AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
5弦ベース
ベース=4弦という認識が、もはや揺らいでしまうほどに現代の音楽に浸透している5弦ベース。明確な“スタンダード”がないぶん、4弦ベース以上に幅広い方向性が提示されているのが5弦ベースのおもしろいところ。今回は、そんな数ある製品のなかから各ブランドのイチオシ・モデルをピックアップし、スガシカオや水樹奈々のバンドで辣腕を振るうベーシスト、坂本竜太に試奏をしてもらった。
木材に徹底的にこだわるハンドメイド工房
ニューヨークで創業したあと、2010年以降はLAを拠点としているアリーヴァ・コッポロは、伝統的なエレクトリック・ベースを軸に据え、木材へのこだわりと組み込みに“ユルさ”を持たせることで優れた個性を生み出しているハンドメイド・ブランドだ。その代表的なモデルである本器は、1969年に切り出されたローズウッド指板にスモール・フレットを打ったヴィンテージ・フィールに溢れた1本。極薄のラッカー・フィニッシュにより木の鳴りを最大限に生かしているのもポイントだ。ピックアップはオリジナルの手巻きタイプを採用し、2バンドEQを搭載した自社製のプリアンプを搭載。
●問い合わせ:スリークエリート(☎03-6383-2968)
◎https://sleekelite.com/alleva-coppolo/
もっとパンチがあるのかなと思っていたけど、意外と丸い音でした。JBらしいどっしりしたニュアンスがあるから、単体で聴くと派手じゃないけど、オケに混ざるとしっかりしたベースの音になります。個性派ってよりはスタンダードな感じかな。木の感じを強く出しているし、ブリッジとかもシンプルで好感が持てました。あと、21フレットというのも個人的にはスラップもしやすいし、フェンダー系を持っている人にはすごく弾きやすいと思う。弦間ピッチも4弦ベースと同じくらいだし、4弦のパッシヴから持ち替えても違和感なく馴染めると思いますよ。
老舗国産ブランドの最高峰5弦モデル
厳選した素材に加えて熟練の職人が組み込む、アリアのカスタムショップ・ブランド“APII”。 AVB-7195CRは、アルダー・ボディ&メイプル・ネックというベーシックな木材構成からなり、独自形状のピックガードにより24フレットながら優れた演奏性を実現したモデルだ。弦間は19mmでスタンダードな4弦ベースから難なく移行できる。ピックアップにはノードストランドのBig Single 5に加えてプリアンプも同社製の3バンドEQを採用し、シングルコイルらしいレンジの広さとアタック感、ピッチ感に優れたサウンドを得られる。
●問い合わせ:荒井貿易(☎052-711-3311)
◎http://ariacustomshop.jp/
楽器自体が軽いし、ボディが小さいから見た目もスタイリッシュで好きだね。サウンドはフロント・ピックアップのアタックがよく出ている印象で、言うならばスティングレイの流れというか、ちょっとハムバッキングっぽいニュアンスがある。スラップしたときに70年代後半っぽいイナたい感じもあるんだけど、今の時代だったらパンクなんかに合わせるといいかな。アクティヴだからといってハイがギラっとするわけでもなくて、ナチュラルな印象です。フレットのバランスがすごく良くて弾きやすいのも好印象ですね。
ブランドの新たな看板となりうるヘッドレス・モデル
プレイアビリティの高さとタイトなサウンドで、同社のハンドメイド・シリーズを代表するWOODLINE517にヘッドレス・システムを組み込んだモデル。シャープなボディ・エッジ、ディンキーという前器の印象をそのままに、ヘッドレスにマッチしたバランスのために新たなボディ・デザインを採用。24フレットまでスムーズに演奏できる深いカッタウェイも特徴だ。ピックアップはバッカス製DBP58、プリアンプにアギュラーOBP-2を搭載。バーズアイ・メイプルのネック、アッシュ/メイプルのボディには熱処理を施したサーモウッドを使用する。
●問い合わせ:ディバイザー(☎0263-86-8808)
◎http://www.deviser.co.jp/bacchusguitars
ヘッドレスっていう見た目に最初は違和感があったけど、バランスはとてもいいですね。ネックの握りも良くて持ちやすい。あとネックの木目がキレイで、部屋に飾りたくなっちゃう(笑)。出力が大きくてピックでガシガシ弾いてもちゃんと鳴り切ってくれるのが、この楽器の個性だと思います。音が締まっているというよりも、ハイ・ミッドあたりが強いから、それもピックで弾いたときの印象の良さにつながっている。繊細な演奏で活用するというよりは、ロックとか激しめの演奏をするベーシストにはピッタリだと思いますね。
取り回しの良い現代的なハイファイ・サウンド
小柄な日本人の体型にフィットさせるべく作られたAMAZEは、JBスタイルながら取り回しのしやすい細身でシャープなボディを採用し、プレイアビリティの高さが際立ったシリーズ。AS-SL5はアッシュ・ボディを用いており、歯切れの良いスラップにも向いた70'sのJBスタイルを意識したモデルだ。5弦の鳴りを最大限に生かすためにスーパー・ロング・スケール(35インチ)を採用し、ピックアップはESPカスタムラボのJ-1、アクティヴ3バンドEQ CINNAMONを搭載し、クリアでハイファイなサウンドを出力する。
●問い合わせ:ESP(☎049-274-3810)
◎https://espguitars.co.jp/products/esp
木目がキレイだし、作りの丁寧さを感じますね。弾き心地はフェンダーっぽくて弾きやすい。4弦がしっかりと聴こえるし各弦の鳴りのバランスもいいですね。音はけっこうナチュラルでアクティヴっぽさが薄い。あとアタック感がしっかりあるけど耳に痛くないから、自然とスラップをしたくなります。これはこの楽器の持ち味と言えるでしょうね。すでに5弦を持っていて、さらに1本欲しいっていう人のバリエーションとしても最適かな。4弦ベースに近い感じもあるから、ライヴで持ち替えたりするときにも、すごく良いと思います。
限界を超えるアクティヴ仕様の最進化モデル
フェンダーのニュー・ライン、アメリカン・ウルトラ・シリーズがお目見え。1970年代を彷彿させるブロック・ポジションを採用した指板に加えて、底部がやや平らなモダンDシェイプを新たに採用。ネック・ヒール部のボディにも新しいコンター加工を用いることで、快適な弾き心地を実現している。ピックアップには第5世代とも言われるウルトラ・ノイズレス・ヴィンテージ・ジャズ・ベースを搭載し、ハイパワーながらに透明感を失わない、ダイナミック・レンジの広いサウンドを出力する。新色も含む5つのカラーが用意されている。
●問い合わせ:フェンダーミュージック(☎0120-1946-60)
◎http://FENDER.CO.JP
21フレットでブロック・ポジションだからか、いわゆるマーカス・ミラー・モデルに近い印象。21まであるとフレーズが全然変わってくる。Dマイナーのときに9thまで鳴らせるというのは、やっぱり楽器としてもおいしいんだよね。サウンド的にはそんなにアクティヴっぽいギンギンした感じもなくてわりと上品。これはたぶん、パッシヴで弾くときも想定したチューニングになっているんだろうね。何よりもこのサンバーストの色がすごくキレイでカッコイイ。楽器は見た目も大事だから、ルックスで惹かれるというのも、この楽器の魅力ですね。
独自技術を投入したバランスに長けた5弦
確かな楽器製作ノウハウと技術力を持った国産メーカー。Dulakeシリーズは同社にとって初のオリジナルのボディ・シェイプを持ったモデルだ。今回紹介するDulake Flatのボディはプレミアム・グレードのフィギュアド・メイプル・トップにアッシュ・バックで、ウェンジをラミネートすることで豊かなサステインを生み出す。適度な倍音がありながらもスピーディなアタック感があり、“音の立ち”“音程感”においては他の追随を許さない仕上がりとなっている。ネックとボディの圧着具合の調整で音質を変える革新的なジョイント方式であるARIMIZO & One Point Jointもポイント。
●問い合わせ:フリーダムカスタムギターリサーチ(☎03-5855-6277)
◎https://global.fcgrtokyo.com/
非常にバランスの良い楽器ですね。2フィンガー、スラップ、ピックのどれも良く鳴るし、3弦〜4弦〜5弦と移動しても違和感がまったくない。音は余計なところが膨らむこともなくミドルがあって全体的にタイトで、こちらもバランスがいいです。弾いていて“あ”ってちょっとミスったとしてもちゃんと鳴ってくれる。バランスの悪い楽器だとそういうときに音がどこかにいっちゃうんです。24フレットなのにスラップもやりやすいし、デッド・ポイントも少ない……これはよくできた楽器だ。この形からは意外なほどに正統派な音がしますよ(笑)。
ガッチリと弾きたい人向けの日本製レイクランド
日本国内で加工から組み込みまでを行なう、レイクランドのショアライン・シリーズ。SL55-94 DLX/Mはキルテッド・メイプル・トップ/スワンプアッシュ・バック・ボディに35インチのハード・メイプルのネックを組み込んだ代表的なモデルだ。レイクランド・オリジナルのMMタイプ(リア)とJタイプ(フロント)のピックアップに、同じくオリジナルのプリアンプを搭載。キメ細かいミッド・レンジの調整ができるプリアンプとMM-Jという組み合わせにより、歯切れの良いスラップからメロウなトーンまで、幅広いサウンドを得ることができる。
●問い合わせ:ESP(☎049-274-3810)
◎https://espguitars.co.jp/lakland/
個人的にはレイクランドって、カラダの大きい外国人向けというか、フェンダーのもっとゴツイ版っていうイメージがありました。昔はそのゴツさから弾きにくい印象があったけど、これは日本製ということもあるのか、このベースは軽かったし、弦間ピッチもちょうど良くて弾きやすかったです。ローB弦の開放がしっかりと鳴って、ボトムが太いけど、アタックもしっかりとある。2フィンガーで弾いたときのどっしり感はピカイチだね。テンションは強めだからタッチの強い人や、ガッシリとしたロックに向いた楽器だと思います。
リチャード・ボナ完全監修のシグネイチャー
人気ベースアンプ・メーカーであるマークベースがリリースした初のエレキ・ベース、MB KILIMANJARO。今回紹介するのはその5弦モデルだ。リチャード・ボナと共同開発した本器。オリジナリティのある形のボディはメイプル・トップ/スワンプ・アッシュ・バックで、ネック&指板ともにメイプルを採用。34インチで24フレットだがネック・ジョイントを深くとることで高音域での演奏性を高めている。バルトリーニとオリジナルのプリアンプは繊細なタッチを如実に表現し、まさにボナのシグネイチャー・モデルの名にふさわしい1本だ。
●問い合わせ:パール楽器製造(☎047-484-9111)
◎https://pearlmusicinstrumentaljp.com/markbass/
ボナのシグネイチャーと聞いて繊細なタイプなのかと思ったら、予想以上に鳴りました。この楽器の個性はミドルにあって、そのおかげでロー・ポジションとハイ・ポジションの音量差があまり出ないようになっています。鍵盤の音が平均的に鳴る感じにも似ているから、2フィンガーで細かく弾きたい人にはもってこいですね。ボナみたいに弱く弾いても楽器が反応するし、レスポンスも抜群にいいです。ハイ・ポジションが圧倒的に弾きやすいからソリスト向けかな。スラップもしやすい。ダメージっぽい加工を施した塗装も今っぽくていいですね。
ポーランドのハンドメイド工房による上質器
ポーランドを拠点とするハンドメイド・メーカーであるメイヨネース。このJabba Custom EP5はスタンダードなJBタイプを踏襲したモデルで、ボディ・トップにはアイ・ポプラという希少材を用いている。ネックのスケールは34.25インチと若干長く、24フレット仕様だが深めのボディ・カットにより高い演奏性を実現している。ピックアップにはノードストランド製のZen Bladeと自社製のプリアンプを組み込んでおり、歯切れ良くラウドでありながらもノイズの少ない、バランスの取れたサウンドを出力する。
●問い合わせ:スリークエリート(☎03-6383-2968)
◎https://sleekelite.com/mayones-bass/
独特のミッドがいいですね。個性的だけどオケからハズれるわけでもなくて、200Hzより下が充実している。そのローが個性的だから、倍音になる600Hzがグイグイとくるし、変にアクティヴ臭い感じもない。指で弾くとちょっともっこりする部分があるから、そこはアクティヴ回路で調整するといいかな。ロー・ポジションとハイ・ポジションで弦間ピッチがかなり変わりますが、これがすごく弾きやすいから間違えにくい。テンション感も良くて、特に5弦〜4弦の5フレットより下の音色、弾きやすさが抜群なので、ローポジで弾きたくなります。
イタリアから登場したこだわりのシングル・カット
イタリアのアヴェッツァーノを拠点とする個人制作工房であるメリディアン・ギターズ。Horizon Solidはシングル・カットのモデルで、ボディはバール・メイプル・トップのオクメ・バックで、ネックには1ピース・メイプルを使用。1980年代の木材を使用していることも特徴だ。指板には固い素材としても知られる合成樹脂のフェノリックを使用している。ボディを大きくザグったジョイントまわりの加工精度の高さからも、同社の技術力を感じる。ピックアップはデラノ社製とオリジナルのプリアンプを組み合わせることで、クリアなサウンドを得ることができる。
●問い合わせ:スリークエリート(☎03-6383-2968)
◎https://sleekelite.com/meridian/
MERIDIAN GUITARS / Horizon Solid
ローB弦が暴れずにしっかりと輪郭があって、ロー・ポジションからハイ・ポジションまで均等に鳴る印象があります。ハイ・ミッドがヌケてくるから2フィンガーで弱めのタッチで弾くと、この楽器のポテンシャルが出てくる……というか、そうやって弾くようにできている楽器だから、ピックやスラップは向かないですね。ネックは薄めで演奏性が良くて、ハイポジも弾きやすい。左手のフィット感が良いので、これは速弾きしたくなる楽器ですね。2フィンガーで堅実にいきたい、あとはソリストなんかにも適したモデルだと思います。
“匠の仕事”を感じる国産JBタイプ
国産の老舗ブランド、ムーンのJB-5は、従来のJBタイプのバランスを持ちながらもローBのサウンドが欲しいというコンセプトで開発されたモデル。ホワイト・アッシュのボディにメイプル・ネックを合わせ、ディープ・ジョイントによりスムーズな演奏性を実現している。B弦のタイトな鳴りを得るべく、35インチ・スケールを採用し、ピックアップにはJB-5用にカスタマイズされたオギザリス JB-5にバルトリーニXTCTもしくはNTCTを搭載している。また、同社ならではのスペックでもある、ツバ出しの34インチ仕様も受注生産でオーダーが可能だ。
●問い合わせ:ムーンギターズ(☎042-708-9691)
◎http://www.moon-guitar.co.jp
MOON / JB-5A
フェンダー・スタイルだけど、ちゃんとムーンらしさがあって、さすがの仕上がりです。ロー・ミッドがしっかりとあるんだけど膨れすぎないし、強い。5弦はもちろん、4弦も2弦もしっかりと鳴ります。ピックアップのマウント位置はちょっと70年代っぽいのかな。アタックもあるし、これぞムーンって音。特殊なカタチでもなく、いわゆるJBタイプなんだけど、本当に難癖を付ける場所がまったくない。楽器の重さは少し気になるけど、それをのぞけば、10人が弾いたら10人が良いって言う楽器だと思う。匠の仕事って感じですね。
バランスに優れたファンド・フレット搭載モデル
本器は33インチのショート・スケールを採用したDefiをベースにしたイケベ楽器のオリジナル・モデル。均一かつクリアなサウンドを得るためにファンド・フレットを採用しており、1弦側で32インチ、5弦が35インチのスーパー・ロング・スケールとなっている。スルーネック構造でネックはメイプルとウォルナットをラミネートしており、ボディはスポルテッド・メイプル/ウォルナットで高級感のあるルックスはステージ映えも充分。オリジナルのピックアップとアギュラーOBP-3の組み合わせにより、幅広い音色が得られるのもポイントだ。
●問い合わせ:サゴニューマテリアルギターズ(☎06-6439-6377)
◎http://sago-nmg.com/
SAGO NEW MATERIAL GUITARS / Ikebe Original Defi 5 Fanned Fret
音はミッドが立った固い感じだけど、これはたぶんブリッジとピックアップの位置関係によるんだと思う。テンション感は全体的に強い感じがありますね。僕はファンド・フレットには全然馴染みがないから、異世界に紛れこんだような印象でした。ローポジはわりとすんなり馴染めるけど、ピックやスラップってわりとフォーム的にフレーズを覚えていたりするので、ハイ・ポジションのほうに行くとそういう勘が通じなかった……その意味でもいつも手グセのフレーズに落ち着いてしまうのが悩みのベーシストにはいいかもしれないね。
4弦からの持ち替えも楽なオールマイティさ
本国ドイツ製造ながらコストパフォーマンスに優れたTeam Builtシリーズ。34インチ・スケールに加えて細めのネック・グリップは4弦からの移行者にもピッタリ。スルーネックによるサステインの長さも特徴的だ。ピックアップは同社オリジナルのMECを2基、プリアンプも同社製を搭載し歯切れの良いサウンドを出力する。なお、ストリーマー・ステージIのピックアップ・レイアウトは、サム・ベースよりもフロント寄りかつピックアップの距離が多く取られているため、幅広いサウンドメイクが可能。オールマイティに扱える1本だ。
●問い合わせ:コルグお客様相談窓口(☎0570-666-569)
◎https://www.warwick.jp/
WARWICK / TeamBuilt Streamer Stage I 5Strings
ワーウィックらしい音だね。ボトムもしっかりあってハイ・ミッドの2.5kHzあたりに特徴があるから、スラップをするとその個性が如実に出てくる。“ベイーン”って感じのニュアンスがあるんだけど、そこに歪みを足すとカッコよくなるのもワーウィックのおもしろいところですね。あと、弦間ピッチが狭いから手が小さい人にはピッタリだし、ミュートもしやすいです。ハイ・ミッドがあるから、5フレットより下をピックで弾くと、ギターに埋もれない音が出せるし、ダウン・チューニングにも負けない。そこはこの楽器の強みだね。
丹念な製作が音にも反映したパッシヴ・モデル
本国アメリカ製の材料を用いて日本で組み込みや塗装を行なっているエキゾチックのニュー・ライン、California Core Series。本器はアッシュ・ボディにメイプル・ネックを組み合わせ、指板にはブロック・ポジション・マークを配した70's JBタイプを意識したモデルだ。パッシヴ仕様ならではの音ヌケの良さ、繊細なタッチの表現を意識し、デッド・ポイントを極力減らした設計により、優れた演奏性を実現。ラッカー塗装による音色の温かさ、組み込みの良さがもたらす演奏性など、丹念な楽器作りが音にそのまま反映されているモデルだ。
●問い合わせ:PCI Japan(☎03-3408-6007)
◎http://xotic.jp/
XOTIC / California Core Series XJ-5st 3TB/Ash/M
5弦ベースは低い音から高い音まで混ざっているから、プリアンプでコントロールできないパッシヴ・タイプって、普段は敬遠することが多いけど、これは5弦と4弦のアタック感も一緒で、とても弾きやすかったです。5弦ベースの指板って音の均整を取るためにフラットなものが多いけど、これは今回テストしたなかではもっともアールが付いていて、実際にはそのほうが1弦ずつの表情が付けやすかったりもする。このベースだとそういった音楽的な演奏もしやすいし、どの弦もしっかりと鳴る。全体的なバランスにも優れていますね。
今に引き継ぐ、名にふさわしい国産パッシブの雄
名器ヤマハBBの最新モデル。メイプルをアルダーで挟み込んだ独自の3プライ構造で、ボディ裏から45度の角度でネックを固定させるマイター・ボルティングを採用し、さらに完成後のベースに振動を加えて鳴りを良くするヤマハ独自のI.R.A.処理を施すことで、理想的な胴鳴りを徹底的に追求しているのが特徴だ。ネックの仕様はメイプル/マホガニーの5ピースになっており反りに強く温かみのあるサウンド作りに貢献。ピックアップにはヤマハ独自開発のYGD V7を搭載したパッシヴ仕様で、BBらしい立ち上がりの良さと、バンドに埋もれないヌケの良いサウンドを実現している。
●問い合わせ:ヤマハ(☎0570-056-808)
◎https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/guitars_basses/index.html
YAMAHA / BBP35
今回のラインナップでは一番野太い感じがあります。BB特有のフロント・ピックアップのキャラクターが強くて、エアー感がすごくある。この斜めから固定するジョイントはすごくいいです。ネック・ポケットに遊びを持たせないあたりは、日本のブランドっぽい作りです。トーン・コントロールのツマミもあるし、BBを弾いたことがある人なら感動すると思いますよ。テンション感が柔らかいのにしっかりと鳴るから弾きがいがあるので、ボトムを支えるベーシストにはピッタリです。パッシヴなのにここまで鳴るのには驚きました。
僕は普段、4弦、5弦、持ち替えながらプレイしていますが、5弦ベースの問題点って、5弦が鳴りすぎることにあると思っています。例えば4弦ベースだと、開放のE音にロー感を合わせるけど、3弦のEやDがボヤけたときは、弾きながら調整して、4弦のEが一番強くなるように弾いたりする。5弦でローBの開放が大きくて、それにゲインを合わせると細かいところで音が弱いポイントが出てきたりすることも多いんです。昔の5弦って、ローBばかりが鳴って4弦が小さいことが多かったけど、今回テストした楽器ではそういう問題はすべて解消されていて、時代の進歩を感じました。
僕はもともとフェンダーの楽器が好きだけど、5弦はいわゆるJBタイプ以外の選択肢も多いですよね。4弦ならフェンダーには敵わないかもしれないけど、5弦となればそういうこともない分、いろんなメーカーの個性が如実に出ているような感じもしました。あと、アクティヴ仕様でもパッシヴに切り替え可能なモデルも含めて、パッシヴ状態の5弦でこれだけバランス良く鳴るベースが出てきたのには驚きました。5弦は必然的に楽器が重くなるけど、それに関しても各メーカーが軽量化を図っている意図も見えたし、5弦ベースが着実に進化していることが、試奏をとおしてよくわかりましたね。
僕が5弦を選ぶときに気にするのは4弦がちゃんと鳴るかどうか。例えば4弦開放のE音のあとE♭音で5弦を弾いたときに音量が凹んでしまってはダメだしね。あとは楽器の音量感。例えばメインで使っているベースに対してゲインが違い過ぎると、持ち替えたときの設定が手間になるから、そこも重要なポイントですね。
この記事を読んで初めて5弦ベースを買うっていう読者は、試奏するときに自分が普段使っている4弦ベースを持っていって、それと比較しながらテストすると自分が欲しい方向性も見えてきやすいと思います。いろんなテイストの5弦ベースがたくさんあるので、気になったものはまず手に取って弾いてみてほしいですね。
本記事は、リットーミュージック刊『ベース・マガジン 2020年2月号』の特集記事を一部転載したものです。本号は付録ダウンロード音源に対応しており、各モデルの指弾きだけでなく、ピック弾きやスラップでの思想音源がダウンロードできます。そのほかにも、楽器の構造からプレイヤーの演奏論に至るまで5弦ベースを40ページで検証! また、5弦ベースで奏でるソロ・ベースやH ZETTRIOによるベース・ライン作り・セミナーも付録ダウンロード音源に対応。ぜひチェックしてみてください!
坂本竜太
さかもとりゅうた●9月8日生まれ、神奈川県出身。10歳でドラムを始め、中学でベースを手にする。21歳からプロとしての活動を開始。ファンク、R&B、ソウルをベースにしたグルーヴあふれるプレイで、スガシカオや水樹奈々、中西圭三をはじめとしたさまざまなアーティストのサポートで辣腕を振るう。また、ベースのみならず、プロデュースやトラック制作でも幅広いアーティストを手がけている。2008年6月には自身初のソロ・アルバム 『Kool maD Groove』をリリースしたほか、2015年にクロスオーバー・フュージョン・スタイルのバンドSPICY KICKIN’でもメジャー・デビュー。ギタリスト荻原亮とのユニットDos Lunaでも活動中。