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- 2024/11/16
KORG / wavestate
1990年代に一世を風靡したKORG Wavestationからインスピレーションを受け、現代のトレンド機材や作曲法などからヒントを得て開発されたシンセサイザーwavestate。ハイクオリティで独特な世界観を持つサウンドは、すでに高い評価を得ています。今回はゲストにシンセ・マエストロこと氏家克典氏を迎え、動画で分かりやすく解説していただきました!
まずは氏家克典さんによるwavestateの解説動画をご覧ください。wavestateが持つユニークなシンセシス・エンジン「ウェーブ・シーケンシング 2.0」を中心に、分かりやすく解説していただきました。多彩に変化するサウンドの秘密がここに!
ここで、もう一度wavestateの概要についておさらいしてみましょう!
wavestateのメインで使用するサウンドは、“パフォーマンス”と呼ばれ、最大4つのレイヤーで構成されています。レイヤーには“プログラム”、アルペジエーター、そのほかのセッティングが含まれています。つまり、レイヤー1つがシンセ1台分に相当し、最大4台分のシンセを組み合わせたのがパフォーマンスということになりますね。
ディスプレイにメインのホーム・ページが表示された状態で[VALUE]ノブを回すと、リストからサウンドを選ぶことができます。
16個のボタン×バンク[A]〜[D]は、パフォーマンスを瞬時に呼び出せるセット・リスト・スロットとして使用できるほか、後述するウェーブ・シーケンスのステップ設定で使用します。
プログラムを各レイヤーに割り当てればオリジナルのパフォーマンスを作ることができます。各レイヤーの音量のバランスやキー・ゾーンなどの設定も可能で、ベクター・ジョイスティックを使えば、演奏中に各レイヤーのバランスも変えられます。
パフォーマンスは最大4つのレイヤーで構成されていて、レイヤーにはプログラム、アルペジエーターなどが含まれているということを先述しました。つまり、プログラムの音作りが、wavestateにとって非常に重要になってくるわけです。
フロント・パネルでは、1つのレイヤーを直感的にエディットできるようになっています。フィルター、エンベロープ、アンプ、LFO、そしてエフェクトといった構成は、昨今のアナログ・シンセと同じですね。
wavestateの最大の特徴は、オシレーターに“ウェーブ・シーケンス”というユニークなシーケンサーが実装されているということ。“鍵盤を押すとステップごとにアサインされたサンプル波形が再生される”ため、次々に音色が変化するという仕組みです。ちなみに、1つのサンプル波形をオシレーターとして使用する“シングル・マルチサンプル”というモードも用意されていますが、やはりここはウェーブ・シーケンスを使うことがwavestateの醍醐味と言えるでしょう。
かつてのウェーブ・シーケンスの元祖Wavestationは、単一のトラック上のステップの中に、波形(サンプル)、発音する長さ(デュレーション)、音高(ピッチ)を設定していく仕様でした。すべての要素が同じステップ数でループされるので、鍵盤が押されている間は同じパターンが繰り返されるという再生方法でした。
一方、wavestateのウェーブ・シーケンスは、タイミングやサンプル、ピッチなどの要素を、それぞれ“レーン”で設定できるようになっています。
これにより、例えば、サンプル・レーンを5ステップ、タイミング・レーンを4ステップ、ピッチ・レーンを3ステップといった具合に、各レーンのループ幅をバラバラに設定することができるので、パターンが延々と繰り返すだけのWavestationよりも、複雑にサウンドが変化していきます。これが“ウェーブ・シーケンシング 2.0”と名付けられた所以です。
さらに、スタートやエンド・ポイント、ループ・ポイントの設定や、ステップの順序をランダム化させるなどシーケンサーの再生バリエーションも増えたことにより、さらに予想外なサウンドを生み出すことも可能になりました。
いっちー 最近、音楽シーン全体でデジタル・シンセの音の良さが見直されている傾向があります。そして30年の時を経て、再びウェーブ・シーケンスが注目されているというのも面白い現象ですね。
氏家克典(以下、氏家) うん、面白い。でもウェーブ・シーケンスのエンジンは進化して昔とは全然違うわけで、wavestateの多彩な音の変化と音のクオリティを体感してしまうと、前のは忘れてもいいかなと……(笑)。過去の製品に引きずられる必要もあまりない。
いっちー WavestationはこれまでもMac/Windows版やiOS版でソフトウェア化されてきましたが、今回はハードウェアで製品化。しかも単なるリバイバルに留まらず、現代のニーズに合わせた仕様になっています。
氏家 wavestateは物理的な制約があるの中でどれだけ使いやすく面白くするか追求されていて、このサイズにこれだけの機能がまとまっているっていうのが良いですね。使い回しやすいサイズと軽さ。そして標準鍵盤であるっていうところも。
いっちー この軽さとサイズならステージでも制作スタジオでも簡単にセッティングできますし、小型シンセにはミニ鍵盤が多い中、標準サイズが搭載されているところもポイント高いです。さらにwavestateにはウェーブ・シーケンスをフィジカルにコントロールできるノブが搭載されています。
氏家 そう、Wavestationだったらベクター・ジョイスティックを動かすぐらいしかなかったからね。そもそも当時のデジタル・シンセは、リアルタイム・エディットという概念がなかったんで、それだけでもすごかったんだったんだけど。こういうフィジカルにコントロールする部分って、ライブでどう使おうかっていうイマジネーションも沸くし、やっぱり触ってて気持ちいいっていうのがミュージシャンにとって重要なこと。wavestateはそういった点もかなり満たしているんじゃなかな?って思いますね。
いっちー 氏家さんだったら、wavestateをどのように楽曲制作で使用しますか?
氏家 素直に、まずは時間軸上に有機的に変化するアンビエント系のバッド音色を、楽曲に盛り込めたら最高にいいなって思いました。ほかにも、SEのようないろんな音をミキサーのフェーダーを操作して重ねたり切り換えていくようなことを、これ1台でやってみたらどうだろうとか、wavestateを弾いているといろんなアイデアが浮かびますね。
いっちー 価格はなんと当時のwavestationの3分の1。性能は格段に上がっているのに値段は思いっきりお手軽!
氏家 いいね〜! ほんと今の若い世代の方たちがうらやましいですよ(笑)。彼らがどういった発想でwavestateをどう使っていくのか、とても興味ありますね。
氏家 克典(うじいえ かつのり)
学生時代より本格的プロ活動をスタート。音楽コンサルティング、音楽ソフトウェア企画制作、音楽教室運営、作編曲、プロデュース、国内/海外デモンストレーション、研修、後進育成、連載執筆、演奏家として、その活動は多岐に渡る。今まで手掛けたTVCM音楽や楽器内蔵デモ曲は数100曲、デモ演奏やセミナーなどで訪れた国々は20ヶ国以上、YouTubeで配信された電子楽器レビュー動画は400本、2,600万再生回数を超え、世界中のミュージシャンやクリエイターから注目を浴びている。またDVD「氏家克典直伝!弾けない人が生演奏のように打ち込むキーボード演奏法」シリーズ(アルファノート)はベストセラー発売中。冨田勲の「源氏物語幻想交響絵巻」、「イーハトーヴ交響曲」、「ドクターコッペリウス」でのフルオーケストラ公演にシンセサイザー奏者として参加、松武秀樹のユニット「Logic System」へのアルバム・ライブ参加、小室哲哉との多くのプロジェクト、佐藤竹善ライブ・サポート、松武秀樹・土橋安騎夫・浅倉大介とのライブ・イベント「SynthJAM」など、多くのアーティストと共演している。なお現在、オリジナル・アルバム『MUSIC COLLAGE』に続く、『MUSIC COLLAGE II』を発売予定。
いっちー
学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。某楽器販売店を経てリットーミュージックに入社。前職では楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。得意ジャンルはクラブ・ミュージック。日々試行錯誤中。