“ドリフトウッド・シリーズ”とは？

　“ドリフトウッド”とは流木のこと。木材は導管の多い年輪部分は柔らかく、導管の少ない木質部分は堅い性質があり、長い年月をかけて川のなかを移動する流木は、水や水中の小石などとの摩擦によって杢目に沿った凹凸ができ、独特の質感を持つのだ。このような流木のルックスと質感を再現したのがドリフトウッド加工である。また、導管部分は塗料が染み込みやすく平坦な塗膜が作りにくいため、通常の塗装では目止め材などを塗布して目止め作業をするのだが、ドリフトウッド・シリーズはあえて目止めをせずに杢目の質感を生かし、さらに導管部分に異なるカラーを加えることで、より一層杢目の風合いを生かす仕上がりとなっている。

ドリフトウッド・シリーズのボディ表面。杢目の凹凸を生かしたまま塗装が施されている

AMAZE-AS/M Driftwood Series Blue w/Black Filler

AMAZE-AS/M Driftwood Series Blue w/Black Filler

AMAZE-AS/M Driftwood Series Blue w/Black Filler

　日本人の体格にマッチしたJBタイプの小振りなボディ・シェイプと高水準なサウンドを実現する、ESPの人気ラインナップAMAZEの新たなシリーズで、ドリフトウッド加工が施されたボディが大きな特徴だ。
　基本スペックは34インチ・スケール、21フレット仕様のメイプル・ネック＆指板、厳選された2ピースのスワンプ・アッシュ・ボディで、ESPカスタム・ラボによるオリジナルのシングル・ピックアップと3バンドEQであるESP製CINNAMONを搭載するアクティヴ・ベースだ。コントロールはヴォリューム、バランサー、トレブル、ミドル、ベースだが、ヴォリューム・ノブを引くとパッシヴになり、パッシヴ時はトレブルのカットのみが効く仕様となっている。

ピックアップはESPカスタム・ラボのJ-1を2基装備している。音はハイファイな特性を持ち、モダンなサウンドを持つアクティヴ回路とマッチする。また、パッシヴ時にもふくよかな低音を鳴らしてくれる

左からマスター・ヴォリューム（兼アクティヴ／パッシヴ切り替えスイッチ）、ピックアップ・バランサー、トレブル（パッシヴ時トーン・カット）、ミドル、ベース

　やはり特筆すべきはボディ表面の質感と独特の肌触りだ。木の持つ柔らかさや温かさがダイレクトに伝わってくる。アクティヴのJBタイプ・ベースらしい抜けの良さとクリアな音質が特徴的なモダンな音色なのだが、ドライ一辺倒ではなく何とも言えず有機的な音色の魅力があるのはボディ材によるところも大きいのだろう。
　CINNAMONによる3バンドEQの効果は的確で、ピックアップを含む楽器自体の素直な鳴りを無理なく引き出してくれる印象だ。パッシヴ時に効くトーン（トレブル・カット）も実用的で、パッシヴ・ベース特有のナチュラルな音作りを緻密に追い込めるのが嬉しい。
　独特の形状を持つピックアップ・フェンスは、ピックアップ・フェンスを常用しない筆者でも違和感なく演奏でき、スラップ時の優位性も理解できた。ESPの最上位ラインナップだけあって楽器の完成度も高く、フレット端の処理やネック・シェイプの仕上げなどがとても丁寧で触り心地も良く、とても弾きやすい楽器に仕上がっている。

ブリッジは堅牢なゴトー製404BO-4を採用。弦間ピッチは19mmで、裏通しも選択可能

アクティヴ回路にはESP製CINNAMONを搭載。ボディ背面のバッテリー・ボックスはワンタッチで開閉することができる

　ドリフトウッド・シリーズのカラーはBlue w/Black Fillerのほかに、White w/Black Filler、Black w/White Fillerがラインナップされている。

White w/Black Filler

Black w/White Filler

“バール・トップ・シリーズ”とは？

　バール材の“バール”とは、細菌の感染などによって樹木の根元にできる瘤状の部分で、木材として加工した際に複雑な杢目となって表われる。バール材の性質上、バール部分の割れや欠けが避けられず、ESPでは必要に応じてレジン（合成樹脂）を充填し、木材と融合させるハイブリッド加工を施している。また、バール材はその杢目を最大限に生かすため、バック材の表面の傾斜（エルボー・カット）に合わせてトップ材を曲げて貼り合わせる高度な加工技術＝ドロップトップ加工によってラミネートさせている。さらに、バール・トップの複雑な杢目をさらに生かす新規カラーの“Nebulaシリーズ”で仕上げられているうえに、クリア・ピックガードを採用することでバール材の魅力を最大限に発揮している。

バール・トップ・シリーズのボディ表面。複雑な杢目が新規カラーの“Nebulaシリーズ”とマッチしている

AMAZE-CTM-SL5/M Poplar Burl Nebula Pink Purple Burst

AMAZE-CTM-SL5/M Poplar Burl Nebula Pink Purple Burst

AMAZE-CTM-SL5/M Poplar Burl Nebula Pink Purple Burst

　こちらもAMAZEの新しいシリーズで、ボディはバック材のスワンプ・アッシュに5ｍｍ厚のポプラ・バールをトップにラミネートし、新規カラーの“Nebulaシリーズ”で仕上げたモデル。ボディ表面は鏡面仕上げかと思うほど艶やかで、ネーミング（Nebula:星雲）のとおりどこまでも奥行きがあるかのように深みのあるカラーと複雑な杢目が美しく調和している。
　ドリフトウッド・シリーズ、バール・トップ・シリーズとも4弦、5弦モデルがラインナップされているが、試奏したバール・トップ・シリーズは5弦モデルで、4弦より1インチ長い35インチ・スケールを採用しており、ローB弦のテンション感もほど良く、どの弦もテンション・バランスが取れていて演奏性も違和感がない。正直、35インチと言われるまで気がつかなかったほど4弦との差を感じなかったのは、ボディ・シェイプを含む楽器全体のバランスの良さも影響しているかもしれない。1弦から5弦まで音色のつながりも自然で、ワイドレンジな音質と音域をカバーできる道具としての実力も申し分ない。

ハード・メイプル・ネックは細めのUシェイプで仕上げられており、演奏性の高さを実現する

トラスロッドはネックをはずさずにネック・エンド部分で調整可能。ピックガードはボディ・トップのフィニッシュを生かすためにクリア・タイプを装備

　スケールとボディ・マテリアル以外の基本スペックはドリフトウッド・シリーズと共通で、ESP製CINNAMONの3バンドEQを搭載するアクティヴ・ベースである。基本的にはドリフトウッド・シリーズの4弦モデルと同じ傾向で、ハイファイ系のクリアでモダンな音質なのだが、こうして弾き比べてみると確かに違いがあるもので、バール・トップのほうがわずかにカラッとした明るい音色でスラップ向きという印象だ。ラミネート・ボディの特徴が音色にもよく表われているのだろう。

ピックアップはドリフトウッド・シリーズと同じくESPカスタム・ラボのJ-1を2基装備。リア・ピックアップは一般的なJBタイプ・ベースと比べるとブリッジ寄りに取り付けられ、はっきりとした輪郭のある音を実現する

ブリッジは堅牢なゴトー製404BO-5を採用。弦間ピッチは18mmで、裏通しも選択可能

　バール・トップ・シリーズのカラーはNebula Pink Purple Burstのほかに、Nebula Black Burst、Nebula Blue Burstがラインナップ。また、トップ材にバックアイ・バールを採用したNaturalも用意されている。

Nebula Black Burst

Nebula Blue Burst

Natural

本記事は、ベース・マガジン 2020年3月号にも掲載されます！

　本記事は、リットーミュージック刊『ベース・マガジン 2020年3月号』の特集記事を一部転載したものです。今月号の表紙は、デビュー30周年を迎えたDREAMS COME TRUEの中村正人。中村と同じくベーシスト、アレンジャー、プロデューサーとして活躍する亀田誠治との対談も収録！ そのほか、LUNA SEAのJ特集のほか、茨城のベース工房D’s design特集、今年1月に開催されたNAMMショウのレポートなど盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください！