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- 2024/11/16
ループ・スイッチャー
エフェクター・ファンのバイブル『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。最新刊Vol.47は、ペダルボードにまつわる問題のソリューションとして欠かせない「ループ・スイッチャー」を大特集。ここではその中から現行最新モデル7機種をピックアップしてみた。ループ・スイッチャーは、特にライブ・ステージに立つギタリストにとって、足下を使いやすく整理することは演奏の出来にも影響する重要事項。ぜひ購入の参考にして欲しい。
一口に「ループ・スイッチャー」と言っても、モデルごとにさまざまな機能を有しているがゆえ、“スイッチャーとはこういうものである”と説明するのは、意外に難しい。一般には、8ループ程度を装備する横長のタイプをそれと認識している感も強いが、2ループ程度の小型モデルもスイッチャーの仲間であるし、MIDIを介してステージ照明まで管理できるプロ仕様の超ハイテク機までもが存在する。要はユーザーが自分の演奏環境に合わせて最適なモデルを見つけ出すことが、間違いのないスイッチャー選びにつながるわけだ。
ここでは、“Chamaeleo Tail Loop Mk II”を例として、ループ・スイッチャーの基本をいま一度確認しておこう。
ペダルボード内のオーディオ・ルーティング+αに特化した人気モデル。あえてMIDI機能を持たず、初心者にもわかりやすいシンプルなインターフェイスでありながら、ハード面は“Mk II”になってさらに現代的に使いやすく強化されている。
直列ループとは完全に切り離された独立式の1ループ。ペダルボード内のオプション・ループとしてだけでなく、AB分岐もしくは2入力のセレクターとして、さらにはアンプのセンド&リターンに繋ぐエフェクター用に使用したりと、セッティングの幅を大きく広げることができる。同モデルのようにNO/NCのラッチ信号を送信できるものもある。
チューナー・アウトへ信号を送るためのスイッチ。“Chamaeleo Tail Loop MkII”では、オンの時にはループ以降への信号はすべてカットされる。こうしたミュート機構は曲間などの静粛な場面でノイズを抑制するのに有用だが、機種によってはチューナー使用時に音が出る(ミュート機能は別途)ものもあるので注意が必要だ。
エフェクターへ送られる“SEND”と信号が戻ってくる“RETURN”で1セット・ループを構成。通常、ループをオフにするとリレー回路によって内部バイパスされ、オーディオ信号がエフェクターを通らず最短距離を流れるようになる。スイッチャーにはそうしたループがいくつか直列に配置されており、別名「シリーズ・ループ」とも呼ばれる。
パッシブのピックアップから生まれるハイ・インピーダンス信号を、ノイズに強いロー・インピーダンスに変換するバッファ機構。写真のように独立したバッファ用のイン&アウトがあれば、ループ内の任意の場所に組み込むことも可能だ。“Chamaeleo Tail Loop MkII”では、音質に定評のあるBJF設計のバッファを採用。
複数のループのオン・オフを同時に切り替えられるよう、あらかじめ本体に記憶させておく「プリセット」。メモリーの階層を切り替えることで、新たなプリセット・リストを呼び出せる「バンク」。対になるループをシンプルに切り替えるだけの「ダイレクト・モード」を持つ機種もある。オート・メモリーでは上書き防止のプリセット・ロックが重宝する。
プログラマブル・スイッチャーの場合、基本的にフット・スイッチはすべて電子スイッチだが、踏みしろ、クリックの有無、角度などはモデルによって個性が分かれるので自分に合ったものを選択したい。プリセットの呼び出しだけに限らず、MIDIなどを使う場合は数値入力のコンソールを兼ねるなど、複数の機能を割り振られている場合も珍しくない。
[Specifications]
●ループ数:5(4シリーズ・ループ、1セパレート・ループ) ●最大プリセット:15(3バンク×5プログラム) ●MIDI機能: ナシ ●スイッチ:Bank(Direct)、PGM1/L1、PGM2/L2、PGM3/L3、PGM4/L4、PGM5/L5、L1、L2、L3、L4、L5、Mute/TunerOut、Unlock/Lock ● 端子:Buf In、Buf Out、Nbuf In、Tuner、S1、R1、S2、R2、S3、R3、S4、R4、Out、In5、Send5(NC)、Return5、Out 5(NO)、9VDC Outlet×6●サイズ:440mm(W)×63mm(D)×54mm(H) ●電源:9VDC ●価格:open price(問)info@lep-international.jp / LEP INTERNATIONAL
[Specifications]
●ループ数:5 ●最大プリセット:200 ●MIDI機能:アリ ●スイッチ:1、2、3、4、5、Bank、Mute、Edit、Write、-、+、Display/Exit、Enter、◀、▶ ● 端子:Input、Tuner、1(Send/Return)、2(Send/Return)、3(Send/Return)、4(Send/Return)、5(Send/Return)、Output、Ctl 1/2、Ctl3/4、Exp Ctl 1/2、MIDI Out/Thru、MIDI In ● サイズ:337mm(W)×97mm(D)×68mm(H) ●電源:9VDC●価格:open price(問)050-3101-2555 /ローランドお客様相談センター
“ES-5”は上位機種“ES-8”の基本性能はそのままに、コンパクトに仕上げられた5ループ仕様のプログラマブル・スイッチャー。音質の変化が少ない回路設計が施されているようで、ピュアなギター・サウンドが得られるとの印象を抱く。もちろん機能面も充実していて、ペダルボードを管理する中枢として設計されたことがうかがわれる。各ループのコントロールはもちろん、接続順序を入れ替えたり、複数のエフェクトを並列でミックスできるなど、自由度の高いセッティングを実現する。また、メモリー機能を持たないBOSS “DD-8”(ディレイ)などのディレイ・タイムをパッチのBPMに同期させたり、リモート機能搭載のエフェクターの動作やアンプのチャンネル切り替えなどをワン・アクションで制御可能なので、より演奏に集中できるシステムの構築が期待できそうだ。
ユーザーの使用機材や演奏スタイルに、細かくアジャストできる配慮が盛り込まれているのもありがたい。エフェクター側の設定を固定したまま、パッチごとに音量レベルを7段階で切り替えられたり、インプット&アウトプット・バッファのオン・オフが設定できる点は、音作りの利便性向上に大きく貢献するはず。また、パッチ切り替え時に空間系のフィードバック音などを残せる「キャリー・オーバー」機能はもちろんのこと、パッチ・チェンジをスイッチを踏んだ瞬間にするか、離した瞬間にするかの変更さえ可能と、ユーザーの個性に合わせたカスタマイズが可能になっている。
MIDI機能も充実していて、MIDI搭載モデル(BOSS“MD-200”など)へMIDI CC、PC信号を送信することによって、使用エフェクトのタイプ(コーラス→トレモロなど)や各パラメーターの変更にも対応。加えて、これらの設定をPCおよびMac用の専用エディターで行なえば、全体を俯瞰しながら快適にエディットできる。
本機は、ペダルボードをできるだけ小さくまとめつつ、機能面には妥協したくないというわがままなユーザーにこそオススメできる逸品と言って過言ではないだろう。(中野 豊)
[Specifications]
●ループ数:5●最大プリセット:360(60バンク×6プリセット)&1グローバル・プリセット ●MIDI機能:アリ ●スイッチ:1、2、3、4/Tap、5/▲、Mode/▼ ● 端子:In、BufIn、Tuner、Snd1、Rtn1、Snd2、Rtn2、Snd3、Rtn3、Snd4、Rtn4、Snd5、Rtn5、F1/F2、Out、Buf Out、MIDI Out/Thru、MIDI In ● サイズ:256mm(W)×96mm(D)×68mm(H) ●電源:9VDC ●価格:open price(市場想定税別価格:¥38,500前後)(問)pedal@allaccess.co.jp /オールアクセスインターナショナル
コンパクトな筐体サイズながら、ギター・システム内で使用するフル機能のMIDIとフレキシブルなオーディオ・ルーティングを両立するミュージコムラボの“EFX”シリーズ。そのラインナップ中、“EFX-ME”は最も簡易的なオーディオ・パートを組み込んだ省スペース設計のモデル。上位機種である“EFX MK-V”や“EFX-LE”のようにステレオ・サウンドを扱ったり、内部でループを自在に入れ替えたりすることこそできないが、5つのループの前後には定評のある同社オリジナルのナチュラル・バッファを装備し、音質的な妥協は一切ない。好評の「スピル・オーバー機能」(ループの1つに内蔵ミキサーをアサインすることで、プリセット・チェンジの時にその前段にあるディレイなどの残響を残す機構)や、レコーディングなどで障害となるスイッチ・ノイズ(メカニカル・リレー部分のポップ・ノイズ)を軽減する「クリック・レス回路」など、厳選された必要最低限の性能はしっかり維持されており、むしろシンプルに使える分、現場での直感的な利便性は向上している。
一方で、MIDIを含めた制御系のコントロールは上位機種とほぼ同等とも言える多機能ぶりで、PC、CC、エクスプレッション・ペダル用の連続CCなどの送信に加え、MIDIクロックによる同期や、専用のTRS出力端子による2系統のアンプ用ファンクション・スイッチングといった外部機器との連携を想定したリンク機構の充実ぶりが目を引く。そうした機能を生かした複雑なプリセットの構築に、コンピュータ上で動く専用エディターを活用できるのも利便性が高い。限られた数のアナログ・エフェクターは使用しつつも、EVENTIDE H9のような高度なデジタル・デバイスに比重を置いた音作りをしたい、あるいは、ステージの規模に応じてさまざまな種類のアンプやスタジオ・プロセッサーと組み合わせる場面においても、常に操作性の変わらない最小のコントロール・コアを維持したい……そんなプレイヤーにとっては、本機がマストの選択肢だろう。(今井 靖)
[Specifications]
●ループ数:4 ●最大プリセット:20(5バンク×4パッチ) ●MIDI機能:ナシ ●スイッチ:Mute(Tuner)、PGM-A/L1、PGM-B/L2、PGM-C/L3、PGM-D/L4、Bank+、Store、Edit(Mode)●端子:In、Tuner、S1、R1、S2、R2、S3、R3、S4、R4、Out、9V DC Outlet(100mA×2、300mA×2、500mA×1[※総電流容量=2,000mA])●サイズ:336mm(W)×76mm(D)×46mm(H)●電源:12VDC●価格:¥22,000(税別)(問)03-6240-1213/フックアップ
ハイ・エンドな国産ギター・シールドの老舗メーカーであり、近年ではペダルボード用電源の“Power Carrier”シリーズを展開するブランドとして広く認知されているバイタル・オーディオの、初となるスイッチャー。「Encounter(出会い)」と名付けられたこのモデルは、MIDIなどの複雑な機能を潔く取っ払うことで、プログラマブル・スイッチャーとしてのごく基本的なオーディオ・ルーティング機能のみを集中して使えるようにしてあるのが最大の特徴だ。ループはシリーズの4ループのみで、この手の製品としては珍しくノン・バッファ仕様であるあたりに、シールド・メーカーとしての自負を感じる。スイッチャーに付属するものを安易に使用するよりも、バッファそのものの必要性や音質を自身で考え選択することで、システム全体の音色をより自分好みに近づけることができるからだ。フット・スイッチは流行りの2段設置を避け、あえて横並びの一列形態を採用。たとえ複数のスイッチを踏んでしまうようなことがあっても、1つ目のスイッチが降りている間は2つ目のスイッチが反応しない構造になっているため、誤作動を気にする必要は皆無。スイッチングに余計な神経を使わなくて良いわけだ。
そして、特筆すべきは同社のパワー・サプライと同等のノウハウを取り入れた、エフェクター用9V電源の供給部。各ポートは本格的なパワー・サプライ並みに安全性の高いショート・プロテクション回路を搭載し、さらにすべての出力が電気的に完全に絶縁されているのだ。スイッチャーに内蔵されている付属電源で、ここまで完璧にアイソレーション仕様にこだわった製品はほぼ類がない。電源ノイズに対する知識のまったくない初心者でも、チューナーやデジタル・エフェクターをストレスなく使えるメリットは想像以上に大きいはず。
スイッチングや電源トラブルに気を散らされず演奏に集中することのできる、シンプルかつバランス良く洗練されたこの扱いやすさ、それこそが本機の持つ最大の魅力だ。(今井 靖)
[Specifications]
●ループ数:4 ●最大プリセット:40●MIDI機能:アリ●スイッチ:1、2、3、4、5、6、Buffer●端子:Input、Tuner、Loop1(Send、Return)、Loop2(Send、Return)、Loop3(Send、Return)、Loop4(Send、Return)、A/B、Output、MIDI In、MIDI Out/Thru、USB ●サイズ:403mm(W)×56mm(D)×48mm(H)●電源:9VDC●価格:open price(市場想定税別価格:¥24,800前後)(問)pedal@allaccess.co.jp/オールアクセスインターナショナル
Hotoneの“Cybery”は4ループ仕様のスイッチャー。本機の目玉機能は、Bluetoothで接続する専用アプリ(iOS、Android対応)での設定に対応することだろう。設定操作をアプリに任せる前提だからか、本体のスイッチ類は極力省かれており、一見するとプログラマブルには思えないほどシンプルなデザインに仕上がっている。
円形LEDに囲まれた6個のフット・スイッチの踏み心地はスムーズで、比較的ソフトながら踏み込んだ重みもしっかり感じられる、ちょうど良いあんばいの感触。スイッチング時のノイズも抑えられており、特にバッファをオンにした際には非常に静かなスイッチングを実現する。スイッチング・モードは「ダイレクト」と「プリセット」の2タイプを用意。前者は各ループのオン・オフを直接操作する方法で、それに対して後者はアプリ内で設定したプリセットを切り替える方法だ。モードの切り替えはアプリで選択するか、本体のフット・スイッチを押しながら電源を入れて選択する。演奏中のモード切り替えには不向きだが、それが不要であればむしろ扱いやすいと言えるだろう。
静音設計が施されているのでオン・オフ可能なバッファは軽視されそうだが、これが意外にも効果的。わずかに高音域が際立ち、コードの分離感も増してトーンの印象を明るくする。長いケーブルによる高域の劣化を防ぐ対策としてはもちろん、音作りにも積極的に利用できそうだ。また、ダイレクト、プリセット・モード共に各フット・スイッチごとに最大3つのMIDIメッセージを“MIDIOUT”から送信できる。“MIDI IN”は外部からのコントロール機能は持たないが、2台の“Cybery”を連結する際に使用。連結すれば合計8つのループを管理できるようになり、システムの規模に応じて拡張可能だ。
奥行きをコンパクトに抑えた形状はペダルボードを圧迫せず、レイアウトの余裕につながるはず。プログラマブルでありながら省サイズを実現してある点が何よりもありがたい。(Jake Cloudchair)
[Specifications]
●ループ数:3●最大プリセット:120●MIDI機能:アリ●スイッチ:A(Mode)、B、C(Save)●端子:Input、L1 Snd、L1 Rtn、L2 Snd、L2 Rtn、L3 Snd、L3 Rtn、Output、USB、MIDI In、MIDI Out ●サイズ:660mm(W)×360mm(D)×120mm(H)●電源:9VDC●価格:open price(市場想定税別価格:¥24,500前後)(問)03-6804-1681/ミックスウェーブ
ディザスター・エリア・デザインがラインナップする“DPC.Micro”は、コンパクトなボディが魅力のプログラマブル・スイッチャーだ。一般的なエフェクターとほとんど変わらない大きさ・重量でありながら、3つのループとMIDI端子(OUTはTHRU専用)を備えている。これまでプログラマブルでMIDIも扱えるスイッチャーとなると、5ループ以上の大型機がほとんどであったため、コンパクトで機能的なペダルボードを構築したい人にとって本機は有力な選択肢となるだろう。
“DPC.Micro”には2つの動作モードがあり、個々のループを個別にオン・オフする「ループ・モード」から、“A”のスイッチを長押しすることによって、あらかじめループの組み合わせを記憶しておく「プリセット・モード」へ移行する。本機には液晶画面がなく、すべての設定はフット・スイッチで行なうのだが、長押しによる操作はとても直観的で、一度覚えてしまえば複雑になりがちなプリセットの登録もスピーディに行なうことができそう。また、“DPC.Micro”は柔軟なMIDI接続も魅力の1つ。MIDIによって最大4台までの“DPC.Micro”を同期することができるので、将来的により多くのループが必要になった場合でも簡単に拡張することができるのだ。よって、3ループしかないのは不安という人でもためらわずに導入できるだろう。現在メインで使っている別のプログラマブル・スイッチャーとMIDIで同期することもできるので、ループ数の拡張を目的に導入するのもアリかもしれない。
なお、3つのループはすべてトゥルー・バイパスとなっており、ループに何も接続しない場合は、内部で自動的にバイパスされる。これにより、空のループをオンにしたら音が出なくなった、というトラブルも皆無だ。近年は機動力を重視して、コンパクトなペダルボードを構築するのがトレンドの1つとなっているが、“DPC.Micro”はまさにそんなプレイヤーにピッタリなアイテムとなるだろう。(BENIMARU)
[Specifications]
●コントロール:Boost●スイッチ:Loop1、Loop2、Boost、Both、A/B●端子:Input、Loop1 Send、Loop1 Return、Loop2 Send、Loop2 Return、Tuner Output、Volume EXP、Output A、Output B●サイズ:57.15mm(W)×120.65mm(D)×143.51mm(H)●電源:9VDC●価格:open price(市場想定税別価格:¥34,000前後)(問)0570-056-808/ヤマハミュージックジャパン
本機は2ループ仕様というシンプル・タイプながら、実はエフェクター好きのツボを押さえたさまざま機能が搭載されている高機能・高音質な製品だ。まず2ループのスイッチャーとしては、バッファなしの“LOOP 1”、バッファありの“LOOP 2”を備え、どちらも独自の“Flexi”スイッチ(普通に踏めばラッチ式、長押しするように踏めばアンラッチ式になる)を使える点がポイント。例えば、ペダルボード上のエフェクターを大きく歪み系(バッファなし)、空間系(バッファあり)で分けてループに組み、一括で管理できることはもちろん、複数のエグい歪みをまとめてアンラッチで一瞬だけ使うといった技も可能になる。さらに、2つのループの後に最大20dBまでブーストできる良質なブースターが搭載されており、この“BOOST”も“Flexi”スイッチで操作できるので、オブリガードを瞬間的に前に出すような使い方も可能だ。“VOLUME EXP”にエクスプレッション・ペダルを接続すればボリューム・ペダルとしても使え、ブースターと合わせて音量をコントロールできる幅は格段に広くなる。しかも、“VOLUME EXP”はバッファなしの“ LOOP 1 ”(歪み系に強い)の後に配置されているので、歪みの量は変えずに音量だけを変えるような使い方が可能だ。そして、ここにもバッファを搭載しており、音質の劣化を防ぐ工夫が施されている点など、いちいち「わかっているなあ」と感心させられる。
本機をABボックスとして見た場合、特筆すべきは“OUTPUT B”にアイソレーション・トランスを搭載し、“PHASE”スイッチで“OUTPUT B”の位相を反転できること。というのも、AとBを切り替えてアンプを使用している分には良いが、“BOTH”で2台を同時に鳴らすと位相の問題が発生する恐れがある。その時に、“PHASE”が威力を発揮するのだ。
本機は、外観を含めてスイッチャーとしては異色だが、ペダルボードをコントロールする中枢として実によくできた1台である。(井戸沼尚也)
機能面を考えると、スイッチャーを導入するメリットは数限りなく思い浮かびます。まあ、今号ではその辺りを誌面で延々と解説しているわけですが、実はそんなことよりも大事なポイントがあるんですよ。それは「足下にスイッチャーがあるとかっこいい」という単純な事実。それこそがスイッチャーを使い始める最大の動機なんじゃないでしょうか。
想像してみてください。自分の足下で何色ものLEDがピカピカと光り、セッティング情報が数字や文字によってリアルタイムで更新されるわけです。そうなると、あなたのペダルボードは最早エフェクターの詰め合わせではありません。高度に構築された「サウンド・システム」なのです。そんなシステムを統率するスイッチをタイミングよくパーンと踏み替え、音色を自在に切り替えながら演奏する自分の姿を想像すると、気持ちがアガらずにはいられないですよね。
試しに、その華麗な所作をスタジオの鏡にうつしながら演奏してみてください。「スイッチャーを操っているつもり」で構いません。あなたの全身の隅々にまで今まで知らなかった快感が広がったのではないですか? ああ、それこそがエクスタシー。自分の中に眠っていたナルシストが目を覚ました瞬間です。その様子を見て、第三者はあなたを馬鹿にするかもしれません。でも、いいんです。まったく問題ありません。むしろギタリストは積極的にナルシストであってください。我々は、自分が演奏する姿に酔ってこそポテンシャルが発揮される罪な生き物。酔えば酔うほど美しくなるんです!
足下にスイッチャーがあれば、自分の才能をいつでもスイッチ・オンできるようになるのは間違いありません。さあ、全世界のギタリストたちよ、スイッチャーを手に入れて、その身に眠っている本当の自分を解放しましょう! (下総淳哉/THE EFFECTOR book)
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book Vol.47 HIGHLY CONVENIENT SPRING ISSUE 2020』での特集企画「現行スイッチャー試奏レビュー」を転載したものです。One Control、Vital Audio、FREE THE TONE、Studio Daydream各メーカーのインタビューをはじめ、EarthQuaker Devicesの大特集など、見どころ満載だ。本記事とあわせてぜひご一読いただきたい。
項数:112P
定価:1,800円(税別)
問い合わせ:シンコーミュージック
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