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- 2024/11/16
Fender / NAMM Show 2020 New Model
世界最大の楽器の祭典=The NAMM Showは、会場であるアナハイム・コンベンション・センターで展示を見るだけで終わりじゃない! 一部のビッグ・ブランドがコンベンション・センター近くの会場を押さえ、独自のライブ・イベントを企画しているため、昼から夜までお祭り騒ぎできるわけだ。
そしてもちろんフェンダーも、そんなイベントをオーガナイズする楽器界のビッグ・ブランドのひとつである。今年のThe NAMM Showでは、Jammcardという会社とコラボレーションしたFender's “JammJam”を開催した。念のため補足しておくと、Jammcardはセッション・ミュージシャンのSNSみたいなもの。例えばとある場所でギグが決まったもののベースがつかまらず、“空いているベーシストはいないかなぁ”なんて時に、その近くにいるセッション・ベーシストを探せるサービスである。そして、そんなJammcardが主催するセッション・イベントが“JammJam”というわけ。
1月17日金曜日、会場はコンベンション・センターの目の前にある、ホテル・マリオットのボール・ルーム。The NAMM Showの本会場が閉まる頃、ステージを四方から囲むように設営された客席は観客で埋め尽くされていた。そしてJammcardの創業者であるエルモ・ロヴァトが登壇し、客席に起立をうながす。会場には期待感が充満し、エルモが呼び込んだフェンダーCEO、アンディ・ムーニーがイベントの開幕を告げた。
まず登場したのは若手随一のテクニックを持つ、マテウス・アサトだ。白のパーカーに柄物のスウェットというラフな格好で、プラズマ・レッド・バーストのAmerican Ultra Jazzmasterを手に登場! ピックアップはセンター・ポジションで、少しクランチ気味のコード・リフを聴かせる。ジャムならではの緊張感がありながらも、遊んでいるようなバンド・メンバーたち(ちなみにこの時のベースは、LA在住の日本人ベーシスト=Yuki Lin Hayashiだった)。アイコンタクトからドラム・ソロが始まるものの、ブレイクごとにグリッサンドやらチョーキングやらでマテウスがかなり目立ってくる……まぁこれもフェンダーのイベントなのでよしとしよう。ソロはさすがのひと言で、テクニカルなフレーズを織り交ぜつつも歌心満載のプレイを聴かせた。
続いて、マテウスのステージに乱入する形で、女性ロック・ギタリスト=ジーナ・グレアソンが登場。彼女も同じくAmerican Ultra Jazzmasterを手にしているが、カラーはモカ・バースト。コード・リフをマテウスとふたりでハモリながら、ブレイクで交互にギター・ソロを挟み込む。一気に会場は熱気を帯びて、次のアーティストへバトンが渡されたーー。そう、Charとichikaによるセッションだ。
Charとichikaによるセッションは、直前のリハーサル一発のみのほぼぶっつけ本番だったそう。しかもichikaはステージでのジャム・セッションは人生初! 孤高のギタリストにとって初めてのジャムは、レジェンド・ギタリストCharと、その場で決まった即席のバンドで行なわれた。
Charはプラズマ・レッド・バーストのAmerican Ultra Stratocasterを、ichikaはモカ・バーストのAmerican Ultra Jazzmasterを手に登場。サウンド・チェック中からベースのセクー・バンチとCharがアイコンタクトを取りながら、グルーヴィなプレイをさっそく披露し、期待が高まる。全員の準備が整うと司会から“フロム・ジャパン! レジェンド、Char & ichika!”と紹介され、会場が少し静かになったタイミングでichikaのJazzmasterからうっとりするほど美しく切ない情景が紡ぎ出された。世界が知る彼のタッピング・フレーズをイントロに、少しラテン風味のリズムでAm-D7のツー・コードが始まり、グルーヴィなパーティが始まる。
まずCharが挨拶代わりにワウを踏みながらichikaのコード・プレイに乗っかっていき、そのまま短い尺のソロをプレイ。Charがソロの出番を回すと、ichikaはタッピングを封じたプレイで応戦する。完全なアドリブで強靭なグルーヴをバックに弾いているのに、彼が描く音像には唯一無二の儚さを内包しているのが不思議だった。
Charがコール&レスポンスで会場のボルテージを上げまくり、その後ダブル・チョーキングを絡めたファンキーなギターから、ベース・ソロを指示する。超ソリッドなスラップ・ソロに触発され、ichikaがトレモロ・ピッキングを混ぜながら、ロックでグルーヴィなギター・ソロを弾き始める。タッピングを織り混ぜながら会場を盛り上げ、そのままCharとの掛け合いからリズム体を巻き込み、最高潮のグルーヴを保ったまま終演を迎えた。
その後、多くの有名ギタリスト/ベーシストが演奏を披露した。American Ultra Telecasterを抱えた気鋭のカントリー・ギタリスト、ダニエル・ドナートがセッション・リーダーを務め、ナサニエル・マーフィー、ゼイン・カーニーらとご機嫌なロックンロールをプレイ。その後、ダニエルが残る形でタイラー・ブライアントが入り、「ザッツ・オールライト・ママ」で会場を沸かせた。このステージでは、ダニエルはAmerican Acoustasonic Telecasterが、タイラーはAmerican Acoustasonic Stratocasterを使用。Acoustasonicのバンド・セットでのプレイはかなり参考になった。
女性ベーシスト、ニック・ウェスト、ニコール・ロウ、アナ・カリーナ・セバスティアオの3人によるファンキーなベースのアンサンブル、マーク・レッティアリとアリ・オニール、エイラ・テスラー・メイブによるAmerican Ultra Stratocasterによるギター・バトルなど、その後も盛り沢山の内容。ラストはベテラン、ケニー・ウェイン・シェパードによる圧巻の熱量を持ったブルース・ギターで幕を閉じた。
気鋭の若手から百戦錬磨のベテランまでが、フェンダー・ギターの名の下、一同に会する。世界最大のギター・ブランドだからこそ実現する、ギター/ベース好きには夢のようなイベントだった。
なお、イベントの模様はJammcardのオフィシャル・サイトでレポートされているほか、公式Instagramでも動画がアップされているので、チェックしてみよう!
また、このあとJammcardのYouTubeにて、オフィシャル動画がアップされる予定のため、続報を待たれよ!