに設定してみてください。

　BD-2は特に初心者や中級者の方にオススメしたいですね。音作りに関して右も左もわからない状態の時でも、臨機応変に対応できるエフェクターだと思います。僕も買ってからいろんな音作りが学べたので、すごく得した気分になりました（笑）。みなさんもぜひ試してみてください！

【セッティング解説】メインの歪みペダルのうしろに接続し、ソロなどでオンにするためGAINは控えめの8時程度にセット。TONEは9時半にして迫力を出し、LEVELは12時を基本に調整する

【Profile】
古賀隼斗●KANA-BOONのギタリストとして2013年にデビュー。力強いコード・ワークから、空間系を巧みに使ったエフェクティブなプレイを自由自在に行き来する。11月25日にKANA-BOONのニュー・シングル「Torch of Liberty」をリリース。

ビートりょう（THE BOHEMIANS）
僕にとっては“伝統の音”

ビートりょう

　2〜3年前に友人からオススメされて導入しました。僕のメイン・ギターはES-335、アンプはVOX AC30/6TBなんですけど、BD-2はこのふたつとの組み合わせがバッチリ。基本の音はアンプで軽い歪みを作って、BD-2で少し歪みを足してキャラクターを明るくする感じですね。なので、オンにしてもあんまり音量が変わらないようにしています。ほかのペダルだとオンにした途端にアンプで作った音から大きく変わってしまうことが多いんですけど、BD-2はほとんど変わらなくて、それがすごく良いんですよ。

　TONEを上げすぎるとキンキンするので、ツマミは9時くらいがちょうど良いですね。ちなみに、もっと歪ませる曲ではBD-2のうしろにつないだ別の歪みペダルに切り替えるんですけど、ソロなどで音を前に出したい時はBD-2をゲイン・ブースターとしても使います。ライブDVD『BEST OF THE BOHEMIANS TOUR 2018 2018.11.10 at YAMAGATA MUSIC SHOWA SESSION』を観てもらえると、トータルのサウンドがわかるんじゃないかな。

　「君はギター」（『DELICIOUS』収録）という曲の歌詞には“ブルースドライバー”というワードが登場していますし、事務所の先輩のthe pillowsには「Blues Drive Monster」（『LITTLE BUSTERS』収録）という曲がある。そしてTHE COLLECTORSの古市コータローさん、The BirthdayのフジイケンジさんもBD-2を使っているので、僕にとっては“伝統の音”という感じですね。このへんのロックが好きな人には絶対に使ってもらいたいです。

【セッティング解説】アンプで作ったサウンドに明るさを足す役割のため、BD-2自体の歪みは控えめ。LEVELもオンとオフで音量差がないところにセッティング

【Profile】
ビートりょう●ロックンローラー、山形県出身。2005年にTHE BOHEMIANSを結成。2014年に山中さわお（the pillows）主宰のDELICIOUS LABELへ移籍し、以後コンスタントに作品をリリース。最新作は2019年リリースの『the popman’s review』。

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