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- 2024/11/16
ザクレス / KR'Z ナノダイヤモンド ケーブル
ザクレスより次世代のシールド、“KR'Z ナノダイヤモンド ケーブル”が登場。“芯線にナノ・ダイヤモンドをコーティングする”という新発想で、数々のプロ・ギタリストを満足させるクオリティを実現した。プロの声も踏まえつつ、その真価に迫る。
伝送効率を高める新素材
“ナノ・ダイヤモンド”
新たに誕生したメイドインジャパンの楽器用ケーブル・ブランド、KR'Z ナノダイヤモンド ケーブルは、独自の加工と新技術により芯線に約3~5nm(ナノメートル)サイズのナノ・ダイヤモンドをコーティングすることに成功した次世代のケーブルだ。
製造と販売を手がけるザクレスは2016年に設立。もともとは省電力ケーブルの開発を進めていたスタッフが、伝送効率を高める素材として、高度医療や精密機器産業で研究が進んでいた高分子材料であるナノ・ダイヤモンドに着目。そのコーティング技術を研究する過程で、“幅広い分野にも応用できるのではないか”と考え、その研究と新製品の開発・製造を行なう企業として新生ザクレスが2019年に再スタートする。
最初に手がけたのはハイエンド・オーディオ向けの高級ケーブルだった。上質でクリアなサウンドに手ごたえを感じた開発陣は、楽器用ケーブルにも応用できるだろうと、試作品を国内のプロ・ミュージシャンにテストしてもらったところ、一様に高い評価を獲得。その後、改良をくり返しながら製品化されたのが、KR'Z ナノダイヤモンド ケーブルである。
一般的な楽器用ケーブルは、芯線(単線が一般的)、絶縁体、シールド被膜、シース(外皮)で構成されているが、このKR'Z ナノダイヤモンド ケーブルの特徴は、複数本をより合わせた芯線の表面にナノ・ダイヤモンドをコーティングしている点だ。芯線の構造別に3つのモデルがラインナップされており、中でも一番人気なのが響(HIBIKI)/XL(クロスライン)【①】。2本の平行線にクロスする形で網線を編み込んだ芯線構造で、表面にナノ・ダイヤモンドを薄膜コーティングしている。低音域から高音域まで、非常にレンジの幅が広く、一般的なケーブルと挿し替えてコードやアルペジオを弾いてみると、“響”という名前どおり、ノンリバーブでもフワッとひとまわり音が広がったような感覚が味わえる。
雅(MIYABI)/SP(スパイラルライン)【②】は中心銅線に、らせん状の絶縁銅線を巻き付け、そこにコーティングを施したもの。響/XLに比べると重心が低く、低音に芯があるような印象を受ける。特にベーシストに人気があるそうだ。爽(SOU)/HL(ハードツイストライン)【③】は2本の銅線をツイスト状に巻きつけた芯線構造で、3モデルの中では最もコーティング面積が広い。明るくブライトな音響特性で、アクティブ系PUのギターやデジタル機器との相性もいい。
各モデルには日本語の語感を取り入れた漢字のネーミングを採用。そこにはMADE IN JAPANの証と、日本の技術力の高さを世界にアピールしたいという思いが込められている。現在のラインナップは3mと5mの2種類。軽量で取り回しがいいことも人気のひとつで、一本一本ハンドメイドで丁寧に製造が行なわれている。生産数が少ないことや、コーティング作業に綿密な工程が必要なこと、ナノ・ダイヤモンド自体の価格が高価なこともあり、ケーブルの価格としてはやや高め。しかし、シリアルナンバーによる管理のもと、1年間の臨機応変かつ即時対応の保証があることや、音ヤセを防ぐ高品位なエフェクターとして考えると十分に納得のいく仕上がりだ。現在は量産に向けて、大学の研究室と提携しながら、研究開発を進めている最中だそう。
通電反応の早さ、レンジの広さ、音の粒立ちの良さ、心地よい倍音の響き、ケーブルの柔らかさと軽さが魅力のKR'Z ナノダイヤモンド ケーブル。製品はWEBサイトのみの販売で楽器店などでの販売はないとのこと。ユーザーからのフィードバックも日々寄せられ、新製品のアイディアも豊富とのことで、今後の展開に期待が高まる。
雅の芯線構造は中心銅線に細い絶縁銅線をらせん状に絡ませ、ナノ・ダイヤモンドをコーティングしたもの。
3m ¥22,880
5m ¥33,000
中心銅線に細い絶縁銅線をらせん状に巻き付けたものにナノ・ダイヤモンドをコーティングした芯線構造となっており、断面図を見てみると、1本の太い芯線のまわりを、もう1本の細い芯線が取り囲むような形になっている。中低音域寄りの音響特性で、響/XLに比べるとすっきりとした印象のサウンド。低音に芯が感じられることから、ベーシストに人気があるのも頷ける。ダウン・チューニングのプレイヤーは試してみる価値があるだろう。
2本の芯線を使用。そこに銅線をクロスするように編み込みナノ・ダイヤモンドをコーティング。
3m ¥24,200
5m ¥35,200
2本の平行線に銅線をクロスする形で編み込んだ芯線構造。平行線と交差線のどちらにもコーティングを施して編み込んだ複雑な構造になっており、ケーブルを断面側から見てみると、交差線が平行線を巻き込むように8の字を描いているのがわかる。非常にワイドレンジな音響特性を持ち、“響”というネーミングどおり、コードやアルペジオを弾いてみると実に気持ちがいい。アコースティック・ギターにも相性が良いモデルと言えそうだ。
爽の芯線は2本の銅線をツイストし、そこにナノ・ダイヤモンドをコーティングしている。
3m ¥21,560
5m ¥30,800
同じ太さの銅線をツイスト状にしたものにナノ・ダイヤモンドをコーティングした爽/HL。本モデルが最もコーティング面積が広く、断面図を見ると、2本の芯線が接して並んだ形になっている。中高音域寄りの音響特性で、明るくきらびやかなサウンドが特徴。このケーブルでギターを弾いてみると、メロディや高音弦を中心に鳴らしたくなるはず。アクティブPUのギターやキーボードなどのデジタル楽器との相性も良く、エレキ・バイオリニストの愛用者も。
ここでは音へこだわり抜いたプロ・ギタリストたちが、KR'Z ナノダイヤモンド ケーブルを現場で使用した感想やサウンドの変化について語ってもらった。
シールドを響に替えて音作りが変わった。
最近、僕はシールド周りを全部、響/XLに替えて試しています。レンジも広いし、ピッキングのニュアンスもちゃんと出る。あとはアンサンブルの中でも存在感が出ますね。自分の音が聴こえにくい時はEQなどを用いてある特定の帯域をブーストしたりするんですが、やりすぎると位相がおかしくなり、良い音とは言えなくなる。この響/XLは音圧が1〜2dBくらい上がる印象なので過剰EQにならず、クリアな音が出せますよ。
あとはこれに替えてから、音作りも変わりましたね。以前はギターからボリューム・ペダルに入る前に薄くコンプレッサーをかけていたんですけど、コンプをパスすることでより帯域が広くなり、今までよりも抜けが良くなって音に存在感が出ていると思います。
それとケーブル自体が軽くて柔らかいので扱いやすく、持ち替えなどもスムーズにできます。外皮がラバーじゃないから汚れにくいし、ハイエンド・ケーブルによくある方向性もないので、セッティングの時など助かります。こういう小さなストレスがないのは良いですよね。
最初はまず、ギターにつないで試してほしいかな。PUからの微弱な信号を伝える部分なので、そこを変えるだけで音が変わってくると思います。
プレイのニュアンスがよく出る“音楽的なシールド”ですね。
これはライブのリハーサル中に初めて使いましたね。その時はエレガットを弾いていて、最初は雅/SPから試したんですけど、音も粒立ってるし、音が前に出てきたので“おっ”と思って。そのあと、爽/HLや響/XLも試しましたが、以前に使っていたシールドより音のレンジも広いし、自分が弾いている音がそのまま出てくるような感じで、ロスも少ない。そのまま本番でも使ったんですけど、アンサンブルの中で強調はされすぎるわけではないけど、存在感がある感じで。とても音楽的なシールドだなと思いました。
エレガットやアコギを弾く時に大事なのは、“ギター本来の音がそのまま出る”ということと“低音から高音まで満遍なく音が出る”ことだと思うんです。シールドってどれを使っても多少クセがあって、ギターの音が損なわれてしまうのですが、これはそういうコンプレッションがかからずに、ロー・コードを弾いても、高音弦できらびやかな音を鳴らしても、クリアな音がしっかり出るんですよ。
あとは高品質なシールドにありがちな、踏んでしまったり、動いた時にノイズが出るということもないので、そういった取り回しの良さも魅力のひとつですかね。
音のピントがちゃんと合って ディティールが掴みやすい。
ペダルとアンプをつなぐ箇所に僕は響/XLを使っています。ギターから足下への部分も試したんですけど、こっちのほうが僕がエレキ・ギターに求めるローファイ感を残しつつ、自分の音色が素直に運ばれる感覚があって良かったんです。今までも自分が満足できるシールドを使っていましたが、これを使ったら霧が晴れたというか、音のピントがちゃんと合ってディテールが掴みやすい印象で。シングルコイルのクリーン・トーンにコーラスをかけて、アルペジオを弾くと気持ちいいと思います。
よく“粒立ちが良い”とか、“音が抜ける”というシールドを使うと表現がギラついたり、音が金属的になることがあるんです。あとはEQで音のポイントを変えていくと、どうしても不自然な音になってしまったり。でも、これはどこの帯域を強調するとかではなく、上から下まで自然な音を出せますね。それに情報が伝わるスピードも速い気がしていて、ピッキングの細かいニュアンスも出しやすいです。
僕は良い演奏が良い音楽を作ると思っていて。そのためには弾きやすいシールドって欠かせないんですよね。そういう意味でもこれはハイファイさと弾きやすさを兼ね備えたシールドだと思います。
本記事は、4月13日(月)に発売されたリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2020年5月号』にも掲載されています。表紙巻頭特集は「ファンキー・ブルース」。ぜひチェックしてみてください!