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- 2024/11/16
HISTORY HG-B4A/M HG-B5A/M
以前、HISTORYブランドの25周年を記念する特別限定モデルを紹介したが、今回はそのベースになったレギュラー・モデルHG-B4A/MおよびB5A/Mを紹介しよう。アッシュ・ボディとメイプル指板という一般的な組み合わせだが、そのほかのパーツや細部に至る作り込みへのこだわりなどはHISTORYのハイエンド・モデルにふさわしいものになっている。今回も宮下智氏の実演を合わせてチェックしていこう。
2つの基本仕様はどちらも25周年記念モデルと同じだが、ボディがライト・アッシュで指板がメイプルという点が大きく異なる。この材の組み合わせと、ブリッジ・ピックアップの位置とが相まって、1970年代製のJBを彷彿とさせるブライトなサウンドになっている。これがレギュラー・モデルの特徴だと言えるだろう。
4弦、5弦のどちらのモデルもボディはディンキー・サイズで抱えやすく、ライト・アッシュの採用と併せて重量の軽減にもつながっている。もちろん、ボディが軽いとは言ってもヘッド落ちするようなことはなく、全体の重量バランスが取れているので、座奏で楽器を太ももの上に乗せても、立奏でストラップで吊っても、押弦とピッキングに集中できる。カタログだとこうした部分まではよく分からないので、試奏の際にもきちんと確認したいところだ。なお、ネックと指板の両方には、湖の底に200年近くも沈んでいる間に不純物が除去されるなどして安定度が増したヘリテイジウッド・ハード・メイプルが使用されており、気候などの環境変化への耐性も強くなっている。弦の総テンションが強い5弦モデルでは、それに加えてトラスロッドの両側にKTSのチタン製サポート・バーも入っている。HISTORYブランドの楽器ではおなじみのサークル・フレッティング・システムが両モデルに採用されているのは言うまでもない。
コントロールはそれぞれのピックアップのボリュームに3バンドEQを持つAguilarのOBP-3プリアンプの組み合わせで、ピックアップのミックス調節には伝統的なJBスタイルの方式を踏襲している。またピックガードとコントロール・パネルを採用しており、プリアンプのバイパス・スイッチは、ミドルとトレブル/ベースのコントロールの間に設けられている。プリアンプに関わるコントロールなので、この位置にあれば感覚的により分かりやすいかもしれない。なお、ミドル・コントロールはプッシュ/プル式で、400Hzと800Hzのポイントが切り替えられるようになっている。パネル外のミニ・スイッチは、フロントとリアのピックアップのパラレル接続と、出力が大きくなるシリーズ接続を切り替えるもので、音楽が盛り上がってきたりベース・ソロを取ったりする時にワン・ポイントで素早く操作できる。ピックアップはオリジナルのModern Bass Type-Jを搭載している。
塗装はラッカー仕上げでしっとりとした高級感が味わえる。一方ネックのグリップはサテン仕上げなので、汗で手がすべりにくくなるようなことはない。ほかにも高精度なGOTOH製のブリッジやペグの採用、ハイエンドのHGシリーズならではの丁寧なフレット端末処理、無漂白の牛骨ナットの仕上げ、ハイ・ポジションの演奏性を高めるFast Action Joint、指板だけでなくネック本体も延長してしっかりした音の出る21フレット仕様など、あらゆる部分に気遣いの感じられる楽器である。
今回のオープニング・デモ曲では、4弦モデルのHG-B4A/Mを使いました。ちょっとマニアックなんですが、中間部でウェザー・リポート風の展開になるようなアレンジになっています。アッシュ・ボディにメイプル指板というと、世間的にはマーカス・ミラーのサウンドというイメージが強いじゃないですか。で、僕はその裏をかこうと思って、サウンドとしてはJBではなく、むしろPBのアクティブ風を狙ってみました。アッシュ/メイプルでもこんなサウンドが出ますよという、このモデルのサウンド・メイキングの多彩さを紹介したいと思ったんです。ちなみに、デモ曲ではピックアップをシリーズ接続、トーンは3つともフルに近く設定して、フロント・ピックアップあたりの位置でピッキングしています。
マーカス風のブライトな音ももちろん出るんですが、AguilarのEQのミドルが中域のちょうど良い部分を強調してくれるというのが、太い音も作れる理由のひとつだと思います。ブライトなサウンドにしても耳障りにならないのは、同じメイプルでもヘリテイジウッドを使っている効果でしょう。前回紹介した25周年限定モデルには、トップにバストーン・ウォルナットという特別な材が使われていたこともあって、正直なところサウンド作りがやや難しかった印象でしたが、今回のほうがよく知ったサウンドという感じでしたね。レギュラー・モデルだけに、分かりやすくて良いと思います。
あと、楽器が軽くて、ストラップでつった時のバランスがちょうど良い感じになっているのもありがたいですね。グリップの感じやフレットの端末処理も含めた地味な部分の作り込みもきちんとしているのが功を奏して、長時間弾いてもストレスのない楽器に仕上がっていると思います。
価格:¥317,000 (税込)
価格:¥328,000 (税込)
宮下智(みやした・さとし)
東京都出身。武蔵野音楽学院卒業後、ベーシストとしてプロ・ミュージシャン活動を開始する。4弦ジャズ・ベースというスタイルであらゆるプレイ・スタイルを弾きこなすマルチな実力は、国内外から高い評価を受けている。これまでにEXILE、RIP SLYME、ゴスペラーズ、MISIA、上戸彩、片瀬那奈、TRF、globe、V6、嵐、奥村愛子など、さまざまなアーティストのレコーディング・ライブを行ない、音楽シーンに多大な影響を与えているベーシストの一人である。また最近では声優の今井麻美、原由美のレコーディング・ライブや教則本の執筆など幅広く活動している。