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  • 独特のペイントの00L、KOA材を使用したエレアコ2本、ジョニー・キャッシュ・モデル!

斎藤誠が弾く!マーティン00L FLY FISHING、D-12E、000-12E、DX Johnny Cash

Martin / FLY FISHING、D-12E、000-12E、DX Johnny Cash

好評連載Martin Times。今年最後となる第36回目は、前回同様に個性的なルックス/仕様を持った2019年モデルの新作4本、00L FLY FISHING、D-12E KOA、000-12E KOA、DX Johnny Cashをご紹介。今回もお馴染み斎藤誠氏の演奏でお楽しみください!

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斎藤誠が弾く!
00L FLY FISHING、D-12E KOA、000-12E KOA、DX Johnny Cash

Special Talk Session
斎藤誠が語る!
00L FLY FISHING、D-12E KOA、000-12E KOA、DX Johnny Cashの魅力

比較的手に入れやすい価格帯の
個性派マーティンが勢ぞろい!

 前回ご紹介した16シリーズのモデルは、数字の上では17シリーズの下位機種ではあるものの、仕様としては17シリーズを上回るモデルもあり、ラインナップとしてはかなりアップグレードされていた。それに伴い、さらに下位機種となるロード・シリーズも本連載Vol.33でお伝えしたように、10~13番台のモデル名が与えられてアップグレードされている。今回はまず、そのロード・シリーズの中堅モデルとも言えるD-12Eと000-12Eのバリエーション・モデルとして、ボディ材にコアを使用したギターを取り上げる。

 それに加えてご紹介するのはスペシャル・モデルの2本で、カントリー・ミュージックの代表的なアーティストのひとりであるジョニー・キャッシュのシグネチャー・モデルのDX Johnny Cashと、トップにアートワークを施した“フライ・フィッシング・ギター”、00L FLY FISHINGである。DX Johnny Cashはハイエンド・モデルではなく、入門者向けのXシリーズの仕様で作られているところがおもしろい。一方の00L FLY FISHINGは遊び心に満ちているが、スタンダード・モデルとほぼ同じ価格帯の本格的な楽器である。

Limited Edition
00L FLY FISHING

00L FLY FISHING(Front)


00L FLY FISHING(Back)

マーティンのロゴの代わりに精緻なインレイを施したヘッド

優雅なスロープショルダー部分。12フレットにもカラフルな鱒のインレイが

明るい色調で杢目のハッキリしたゴンサロ・アルヴェス材が華やかな雰囲気を醸し出す

 馬とカウボーイをモチーフにした作品で知られるアメリカの画家、ウィリアム・マシューズ。彼が描いたフライ・フィッシングの絵をトップにプリントしたギターで、彼の作品をあしらったマーティンとしてはこれが3本目となる。指板やヘッドに施された精緻な“鱒(マス)”のインレイも見どころだ。楽器本体は、ボディにゴンサロ・アルヴェスという中南米産の材を使用したスロープショルダーの00で、コンパクトなサイズとは思えないほどの豊かな鳴りが魅力となっている。100本限定。

【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:オバンコール ●ネック:セレクト・ハードウッド●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:X・ブレイシング・スキャロップト ●価格:¥600,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 今回は唯一のオール単板モデルということもありますが、00なのにテンション感というか、すごい音圧感がありますね。密度や硬質感のある、とても太くて明るい音がするのは、この材の効果なんでしょうか? 杢目が透けて見える上質なプリントが施されていて、本来あるはずのヘッドのロゴもそっくり鱒のインレイに置き換えてしまうほどの特別なモデルですが、サウンドの面でも個性的だなという印象です。あとはブリッジがスクエアだったり、ペグのゴールドがツヤ消しだったり、バインディングが使用感のある色だったり、いろんな部分に凝っていますね。僕は釣りはしないけれど、このギターは気に入りました(笑)。

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Road Series
D-12E KOA

D-12E KOA(Front)


D-12E KOA(Back)

ボディのコアはラミネートではあるものの、見どころの多い材が使われている

ペグもブラックで統一したヘッドにシルバーのマーティン・ロゴというシックなデザイン

サウンドホールの陰にマウントされた、フィッシュマンMX-Tのコントロール部

 通常のD-12Eがマホガニーに似たサペリの単板を使用したスタイル18風なのに対して、本器はボディにコア材を使用しているのが特徴だ。入門向けの価格でありながら、ボディやネックには木材を使用した「本格的なエレアコ」と言えるだろう。コア材は、本モデルでは環境に優しい材として楽器用としてもよく使われるアフリカン・マホガニーとの合板で使用されているが、マーティンではウクレレの上位モデルや40番台の特別モデルに使用することもある。このモデルでもオール・グロス仕上げと相まって高級感を醸し出している。

【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:コア・ファイン・ベニヤ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm) ●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:X・ブレイシング・スキャロップト ●ピックアップ:フィッシュマンMX-T ●価格:¥225,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 ボディがコアで、しかもこの光沢感というのは素晴らしいですね。ヘッド・プレートとペグの色をブラックで合わせているのは、すごくカワイイと思います。ギターとしても1弦から6弦までバランスが取れているので安心ですね。あと、ドレッドノートは深い低音が全体を支えてくれる感じが良いんですが、これは上位のスタイル28などよりも低音がスッキリしていて、ハウリングや低音がブーミーになり過ぎるのを防ぐという意味では扱いやすいかもしれません。デモ曲では、ザックリとしたストロークとフィンガーピッキングという音量差のある奏法を使い分けていますが、エレアコだとその差をあまり気にしなくても済むのが良いですね。

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Road Series
000-12E KOA

000-12E KOA(Front)

000-12E KOA(Back)

シンプルなブラックの装飾にパールのロゼッタというシンプルなデザインがおしゃれ

ボタンが大きめのペグは操作しやすい

コントロールの反対側には視認性の良いチューナーが搭載されている

 D-12E KOAと同様、コア材の合板を使用したオール・グロス仕上げのエレアコ。こちらは小ぶりなボディでショート・スケールを採用した000モデルである。合板ということで比較的気候や環境の変化にも強く、ピックアップにはチューナー付きのフィッシュマンMX-Tを採用しているので、ライブなどで大いに活用するのがドレッドノートとともに12E KOAモデルの“正しい”使い方と言えるだろう。

【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:コア・ファイン・ベニヤ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:24.9インチ(632.5mm) ●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:X・ブレイシング・スキャロップト ●ピックアップ:フィッシュマンMX-T ●価格:¥225,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 このギターは柔らかく弾けるだろうし、低音が暴れる心配もないだろうと思い、デモ曲は「000用」というフィンガーピッキングのものを書いてきました。その一方で、テンションが柔らかくてチョーキングも交えたギンギンのソロも弾けるというのも000の良さなんですよ。例えばエリック・クラプトンみたいに弦を“パチン!”といわせて、ロックっぽい歪んだような効果も作れます。それがOMだと強いピッキングも受け止められるので、きちんとした音になっちゃうんですよ。その点、000だとヒステリックな人が弾けばヒステリックな音が出るので(笑)、誤解を恐れずに言うなら乱暴に使ってもイケるギターだと思います。

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Custom Signature Editions
DX Johnny Cash

DX Johnny Cash(Front)


DX Johnny Cash(Back)

クロームのペグに木部の黒いストライプという、精悍なデザインのネック周り

ロゼッタのサインと18フレットのCASHの文字、それに星型のインレイが黒地に映える

ボディ内部にはジョニー・キャッシュのサインがプリントされたシールが貼られている

 カントリー界の巨星ジョニー・キャッシュは、1970年代初期にオール・ブラックのD-35をマーティン社に特注し、20年にわたって愛用した。彼の没後、2006年にはその功績を称える特別モデルのD-35が作られた。今回のギターは、彼の息子ジョン・カーター・キャッシュとジョニー・キャッシュ財団の協力を得てデザインされたフル・サイズのドレッドノートである。低価格モデルということで若い世代にキャッシュの偉業を伝えるにはうってつけのギターだろう。ピックアップはフィッシュマンのMXを搭載している。

【Specifications】
●トップ:HPL ●サイド&バック:HPL ●ネック:ブラック・バーチ・ラミネート ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm) ●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:X・ブレイシング・スキャロップト ●ピックアップ:フィッシュマンMX ●価格:¥130,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 ハイ・プレッシャー・ラミネートのギターは、こういう企画モノを自由にやると良いですね。オール・ブラックのこのギターは、ネックも黒染めの縦線がおしゃれです。で、楽器としては変な帯域が飛び出していない素直な音だし、余分な低音がざっくりカットされてバランスが良いので好きですね。僕は家ではずっとリトル・マーチンを弾いているので、この材の音には馴染みもあります(笑)。デモは「黒は男の色」という、わりと爽やかな曲にしました。ハイ・パフォーマンス・ネックで弾きやすいし、弾いている本人の満足感はけっこうありますね。それと出力ジャックがエレキと似たような位置にあるので、エレキとの持ち替えもスムーズにできると思います。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 何と言っても12E KOAの2本はピックアップが付いていて、ライブで威力を発揮するというのが最大の特徴でしょう。ライブの際、曲によってストロークかフィンガーピッキングかが決まっていれば、ボリューム・ツマミで音量差を補正するのが効果的ですね。それとチューニング・メーターも付いていて、チューナーをオンにするとラインの音がミュートされるので、MCをしながらチューニングができるというのもありがたいです。家で生音で弾くならDのほうが満足度は高いだろうけれど、バンドでライブをやるなら000を使いたいですね。ちなみに、このモデルに付属するソフトシェル・ケースはコンパクトで、持ち運びにも便利なんですよ。

 DX Johnny Cashは見た目がフォトジェニックなので、カントリーに限らずメタル系やビジュアル系の人にも良いかもしれません。飲み屋さんや飛び入り歓迎のライブハウスなんかにも常備しておいてほしいですね(笑)。

 00L FLY FISHINGは今回の中では圧倒的に個性的で、良い意味でマーティンらしからぬ音がしました。スタンダード・シリーズのD-28なんかと比べても、それと負けないくらい大きな音量が出せます。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西 慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したことをきっかけに音楽界デビューを果たす。 1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの「It’s A Beautiful Day」をニュー・シングルとしてリリース。また、本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンドや卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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