AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Stage Piano
プロ・ミュージシャンの試奏やレビューを通して注目機種を紹介するキーボード購入ガイド。4つのキーボード・カテゴリに分けて紹介していく2020年版のパート2は【ステージ・ピアノ】にフォーカス。パート1に引き続き、石毛輝(the telephones/Yap!!!)、井上惇志(showmore)による試奏レビューとともに5機種をご紹介します。またキーボード・マガジン2020年冬号の巻頭特集「響く、ピアノ」と連動して、各機種の“ピアノ・サウンド”にも注目してみましたので、あなたにあった1台を探してみてください!
音源部分は、Piano、E.Piano、Subの3セクションで構成され、ヤマハ最高峰のグランド・ピアノ“CFX”をはじめとした表情豊かなサウンドを内蔵している。各機能にワンタッチでアクセスできる操作性に優れたインターフェースを採用。レイヤーやスプリットなども瞬時に設定でき、スピード感のある操作が可能となっている。
「鍵盤の弾き心地がすごくいいですね。高音から低音までしっかりと演奏できます。音色を変えた時に音切れしないことや、音色セクションごとに色が分かれていて視覚的に分かりやすいこと、ボタン1つに1機能で煩雑さがないことなど、ライブ用途をすごく追求していますね。ポップスのサポートやバンド編成の時にピアノ専用機としても使えそうです。あと、簡単に音作りをしてみたいという人にもオススメです。レイヤーも簡単にできますし、即戦力になるエフェクトもそろっていて、“自分の音”を作れそうです。操作が分かりやすいからとっつきやすいし、スキルが上がってきたら複雑な作り込みもできるので、ずっと使い続けていけそうです。初級者から上級者まで幅広く対応できる1台ですね」
各セクションにON/OFFスイッチを搭載しているため、ライブ中でも音色のオン、オフが瞬時にできる。さらに、2音色以上同時にオンにすることでレイヤー状態となる。
「手元に1番近いところにあるのがいいですね。ボタンとは違って縦の動きをするタイプのスイッチなので、ライブ中に操作をミスすることなくすぐ音色チェンジできそうです」
E.Pianoセクションにはビンテージ・エレクトリック・ピアノ・サウンドを中心とした音色を収録。セクション内にドライブなどのエフェクターが搭載されているため、直感的な音作りが可能。
「エレピの音色は好きですね。エフェクトも、ピアノ、エレピに必要なものは網羅しています。ドライブを入れるといい感じになって使いやすいと思いました」
「キャラクターがかぶらないグランド・ピアノの音色がライブ・セットにバランス良く配置されているので、自分好みのものを見付けられるんじゃないかなと思います。バンドなら“Imperial”にコンプをかけて使うと抜けが良さそうですが、ピアノ単体で弾くならやっぱり“CFX”ですね。高音の響きが良くて個人的にこの機種で1番好きな音色です」
PX-S1000 Demo:
奥行き232mmのスリムなデジタル・ピアノ。シンプルなデザインだが、音色に広がりをもたらすサウンドモードや、レイヤー/スプリット機能など、演奏機能も充実している。音域ごとの発音タイミングや発音の大きさをデジタル制御することで、よりピアノらしい演奏性を追求した1台。電池駆動も可能で、楽に持ち運びができる。
「僕は以前ハンマー・アクションでMIDIに対応した鍵盤が欲しくてPriviaシリーズのモデルを買ったのですが、ピアノの音がかなり良くなっている印象です。ビブラフォンの音色も好きですね。特に低音のピッチ感が絶妙で、エレクトロ音楽でも使えそうです。背面スピーカーからの音もいいですが、ライン・アウトした音も良かったので、ライブで使えると思います。奥行きがスリムなので、自宅用のピアノとしても、ちょっとしたスペースで置けそうです。余分なものを省いてすっきりしているのがスタイリッシュです。この赤いボディもかわいいですね。ユニークなのがこのタッチパネル。ボタンと鍵盤を組み合わせることで音色の切り替えなどができます。シンプルで、用途がはっきりしていていいですね」
サウンドモードを使用することによって、ホールシミュレーターやサラウンド効果を加えることができ、空間の広がりを生み出すことができる。プレイヤーの好みに合わせた設定も可能。
「ホールシミュレーターは4種類あり、その種類によって、音がより広がる感じが出て気持ち良く弾けます。コーラスやブリリアンスといったエフェクトも内蔵しています」
音色の切り替えやサウンドモードの設定などの基本操作はすべてパネル上のタッチボタンと鍵盤で行う。タッチパネルは電源を入れるとLEDが点灯する、シンプルなデザインとなっている。
「LEDライトの感じがおしゃれですね。部屋を暗くして弾きたくなるというか、置いてあるだけでムーディーだなと。シンプルだけど、テンションが上がるピアノだと思います」
「“GRAND PIANO BRIGHT”は弾いていて楽しいですね。全体的に低音域の鳴りが気持ちいいです。背面スピーカーでも低音までしっかり出るのもまたいいところですね。“DIGITAL ELECTRIC PIANO 2”は懐かしいような、安らかな気持ちになります。ライブにも対応できそうですね。僕はソロ活動の時はピアノを弾くことが多いので使ってみたいです」
ステージ・ピアノのフラッグシップ・モデル。Nordでは初採用のトリプル・センサー鍵盤、グランド・ハンマー・アクション鍵盤を搭載し、トリプル・ペダルを付属するなど、グランド・ピアノに近い演奏性を追求している。基本機能はNord Pianoを踏襲。プリセットには10種類のグランドを含むピアノ音色を豊富に収録している。
「僕は普段Nord Electro 6Dを使っているのですが、Nordシリーズのデザイン性と単純明快な操作性は保ったまま、重厚感がある大人っぽい雰囲気になっています。鍵盤の質感やタッチが良く、グランド・ピアノを弾くようなテンションで思いきり演奏できそうです。操作パネルが平らではなく高さが付いたデザインになっているのも、ピアノに向き合うのと近い感覚にさせてくれますね。パネル・ロック機能があるので誤操作も防げます。エレピを弾いてもすごく気持ちいいです。カフェやアコースティックな空間で演奏するシーンも浮かびますが、大きいアリーナで弾くのも想像でき、用途が広いと感じました。普段生ピアノは弾くけどステージ・ピアノは弾かないという人も試してみる価値があると思います」
アイボリー・タッチの、グランド・ハンマー・アクション鍵盤を搭載している。鍵盤のダイナミック・カーブはライトからヘビーまで3段階あり、ワンタッチで切り替えることが可能だ。
「グランド・ピアノのように演奏できるので、普段の生ピアノに近いプレイができそうです。象牙調で手に吸い付くような感触も良く、タッチの重さを変えられるのも嬉しいです」
クラシックなコンパクト・エフェクターをモデリングした高品質ステレオ・エフェクトを搭載。ピアノ音色だけでなく、サンプル・シンセ・セクションにも割り当てることが可能となっている。
「今までのNordと共通のエフェクトも多く、サンプル・シンセも付いているので、バンドやサポートの細かいオーダーに応えたり、自分のイメージに近い音作りができそうです」
「“White Grand”は本物のグランド・ピアノのような弦鳴りが感じられる音色で、この機種のタッチとも合っています。“Bright Grand”は音が抜けるので、バンドや大編成のアンサンブルでも使えそうです。クラシック、ジャズ、ポップス、ロックなど、それぞれのジャンルに合う音色がありますね。細かい音場の調整もEQで簡単にできるのが便利です」
6種類のアコースティック・ピアノを収録した“SGX-2”、6種類のエレピを収録した“EP-1”、さらにはオルガン、シンセ音源と、強力なサウンド・エンジンを搭載したコルグのフラッグシップ・ステージ・ピアノ。日本製のRH3鍵盤を採用した演奏性の高い1台。2つの音色選択セクションがあり、同時使用でレイヤー/スプリットも可能。
「サウンド・エンジンが充実していますね。ピアノ音色はバリエーションが豊富で、特にバージョン・アップで追加された音色はイマジネーションを刺激されるものが多く、どれもクオリティが高い。シンセ音源も含め、音色の質が高い印象を受けました。操作もシンプルでライブ向きですね。任意の音色や設定を記録できるフェイバリット機能は十分な数が用意されていますし、音色をレイヤーしたい時は2つのセクションを両方オンにするだけです。エフェクトは、ディレイ音が左右に広がる“CROSS”が好きです。ディレイ・タイムがタップで調整できていいですね。アウトプットにXLR端子があるのは、現場でDIなしで直接PA卓に送れるのですごく便利です。木目調のデザインが気持ちを落ち着かせてくれますね」
ピアノ音色以外にも豊富な音色を多数搭載。リードやブラスを含むアナログ・モデリング音源の“AL-1”、クラビやFMピアノ、パイプ・オルガンなどを含むPCM音源の“HD-1”を内蔵している。
「“Lucky Bass”はMS-20で作ったようなベースの音ですね。これにタイムの速いディレイを軽くかければ即戦力のシンベになりそうです。オケヒットが入っているのも嬉しいです」
3バンドのイコライザーと、打鍵の強弱による音色の変化の度合いを設定できるダイナミクス・ノブを搭載。ライブの現場や演奏スタイルに合わせたサウンドの調整が可能となっている。
「EQはピアノに合わせて中域が少し高めに設定されていて使い勝手がいいですね。ライブで緊張して演奏がバラつきがちな人は、ダイナミクス・ノブで調整して弾くと良さそうです」
「1つ1つの音色のクオリティが高く、グランド・ピアノは特に素晴らしいです。ダンス・ミュージックで使えるピアノもあるなどキャラクターがはっきりしているので、目的に合わせた音色選びがしやすいでしょう。元の音が良いのでそのまま使えますが、例えば、“Berlin Piano Phaser”を選んでEQで中域を上げるとトレモロのような効果も出せます」
24ビット/48kHz、最長15秒のサンプリング素材をもとに、独自のアルゴリズムとモデリングで生楽器のサウンドを再現するT2L(True to Life)テクノロジーを採用。最大発音数は無限で、演奏時に発生するメカニカル・ノイズなども再現され、リアリティのある演奏ができる。エレピやオルガンなどステージで必須の音色を幅広く内蔵している。
「音色も操作性も個性的な機種ですね。鍵盤のタッチは割と重くてしっかりしています。見た目が派手なのでライブ向きのキーボードかと思いきや、操作性を含め、制作にも向いているかもしれないという印象を受けました。音色を4パート選べるほかにMIDIを4パートコントロールできる機能も付いているので、マスター・キーボードとして使うのにも良さそうです。パキッとした明るさがあって、キャラクターが立っている音色が多いように感じました。インターフェースがとても分かりやすいですね。エフェクトは直感的に使えて、効きも良かったです。ステージ・ピアノとして必要なものは十分すぎるくらいそろっています。ほかとは違ったサウンドを求めている人には特にグッとくると思います」
任意のコードを押さえたままボタンを押すことで、 そのコードを記憶し1つの鍵盤で弾くことができるCHORD FREEZE機能を搭載。本機ならではの印象的なパフォーマンスが可能となる。
「CHORD FREEZEはほかにはない面白い機能ですね。作曲や生演奏中に、いろいろなインスピレーションが湧いてきたり、いつもと違ったアイディアが出てきたりしそうです」
白と青のカラーリングが特徴的な本機は、イタリアにある自社工場の職人によって1台ずつ手作業で組み立てられている。シンプルなセクション分けがされていて、視覚的にも分かりやすい。
「イタリア製らしいスタイリッシュなデザインなので、どこに持って行っても注目されると思います。ライブで使ったら目立ちそうですね。操作しやすいレイアウトも魅力的です」
「ピアノ音色は、独特のキャラクターがあるので弾きこなせばオリジナリティのあるプレイができると思います。そういう意味では、ポップな曲を弾くのに良さそうです。“VIVO Live”は適度な抜け感もあって、バンドで合わせやすそうですし、制作に使っても極立つのではないでしょうか。アコースティックな曲には“Japan Grand”も合いそうですね」
本記事は、リットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2020年 WINTER』の記事を転載したものです。誌面では石毛輝、井上惇志へのインタビュー記事も掲載、各人のキーボード選びのポイントも紹介していますので、参考にしてみてください。
本号の特集では、“響く、ピアノ We need PIANO”と題して、日本のポピュラー音楽のピアノ・サウンドを検証。単体もしくはオーケストラとともに鳴らすピアノが、なぜポピュラー・ミュージックに採り入れられるようになったのか。日本の音楽に焦点を当てその経緯を探るとともに、ミュージシャンたちがそのサウンドをどのように響かせてきたかを検証します。ぜひ手に取ってチェックしてください!
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
石毛輝(the telephones/Yap!!!)
埼玉県北浦和出身。the telephonesをはじめ、Yap!!!やソロ、DJでも活動中。ソロ名義ではフォーマットにとらわれない自由な音楽を作り、活躍の場を広げている。昨年、the telephonesはメジャー・デビュー10周年の締めくくりとして12月15日(日)にZepp Tokyoでのワンマン・ライブを敢行。Yap!!!は12カ月連続配信リリース中。
井上惇志(showmore)
北海道岩見沢市出身。シンガー根津まなみとのユニットshowmoreのキーボーディスト/プロデューサーとして活動するほか、Shunské G & The Peas、Scarf & the SuspenderSの2バンドにも所属。またサポート・ミュージシャンとしてSIRUP、大比良瑞希、BASI(韻シスト)、UNCHAIN、変態紳士クラブ、s**t kingzなどさまざまなアーティストのプロジェクトに参加する。