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- 2024/11/25
HISTORY HG-SE/FM、HG-TE/FM
設立25周年を記念し、ラインナップをフルモデル・チェンジしたHISTORY。25周年を締めくくるにふさわしいフラッグシップ・ギターがHG-SE/FMとHG-TE/FMだ。この2本の魅力を“教則界のカリスマ”ギタリスト宮脇俊郎氏が、試奏とインプレッションとともに紹介する。
HISTORYは、2019年というブランドにとって記念すべき年の締めくくりに、レギュラー・ラインのフラッグシップとなる“HGシリーズ”を発表した(ギター2本、ベース2本)。このHGシリーズは、すでに発売されているビンテージ系のHSシリーズ、CZシリーズとは趣が異なり、現代における弾きやすさを追求したモダンなラインナップだ。トップには天然杢のフレイム・メイプルをあしらい、ハイエンド・モデルらしい美しさを持つギターである(型番の最後のFMは、フレイム・メイプルを表する)。
ややスリムで抱えやすいディンキー・スタイルのボディ・シェイプを持った、いわゆるSTタイプのモデル。ボディはアフリカン・マホガニー・バック、4mm厚のフレイム・メイプル・トップを採用。マホ・ボディらしい、甘く、太く、粘りのあるサウンドを持っている。同時に、ヘリテイジ・ウッド・ハードメイプルのネックと硬質なグラナディロの指板が、音の輪郭をぼやけさせない。天然杢の美しさを際立たせるため、木地着色した後にラッカーで仕上げ、素材の持つ美しさを際立たせており、ゴールド・パーツと相まったゴージャスさはフラッグシップ・モデルにふさわしい。
2ハムバッカーでありながらオート・コイルタップの5Wayレバー・スイッチにより、フロント、フロント・タップ(内側のコイル)、フロント・タップ(内側のコイル)とリア・タップ(内側のコイル)のミックス、リア・タップ(内側のコイル)、リアと多彩なサウンドメイクが可能。加えて、5Wayレバー・スイッチの位置に関わらず、瞬時にダイレクト配線(トーンとボリュームの回路を介さずに出力する配線)のリア・ハムバッカーで呼び出せるミニ・スイッチを搭載。タップしたミックス・トーンでバッキング、ソロではパワフルなリアを選択するといったことが、手元で一瞬で行なえる実践的な仕様だ。
2点支持のブリッジ、ロック式ペグにより、アーミングの滑らかさ、安定感は抜群だ。サークル・フレッティング・システムを採用し、ピッチも非常に良い。特筆すべきはナット、そしてフレットのエッジの精緻な仕上げで、熟練の職人の手による見事な仕事は、このモデルの弾きやすさに大きく貢献している。
想像以上に音が太いですね。これ、ボディ・バックにマホガニーを持ってきたのが正解なんじゃないでしょうか。アッシュやアルダーではなく、マホガニーならではの太さだと感じました。これでジャズ系も問題なくいけますよ。トップのメイプルの厚さが変わっていたら、もっと音が硬くなっていたと思うんです。ちょうどいい厚さなんでしょうね。それから、このタップした音も弱々しくなくて良いし、一瞬でリア・ハムバッカーに切り替えられるミニ・スイッチも効果的です。大人のためのロック・ギターという印象ですね。
いわゆるTLタイプだが、エルボー部分とウエスト部分にコンター加工が施され、スリムで抱えやすくなっているオリジナル・デザインのモデルだ。
こちらもHG-SE/FM同様、ボディ材にはアフリカン・マホガニー・バック、フレイム・メイプル・トップを採用している。本器の最大の特徴は、ボディにチェンバー加工を施している点だ。これにより、ボディの軽量化に成功。また、サウンド面でも明らかなエアー感を獲得している。一方では重量のあるブリッジを採用していること、さらに本器もネックにはヘリテイジ・ウッド・ハードメイプル材を、指板には硬質なグラナディロ材を使用していることも相まって、サステインは失われておらず、音には腰がある。
フロント・ピックアップはボディ直付けのハムバッカーだが、ミニ・スイッチでタップもできる。その場合、外側のコイルが生きる。この音も、いかにもタップして痩せましたといった類の音ではなく、しっかり使えるタップ・サウンドになっている点がうれしい。
サークル・フレッティング・システムを搭載していること、ナットやフレット周りの精緻な仕上げはHG-SE/FMと同様だ。ゴージャスなルックスにふさわしい、豊かな響きを持ったギターである。
表にきれいな杢目が出ているギターって、経験上、重い印象があるんですよ。でも手にしてみたらチェンバー加工のおかげですごく軽かったんです。そこが、まず驚いた点ですね。サウンドに関してはボディ・バックのマホガニーとチェンバー加工が効いていると思います。適度な甘さがあって、高音弦を使ったカッティングをしても耳が痛くならない。でも、音の芯の部分はヘリテイジ・ウッド・ハードメイプルのネックが確保している。そんな感じですね。それから、個人的に大好きなのは、コンター加工されている点です。美しい杢が綺麗に見えるよう、トップを曲げて貼ってあるんですね。見た目もいいですし、弾きやすいです。これは、個人的にかなり好きなタイプのギターですね。
2本に共通して良かったのは、ボディ・バックにマホガニーを採用している点ですね。アタックを出そうと思えばパーンと出るんですけど、アタックをちょっと控えめにしたときの、中域の柔らかい感じがすごく良かったです。あとは2本ともタップが使える! おまけのタップではなく、音色の選択肢としてちゃんと使えるタップになっていますね。例えば、ジャム・セッションに行くときに、このどちらかのギターを持っていけば、アンプに直結でも良い音が出せるんじゃないですか? 余計なものは要らないですよ。
これだけの仕様だったら、40万円オーバーでもおかしくないと思います。それでこの価格なら、コストパフォーマンスは良いと思いますよ。フレットの処理が丁寧で、とても弾きやすかったのも好印象です。この2本は、どちらもフラッグシップ・モデルの名にふさわしい、良いギターだと思います!
価格:¥328,000 (税込)
価格:¥317,000 (税込)
宮脇俊郎(みやわき・としろう)
1965年生まれ。兵庫県出身。ビートルズで音楽に目覚め、ギターを手にする。東京学芸大学卒業後にギタリストとしての活動をスタートし、1999年より自ら主宰するギター・スクールを立ち上げる。これまでに多数のギター教則本&DVDのほかに「ポピュラー・ピアノ入門」、「なるほどベース理論ゼミナール」など、ギター以外の教則本も制作。近年は台湾、中国北京・蘇州・上海でライブ&セミナー、デモ演奏を開催するなど海外の活動にも力を入れている。2017年7月より、世田谷区下北沢にギター教室を移転。エレキ・ギター、アコースティック・ギター、ベース、音楽理論、ピアノ弾き語りなどのレッスンを実施中。2018年からはオンライン・レッスン「宮脇俊郎オンラインアドリブ塾」を開講している。