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- 2024/11/16
エレキ・ギター(ジャンク)
ジャンク・ギターの修理をライフワークとする“こいち”による、ジャンク沼誘導連載第三弾。今回は、1990年頃にリリースされた「CASIO / PG-300」を修理する。カシオ計算機は、かつてDG-1やDG-20など独創的なギターを発表しており、本器(とその上位機種PG-380)も例に漏れず、当時としては画期的な音源を内蔵したシンセ・ギターであった。超魅力的な個体ではあるが、(文字通り)蓋を開けてみると、沼の住人ですらもおののきそうな作業が待っていた。
【注意】
ジャンク・ギターの購入、及び修理の際は、個人の責任において、細心の注意を払って行なってください。当コーナーで示した修理内容や方法はあくまで参考であり、あらゆる人と環境、ギターに適応するものではございません。ジャンク・ギターの購入、修理において万が一の事故が発生した場合も、こいち氏、及びデジマート・マガジン編集部、デジマートで責任を負うことは出来かねますので、何卒ご了承ください。
こいち
ジャンク楽器に目がない。壊れた楽器をパズルや知恵の輪としか見ていない。難題を解いた時の快感が忘れられず、ズルズルと今に至る。
助手
ブログ「こいち時間」の看板娘兼助手。楽器・機材の耳年増。ハンダづけされた部品を外す時に手伝ってくれたりする。
お出かけからの帰路にしてはわざわざ遠回りしてますね
なんかこうムズムズするというか、リサイクルショップに呼ばれている気がする
ふーん、このお店は楽器も取り扱っているのか
しらじらしい。このところ毎日のように通っているじゃないですか
この連載が始まったからこその積極的にジャンク・ギターを探しに行ける喜びよ
立ち寄る免罪符を手に入れてしまってタチが悪い
ということで買ってきました
連載の担当さんから購入可否の返信が届いてないのに……
いつ来るかわからない返信を待つ時間があるなら次のリサイクルショップに行ってしまうわ
もしダメだったらどうしたんですか
このコーナーにふさわしくないと判断されたとしても、個人的に弄ってみたかったので問題ない。形式として連絡はしてみたけどどっちに転んでも良かったかなと
なるほど、ジャンク・ギターが溜まるわけです
そもそもCASIOってギターを作っていたんですね。電卓や腕時計、シンセサイザー(カシオトーン)のイメージでした
そうそう、これはまさにシンセが内蔵されているエレキ・ギターなのよ
珍しく普通のSTタイプを買ってると思ったら……!
現状、どちらの音も出ないジャンク品だけどね
気になってネットで検索してみたら、レビュー記事より修理記事のほうが多いくらいに問題を抱えたモデルなんですね……
この手のマニアには有名な症状らしいし、修理情報もたくさんあるのでぜひ一度体験してみたかった
評判の例に漏れず、電源が入るだけでシンセの音は出ませんね
ボディの裏側がメカメカしくてかっこいい
これぞ文面通りの“エレクトリック・ギター”って感じがするな
まずは失敗しても記事として成立するようにエレキ・ギター部から修理しようと思います!
消極的な理由を声高らかにバラさないでくれ
この見るからに破損したピックアップ・セレクターを交換すれば、エレクトリックPUの音は出そうな気がしますね
この作業は求めていた“軽症のジャンク・ギター修理”という感じで良いぞ~
交換するパーツは元のパーツと同等品なので、難しいことは考えず同じようにハンダ付けし直しました
こういうのは交換前に写真を撮っておくと間違いがない
不調になったエフェクターのフット・スイッチ交換にも応用できますね
動かなくなると、うかつに分解しちゃう人も多いと思うけど、まずはメモしたり、写真に収めたりするのがジャンク修理で重要なことかもしれない
演奏面では持ち上がりすぎたトレモロ・ユニットが気になるので、ボディにベタ付けにしたいと思います
ほかの個体を確認するとスプリング5本が標準搭載っぽいですし、前のオーナーの好みで外したんですかね
アームも欠品しているし、弦高も下げたいし、ブリッジを浮かせている理由はないと判断します
せっかくなのでパワーのあるタイプのスプリングに交換してみた
同じ3本のスプリングでもトレモロ・ユニットがしっかりボディに密着しましたね
この時点でエレクトリックPUの音も出たし、弾きやすくなったし、普通のジャンク・ギターだったら、めでたく〆に入るわけだが
お待ちかね、シンセ部の修理に進みます!
故障の直接的な原因ではないけど、腐食していたバッテリー・ボックスも同等品に交換っと
もしシンセ部の修理に失敗したら無駄な部品になるひとつですね
何度も開け閉めするバッテリー・ボックスの蓋だけに鬼目ナットが埋め込まれているのが大変良い
もしシンセ部の修理に失敗したら二度と開くことのない部分ですね
そしてこれが修理に失敗したくないシンセ部の基板になる
ここからは「ジャンク・シンセでこいち時間」をお楽しみください
腐食具合はまちまちだけど、末期なものは少し触れただけで電解コンデンサーがポロポロと面白いように剥がれていくな!
誰が見てもこの状態で動作するとは思いませんね
ちなみにコンデンサー交換の経験は?
ギターのトーン・コンデンサーをいろいろなものに変えてみたり、ハイパスを追加してみたり、楽器を弄る人の嗜みとしてひと通りは経験しているつもりですよ(ドヤッ)
ふむふむ、それを32回繰り返してみようか
デジマート地下実験室でも数十個の交換でしたよ
こういう経験がのちのちの“やったことがある”というマウントを取れるようになるんだぞ!
ひ~!
元の付いていたコンデンサーの値やネットの海で得た回路図を参考に、手に入りやすい値で集めてみた
銘柄やサイズがバラバラなのもその時の在庫に左右されている感じですね
今回は基板をできるだけ傷めずにコンデンサー交換を行ないたいので、ハンダゴテは2本用意しました
これでコンデンサーの両端を温めて、浮いてきたところを私が取り除く流れになります
助手役は無理に用意しなくてもいいけど、ハンダゴテは2本あると嬉しいな
ハンダゴテより優先度が低い
シンセ基板は3枚で構成されているので気長な作業となる
極性があるのでテレコにならないように注意して、新しいコンデンサーに交換しまーす
元のコンデンサーより高さもあるので寝かせて配置するなどの工夫も必要だ
あとコンデンサーをひとつ取り付けたら両端の行き先へ導通しているかを、テスターで確認すること
赤い線はうまく導通していなかった箇所に追加したジャンパー線になります
つ、疲れた~!
文字にすると簡単ですけど、小さい部品の除去、清掃、新しい部品の取付、導通確認と作業は多いですね
成功の喜びを想像して最後までやりきるしかなかった
皆さんも、うかつに挑戦して同じ体験をしてほしいですね
苦労を分かち合おうぞ
シンセの音がすべての弦で鳴っている!
……楽しい、楽しい!
これは嬉しいですね!
喜びを分かち合おうぞ
ギターでいうなら実質32本分のトーン・コンデンサーを交換したと言っても過言ではない
もう普通のコンデンサー交換の記事じゃ満足できません
「コンデンサーを交換するとギターの音はどう変わるのか?」
音の出なかったものが出るようになります!
大正解!
きゃっきゃっ
(ゴソゴソ)
……?
ちなみにこれは自分が過去に手に入れたジャンクのカシオ・ギターだ
同じの持ってるんかい
違う違う! こっちのほうが初期に出た上位モデルだ。指板もエボニーだし、リア・ピックアップのハムバッカーはタップできたり、トーンも付いているんだぞ!
この流れは慣れてしまいました
同じのは音が出ないことくらいだ
これを機にこちらの修理も進めるんですか?
ひと通り体験してしまったので後回しかな~
ジャンク・ギターの在庫状況は変わらずですね~