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- 2024/11/16
Fender / American Ultra Telecaster & Jazzmaster
いつだってロック・ギター・サウンドの中心にはテレキャスターが存在する。60年代後半からエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、シド・バレットなどが、この無骨なギターを真空管アンプにプラグインして心地良いドライブ・サウンドを作り出してきた。また、カントリー・ギターと言えば50sスタイルのテレキャスター・サウンドなしには語れないし、邦楽のギター・ロックにもテレキャスターのミックス・ポジション・サウンドが欠かせないのはみなさんもご存知の通り。
そしてジャズマスター。58年に登場したレトロ・フューチャーなスタイルはその意図の通り、発売から50年以上経ってもなお多くのミュージシャンに愛されている。また個性的なのはスタイルだけでなく、そのサウンドも同じだ。当初のコンセプトである「ストラトキャスターの上位機種としてのジャズマスター」の通り、幅広いサウンド・バリエーションと力強いサウンドは年々人気を増してきている。そんなテレキャスターとジャズマスターのAmerican Ultraシリーズをご紹介しよう。このシリーズは2016年1⽉に発表されたAmerican Eliteの進化形ということになる(ジャズマスターはEliteシリーズのラインナップにはなく、今回新たに仲間入りを果たした)。
American Ultra Telecasterは、ビンテージ・テレキャスターと同じフォーマットにありながら、より一層洗練されたデザインが特徴となっている。新開発のウルトラ・ノイズレス・ビンテージ・テレ・シングルコイル・ピックアップを2基搭載。高出力でありながら繊細で、透明感のあるサウンドが印象的だ。ブリッジ・ポジションを選択してもキンキンとした高域が耳につかず、ストロングなシングルコイル・サウンドが楽しめる。ネック・ピックアップは通常のテレキャスターよりも出力があり、明るい音色に感じる。さらにS-1スイッチにより、ピックアップをミックスした際のサウンドをノーマル状態の「パラレル」か、より高出力となる「シリーズ」に切り替えが可能となっている。
ビンテージ・ギターの雰囲気も感じさせながら、現代的なプレイ・スタイルにフォーカスした新設計の“モダンD”ネック・シェイプを採⽤。ネックの肉付きは控えめでありながら、トップの厚みは持たせてあるので、音が薄くならない。確かにモダンなシェイプだが、ビンテージ・ギターから持ち替えても違和感はそれほど感じさせないだろう。手が小さい方でも弾きにくいことはないハズだ。
ボディにもアップデートが加えられている。ボディ・バックのコンターが変更され、より体へのフィット感を向上。さらにネック・ジョイントもスクエア・シェイプでなく、1弦側の角を落とすことで、ハイ・ポジションでの演奏性をさらに向上させた。
指板およびカラーリングは、ローズウッド指板がウルトラバースト、アークティック・パール、テキサス・ティーの3色。メイプル指板がウルトラバースト、モカ・バースト、バタースコッチ・ブロンド、プラズマ・レッド・バースト、コブラ・ブルーの5色。
American Ultra Jazzmasterは、シリーズ共通となるウルトラ・ノイズレス・ビンテージ・シリーズのジャズマスター・ピックアップを搭載している。そしてS-1スイッチにより、ピックアップ・ミックス時のサウンドを通常のパラレルからシリーズ・モードに切り替えることも可能。このサウンドはなかなかおもしろい。
また、おなじみの「スライド・スイッチ」もビンテージとは仕様が異なり、このコントロールを使用してフェイズ・アウト・サウンドを出力することができる。従来のジャズマスターにはない新しいアイディアで、さらなるサウンドメイクが可能となっている。
ネック周りはAmerican Ultraシリーズ共通となるミディアム・ジャンボ・フレットを装備した10~14インチのコンパウンド・ラジアス指板/モダンDシェイプを採用。こちらも新たにデザインされたコンター加工を採用したボディとの組み合わせが演奏性の向上に貢献している。ネックは触った瞬間に品質の良さがうかがえる。丁寧なネック・サイドの加⼯は演奏性もさることながら、音色や響き/サウンドにも重要なファクターとなるのはご存知の通り。3、4弦の音の太さからもそのあたりへのこだわりがうかがえる。
指板およびカラーリングは、ローズウッド指板がウルトラバースト、モカ・バーストの2色。メイプル指板がプラズマ・レッド・バースト、コブラ・ブルーの2色となっている。
フェンダーの伝統的な楽器の雰囲気を壊すことなく、見事に現代的なサウンド、プレイアビリティにチューニングされたAmerican Ultra TelecasterとJazzmasterは、かなりの実力を持っていると言える。これからフェンダーの楽器を手に入れようと思っているみなさんは、ぜひこのAmerican Ultraシリーズをチョイスしてほしい。ストレスもないトラディショナルなデザインと、そこに隠された現代的なアップデート。歴史あるフェンダー・ギターの素晴らしさに感動できるはずだ。
価格:¥265,000 (税別)
価格:¥275,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。