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- 2024/11/16
Fender / American Ultra Precision Bass & Jazz Bass
2019年11月に発表されたAmerican Ultraシリーズは、フェンダーの伝統と最先端の技術が融合した最進化シリーズだ。2016年に発表されたAmerican Eliteの後継シリーズという位置づけだが、新設計のコンパウンド・ラジアス指板/モダンDシェイプ・ネックなどを採用し、現代の音楽シーンに合った演奏性の向上が計られているほか、全モデル共通で採用されている第5世代ウルトラ・ノイズレス・ヴィンテージ・ピックアップに専用設計の18Vアクティヴ3バンドEQプリアンプを組み合わせ、徹底した音質向上とノイズ対策が施されているなど、細部にわたってアップデートされているのが特徴だ。
ベースのラインナップはジャズ・ベース、プレシジョン・ベース、5弦仕様のジャズ・ベースの3種類。どのモデルもリア・ピックアップを搭載する2ピックアップ仕様で、コントロールはヴォリューム、ピックアップ・バランサー、アクティヴ3バンドEQ、パッシヴ・トーン、アクティヴ/パッシヴ切替スイッチを備え、高密度の金属で製造されたハイマス・ブリッジを搭載している。マテリアルはオーソドックスなアルダーもしくはアッシュ・ボディ&メイプル・ネックで、指板はメイプルまたはローズウッド指板のいずれか。ボディ・カラーと指板材の組み合わせがモデルによって異なるところにこだわりを感じる。
ネックはどのモデルも底部がやや平らな“モダンD”シェイプで、サテン仕上げの塗装と合わせ感触がとてもなめらかだ。ハイ・ポジションにかけて10インチから14インチへと指板Rが変わるコンパウンド・ラジアス指板は従来よりもかなり平面に感じる指板だが、低めの弦高にしやすく、音数が多くテクニカルなプレイを多用する昨今の音楽シーンにも適した仕様だと言えるだろう。左右非対称の5点止めネック・ジョイント周辺も立体的なヒールレス加工が施されていて、どのポジションも弾きやすい。数十年のときを経てデザインが見直されたというボディ・コンターも違和感なく体にフィットする。
American Ultra Precision Bassからチェックしていこう。Eliteシリーズとの大きな相違点は、Pタイプ・ピックアップもノイズレス仕様(ウルトラ・ノイズレス・ヴィンテージ・プレシジョン・ベース)となったこと。従来のプレシジョン・ベースに比べやや細身のナット幅41.3mmは、洗練されたネック・シェイプと相まって太さを感じさせない。
音色キャラクターはP、P+J、Jとそれぞれ異なるが、スッキリしていてクリアなクセのない音色という共通性がある。個人的には独特の荒々しさと洗練されたモダンなキャラクターが同居するPタイプ単体の音色が好みだが、ジャズ・ベースのリア・ピックアップのサウンドとは異なるJタイプ単体のストレートなキャラクターも興味深い。やはり同じピップアップが搭載されていてもボディ形状が違うと音色が違うものである。
指板およびカラーリングは、ローズウッド指板がウルトラバースト/モカ・バースト/エイジド・ナチュラルの3色。メイプル指板がアークティック・パール/プラズマ・レッド・バーストの2色となっている。試奏したアークティック・パールはパール塗装のホワイトで、光の当たり具合で変わる煌びやかさが印象的だった。
American Ultra Jazz Bassは“ザ・洗練”といった趣の透明感のあるクリアな音色という印象。それでいて有機的な上質の楽器特有の倍音感や鳴りもあわせ持っているので、弾いていて楽しい。ジャズ・ベースらしい細身のネック・シェイプにメイプル/ローズウッド指板どちらもバインディング付きのネックはエッジの仕上げが丁寧で弾き心地もなめらか。いわゆる70年代仕様のブロック・バインディングのルックスも良い雰囲気がある。
指板およびカラーリングは、ローズウッド指板がウルトラバースト/エイジド・ナチュラル/アークティック・パールの3色。メイプル指板がコブラ・ブルー/テキサス・ティーの2色となっている。試奏したウルトラバーストはピック・ガードがべっ甲柄ではなくクリーム系の白なのが今っぽい。
5弦仕様のAmerican Ultra Jazz Bass Vの音色は4弦ベースとあまり変わらない印象だ。EQで整えると5弦らしい低音感と広い音色が楽しめる。演奏性も問題なく4弦と持ち換えても弦が増えた違和感はあまり感じないだろう。
指板およびカラーリングは、ローズウッド指板がウルトラバースト/モカ・バーストの2色。メイプル指板がエイジド・ナチュラル/アークティック・パール/プラズマ・レッド・バーストの3色となっている。ボディ・カラーがプレシジョンと同じラインナップながら指板の組み合わせが異なるのが興味深い。新色のモカ・バーストはミッド・センチュリー調の高級感が絶妙だ。
以上の3モデルいずれも、±10dB可変のアクティヴ3バンドEQの使用感は共通の印象で、劇的に音色を変えるというよりは、楽器本来の音色を生かしつつ、ナチュラルかつ効果的に補正してくれると感じた。従来のモデルではジャズ・ベースをフルアップしたときにだけ機能したハム・キャンセルに頼らずとも、ノイズを気にせずピックアップ単体の音色が使えるのは、PC周りの電源ノイズを拾いやすい宅録などにも使いやすい。
特筆すべきはパッシヴ時のみに機能するパッシヴ・トーンの存在。アクティヴ・ベースとパッシヴ・ベースそれぞれを独立した音色キャラクターの楽器として2本分の個性を持たせているわけで、実際にパッシヴでも充分に有機的で魅力的な音色を持っており、シチュエーションやアンサンブルによって使い分けられそうだ。
American Ultraのプレシジョン・ベース、ジャズ・ベースは、時代の流れに合わせて進化するべくして進化した最新型の現代の楽器という印象だ。プレシジョン・ベース、ジャズ・ベースそれぞれを世に送り出したフェンダーだからこそできる、正統な進化と言える。フェンダーの楽器を新たに手にする人も、これまで何本もフェンダーの楽器を手にしてきた人も納得できる一本になるだろう。
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