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- 2024/11/16
IK Multimedia / Z-TONE Buffer Boost
IK Multimediaから、バッファー/ブースト機能を搭載するプリアンプ兼DIペダルのZ-TONE Buffer Boostが発売された。ギターはもちろん、ベースでも使用できる“縁の下の力持ち”的なこのペダルは、ペダルボードの初段に入れることでトーンを補正してくれるのみならず、ここぞという時にワンプッシュするゲイン・ブースターとしても活躍してくれる。今回は普段から巨大なペダルボードを使用しているircleのギタリスト、仲道良にバッファー実力や使い勝手などを検証してもらった。
Z-TONE Buffer Boostは、1996年の創立以来、音楽制作用ソフトウェアや周辺機器などを開発してきたイタリアのIK Multimediaによる、その名の通りのバッファー/ブースターだ。パッシブのエレキ・ギターやベースで、長いケーブルや複数のエフェクターを使用すると、楽器の原音がケーブルや多数の接点を通るうちに劣化し、音の明瞭度が下がってしまう。ペダルの中に電子スイッチを採用したバッファード・バイパスのものがあれば劣化は抑えられるが、すべてのペダルをトゥルー・バイパス式のものでそろえると、信号の劣化が問題となる。これでは本末転倒だ。
Z-TONE Buffer Boostは、楽器からアンプやミキサーにいたる信号経路の最初に接続して、こうした音質の劣化を最も有効な形で防ぐための製品だ。しかし単なるバッファーではなく、入力インピーダンスを変化させて基本的なサウンドを微調整するZ-TONEや、わずかにドライブさせて原音に偶数次倍音を加えて音の豊かさを増すためのJFET素子といった、“通な”サウンド作りの機能も備えているのが特徴。また、ソロの時などにフットスイッチを踏んで音量を上げられるブースト機能も用意されており、ライブでもレコーディングでも便利なアイテムになっている。
音楽的な立体感を出してくれますね。
バッファーはこれまでにも何個か使ってきましたが、このZ-TONE Buffer Boostはギターやベースの気持ち良い部分をしっかり守ってくれるというか、長いケーブルやボードを通しても音の“座り”が悪くならず、音楽的な立体感を出してくれますね。右手のピッキング・ニュアンスに関わる音の成分が元気よく鳴ってくれるので、演奏時のテンションも上がるし、ライブの出音の完成度も高くなる。レコーディングで使う場合は、作品を聴いてくれる人の耳に、より近づけるような気持ちになれると思います。
Z-TONE機能のツマミは、明るい音色からギターのトーンを絞ったような音色まで、けっこう変化しますね。今回のデモで流したバックトラックはZ-TONE Buffer Boostからプリアンプ、そしてオーディオ・インターフェイスの順に接続して録音しましたが、ギターを何本か重ねる時にもプリアンプ側は一切いじらず、Z-TONEの調節だけでトラックごとに違う音色が作れました。曲を思いついた瞬間にすぐ録音したい時、ベースやトレブルといったトーン・コントロールをいろいろいじっているうちに新鮮な感覚を逃すといった心配がなくなるのはありがたいですね。
また、バックトラックを録音していて歪みを増やしたかった時にもプリアンプ側はいじらずにブースト機能を使いましたが、効果はハッキリ出るけれども大げさに効きすぎず、ちょうど良い感じにチューニングされている印象でした。JFETは通すか通さないか(PURE)を選択できますが、通常はPUREのほうで全然問題なくて。ラインで録音していて、もう少しパンチが欲しいとか、パワーを注入したいとかいう時に、JFETを通して倍音感を加えれば歪みのニュアンスも広がって音の太さも変わります。
ベースのデモ演奏ではJFETの設定でダイレクト録音しましたが、音色が明るくなって、弾いてて楽しくなる瞬間がより増える印象でした。宅録でオーディオ・インターフェイスの直前につなげば、プラグインよりもサウンドのライブ感が増すと思いますね。
価格:オープン
仲道良
なかみち・りょう◎大分県別府市で結成された4人組ロック・バンド、ircleでギターを担当。最新作は今年6月にリリースした3rdアルバム『こころの℃』。