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- 2024/11/16
AMPEG / HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT
2019年のNAMMショウにて発表されたAMPEG HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVT。1969年の“Blue Line”と1970年代中盤に採用された“Magnavox時代”の回路をひとつに収め、真空管や入出力系統などをアップデートした記念モデルだ。同社の伝統と革新が凝縮されたこのアンプを、中村和彦(9mm Parabellum Bullet)がチェック! 50周年記念SVTのインプレッションと、彼の考えるアンペグの深淵とは?
HERITAGE 50TH ANNIVERSARY SVTは2020年8月7日(金)発売
伝統×革新が生み出す、普遍のベース・サウンド
1969年にアンペグが開発したSVT(Super Valve Technology、あるいはSuper Vacuum Tubeの略)は、300Wという大出力でベースに強大なサウンドをもたらし、ベース界に強烈なインパクトを与えた。その50周年記念モデルとして2019年のNAMMショウで発表され、近日発売予定の本機は、同社の頂点に君臨する、アメリカでデザインから生産までを行ない、最上級のコンポーネントを用いるHeritageシリーズの逸品である。青色のパネル表示から、通称“Blue Line”と呼ばれた1969年モデルの回路がチャンネル1に、1970年代半ばのMagnavox社時代の回路がチャンネル2に収められている。それぞれのチャンネルのインプット端子に接続して個別に使用するほか、チャンネル1と2のインプットをたすき掛けに接続することで、両者をブレンドして使うことも可能だ。さらにXLR DIアウトプット、プリアンプ・アウト、パワーアンプ・イン、スピコン・アウトプットなど現代ならではの機能を搭載するなど、“遺産”に慢心することなくモダンに進化した、究極のSVTと言える一台だろう。
50周年モデルを弾かせてもらってまず感じたのは、やはり音圧の凄まじさですね。チャンネル1は抜けの良いビンテージ感を、またチャンネル2には大人っぽくて扱いやすいニュアンスもあると感じました。正直、もっともっさりしているのかと……すみません(笑)。例えば自分が所有するSVT-VRと1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)を比べると、VRのほうが若干広いレンジを持っている印象があるんですね。1987のほうは立ち上がりがなめらかで、コンプレッション感がある。対して50周年モデルは、ふたつの良いところを絶妙に備えていて、“伝統×革新”というコンセプトがそういう部分に表われているのではないかと思いました。音の密度が高いというか、素晴らしい音像です。モダンな音楽にもしっかり適応できるだろうし、いろんな弾き方や、ピックアップ選択を始めとする多彩なサウンドメイクにもしっかり反応してくれると思います。
また、ふたつのチャンネルをリンクしてブレンドする鳴らし方は、自分のSVTでもやったことがあるんですよ。そのときは間に歪みペダルとミュート・ボックスをかませるというやり方をして。まあ、やってみたかっただけなのですが(笑)、ものすごい破壊力のサウンドで、ブッ飛びました。でも50周年モデルの場合は、みんなが思い描くアンペグ・サウンドに近いのかも。もちろんパワフルですけど、普段使いもできるドライブ感ですね。
改めてこのモデルを鳴らしてみて、もう素晴らしく気持ち良かったです。EQの設定もおいしいポイントの外には行かない感じで、よく考えられている。VRより使いやすくなっていますしね。
SVTを初めて鳴らしたときのことはいまだに忘れられない。未体験の機材って、つまみはだいたいフラットから始めるじゃないですか。だから音量を12時くらいにして鳴らしてみたら、もうガツーン!と想像以上の暴れん坊で。“あ、これがアンペグなんだ……”と、純粋に楽しい気持ちになったし、感動しました。一度それを体感すると、演奏すること自体が楽しみになる。そういう有無を言わせぬサウンド、それはアンペグにしかないですよね。
自分にとってアンペグとは、王道であり、常に攻めているアウトローなイメージがあります。いろいろなモデルを使ってきましたが、最初に所有したのはSVTの1987 LIMITED EDITIONなんですよ。鳴らしてみて、一発でこれだな!と。SVT PROシリーズはどちらかと言えば優等生の印象があるのですが、1987のようにクラシックなタイプは攻めていて、タフな音。僕はそこが好きなんです。アンペグを鳴らすこと、レコーディングやライブでラインよりもアンプの音を基本とすること、そういう事実があるだけで自分の気持ちがアガるんですよ。音作り云々もそうですが、最終的には気持ちが大事じゃないですか(笑)。鳴らした瞬間に感動を与えてくれたし、それはきっとこれからも変わらない。音楽にとってそこが第一なんだということが、僕のなかでのひとつの答えです。
本記事は、リットーミュージック刊『ベース・マガジン 2020年4月号』の特集記事を一部転載したものです。表紙巻頭特集はAmpeg ━━王道の理由。ユーザー・インタビューとしてJ、磯部寛之 ([Alexandros])、三浦淳悟のほか、座談会やアンケートなど、多数のベーシストが同ブランドへの愛を語ります。さらに現行ラインナップの魅力に迫るダウンロード音源なども収録! 加えて、東京スカパラダイスオーケストラ特集のほか、“黒く弾く!”奏法特集、好評連載の数々など盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!
中村和彦
なかむらかずひこ●1984年4月24日生まれ。9mm Parabellum Bulletは2004年3月、横浜にて結成。『Gjallarhorn』(2005年12月)、『Phantomime』(2006年9月)という2枚のミニ・アルバムをインディーズ・レーベルよりリリースしたのち、2007年Debut Disc『Discommunication e.p.』にてメジャー・デビューした。これまでに8枚のアルバムを発表。結成15周年を経た2020年も、全国ツアーを始め精力的に活動する予定となっている。