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- 2024/11/16
Line 6 / Helix LT
Line 6 Helixシリーズを愛用するトップ・アーティストたちに、その活用法とインプレッションを披露してもらう本連載。その第17回目は、SING LIKE TALKINGのギタリスト、西村智彦が登場。長らくマルチ・エフェクターを愛用しつつ、ソリューションを求めてきた彼が、ついにたどり着いた答えがHelix LT。その最高品質のサウンドと直感的に扱える操作性は、ライブ/レコーディングを問わず大活躍しているそう。ソロ・アルバムをリリースしたばかりの氏の使い方に迫る。
最新テクノロジーとこれまでLine 6が培ってきたノウハウをすべて投入した“最高のギター・プロセッサー”を実現するべく、6年にも及ぶ開発期間を経て2015年にリリースされたHelixシリーズ。中でも多くのプロ・ミュージシャンから絶大な支持を得ているのがフラッグシップ・モデルのHelix Floorだが、そのサウンドと柔軟な音作りはそのまま、より手頃な価格でHelixシリーズの魅力を味わえるよう2017年にリリースされた兄弟機が、このHelix LTだ。Floorとの大きな違いは、各フットスイッチごとのディスプレイや、いくつかのコントロール系入出力、マイク・インなどが省略されていることぐらいで、十分な仕様と言えるだろう。センド&リターンも2系統備えており、外部エフェクターの追加はもちろん、実機のアンプとHelix LTのエフェクトを高度に組み合わせる4ケーブル・メソッド接続なども可能だ。最新のVer2.92では、Helix Floorと同じく、83種のアンプ・モデル、213種のエフェクト、39種のスピーカー・モデルなどが活用できるほか、スナップショットやホットキーといったHelixならではの実用的な機能も楽しめる。決してダウングレード・モデルではないわけだ。
今回の達人・西村の使用法はいたってシンプルで、コンプレッサーやアンプ・モデル(今回のデモ演奏では【Tweed Blues Brt】)を中心とした基本サウンドに、適宜必要なエフェクトを追加するという音作り。ただ、アンプ後のシグナル・パスを分岐させて【2×12 Blue Bell】など2台でステレオで鳴らしているほか、その“後”にいくつかの空間系エフェクトを配置するというのは独特だろう。これは、「試してみたらそのほうが良い音だったから」とのことだが、こういった実機では難しいシステム構築も、Helixシリーズの得意とするところだ。また、ひとつのプリセット内には、基本サウンドのほか、スナップショットで【Simple Delay】や【Dual Pitch】といったソロ用音色、エンディング用の【Mod Chorus Echo】などを割り当て、音切れなしで切り替えている。もうひとつ、ライブの場合には曲ごとにプリセット(曲内の音色切替はスナップショットを使用)を作り、順次バンクを切り替えていくという方法を採っているそうだが、バンク・ダウンのみを使用するため、操作ミスがないようにバンク・アップ側は蛍光キャップで塞いでいる。各フットスイッチごとのディスプレイがないHelix LTだが、西村のこのアイディアは暗転時にも有効で実践的な対処法と言えるだろう。
エレキ・ギターの音作りの8割ほどはHelix LTで完結しています
Helix LTを導入したのは3年ぐらい前ですね。それ以前からHelix Floorの音の良さは気になっていたんですけど、Helix Floorは僕的には少しデカくて違うかなと思っていたんですよ。それがHelix LTがリリースされて試してみたところ、やっぱり音が良かったので導入することにしました。その時の売り文句だった「簡易的だけど音はHelix Floorと変わらない」というのが、すごく良いなと思ったんです。
実はこれまでもずっとマルチ・エフェクターは使っていたんですけど、それは1995年から使い続けていたもので、さすがに古くなってしまっていたんですね。機能的にも、ループでほかのエフェクターを挟む必要があったり、アンプで鳴らす前提で使うものだったりで、そういった機材をひとつにまとめたいというのがHelix LT導入の理由でもありました。今の活動は、ほぼすべてHelix LTだけの1台で済ませていて、アンプも通さずにラインで音を出しています。というのも、それぞれの現場でアンプを通すと、どうしても家で作った音から変わってしまうんですよね。それが嫌でしたし、一回基本の音を作ってしまえば、常にその音が鳴ってくれるというほうが楽なんですよ。
僕は、デビューした頃はずっとステレオで音作りをしていて、その後一時期はモノラルが好きになったんですけど、このHelix LTを使い始めてからは、久しぶりにステレオで音を出したいと思うようになりました。というのも、もともとディレイたっぷりなスペイシーな音が好きなんですけど、とにかく空間系エフェクターの音が素晴らしいんですよ。ライブでステレオで鳴らしても音が埋もれないですし、PAの人も音が作りやすいと言っていましたね。今回のデモ演奏でも、ソロの部分で【Dual Pitch】というピッチ・シフト・エフェクトを使っているんですが、すごく薄いデチューンの設定にすることで、音像はセンターにありながら少し左右に広げることができるんです。コーラスを使うより音を揺らさずに広げることができますし、やっぱり弾いていて気持ち良いんですよ。
Helix LTの機能的には、やっぱりスナップショットは最高ですね。さまざまな音色設定をひとつのプリセットの中で完結できるし、切り替えた時に音切れがないっていうのが良いです。例えばA〜Dの4つのフットスイッチだけでは足りなかったサウンドを、上のフットスイッチのどこかに割り振っておいて、瞬間的にディレイを入れるというような使い方をしていますが、すぐに元のサウンドに戻ることもできますし、すごく便利ですよ。
Helix LTを導入してからは、これしか使っていないというぐらいですし、8月26日にリリースされた3枚目のソロ・アルバム『combine』でも、エレキ・ギターの音作りの8割ほどはHelix LTで完結しています。ぜひ聴いてみてほしいですし、Helix LTはこれからも使い続けていきますね。
西村智彦「Helixは使いこなせばこなすほど、自分色に染まる良きパートナー」
価格:オープン
西村智彦
にしむらともひこ●1964年生まれ、青森県出身。SING LIKE TALKINGのギタリストとして88年にデビュー。バンド活動に加え、他アーティストへの楽曲提供やプロデュース、ライブ・サポートも行なう。5年ぶりとなるソロ・アルバム『combine』を8月26日にリリースした。SING LIKE TALKINGの最新作はシングル「生まれた理由」。