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- 2024/11/16
KORG NTS-1 digital kit
KORG Nu:tektブランドから発売されたDIYシンセ・キット「NTS-1 digital kit」が注目されています。「えっ、自分で組み立てるシンセ?」「音質は?」「実用性は?」そんな疑問を解消すべく、いっちーがレビューします!
prologueやminilogue xdから継承されたデジタル・オシレーターとアナログ・モデリングのフィルター、エンベーロープ・ジェネレーター(EG)、デジタル・エフェクト(モジュレーション、ディレイ、リバーブ)を搭載した、軽量コンパクトなモノフォニック・シンセサイザー。入出力端子にAUDIO IN、SYNC IN、SYNC OUT、MIDI INコネクターを備え、MIDIコントローラーやシーケンサーを使ったコントロールや同期も可能。
突如デジマガ編集部に届いた白い箱。先日KORGさんから「送りました〜」と連絡があったことを思い出しました。おぉ、これが噂の組み立て式のシンセ「NTS-1 digital kit(以下、NTS-1)」ですか! さっそく開けてみましょう。中にいくつか用紙が入っているのでチェックしてみます。
まず箱を開けて目に入ったのがKORG Software Bundleのライセンス・カード。KORGのコントローラーや一部のシンセに付属するソフトシンセやプラグイン・エフェクトのバンドルが、NTS-1にも付いてくるなんてお得すぎです!
付属するQRコードをスマホで読み取るとこちらのYouTube動画が立ち上がりました。取扱説明書も入ってましたが、こっちの方が分かりやすそうなので見てみましょうか。
なるほど、組み立て方のイメージがつかめましたよ。それではさっそく作業に取り掛かりましょう!
まずは、ひとつにつながっている上基板、底板、フロント・パネル、リア・パネルを分けます。カッターなど無くても、手で圧力をかけて簡単に分けることができるのでご安心を。必要なネジやドライバーなどもすべて付属しています。なんて親切なんでしょっ!
それではサイド・パネルの両端にコーナー・ブロックを取り付けましょう。サイド・パネルはコーナー・ブロックの溝に差し込んでから銀色の小さいネジで止めます。同じパーツを2つ作ったら、黒いネジで底板に取り付けます。
続いて、鍵盤シートを上基板に取り付けます。鍵盤シートは、左側のフラット・ケーブルを上基板の穴に通した後に貼り付けます。この順番を間違えないようにしましょう。フラット・ケーブルは、軽く曲げながらコネクターにグッと挿し込んで、コネクターの両端を押すとロックされます。
そして、上基板と下基板を合わせる前に、下基板の4隅を取り除いてください。下基板の4隅を取り忘れるとケースに収まりません。これは実体験に基づいたアドバイスです(笑)。板の上下を確認しながらすべてのピンを差し込みます。ちゃんと差し込んだつもりでも、ズレていることもよくあるので最終チェックは怠らずに!
いよいよ最終仕上げです。フロントとリアを確認しながら基板とサイド・パネル付きの底板を合わせます。黒いネジで上基板をコーナー・ブロック、銀色の小さいネジでフロント・パネルとリア・パネルを取り付けます。最後に全体のネジをしっかり止めて……
組み立て完成〜!
さっそく動作チェックです。電源は付属のUSBケーブル経由でコンピューターのUSBポートやUSB電源アダプタでも供給できますが、今回はモバイル・バッテリーを使ってみます。さて、ちゃんと電源入るかな? ドキドキです!
おお〜! 鍵盤シートを押さえたら、ちゃんと音鳴りました! 良かった〜!
初めてシンセサイザーを組み立ててみましたが、なかなか楽しかったです。あらかじめパーツが基板に実装されているから安心して組み立てられました。
NTS-1は、MODEボタン(OSC、FILTER、EG)とFXボタン(MOD、DELAY、REVERB)、ARPボタン、そして各ボタンごとに機能が割り当てられているTYPEノブ、Aノブ、Bノブというシンプルな操作子で構成されています。
つまり「ボタンごとに3つのパラメーターがコントロールできる」ということなんですが、ボタンを押しながらノブを回わすことで3つ以上のパラメーターのエディットが可能なんです。
(例)[OSCのエディット]TYPEノブ:オシレーター波形、Aノブ:波形のシェイプ、Bノブ:オシレーターごとに割り当てられたパラメーター、OSCボタン+Aノブ:LFOスピード、OSCボタン+Bノブ:LFOの深さ
prologueやminilogue xdの直系サウンドとは聞いていましたが、ここまでクオリティの高いサウンドだとは! さまざまな表情を持ったレンジの広いオシレーター波形も特徴的ですが、何と言ってもエフェクトは単体機に匹敵するほどのクオリティの高さに驚きました。
動画の冒頭では、同社のステップ・シーケンサーSQ-1からNTS-1を演奏しています。ステレオ・ミニ・ケーブル1本で、MIDI IN/OUTをつなぐだけです。
0:31〜では、アルペジエーター機能を使ってみました。ARPボタンを点灯させリボン鍵盤を押さえるとアルペジエーターが機能します。また、ARPボタンを長押しするとLEDが点滅して、リボン鍵盤から指を離してもアルペジエーターが機能します。
[アルペジエーターの設定]:ARPボタン+TYPEノブ:パターン、ARPボタン+Aノブ:パターンの長さ、ARPボタン+MODEボタン or FXボタン:スケール、ARPボタン+Bノブ:テンポ
0:48〜ではLFOを使ったピッチ・モジュレーションで遊んでみました。OSCボタンを押しながらBノブを左に振り切らせて、OSCボタンを押しながらAノブを回すとシンセらしい効果音が鳴らせます。さらにディレイやリバーブをかけると、まるで異次元空間に入り込んだような気分になります(笑)。
1:38〜はDAWのMIDIシーケンサーでフレーズを演奏させながら、オシレーター波形やパラメーターを変更したり、フィルターやエフェクトをかけたりして演奏しています。コンピューターとUSBケーブルでつなぐと、MIDI機器として認識される(Windowsの場合はKORG USB-MIDIドライバーが必要)ので、DAWのMIDIトラックの出力をNTS-1に設定すればOK。デジタル波形とリバーブの相性が心地良すぎてずっと触っていられます(笑)。
logue SDKというソフトウェア開発キットを使うと、NTS-1用のデジタル・オシレーターやエフェクトが自作できます。プログラムに自信がある方は挑戦してみてください。ボイス・サンプルなんかを取り込めたら面白いかもしれませんね。
とは言え、自作オシレーターやエフェクトというのはハードルが高すぎますね(汗)。ご安心ください! サード・パーティーの開発者が作ったオシレーターやエフェクトが、Librarian&Custom Content pageで公開されているんです! これは管理ソフトNTS-1 digital Librianを使ってNTS-1に取り込むことができます。ちなみにユーザー・オシレーターは本体に16個まで取り込むことが可能。試しに無料で公開されているオシレーターをいくつか本体にロードしてみました。
NTS-1に搭載されているステレオ・ミニ端子のオーディオ・インを搭載しています。ここに入力した音はシンセ回路は通らず、エフェクト回路だけを通って出力されるようになっています。
ちなみにエフェクトは、モジュレーション→ディレイ→リバーブの順に直列でつながっていて、デフォルトではシンセ音と外部音声がミックスした状態ですべてのエフェクトがかけられるようになっていますが、ルーティングを変更することで、外部音声をモジュレーションとディレイを通さずにリバーブだけ通したり、エフェクトを全く通さずマスター出力へ送ることもできます(グローバル・パラメーターで設定可能)。
NTS-1をDAWにつないでノブを動かしたところ、DAW側が何かMIDI信号を受信しているようだったので、MIDIインプリメンテーション・チャートを調べてみると、コントロール・チェンジで各パラメーターをコントロールできるようになっていました。つまり、本体のノブで同時にコントロールできるパラメーターは3つですが、MIDIコントローラー次第で、たくさんのパラメーターを同時にコントロールすることも可能になるわけです。NTS-1はDAWやMIDI機器と組み合わせても相性バッチリということですね!
NTS-1のWebサイトを見ると「簡単にカスタム・サイド・パネルを取り付けることができる」と書かれており、このような例が紹介されていました。
えっ! 何これすごい! やりたい!
というわけで、アンティーク調のウッド・パネルをつけてみたくなったので、100円ショップで調達した板と塗料を使ってちょうど良いサイズに加工してみました。
ここで再び登場するのが、下基板で不要になった4隅の切れ端です。これが自作のサイド・パネルと本体のすき間を埋めるスペーサーとして活躍するんです!
できた〜!
自画自賛ですが、かなり良くできたと思います(笑)。ますます愛着がわいてきました!
いかがでしたでしょうか? 1万円程度で購入できる手のひらサイズの小型シンセですが、かなりポテンシャルを秘めていることがお分かりいただけたかと思います。 是非皆さんも試してみてくださいね〜! それではまた〜(^_^)ノ
いっちー
学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。某楽器販売店を経てリットーミュージックに入社。前職では楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。得意ジャンルはクラブ・ミュージック。日々試行錯誤中。