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- 2024/11/16
Yamaha THR-II & Steinberg Cubase
2019年に第2世代へと進化したYamahaの小型ギター・アンプ「THR-II」は、アンプとしての高品位サウンドに定評があるのはもちろんだが、オーディオ・インターフェース機能を備えており、DAWソフトSteinberg Cubase AI / Cubasis LEを無償で使用できるのもポイントだ。これからDAWで音楽制作に挑戦したいと考えているギタリストには、THR-IIはうってつけのアンプと言えよう。今回は、サウンド・プロデューサー/ギタリストの鈴木Daichi秀行氏に、THR10IIとCubase AIを組み合わせたギター・レコーディングを実践いただいた。
2011年に登場したYamahaの小型ギター・アンプ、THRの後継機。リビングやベッド・ルームなどにもマッチするデザイン性と、ハイクオリティなサウンドや拡張性の高い機能を両立させている。充電式バッテリーを備えているので、電源アダプターの配線を気にせず自由に演奏を楽しめるのも魅力だ(THR30II WirelessとTHR10II Wirelessのみ)。
同社のモデリング技術=VCM(Virtual Circuitry Modeling)テクノロジーにより、コンポーネント・レベルでシミュレーションをすることで、実機のギター・アンプやエフェクトに迫るサウンドを実現。15種類のギター・アンプのほか、8種類のエフェクト、エレキ・ベースやアコースティック・ギターに対応するサウンドも収録している。
ギター・アンプながらオーディオ再生にも適した高音質なステレオ・スピーカーを搭載。Bluetooth接続による音楽再生も可能で、曲に合わせたギター・プレイも可能だ。さらに、オーディオ・インターフェース機能も装備しており、Mac/WindowsコンピューターとUSB接続することで、DAWなどへの録音やプレイバックもできる。USBクラス・コンプライアントなのでドライバーも不要だ。
THR-IIシリーズは定格出力や機能が違う3種類をラインナップする。THR10IIは10Wスピーカー×2基を備えるモデル。コンパクトなサイズながら迫力あるサウンドを得ることが可能だ。THR10II Wirelessも同じく10Wスピーカー×2基を装備するほか、ギターのワイヤレス接続にも対応。別売りのLine 6 Relay G10Tトランスミッターを使うことで、シールド無しでの接続が可能となる。THR30IIは15Wスピーカー×2基を搭載し、ギターのワイヤレス接続にも対応したモデルだ。さらに、THR30IIのリア・パネルにはライン・アウト(フォーンL/R)もスタンバイ。ライブの際にラインでPA卓へ送るなどの活用もできる。
本体のコントロールは専用アプリのTHR Remote(Mac/Windows/iOS/Android)からも行える。キャビネットの種類を変更したり、コンプ/ゲートなどのエフェクトが使えるなど、THR Remoteを使うことでさらに詳細なパラメーター設定が可能だ。作ったサウンドはユーザー・プリセットとして5つまで保存ができる。
※THR REMOTEアプリはTHR-IIとPCとの接続前にTHR-IIとペアリングさせておきます。
また、THR RemoteからGuitar DI Modeを選択すれば、オーディオ・インターフェース機能での録音時にドライ音を録音することができるようになる。THR-IIでアンプ・サウンドを聴きながら録音し、ドライ音にはDAW上でアンプ・シミュレーター・プラグインを使って、後から細かく音作りを行うなどの活用ができるだろう。
THR-IIシリーズには、DAWソフトのSteinberg Cubase AI(Mac/Windows)とCubasis LE(iPad/iPhone)が付属。THR-IIシリーズのオーディオ・インターフェース機能と組み合わせて、音楽制作をすぐにスタートできる。
Cubase AIは、マルチティンバー音源のHALion Sonic SE、ドラム音源のGroove Agent SEといったVSTインストゥルメントを内蔵。また、EQやフィルター、ダイナミクス、モジュレーション、リバーブ、ディレイなど、25種類以上のエフェクト、5GB以上のループも収録する。THR-IIでギターを録音し、Groove Agent SEでのリズム・プログラミング、HALion Sonic SEで上モノを加え、付属エフェクトでミックスするというワーク・フローで楽曲制作ができるだろう。
Cubase AIから、さらに高機能なCubase Proにもアップグレードもできる(54,000円/税抜)。Cubase ProではMIDI/インストゥルメント/オーディオ・トラック数の制限が無くなるほか、より多くのVSTインストゥルメントやエフェクト、ボーカル録音時に便利なテイク・コンピング、オーディオのピッチ/タイミング編集ができるVariAudio 3など、プロも活用する機能が追加されている。
アップグレードはSteinbergのWebサイトから購入でき、Steinbergソフトウェアのダウンロード/アップデート管理ができるSteinberg Download Assistant(Mac/Windows)からCubase Proのダウンロードが可能となる。
アンプ・シミュレーターは、特にクランチの音がやせて聴こえるという印象を持たれている方は多いと思います。しかし、THR-IIはクランチも太くどっしりした音で出せるんです。また、初代THRと比べてサウンドのバリエーションも増えています。専用アプリのTHR Remoteではさらに細かく音を作り込んでいくことができ、“ただリモート操作ができるだけ”というアプリではないところも好印象です。エフェクトも多彩なので、THR-IIだけで音を突き詰めていくことができると思います。
第2世代にあたるTHR-IIはキャビネット・タイプが選べるようになったというのが大きい進化でしょう。同じアンプ・モデルでも、キャビネットの種類を変えることでバリエーションを豊富に作ることができます。使うギターに合わせた音作りというのがしやすいです。
ギタリストの場合、楽器やギター・アンプ、エフェクター、オーディオ・インターフェース、モニター・スピーカーなど、使う機材がどうしても多くなってしまうと思います。THR-IIはアンプやエフェクトはもちろん、オーディオ・インターフェース機能を内蔵し、スピーカーとしてオーディオ再生もできるので、THR-IIだけで完結できるのが良いですね。今回の録音でもTHR-IIからDAWの音を再生していましたが、音も良いことに驚きました。ギターをワイヤレス接続できるモデルもあるのも魅力的。ギタリストの機材数や負担を減らすことができるという、とてもありがたい製品です。
Cubase AIも付属しているので、楽曲制作を始めたいギタリストにもお薦めできます。Cubase AIにはさまざまなループも含まれているので、例えばギターの練習時にリズム・ループを使うなどもできるでしょう。まだMIDI打ち込みに慣れていない人でも、ループを使うことで簡単に作曲も行えます。Groove Agent SEで一からリズムを組むこともできますし、HALion Sonic SEでさまざまな楽器やシンセ・サウンドを利用可能です。THR-IIを手に入れるだけで、素晴らしい制作環境を整えることができますね。
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
価格:¥57,000 (税別)
鈴木Daichi秀行
幅広い音楽性を生かして活動するサウンド・プロデューサー。自身のレーベルStudio Cubic Recordsも運営する。レーベル所属バンドのNon Stop Rabbitは、昨年アルバムでオリコン・デイリー・ランキング1位を獲得した。