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- 2024/11/16
Roland / TD-50KVX
2017年に制定され、今年で3年目を迎えた“10月10日=ドラムの日”。それを記念し、ドラムの日を含めた1週間を“Drummer’s Week”と命名し、さまざまなイベントが開催された。中でも10月11日に“電子ドラムの日”と題して行われたCrossfaithのTatsuya Amanoのイベントでは、彼が愛用するローランドのエレクトロニック楽器をフィーチャー。ハイブリッド・ドラムとV-Drumsを駆使して圧巻のパフォーマンスを繰り広げてくれた。ここではそのクリニック編の模様を迫力の映像と共にお届けしていこう!
10月11日にドラムの日の“後夜祭”として、渋谷のTsutaya O-CRESTで開催されたTatsuya Amanoのスペシャル・イベント。この日は“♯電子ドラムの日”と銘打たれ、ステージ上にはCrossfaithで使用するSJCのキットにドラム・トリガーを組み込んだハイブリッド・ドラムと、22"のバス・ドラム・パッド=KD-220を配したV-Drumsのフラッグシップ・モデル、TD-50KVXが鎮座。2台のドラムが並ぶ圧巻の景観は、どこか神々しくも感じられる。
イベントは二部構成で、ここでレポートする一部のドラム・クリニックは、椅子席の後方に大勢の立ち見の観客が埋め尽くすほどの満員御礼状態。その熱気の中、Tatsuya氏が登場すると、まずはウエルカム・ドリンクならぬ“ウエルカム・ビート”として、Crossfaithの「Freedom」を披露。SEが流れ、「お~っ」というどよめき後に放たれた一発目のクラッシュ強打では、“ビクッ”と身体を反らす人がいるほどの衝撃波が! 音量/音圧はもちろん、音に込められたものすごい“気”が客席を揺さぶる。オープニングとは思えない怒涛の勢いで飛ばしまくり、時に立ち上がり、スティックや頭を振り回し、会場全体を巻き込んで盛り上げていく。ステージ両脇にはスクリーンが設置されており、ゴツいブーツでツーバスを高速連打する足元もしっかりと確認。重力を最大限に利用したような全身の激しい動きが、まるで無重力状態を漂うように艶やかに感じられるなど、その二面性にも魅了された。
楽曲が終わると続いて使用機材の解説へ。通称“モフモフ”と呼ばれるSJCのキットは、28”の大口径バス・ドラムを核としたその見た目も強烈だが、本人曰く鳴らしやすいそうで、パンチのある音が気に入っているという。シンバル類はマイネルで統一。そしてこれらのアコースティック・ドラムには、ローランドのハイブリッド・システムを導入。バス・ドラムにはドラム・トリガー=RT-10Kを装着し、左手側にはSPD-SXとPD-8のパッド類、さらに足元にはキック・トリガー・ペダル、KT-10をそれぞれ配置。トリガー類は音源モジュールのTD-30に接続され、ドラム・トリガーは音源モジュールのTD-30を鳴らし、レコーディングで使用した音色はSPD-SXに取り込んで、パッド類で鳴らしているという。また、バス・ドラムは生音にトリガーでアタックを強調した音色を重ねているそうで、そのトリガー音のあり/なしを実演。トリガー音を加えることで、太いキックの低域にガチッとした硬質な輪郭が補強され、レスポンスやインパクトが増すのはもちろん、高速連打においてもツブ立ちを明確に伝える効果が実感できたのは貴重な体験であった。音を遠くまでストレートに届けられるトリガーは、海外の大型フェスではすでに当たり前になっており、日本でも導入するドラマーが増えているが、Tatsuya氏は約10年前から独学で取り組んでいたということで、その先見の明にあらためて驚かされる!
▼オーディエンスを鼓舞したTatsuya流ハイブリッド・ドラム
続いてVドラムへと移動。高校時代は入学祝いに買って貰ったV-Drumsで練習をしていたというTatsuya氏。現在ではCrossfaithの楽曲制作に必要不可欠な存在となっており、その生々しい空気感のある音色が気に入っていると語る。この日は音源モジュールTD-50に加えて、TD-30の音源も連動させた最強のシステムで、まずはTD-50を使って楽曲に合わせてのデモ演奏を披露。Tatsuya氏が審査員を務めた2015年のドラム・マガジン・コンテストの課題曲「Paradigm Shift」で、生ドラムと変わらぬ迫力と表現力に加えて、上体の動きが見えやすいという点も、観客にはうれしいポイントだったことだろう。
その後のQ&Aコーナーでは、「パワーを出すには“押し”よりも“引き”が大事」や「正確なリズムを叩くコツ」などについて、実演や自己の経験を引き合いに出して丁寧に解説。中でも印象的だったのは「小さい音のコントロールの重要性」についてで、V-Drumsは小さく叩いても聴き取りやすい音量でタイミングを確認できるのでダイナミクス表現に役立つとのこと。録音機能も活用してシビアに練習していたそうだ。
▼Crossfaithの楽曲に欠かせないV-Drums
クリニックのラストには、V-Drumsを使ってソロ・パフォーマンスを展開。テーマは“インスピレーションを高めるために日頃の隙間時間に遊んでいる様子を再現”。スネアやシンバルのロールから始まり、ファンク系~ラテン風とさまざまなスタイルを網羅。途中にはジャズの内蔵音源にあわせたスウィングで柔軟なスティッキングを披露するが、その中にもブラスト・ビートを意識した激しい音符を融合させるなど、ジャンルを超えて個性を発揮する能力にも舌を巻く。音色の切り替えをこまめに行いながら進み、スネアの打面に手を置いた状態で行うクローズド・リム・ショットや、ライドのボウを手のひらでタッチして響きを止めるなど、パッドの特性を生かしたプレイも含めて、V-Drumsの魅力を存分に発揮。最後はラウドな音色で得意のツーバス連打を絡めて、激しいドラの一撃で終了。大喝采の中でクリニックは幕を閉じた。
今回はクリニック&ライブという2部構成の形で、すごくやり甲斐がありましたし、楽しかったです! それに生ドラムはもちろん、いつかやってみたいと思っていたRolandのV-Drumsも並べて演奏することができたので、より濃厚な時間となりました。これからもっとドラムの音に耳を傾け、ドラム好きの人がさらに増えますように。
本記事は、11月25日発売のリットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2020年1月号』の転載記事になります。本号では3年目を迎えた"10月10日=ドラムの日"記念イベントの模様を表紙特集として大々的に展開。Tatsuya Amanoもカヴァー・アーティストの1人として表紙を飾っています! そしてclose up!では"RolandのHybrid Drumsが変えるライヴ・サウンドの現場"と題して、coldrainのKatsumaをフィーチャーし、アコースティックとエレクトロニックを融合した、ハイブリッド・ドラムの"現在"に迫っております。本記事と併せてぜひお楽しみください
価格:オープン
価格:オープン
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Tatsuya Amano
アマノタツヤ:Crossfaithのドラマー。幼少期よりパーカッション・ドラムを始め、弱冠20代前半にしてドラム歴10年を越える。世界30ヵ国以上でのワールド・ツアーも行い、誰をも魅了する派手で華麗なパフォーマンス、そして“ターミネーター”とのあだ名がつくほどの正確かつパワフル
なドラミングは世界中で評価され2013年アメリカのVans Warped Tourで行われたドラム・コンテストで優勝。現在は12月まで続く"Operation X Tour wave. 03"の真っ只中で、全国のファンを熱狂へと導いている。