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- 2024/11/16
BOSS / SY-1
BOSSのSY-1は、ギター/ベース用に開発されたシンセサイザー・ペダル。121種類のサウンド・バリエーションをシンプルなコントロール類で直感的に操作し、本格的なシンセ・サウンドを作ることができるうえに、エクスプレッション・ペダルやフット・スイッチによる高い拡張性もあわせ持っている。今回は、ベース録音も自身で行なうマルチ・プレイヤーTENDREによる試奏をとおして、その高いクオリティに迫る。
本体ボディはBOSSコンパクト・エフェクターではお馴染みの筐体で、コントロールはシンセ音の種類を選ぶTYPEつまみ、TYPEで選んだ音色のバリエーションを選ぶVARIATIONつまみ、音色の効果を調整する2軸2連のTONE/RATE& DEPTHつまみ、エフェクト音とダイレクト音をコントロールする同じく2軸2連のEFFECT&DIRECTつまみ、という構成になっている。また、本機はギターとベース兼用のペダルであるが、電源端子の横にあるギター/ベース・モード・スイッチを“BASS”に切り替えることで、すべてのサウンド・バリエーションがベース用に最適化される。
TYPEつまみとVARIATIONつまみの組み合わせで音色を選ぶ仕組みで、シンセ音の種類はソロやリードに適したLEAD(2種類)、柔らかなパッド・サウンドのPAD、定番ベース・シンセ・サウンドのBASS、シンセ・ストリングス・サウンドのSTR、オルガン・サウンドのORGAN、金属的なサウンドのBELL、効果音やクセのあるサウンドが特徴のSFX(2種類)、ピッチや音質がリズミカルに変化するSEQ(2種類)の11種類。それぞれのシンセ音のタイプに11のバリエーションが用意されているため、合計121種類のシンセ音が選べるようになっている。これほどに多くのサウンド・バリエーションがありながら、操作は実に簡単で、使い勝手は抜群。それぞれのつまみを回しているうちに、自然と好みのサウンドを見つけられるようになるだろう。
BOSS最新テクノロジーによる高性能のカスタムDSPチップを内蔵しており、レイテンシーフリーの快適な弾き心地を実現。通常のコンパクト・エフェクターと同じような感覚で、本格的なシンセ・サウンドを楽しむことができるのが本機の最大の魅力だ。
ツマミは右からTYPE、VARIATION、DEPTH&TONE/RATE(2軸2連)、DIRECT&EFFECT(2軸2連)となる。サウンドのきらびやかさをTONEで、フィルターの開き方やシークエンスのテンポをRATEで調節するが、これらはTYPEとVARIATIONの組み合わせで選んだサウンドによって効果が切り替わる。DEPTHはエフェクトのかかる深さを調節するが、各タイプのVARIATIONつまみ“11”ではピッチを1オクターヴ上まで操作することができる。
本体のペダルを踏み続けている間、直前に弾いたシンセ音が持続するホールド機能も搭載。BOSSの人気ベース・シンセサイザーSYB-5にも採用されている機能だが、SY-1はポリフォニック(和音)対応なので、広がりのあるコード・サウンドをバックに、別のソロ・フレーズを展開することができる。
拡張性に優れているのも魅力のひとつだ。ベースのインプット端子、アンプへのアウトプット端子のほか、センド/リターン端子も備えており、歪み系や空間系のエフェクターをセンド/リターンに組み込んで、SY-1のシンセ音とミックスしたり、シンセ音のホールド時に弾くソロ・フレーズの音作りに活用したりすることができる。センド端子はダイレクト音の出力端子にもなるため、アウト端子からのエフェクト音とセンド端子のダイレクト音を別系統で出力し、個別にエフェクト処理することも可能だ。
EXP/CTL端子に外部フットスイッチを接続すれば、フットスイッチでホールド操作が行なえたり、デュアル・フットスイッチを使えば、そのホールド機能に加えて、選択されている音色に応じて、音のピッチまたはテンポをコントロールすることができる。さらにエクスプレッション・ペダルを活用すれば、TONE/RATEの効果をリアルタイムでコントロールすることができ、よりダイナミックなサウンド変化を楽しむことができる。
ベーシストの表現力を大きく広げてくれる個性的で高品位なエフェクターBOSS SY-1。近年は電子音とバンド・サウンドの融合など、実験的で大胆なサウンドメイクを導入するプレイヤーも目立ってきているが、そんな今時なアグレッシブ・アプローチにも役立つ最新アイテムと言える。まさに、“令和の時代”のベーシストにぴったりだ。
ここまで色彩豊かなのに、誰でも簡単に操作できてしまう。
まず、めちゃくちゃレンジが広い。TYPEつまみで切り替えることができる音色は、ベース・タイプはもちろん、そのほかのすべてのタイプに関しても、高音域のヌケもあれば、下のポジションを弾いたときにちゃんと順当に低音域が付いてきてくれる。鍵盤ではなくて、エレキ・ベースだからこそ作れるフレーズにシンセ・サウンドがちゃんと付いてきてくれるうえに、直感的に楽しく音を作ることができるっていうのが僕の第一印象です。バリエーションがすごく豊かなのに、つまみもわかりやすいし、少しいじるだけでいろんなサウンドを試すことができるから、誰でも楽しめると思います。 ベーシストっていろんなタイプがいると思うんですけど、自分でトラック全体を作る人もいて、そのなかで“ベースをどう遊ぶか”って楽しんで作るのが今っぽいのかなと思うんです。こういうペダルが出ることで音楽がすごくおもしろくなるし、新しい発想で曲を作れるようになるエフェクターだなと感じました。
TENDREが試奏動画で演奏したサウンドのセッティング。ダビングして2トラックのベース演奏を届けてくれたが、ひとつ目はTYPEつまみを“BASS”に、VARIATIONは1に設定。フィルター系のサウンドでボトムを支えた。ふたつ目は“LEAD1”のVARIATION 7をセレクト。シンセ奏者によるソロ・プレイのようなウワモノを重ねている。TENDREによるドープかつチル・サウンドなリズム・トラックに乗せたスムーズなプレイをぜひともチェックしてほしい。
本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン 2020年1月号』の特集記事を転載したものです。今月号の表紙は、“SPECIAL PROGRAM 5弦ベースの真実”。今どきのバンドマンが5弦ベースの最新認識について座談会を行なったり、4弦派MASAKIと5弦派IKUOによる対談など、5弦ベースの真実に迫ります。ほかにも、ジャズを変革し続けるH ZETT NIRE(H ZETTRIO)の特集や、“冬”にちなんだ楽曲を5弦ベースによる独奏で楽しむ奏法特集などなど盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!
価格:オープン
TENDRE
てんだー●1988年6月15日生まれ、横浜市出身。ベースをはじめ、鍵盤、ギター、サックスまで、多様な楽器を操る河原太朗によるソロ・プロジェクトで、録音は全曲でベース・パートを演奏している。2008年にampelを結成し、ベース・ヴォーカルを担当。2017年からソロ活動を開始し、フジロックフェスティバル’19を始め、さまざまなフェスに出演。HondaのCMに「ANYWAY」が起用されるなど、多方面で評価されている。最新作はEP『IN SIGHT』。