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- 2024/11/16
HISTORY HS-PJ4/HS-PB4
宮下智氏によるHISTORYの新ラインナップのベース・デモ&解説の第3弾。今回はシンプルなパッシブ仕様を代表するモデルとして、より強くビンテージを意識する方向性にリニューアルを果たしたHS-BJ4とHS-BP4をチェックしていこう。
2ピックアップ・タイプのHS-BJ4は、ディンキー・サイズのボディを採用したHGシリーズとは異なり、標準サイズのボディになっている。HS-BP4のボディも、このスタイルの楽器の標準的なサイズを採用している。
ネックにはHISTORYではおなじみのヘリテイジ・ウッドのメイプルを採用。北米の厳しい気候で育った年輪の細かいメイプルが、伐採して運搬する際に水底に沈み、そのまま200年ほど経過する間にバクテリアが導管内の不純物を除去したことで、安定度が高くて音響特性にも優れているという、ネック用としてはまさに理想的な材である。指板のグラナディロは、ワシントン条約で国際間の取引が一時期停止されたローズウッドの代わりに採用された材だが、1960年代中盤あたりのビンテージの指板に使用されていた比較的明るい色合いのブラジリアン・ローズウッドを想起させる。
フレッティングにはHISTORYブランドでは25年以上の実績を持つCFS(サークル・フレッティング・システム)を採用しており、とりわけ4弦のロー・ポジションの明瞭な音程感に寄与しているという。指板の曲率は、HGシリーズ4弦モデルの305mmRよりも大きく250mmR、フレット数も20、そしてチューナーもGOTOH製のGB2を採用し、ビンテージ・スタイルを意識した仕様だ。また、ボディとネックの塗装はラッカーで、しっとりとした上品な質感に仕上げられている。なお、ネックとボディのジョイント部分は、高音弦側を斜めにカットするファスト・アクション・ジョイント方式を採用し、ハイ・ポジションの演奏性を改善している。
電気系も基本的なコンセプトはビンテージ仕様だが、ピックアップはコイルの巻き数をやや増やして、ロックなどのモダンな音楽にも対応できるようにチューニングしたオリジナルのものを採用。コントロール系のほうはCTSのポットにオレンジ・ドロップのキャパシタ、クロース・ワイヤーのケーブルと、定番のパーツが選択されている。また、ブリッジも折り曲げ式プレートにスパイラル・サドルという、シンプルなビンテージ・スタイルだが、KTSのチタン製のものを採用している。
以上のように、両モデル共にビンテージを強く意識しながら、ファースト・アクション・ジョイントの採用や、フレット端末仕上げのなめらかさ、無漂白の牛骨ナットの溝切りなどに見られるセットアップの丁寧さなど、演奏性も含めて細かい部分まで磨き上げられているのが特徴だと言えるだろう。
なお、カラー・バリエーションとしては両モデルともに3TS(3トーン・サンバースト)とBLK(ブラック)が選択できるが、HS-BJ4ではそれに加えてVWH(ビンテージ・ホワイト)と、ボディ材にアッシュを使用したナチュラル仕上げのHS-BJ4/ASHも用意されている。
最後にもうひとつ、楽器に付属するギグ・バッグについてだが、防水タイプのジッパーの開閉位置やポケットのサイズ、ストラップの位置や形状、ゴム底の位置、保護パッドを含めた構造など、あらゆる点で非常に完成度が高いのも特筆すべきだろう。ぜひ単品販売してほしいと思うほどの優れモノである。
HGシリーズもそうでしたが、弾いていてとにかくピッチが良いのがありがたいですね。ハイ・ポジションでソロを取った場合でも、本物のビンテージではこうはならないというか(笑)。全体のバランスもとても良いので、フレーズの表現もしやすいですね。ネックはわずかに太目な感じで、しっかりしたサウンドにも貢献していると思います。実を言うと、HS-BJ4は仕事のツアーで実際にも使っているんですが、PAにラインで送った時の音抜けも良いし、僕はフロントPUの音が好きで、ほとんどフロントばかり使っている感じですが、HS-BJ4のフロントも「えいやっ!」と気合を入れて弾くと、ゴリッとした感じがちゃんと出るんですよね。その一方で、スラッピングすると、パッシブでありながらパリッとしたサウンドも出るし、ポップスなんかにもよく合うキャラクターなんじゃないでしょうか。
HS-BP4もモロにビンテージという感じではないので、今の音楽をやるには使い勝手が良いでしょうね。前モデルはPJスタイルの2ピックアップ仕様でしたが、PJだとツー・フィンガーでもピック弾きでも、ちょうどピッキングのスイート・スポットのところにリア・ピックアップがあって、気になることがあるんですよ。でも、HS-BP4は潔くPタイプが1個の仕様になったので、気兼ねなくスイート・スポットをピッキングできるし、存在感のあるサウンドがポップスの現場でも強みになるでしょう。どちらも良い材を使っているので、じっくりと鳴らし込んでいく楽しさも味わえそうだし、フラット・ワウンド弦を張ったり、ブリッジのところにスポンジをはさんでミュートしたりと、いろんなサウンド作りを試してみるのも良いと思います。
価格:¥180,000 (税別)
価格:¥180,000 (税別)
価格:¥190,000 (税別)
宮下智(みやした・さとし)
東京都出身。武蔵野音楽学院卒業後、ベーシストとしてプロ・ミュージシャン活動を開始する。4弦ジャズ・ベースというスタイルであらゆるプレイ・スタイルを弾きこなすマルチな実力は、国内外から高い評価を受けている。これまでにEXILE、RIP SLYME、ゴスペラーズ、MISIA、上戸彩、片瀬那奈、TRF、globe、V6、嵐、奥村愛子など、さまざまなアーティストのレコーディング・ライブを行ない、音楽シーンに多大な影響を与えているベーシストの一人である。また最近では声優の今井麻美、原由美のレコーディング・ライブや教則本の執筆など幅広く活動している。