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- 2024/11/16
Pearl / e/MERGE
長きに渡りドラム・シーンの第一線でアコースティック・ドラムを作り続けてきたPearl が、KORGとタッグを組み、電子ドラム= e/MERGEを完成させた。音色へのこだわりを凝縮した音源モジュール、素早いレスポンスを実現したセンサー、リアルさを追求したパッドなどを採用し、従来の電子ドラムとは異なる仕様となっている。リズム&ドラム・マガジン2020年7月号では、その実力をさまざまな角度から検証しているが、ここではその核心部を紹介していこう!
日本を代表するドラムと電子楽器メーカーであるPearlとKORGが、お互いの技術を融合“MERGE(マージ)”して完成させた電子ドラム=e/MERGE。今回発売されるパッケージは、キック・パッドの種類が異なる2モデルです。
1つ目は18”ウッド・シェルのバス・ドラム・タイプ(EM-EBP)を採用したe/HYBRID。ハイハット・スタンド、フット・ペダル、スローン、スティック1ペアが付属するコンプリート・キット(EM-53HB/SET)も用意されています。もう1つは、コンパクトなキック・パッド(EM-KCPC)を採用したe/TRADITIONAL。ドラムのパッドは10”、12”、14”の3タム仕様で、スネア・パッドは14”。シンバル・パッドにはトップ/ボトム分割式の14”ハイハット・パッドに、18”ライド・シンバル・パッド、15”クラッシュ・シンバル・パッドという構成。“PUREtouch”の名を冠したオリジナルのパッド構造で、あくまでもリアルなサイズとタッチにこだわっています。
タム&シンバル・パッドをセッティングするラックは、Jeff Porcaroが考案したPearl伝統のラック・システムのe/MERGE版=ICON e-RACK。シンバル・アームやタム・ホルダーの堅固な構造も老舗ブランドならではの信頼性が感じられます。
タムやスネアのパッドには、KORG社製WAVEDRUMのシステムを応用した“WAVE TRIGGER TECHNOLOGY”と呼ばれる独自技術が採用され、豊かな表現力と素早いレスポンスを実現。シンプルで直感的な操作が可能な音源モジュール、EM-MDL1とのコンビネーションにより、こだわり抜かれたドラム・サウンドを、ニュアンス豊かに楽しむことができます。
KORGのWAVEDRUMの技術を取り入れたテクノロジー、こだわり抜いた音色を内蔵した音源モジュール、リアルな打感を追求したパッド構造……ここではe/MERGEに搭載された3つの象徴的な機能にフォーカスし、詳細に解説していこう。
スネアとタムのパッドに採用されているWAVE TRIGGER TECHNOLOGY は、KORG のWAVEDRUM システムを応用したものです。WAVEDRUM は1994年に初代が発売されて以来、現在でも打楽器好きの間で語り継がれる伝説の電子パーカッションと言われています。e/MERGE では、そこで培われた、打点やタッチ、スティック形状の違いなどを感知する技術をさらに進化。アコースティック・ドラムと同じように、奏者ごとの微妙なニュアンス変化を可能にしました。
また、叩いてから発音までの遅れ(レイテンシー)の少なさも特筆すべき点。WAVE TRIGGER TECHNOLOGY は、デジタル・オーディオの信号伝達と同等のスピードを生み出し、体感上はレイテンシーをまったく意識させない高速レスポンスを実現しています。さらに演奏者がリアル・タイムに生み出す“生音”を、予め録音された高解像度音源に融合させているため、まるでアコースティック・ドラムを演奏しているようなダイナミクス表現を可能にし、レンジの広さも極めて高いレベルまで引き上げられました。
ドラムの“響き”も直感的に加減e/MERGEの心臓部とも言える音源モジュール、EM-MDL1は、黒を基調とした洗練されたデザインで、ボタンやダイヤルをシンプルに配置し操作性を両立。コンパクトでありながらマルチコア・プロセッサーを2基搭載することで、WAVE TRIGGER TECHNOLOGYに対応するハイ・パフォーマンスを発揮します。
プリセット・キットならびにユーザー・キットは、中央に配置された8つのカテゴリー・ボタンによって簡単に呼び出し可能。音楽ジャンルではなく、あえて“NATURAL”、“STUDIO”などの音色イメージが記され、プリセット・キットのそれぞれに5種のキットが割り当てられています。サンプル音源は、フラッグシップであるリファレンスやリファレンス・ピュア、クリスタルビートなど、世界中のPearlアーティストが愛用する名器達。各楽器のコンセプトを理解した上で、ベストなヘッド選択やミュート/チューニングを施して緻密に音作りされたということで、ドラム・メーカーならではアドバンテージを感じます。
アウトプットはL/Rの他に、8系統のダイレクト・アウトとヘッドフォン端子を装備し、シンバル/タム・パッドの追加も可能。シンプルな操作性でありながらプロ・レベルのレコーディングやライヴにも対応する実力を兼ね備えています。その他の機能面としては、コンプやイコライザーなどの内蔵エフェクトやピッチ変更、内蔵メモリーに演奏を録音する機能、外部入力端子を介して、スマホなどの外部音源や内蔵クリックに合わせて演奏も可能です。プリセット・キットの詳細や開発秘話は、ドラマガWeb(https://drumsmagazine.jp/special/pearl-emerge/3/)をチェックしてみてください!
スネアやタム類のパッドに採用されたPUREtouch Electronic Pad Systemは、メッシュ・ヘッドの下にさまざまな形状と硬度の素材が最大6層も重ねられ、生ドラムに限りなく近い打感を実現。さらにWAVE TRIGGER TECHNOLOGYとのコンビネーションによって、タッチによる音色変化、ヘッド中央からエッジにかけての倍音の違い、リム・ショットの角度によるニュアンスも忠実に再現可能になりました。
シンバル類は、特殊な多層構造を採用することで快適な打感を実現。チョーク奏法では、特別に録音された“余韻” を鳴らすことで、自然なサステインを再現します。ライドはボウ~エッジにかけての叩き分けができる他、打点による周波数の違いを検知し、無段階の音色変化が可能。ハイハットはトップ/ボトムが分離した分割式なので、叩くタッチや踏んだときの感触もナチュラル。微妙な開閉位置の検出は、高精度かつ耐久性抜群の非接触式の静電容量センサーが担っています。
キック・パッドは4ヵ所の防振ゴムによるフローティング構造で、生ドラムの自然な揺れを再現すると同時に、防振/静粛性にも貢献。ヒット時にビーターが程良く沈み込む快適な打感は、すでに多くのPearlアーティストからお墨つきをもらっています。
e/TRADITIONALに採用されたコンパクトなEM-KCPCは自宅練習用としてはもちろん、可動式の脚部を生かした柔軟なセット・アップが可能なので、生ドラムにアドオンする用途としても最適です。よりアコースティックに近いルックスを求めるならばe/HYBRIDに採用されている18″シェルを装備したEM-EBPがお勧め。こちらはヘッドのテンションを高めたり、付属のフェルトを間に挟むことで打感の調整も可能です。
【Pearl e/MERGE powerd by KORG〜完全版はこちら〜】
本記事は、6月17日発売のリットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2020年7月号』の転載記事になります。誌面ではPearl e/MERGE の開発スタッフのインタビューや試奏レビューも掲載しております。表紙特集では100人のプロ・ドラマーが今、最もライヴを見たい日本のドラマー/演奏力の高い日本のバンドを選ぶ大アンケート実施。恒例の誌上ドラム・コンテストやロジャー・テイラーの特集など、盛りだくさんの内容となっております。
価格:オープン