PRS GUITARS & AMERICAN VINTAGE GUITAR SHOW 2024
- 2024/09/04
Yamaha / THR10Ⅱ Wireless
Yamahaから登場した新たなTHR-Ⅱシリーズの実力を、3人のプロ・ギタリストが月替わりでチェック。最終回はGLIM SPANKYの亀本寛貴がTHR10Ⅱ Wirelessをプレイしてくれた。幅広い世代のロック・ファンを魅了する名手は、THR-Ⅱシリーズのサウンドをどう感じたのだろうか?
THR-Ⅱシリーズのギター・ワイヤレス・システム対応20Wモデル。THR30Ⅱ Wirelessとは異なりアンプ・モードの切り替えが本体ではできないが、スマホ/タブレット上のアプリケーション=THR Remoteを使用することですべてのサウンドが使用可能となるため、機能的な差異はない。
本体充電とギター・ワイヤレス・システムを取り払ったシンプルな20Wモデル。そのほかの基本機能はTHR10Ⅱ Wirelessと同様だ。すでに自身のワイヤレスを所有している人、ケーブルを使った従来の操作性を求める人にはこちらのほうがお手頃だろう。
高品質な卓上型ギター・アンプとして人気を集めているヤマハTHRシリーズ。音色の異なるTHR10、10C、10Xの3モデルで展開していた従来の10Wラインナップがこのたび出力も20Wに増強され、1台にまとまってさらに大幅リニューアル。また、出力の大きな30WモデルのTHR30Ⅱ Wirelessも登場した。その新たなTHR“ Ⅱ”シリーズの注目点は、何と言ってもギター・ワイヤレス機能(Line 6のRelay G10Tに対応/別売り)と、充電式バッテリーの搭載による“フル・ワイヤレス”の実現。自宅でアンプを鳴らす時、シールドなどのケーブル類は意外と取り回しが面倒だが、本機ならそんなわずらわしさは一切ナシ!
なお、30WモデルのTHR30Ⅱ Wirelessはフル・ワイヤレス対応機のみだが、20Wモデルでは充電式バッテリー&ワイヤレス機能なしのシンプルなモデル、THR10Ⅱも選べるようになっている。アンプ・モデルはエレキ・ギター用のほか、ベース用、エレアコ用、ライン機器用も含めた充実の計24種類。それもこれまでのアンプ・モデルを単に集約したわけではなく、新シリーズのために再モデリングが施されている。また、スピーカーも変更され、音質も一段とグレードアップ! サウンドと使い勝手が格段に向上したTHRシリーズ。ぜひ店頭でその実力のほどを体感してみよう!
THR-Ⅱシリーズに搭載された数々の機能を、 フラッグシップ機のTHR30Ⅱ Wirelessを見ながら紹介していこう。
Bluetoothボタンを押せば、スマートフォンやタブレットと連動させてスマホ内の音源を流すこともできる。また、ユーザー・メモリー・ボタンは本体に5つ用意されており、自分で作り上げたサウンドをボタンで簡単に呼び出すことが可能。なお、アプリを使えばさらに多くのサウンドをメモリーできる。
ライン出力端子(THR30Ⅱ Wirelessのみ)から、信号を外部スピーカーやPA卓に送ることも可能。USB端子も備えているので、オーディオ・インターフェースとしても活用できる。クラスコンプライアント対応でスマート・デバイスにもドライバー不要で接続可能。
ワイヤレス・モデルにはLine 6のギター・ワイヤレス・レシーバーを装備。Line 6 Relay G10Tトランスミッター(別売り)をギター側に取り付けるだけで、快適なワイヤレス環境が楽しめる! Line 6のRelay G10/G10Sユーザーは別途Relay G10Tトランスミッターを用意しなくてもRelay G10/G10Sのトランスミッターが使えるのでWirelessモデルがオススメだ。
内蔵エフェクトのエコーやトレモロのディレイ・タイムが設定できるTAP/TUNERスイッチ。このスイッチを長押しすると、クロマチック・オート・チューナー・モードが作動する。
クラシック、ブティック、モダンのアンプ・モード切り替えスイッチと、アンプ・タイプ・ツマミとの組み合わせにより、エレキ・ギター用15種類のほか、ベース用、エレアコ用、ライン機器用を含めると充実の計24種類のアンプ・モデルを選ぶことができる。
コーラスやリバーブといった8種類の高品位エフェクトを搭載。エフェクト量が視認しやすく、なおかつほかのエフェクトへシームレスに移行できるコントロール・ツマミを採用。
PCやスマートフォン/タブレットと連動する専用アプリケーションTHR Remoteを活用すれば、さらに細かく音色を追い込んでいくことも可能だ。アプリにはアンプ本体には設けられていないパラメーターも多数用意。20WモデルはこのTHR Remoteでアンプ・モードの切り替えを行なう。
アプリはiOS/Android版も用意されており、PCやスマートフォン/タブレットによる遠隔操作もできる。ツマミの調節のために、わざわざアンプの場所まで戻る必要ナシ! また、アプリ上で外部Bluetoothフット・コントローラーをペアリングすれば、音色プリセットの切り替えやエフェクトのオン/オフまでワイヤレスで可能。
THR Head/Cabnetを除く、すべてのTHRシリーズが収納可能な専用キャリーバッグ、THRBG1も用意されている(別売り/税抜:7,000円)。
まず、僕が機材において特に大事だと思っているのが見た目なんですけど、本機は色やグリルのデザイン、ロゴの置き方まで実に良いですよね。ヤマハの伝統的な雰囲気を受け継ぎながらもスタイリッシュだし、なおかつレトロに仕上がっている。それに音色もバリエーションが広いし、それぞれのアンプ・タイプのコンセプトがよく伝わってきます。コンパクトながらも音の作りがいがあるアンプで、ギターを弾き慣れている人ならクラシック/ブティック/モダンの違いはすごく楽しめると思いますよ。あと、僕はステージでワイヤレス・システムは使わないんですけど、こういう機会に実際に使ってみるとやっぱりケーブルがないのは楽ですね(笑)。
また、今回はTHR30Ⅱ Wirelessも弾いてみましたが、10Ⅱよりもサラウンド感が増す印象です。出力が大きいだけあって、さすがに出音がダイナミック。ただ、THR10Ⅱもこの小さなサイズとは思えないくらいの迫力なので、練習用アンプとしては十分だと思います。見た目もオシャレだし、個人練習から音楽鑑賞、音楽制作まで1台でカバーできるので、これからギターを始める若い人には特にオススメしたいですね。
クラシック・モードの“CLEAN”はビンテージ感のあるアメリカンなサウンドで、そのまま弾いても気持ち良かったのでEQもほとんどフラットのままです。このサウンドのベースになった真空管アンプにはトレモロやリバーブが付いていると思うんですけど、今回は本当にそういうアンプを弾いている感覚でセッティングしましたね。
これはカントリーやフォーク、60年代のロックみたいな要素が入っている音楽にはマッチする音だと思います。あと、僕がよく使うこれくらい小さい真空管アンプは、ボリュームを上げると歪むんです。でも本機だとクリーンのまま音量が上がるので、現代的で扱いやすいサウンドですよね。
クランチ・サウンドではブティック・モードを選びました。“ブティック”というネーミングから、小ぎれいな音をイメージしていたんですけど、意外とスモーキーというか……ブルージィなプレイやジャジィな曲にハマりそうなサウンドですね。ほかのモードの“CRUNCH”に比べてミドルが少し持ち上がっている印象で、そこがビンテージな音というか泥臭い雰囲気につながっていると感じました。
ただ、今回は音のバランスを取るために、あえてミドルを少しカットしています。あと、僕はギターのボリュームを回してゲインを調節するのが好きなので、アンプ側のゲインを上げ目にしました。
EQはすべてフラットで少しリバーブをかけただけですけど、それだけで気持ちよく弾けますね。アコギをアンプで鳴らすことは普段あまりないんですけど、こうして弾いてみるとギターの生鳴りとアンプの音がミックスされて心地良いです。生音やラインで弾くよりも楽しいかもしれない。
マイク・シミュレートは、コンデンサー(クラシック・モード)、チューブ(ブティック・モード)、ダイナミック(モダン・モード)の中だとチューブの音がおもしろかったけど、今回は演奏環境の音量感で最もスタンダードな質感のコンデンサーを選んでみました。あと、アコギでワイヤレスというのは、家でもステージでもやっぱり便利ですよね。
本記事は、リットーミュージック刊『ギター・マガジン 2020年1月号』にも掲載されます。
価格:オープン
価格:オープン
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亀本寛貴(GLIM SPANKY)
かめもと・ひろき◎60〜70年代のロックやブルースを基調にしながらも、新しさを感じさせるサウンドで大きな注目を集めている男女2人組のロック・ユニットGLIM SPANKYのギタリスト。最新作は5thシングル「ストーリーの先に」。