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- 2024/11/16
ディストーション・ファズ
エフェクター・ファンのバイブル『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。最新刊Vol.48では、究極のドライブ・ペダル「ケンタウルス」を大特集。デジマート・マガジンでは、その特集の中から“ケンタウルス系オーバードライブ”9機種試奏レビューを紹介します。ぜひ購入の参考にしてください。
オリジナル“Centaur”が備えた革新的な機構と回路、それがその後のドライブ・ペダルに与えた影響は極めて大きい。昇圧回路がもたらす圧倒的に広いレンジ感、クリーン・ミックス機能が実現したアンプライクな弾き心地、独自の筐体が生み出す重心の低い落ち着いた音像など、そうした個性をすべてクローンしているわけではないが、オリジナルにインスパイアされつつも独自に発展を遂げた“ケンタウルス系オーバードライブ”にはまた別の魅力がありそうだ。
[Specifications]
●コントロール:evel、Gain、Bass、Treble ●スイッチ:ON/OFF、Voicing Switch ●端子:Input、Output ●サイズ:118mm(W)× 95mm(D)×48mm(H)●電源:9VDC ●価格:¥29,500(税別) (問)042-519-6855 /アンブレラカンパニー
多くのプレイヤーから高い評価を得ているボンダイ・エフェクトから、“Centaur”系としてすでに愛用者も多い“Sick As Overdrive”をご紹介します。
まずは“Centaur”系の定番設定であるクリーン・ブーストからということで、“GAIN”=0から“LEVEL”を上げていったところ、「あれ?なんでアンプの音量が上がっていくんだ!?」と錯覚してしまうほど、原音そのままの形できれいにブーストされます。この原音に忠実な基本サウンドがあるからこそ、歪ませていってもアンサンブル中で確実に抜ける音作りが可能なんでしょう。現場で活躍するミュージシャンから評価が高いのは、これが理由かもしれません。直感的にブースト/カットできる“TREBLE”&“BASS”の効きの良さも、現場でウケそうな個性です。
単体のオーバードライブとしても非常に優秀ですが、ぜひ真空管アンプやエフェクターの歪みとの掛け合わせも試してみてください。「音作りにはもう一段階上があったのか!」という新しい可能性を開いてくれると思います。操作はシンプルだけれど、できることは想像以上に多い。愛用者の多い理由がよくわかりました。
[Specifications]
●コントロール:Volume、Treble、Drive ●スイッチ: ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:125mm(W)×95mm(D)× 55mm(H)●電源:006P(9V電池)/ 9VDC ●価格:open price (問)info@lep-international.jp/LEP INTERNATIONAL
数々の伝説的な名機を設計してきたビヨン・ユールによる「伝説」の解釈、それが“Silver Lawn”というモデル。“Centaur”が備える「歪み」に着目して開発したという背景もあり、単体でも最高のオーバードライブを作り出すことができます。パワー、圧、抜けがとにかくすさまじい。
しかも小音量であってもそうしたキャラクターが一切損なわれず、“TREBLE”&“DRIVE”がどのポジションにあっても破綻することがないので、ギターやアンプ、ほかの機材との相性に困ることもないでしょう。演奏環境を選ばずに最高の音色を奏でることができる、この懐の広さは驚異的です。いつまでも弾いていたいどころじゃ済まない、いつまでも弾き続けさせられてしまうマジカルな響きに、半人半獣が持つ神秘のパワーを感じずにはいられません。
そして歪みに特化したと言いつつも、“Centaur”らしいクリーン・ブーストの魅力もちゃんと押さえてある辺りがニクいところ。“DRIVE”を0まで絞り切ってみると、しっかりとした太さとはっきりとした輪郭を力強く押し出してくれます。バッファー/プリアンプ的に最前段で常時オンにしておく使い方もぜひお試しください!
[Specifications]
●コントロール: Vol、Treble、Bass、Gain ●スイッチ:ON/OFF、Clipping SW ●端子:Input、Output ● サイズ:91mm(W)×91mm(D)×61mm(H)●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥25,300(税込)(問)info@sunfish-audio.com/Sunfish Audio
真っ白の正方形ボディに、赤い彼岸花のイラストがとにかく目を引くサンフィッシュ・オーディオからリリースされた“Lycoris”。これはオリジナル“Centaur”の再現を狙ったのではなく、あの音色を現代の音楽シーンでも使いやすくするためにさまざまな改良を加えたインスパイアード・モデル。
2モードを搭載し、ゲルマニウム・モードは、オリジナルの特徴的なニュアンスを現代的なレンジ感にアレンジ、発音のはっきりとしたクリーン・ブーストを得意とします。シリコン・モードではかなり深い歪みまで得られるので、アンプを選ばない単体のオーバードライブ・ペダルとしても使用できるでしょう。オリジナルでは難しいトランジスタ・アンプとの組み合わせでも気持ちの良い歪みを演出可能です。
そして歪み回路の前段で低域が少しカットされている、この「少し」の効果が本当に絶大。センター、フロントPUでのブースト時に低域のもたつきを防いでくれるので、ギター本体での表現幅が格段に広がっています。このスッキリと抜けの良い低域は、センター、フロントPUでのバッキングとも相性抜群。用途を限定せずに、それぞれのプレイ・スタイルで楽しめるエフェクターだと思います。
[Specifications]
コントロール:Output、Treble、Gain ● スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:104mm(W)×119mm(D)×57mm(H)●電源:006P(9V電池)/ 9VDC ●価格:¥117,819(税別) (問)makinokoubou.com/マキノ工房
マキノ工房のエフェクターは、弾いた瞬間に明らかに「異質」であると気づきます。異常なまでにレスポンスが速く、とにかく解像度が高い。単にハンドメイドというだけではなし得ない、組み上げレベルの高さがそれらを実現しているのでしょう。本機もその例に漏れることなく、高い完成度を誇ります。
ロング・テイルの中でも初期のものを徹底的に再現したとのことですが、マキノ工房の「徹底的に」は本当に半端じゃない。太いけれども分厚くなり過ぎずスピート感のある低域のニュアンスは、まさに初期のゴールド版ロング・テイルのそれそのもの。これは定数をまねただけで再現できるものではないでしょう。チューブ・アンプやオーバードライブ・ペダルの前段でブーストしてやれば、最高のリード・トーンを出力してくれます。
本家“Centaur”にもそう感じたのですが、ソロ・リード用ロー・ゲインなオーバードライブ/ブースターと言えばわかりやすいでしょうか。その際、“GAIN”もほんの少し上げめでブーストしてやるのがコツです。マキノ工房のエフェクターはとにかく弾けばわかります。ぜひ自身の五感で体験してみてください。第六感がうずくこと請け合いです。
[Specifications]
●コントロール:Gain×2、Treble×2、 Output× 2 ●スイッチ:Ch-1 ON/OFF、Ch-2 ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:107mm(W)×121mm (D)×52mm(H)●電源:9VDC ●価格:open price(問)info@lep-international.jp/LEP INTERNATIONAL
ほとんどの方が未体験であろう、“Centaur”を“Centaur”でブーストするぜいたくなセッティング、そんな夢を叶えてくれるのがフレドリック・エフェクツの“King Of Klone”です。本機は、それぞれのチャンネルにバッファー、昇圧回路を搭載した、完全に独立した回路の2in1設計。ぜひ裏ふたを開けて見てみてください。本当に同じ基板が2枚組み込まれていて、直列に対する熱いこだわりを実感することができるでしょう。
音色は、低域が分厚すぎない使いやすいタイプの“Centaur”をとてもよく再現できています。そしてなんと言っても、ポイントは昇圧回路によるヘッドルームの広さ。ヘッドルームが広いということは、前段でのダイナミクスへの反応が良いということ。音量、歪み量を大きく突っ込んでも飽和しづらく、真空管アンプをブーストしたような効果が得られます。
というわけで、2chでメインの歪みを作り、1chでブーストして、さらなる歪みと音量を稼ぐという使い方がオススメ。もちろん逆の使い方でもOKですが、音量がかなり上がるので、その場合はチューブ・アンプでの使用を推奨します。そうして得られるチューブの歪みも絶品ですよ!
[Specifications]
●コントロール:Vol、Tone、Drive ●スイッチ: ON/OFF、Buffer ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:45mm(W)×92 mm(D)×55mm(H) ●電源:9VDC ●価格:¥14,000(税別)(問)03-3862-5041 /モリダイラ楽器
近年、いきおいが増すばかりのMXRのミニ・シリーズ。本機は、その決定版と言っても良いのではないでしょうか。“Centaur”をMXR流にアレンジして、ミニ筐体に収めたモデルです。
最初にいきなり言い切ってしまいますが、最初期のゴールド/ロング・テイルが好きな方は、間違いなく気に入るでしょう。同時期の個体に特有の低域の暴れ具合、太さの再現度は頭ひとつどころではなく、完全に抜きん出ています。そうした個性を基本にしつつ、オリジナルよりも単体のオーバードライブとしても使いやすいアレンジが施されているようで、歪み始めの位置が早く、歪みのキャラクターを幅広く選択できると感じました。
ヘッドルームの広い現代的なクリーン系アンプであっても、クランチした真空管アンプと“Centaur”とのかけ合わせで得られるスムーズで深い歪みを再現することも可能です。というよりも、現代の主流であるヘッドルームの広いクリーンなアンプでの使用を念頭にチューニングされていると感じました。バッファーのオン/オフの選択ができることも、個人的にとてもうれしいポイント。これならバッファーの影響を受けやすいファズなどのエフェクターとも共存させられますね!
[Specifications]
●コントロール:Output、Treble、Gain、Fat Mode ●スイッチ:ON/OFF、Clip Mode(Germanium/LED/Silicon)、Bypass Mode ●端子:Input、Output ●サイズ:104mm(W)×131mm(D)×37mm(H)●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥25,273(税別) (問)shop@studiodaydream.net/スタジオデイドリーム
本機はライブの現場で即戦力となり得る機材を多数手掛けるブランドが練り上げた“Centaur”の進化系。すでに各所で話題になっているので、気になっていた方も多いのでは。
プラグインするとまず気づく利点が、とにかくロー・ノイズであること。オリジナルはノイズ耐性が弱点とも言われますが、配線などに工夫を凝らすことで完璧にブラッシュアップしているとの感触を得ました。側面に配置されたスイッチ&ノブにより、幅広い音楽ジャンル、演奏スタイルに対応する仕様も進化系ならでは。
中でも個人的にとても面白かったのが、“FATMODE”ノブを回すことで得られる効果。低音のブーストとともに倍音成分も足されていくので、太さに広がりも加えられる点に好印象を持ちました。“CLIP MODE”は歪みのキャラクターを選ぶ本来の用途にはもちろんですが、“FATMODE”で加えた低域を調整する意識で選ぶのも良いのではないでしょうか。
また、低域を引き締める目的でバッファード・バイパスを選択するのもアリです。総じて、オリジナルの良さと現代的な使いやすさが絶妙なバランス感で成り立っているモデルだと感じました。
[Specifications]
● コントロール:Out、Tone、Gain、Voicing(内部)、Light(内部) ●スイッチ:ON/OFF、OD Bass(内部)、EQ(内部)、Clipping(内部) ●端子:Input、Output ●サイズ:64mm(W)×118mm(D)×59mm(H) ●電源:9VDC ●価格:¥38,000(税別) (問)052-711-3311/荒井貿易
革新的なリバーブで楽器好きたちの度肝を抜いたアナサウンドの代表作であり、“Centaur”を進化させたオーバードライブである“Savage”をご紹介します。アナサウンドといえば、まずは唯一無二な美学あふれる見た目のかっこよさに言及せざるを得ません。スイッチをオンにしたときのライトのギミックは、ぜひともその眼で体験していただきたいところ。
そして、ぱっと見た感じ、3ノブのシンプルな仕様に思うかもしれませんが、アナサウンドの本領は「内部」にあります。裏ふたを開けると、ライトの明るさ調整も含め、5つの内部コントローラーにアクセスできる点が大きな個性。そのどれもが的確なポイントに効くようになっているので、数ある“Centaur”系の中でも一番幅広く、しかも使えるサウンド・メイクが可能なモデルといっても過言ではないでしょう。
アナログ回路によるオーガニックな温かみのあるキャラクターと広い操作性、オリジナル機の音色に忠実であるからこその輪郭の強さにより、特に低域の分厚い、太いサウンド・メイクに効果的だと思います。“Centaur”系に限らず、肉厚なオーバードライブをお探しの方にオススメ!
[Specifications]
●コントロール:Output、Color、Treble ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:59mm(W)×105mm(D)×46mm(H) ●電源:006P(9V電池)/ 9VDC(センター・マイナス) ●価格:open price(市場想定税別価格:¥28,000前後) (問)06-6441-2263 /ゼンブジャパン
“Centaur”のクローン・モデルといえば、まずJRADの“Archer”シリーズを思い浮かべる方も多いと思います。そんな中から、ここで紹介するのは“Archer Clean”。モデル名の通り、クリーン・ブーストに特化したバリエーション・モデルです。
“Centaur”が組み込まれたいろいろなペダルボードを観察してみると、オーバードライブというよりも、ブースターとしての使用が多いことに気づきませんか? 前段で歪みをもうひと押ししたり、後段でレベル・ブーストしたり。本機はそんなオリジナル機が備えた魅力のひとつを再現することに特化したモデル、と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
良いギター、アンプをお持ちであれば、そのピュアで生々しい響きに艶と奥行きを加え、さらに深みのある音色へと押し上げてくれること請け合い。音量を少し大きめにして歪み系ペダルをブーストしてやれば、音が伸びやかに突き抜けるはず。“Centaur”のスウィート・スポットとして多くの方が使っているであろう“GAIN”=9~12時辺りの操作幅を、本機では“COLOR”ノブで細かくワイドに調整することが可能です。
どうも。過去1ヶ月間、17台ものケンタウルスを横に置きながら編集作業を続けてきた、しももです。ぶっちゃけ、毎日いろんな意味でプレッシャーを感じてました。鍵付きの棚に保管していたとはいえ、時価総額うん百万円ものエフェクターの山がすぐそばにあるわけですからね。そりゃあ、緊張しますよ。しかもコロナの恐怖とダブルパンチ。おかげでここ1ヶ月、自慢の長髪にもたいぶ白髪が混じり始め、なんだか抜け毛の量も気になるようになってきました。ああ、ストレスって怖い。
そんなんで、本物のケンタウルスに関する記事は雑誌のほうで楽しんでいただくとして、こちらはインスパイアード系です。で、結局みなさんにとって最大の関心事は、「どれが一番本物に似ているのよ?」という点ですよね、きっと。でも、そこは一旦忘れたほうが良いと思います。実際にいろいろなモデルを試していく中、それこそが大きな罠なんだと気がつきました。というのも、「めちゃめちゃ好感触なんだけど、再現度は低い」なんてモデルも結構あるんです。つまり、本家への肉薄度はそんなに高くないものの、オーバードライブとして優れたものがあるということ。うまく逸脱できているポイントを見出してあげることのほうが、良い出会いにつながりそうなんです。細かい間違い探しみたいな“似ている・似ていない論”に終始しちゃうのは“不毛”だし、そのほうがぜんぜん前向きですよね。ポジティブなメンタル・アティテュードは、頭皮の健康にも良さそうですし。
さて、本物のケンタウルスの音が欲しいのであれば、覚悟を決めてオリジナルを買ってください。それが唯一の道であることは間違いありません。そうではなくて、「ケンタウルス系」の中から探すのなら、音色に触れた瞬間に「これ好き!」と感じたモデルを迷わずゲットしましょう。ジャーンと鳴らしたとき、毛根にゾクゾクっとした感覚が走ったもの。それが絶対に正解です。ハゲそうなくらい良い音に感じた製品と出会えたなら、きっとそれは一生の愛機になるに違いありません(笑)。(下総淳哉/THE EFFECTOR book)
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book Vol.48 EXPENSIVE SUMMER ISSUE 2020』での特集企画「“現行ケンタウルス系ドライヴ”試奏分析」を転載したものです。あらゆるギタリストから羨望の眼差しを向けられる究極のドライブ・ペダル“ケンタウルス”。プロ・ギタリスト、著名ペダル・デザイナー、有名機材系ライターなど数々の識者による協力のもと、エフェクターブック編集部が総力を挙げてその真実を検証します。
項数:112P
定価:1,800円(税別)
問い合わせ:シンコーミュージック
『THE EFFECTOR book Vol.48』のページ・サンプル
坂本夏樹(さかもと・なつき)
チリヌルヲワカ、She Her Her Hers、Over The Topでのバンド活動を経て、スタジオ・ミュージシャン、プロデューサーとして、Creepy Nuts、DE DE MOUSE、HOME MADE 家族、たんこぶちん、酸欠少女さユり、新山詩織など、数多のライブ、レコーディングに参加。