AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
EVO BASS / B0101Z
ベースのボディに使用されるマテリアルといえば、例えばアルダーであってもアッシュであっても、“木材”であることが通例だ。ただし、これまでのベース史を振り返ってみれば、木材以外の素材を使用したモデルもいくつか存在し、そのなかで“アルミ”というキーワードを思い浮かべた人も多いのではないだろうか。そんなアルミ・ボディを持つ最新器、EVO BASSがついに登場する。今回は、すでに同製品を愛用しているというメトロノームのリウをナビゲーターに迎え、その魅力を検証していきたい。
※リアルなベース・サウンドはイヤフォンでのチェックを推奨いたします。
革新が生み出す“普遍”のサウンド
アルミ・ボディのギター/ベースといえば、1980年代の“タルボ”を想起する人も多いだろう。そのタルボを現代に甦らせたTALBO Secret FACTORYがタルボを愛用するHISASHI(GLAY)、平沢進とともに、アルミ・ボディの最進化形モデルとして生み出したのがEVO(イーボ)である。
2011年に登場したEVO GUITARは進化を続け、アルミ削り出し骨格構造のEVO 0101Zは、ワイドレンジで立ち上がりが速くデッド・ポイントのない均一なトーンという木材ボディでは成し得ないメリットを得つつも、木材を使用した“ベーシック”なサウンドからハミ出し過ぎないバランス感のあるサウンドを実現。まさに、実用的でありながらも従来にないギターとなった。
そんなギターが完成したとあれば、当然の要望として生まれるのがそのベース版の開発である。もちろん、ギターができたからすぐにベースもという簡単な世界ではないわけで、長年の試行錯誤を経て、このたびついに完成し、2020年8月に一般発売されることになった。
かつてのタルボ・ベースは鋳造アルミによる中空構造であり、楽器としての“鳴り”は持ち合わせていたものの、金属の空洞という構造が無駄な反響を生んでしまっていたため内部にウレタンなどを詰めて余計な共鳴を抑えていた。一方、今回のEVO BASSは、ボディにアルミニウムA6061を削り出した骨格構造を採用。これにより、余分な倍音が少なく、雑味のないクリアなサウンドを実現した。ボディの中心部から外側に向けて放射状に伸びた骨格は、軽量化という意味と同時に、アコースティック・ギターのブレイシングのような“鳴り”の制御という目的もあるという。なお、ボディの骨格の厚みはEVO GUITARの5ミリに対してEVO BASSは6ミリ。これはベースのサステインや振幅を考慮した結果である。
そのほかのマテリアルは、ネックがメイプル、指板がローズウッドと比較的オーソドックスな仕様。こちらも、高域に特徴が出るメイプル指板やエボニー指板などとの比較により、サウンドのバランスを取った結果とのこと。また、34インチ・スケール、細めのJBスタイルのネック・グリップなども含め、未知のサウンドを求めるだけでなく、あくまでも“実用的”なものとして設計されていることがわかる。
ピックアップとプリアンプは、バルトリーニ製のモデルとアギュラー製のモデルがラインナップ。アギュラー・モデルはミドルの周波数帯切り替えスイッチも備える。両モデルともにアクティヴ/パッシヴの切り替えスイッチを搭載しており、パッシヴのライン環境でも現代の音楽に対応するレンジの広さと立ち上がりの速さを体感できるだろう。
“アルミ・ボディのベース”と聞くと、個性的すぎる飛び道具的なものを想像するかもしれない。しかし、誤解を恐れずに言えば、EVO BASSのサウンドは“普通”だ。聴いていてあからさまに“アルミ”と感じる部分はない。しかし、ひとたび弾いてみれば、そのレスポンスの速さやポジションを選ばないなめらかな演奏性は、既存のベースにはないものだということがわかるはずだ。ぜひ実際に演奏して、その真価を確かめてほしい。
【Specifications】
●ボディ:A6061アルミニウム30mm●ネック:セレクテッド・メイプル●指板:セレクテッド・ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:24●ピックアップ:バルトリーニBC4C×2 or アギュラーDCB D1×2●プリアンプ:バルトリーニNTMB+F or アギュラーOBP-3●コントロール:ヴォリューム、バランサー、トレブル、ミドル、ベース、アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ、キル・スイッチ、ミドル周波数帯切り替えスイッチ(アギュラー・モデルのみ)●ペグ:ゴトーGB350●ブリッジ:ゴトー404BO●重量:4.47kg●価格:¥358,000 ※2020年8月発売予定
僕がやっているメトロノームというバンドが、ギターもベースもタルボ・ギターとタルボ・ベースを使うというコンセプトなんです。ただ、今はギターはEVO GUITARも使っていますし、タルボ・ベースは15年くらい前に生産中止になっているということもあって、EVOのベース版を作ってみませんかという話をいただいたのが、僕とEVO BASSの関わりの最初ですね。
EVO BASSを弾いてみてまず思ったのは、すごくレンジが広くてキレイな音が出るなということ。クセがないからいろんな現場で使いやすいなっていう第一印象でした。そして、ネックがJBタイプの細めになっているからとにかく弾きやすいんです。
僕がずっと使ってきたタルボ・ベースは、ミドルにクセがあるベースなんです。それでエフェクターのノリで難しい部分があったり、ギターに寄りすぎちゃう部分があったんですけど、EVO BASSはベースとしての役割をきちんと果たしているというか。
やっぱり見た目の派手さとアルミのボディっていうことで、どうしても印象的にハイの強い硬い音が出るんじゃないかって思われがちなんですけど、ミニ・スイッチでアクティヴとパッシヴを切り替えたときに、パッシヴの状態でもローがしっかりと出てくれる。
そのうえで、音の立ち上がりが速いというアルミ・ボディの利点があって、打ち込みのサウンドにも負けないし、シンセ・ベースとかと一緒になっても共存できる。今の音楽は打ち込みとかも多いですし、そういう意味でも時代に合っている楽器だと思いますね。
僕はバルトリーニ・ピックアップ&プリアンプのモデルを使用していて、レンジの広い音作りができますね。僕がやっているバンドは打ち込みの音がすごく多いので、手元のコントロールでちょっと派手めな感じにして使っています。つまみで僕が一番いいなと思ったのがハイの帯域。一番上のところがキレイに出て、この音域があるとないとではレコーディングとかでの抜けが変わってくるんですよ。
アギュラーのピックアップ&プリアンプのモデルは、ミドルの周波数帯が選べるので、より幅広い音作りができそうですね。個人的にはアギュラー・モデルのほうがロック色が強い気がしました。抜けがいいし、エフェクターをかけない状態でもすごくキレイにドライブ感が出てきます。
すでにライヴでも何回か使ったんですけど、単純にステージ映えするというか(笑)。お客さんへの見た目のインパクト、派手さは、反応が良かったですね。けっこうボディが大きくて、ベーシストとしてシルエットがキレイに見える形をしているんです。ボディは大きいですけどバランスも良くて、ヘッドが下がることもないですし、ハイ・ポジションも弾きやすい。ステージングもしやすいですね。
EVO BASSはキレイな音が出るので、どのジャンルでも使えると思います。クリアでレンジの広い音の何がいいかというと、もとがそれだけしっかりと出ていると、その後のエフェクターやプラグインでの加工もすごくキレイにできるんですよね。いい音が出るというのは当たり前で、さらにひとつ個性を出したいという人にお薦めですね。
価格:¥358,000
RIU
1998年に結成されたエレクトロ・ロック・バンド、メトロノームに2001年に加入。最新作は2019年11月にリリースしたアルバム『確率論≠paradox』。リウは、メトロノームのメンバーとして活動しながら、さまざまなアーティストのサポート・ベーシストとしても活躍するほか、楽曲提供やミックス作業なども幅広く手がける。ソロとして『東の空、龍が舞う』『君の名を刻もう』といったアルバムも発表している。