AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Fender / Amplifiers
現在、フェンダーから発売されている4つの新型アンプをCharがチェック。真空管のないデジタル・アンプが4機種中3機種というラインナップだが、日本が誇るギター・ヒーローは今のフェンダー・サウンドをどうとらえるのか? 動画と合わせて、ぜひ読み進めてほしい。
ハイゲインまでカバーする歪みと、艶やかなリバーブを持つ2チャンネル仕様のチューブ・アンプ。プリ管に12AX7を3本、パワー管にEL84を4本使用し、30Wの出力を誇る。スピーカーには12インチのセレッションVタイプを1基搭載し、生々しく力強いサウンドをアウトプット。付属のフット・スイッチでチャンネルの切り替えと、チャンネル2をさらにブーストすることが可能で、これによりクリーン、クランチ、リードの3種の音をライブでも使い分けできる。また、プリアンプのアウトプットとパワー・アンプのインプットの間にエフェクターを接続できるエフェクト・ループを搭載し、空間系エフェクトを美しく響かせることも可能だ。
──今日はよろしくお願いします!まず、Bassbreaker 30Rは今回では唯一の真空管アンプです。音を出した第一印象は?
ハイブリッド版フェンダー・アンプという感じだね。とにかくすごく歪むから。けどフェンダーらしさがちゃんとあって、音量もあるし、まずルックスがカッコいいじゃん。やっぱりデザインってすごく大事なんだよ。デジタルのツイン・リバーブとかはあくまで昔ながらのルックスで、ムスタング(次項参照)はデジタル・アンプらしいデザインだよね。で、これも見た目の印象どおりの音がするよ。
──確かにモダンな見た目です。このアンプはライブ・イベントで実際に使ったことがあるそうですね?
そうだね。実際、バンドのサウンドに混ざった時にも使えるんだよ。抜けもいいし、音量もあるから。この大きさでこれなら、使えるよ。
──フット・スイッチのチャンネル切り替えも含めて、操作性はいかがですか?
フット・スイッチでクランチとかオーバードライブに切り替えられるんだけど、俺の場合、自分の歪みエフェクターをつないで使うから……でも、エフェクターを使わずともこれ(フット・スイッチ)だけあれば十分じゃない?
──アンプで歪ませて、手元のボリュームを絞った時の音も試していただきましたが、絶妙なクランチですね。
そう。あれが俺の求めているもので、手元で音量を下げてコード感が出る程度に歪みを落としたいんだよね。今、アンプのツマミを全部10にしてるんだけど、この状態でも問題なく手元で音を作れる。とにかく、俺みたいな60~70年代的な音を出す奴にも、これからの2020年代の音を出したい人にも使えるアンプだね。
フェンダーのデジタル・アンプ、ムスタング・シリーズの最小モデルがこのLT 25。50ものプリセット(30のファクトリー・プリセット+REPLACE機能により追加できる20のプリセット)により、手に入れてすぐにほぼ全ジャンルの音楽を演奏することができる。また、20のアンプ・タイプ、26のエフェクトを搭載し、音を作り込んでいくことも可能だ。視認性の良い1.8インチのカラー・ディスプレイ、クロマティック・チューナー、外部音源とのセッションに使えるステレオAUX入力端子、録音やファームウェアのアップデートに便利なUSB端子を搭載し、家庭用アンプとして初心者からベテランまで楽しめる一台である。
──お次はムスタング・アンプです。手始めにファクトリー・プリセットの30種を一気に弾いていただきました。
うん、これは足下に30個のエフェクターがあると思えばおもしろいよね。例えば曲作りの時、ある音が欲しい場合に実際にエフェクターを並べたりPro Toolsから引っ張ってくるよりも、このアンプでイメージを膨らませたほうが手っ取り早いんじゃないかな。音をスケッチする時に良いというか……“アコギっぽい音のカッティングが入っていたらどうか”という時には、これのアコギっぽいやつ(※プリセット30/ACOUSTIC SIM)をガイドとして弾いてみたりね。サウンドがかなり独特だから、これはこれで使えるし。もし俺がこのプリセットで音を出したら、みんなはエレアコを弾いているとしか思わないんじゃないかな?
──なるほど。
家庭用レコーディング機材として、これでイメージを作っていくのはおもしろいと思うよ。ここに入っている以上にエフェクトの種類なんて、もうないでしょう?
──そうですね。これだけ多彩な音色があると、それにインスパイアされて曲もできそうです。
作れるよ。最初のプリセットだけで30曲というか、30フレーズは間違いなく作れる。さすが、ムスタング(笑)。
名機ツイン・リバーブのサウンドをデジタル技術で具現化してみせた逸品。オリジナルの85Wチューブ・アンプの広大なヘッドルームによるクリアなサウンドを再現した200Wデジタル・パワーアンプや、ネオジム・マグネットを採用した2基のジェンセン・スピーカー、豊かなレゾナンスを持つパイン材のキャビネットなどが複合的に絡み合うことで、極めてオリジナルに近い音を実現した。リアパネルには6段階の出力セレクター、IRキャビネット・シミュレーション付バランスXLRライン出力、ファームウェア・アップデート用USBポートなどを装備している。ツマミの構成はオリジナルと同様ゆえ見た目の印象は変わらないが、重量はなんと約半分の15kg!
上記のツイン・リバーブと同シリーズにあたる、デラックス・リバーブのデジタル・アンプ。ツイン・リバーブに比べるとやや歪みの強いサウンド・キャラクターを真空管なしで見事に復刻している。パイン材のキャビやジェンセン・スピーカー(1基)、XLRライン出力端子、USBポートなどは左のツイン・リバーブと共通。リア・パネルの出力パワー・セレクターも付いており、最小で0.2Wまで落として音を鳴らせる。約10kgという軽さも含め、自宅での使用も検討できるだろう。
──そして注目のトーンマスター・シリーズです! まずツイン・リバーブですが、最初に音を出した印象はどうですか?
とりあえずツマミを全部10にしてみたけど、まさにフェンダーの音。これぞツイン・リバーブという音がするね。
──ツイン・リバーブはよく使っていたんですか?
スタジオ・ミュージシャン時代にね。昔はどこのスタジオに行ってもあったから。状態はバラバラで、歪むものもあれば、全然歪まないものもあったけどね。
──今回のアンプはデジタルで当時の音を再現したモデルなんですよ。
デジタル感はほとんど気にならないね、こうしてひとりで弾いていると。デジタルは真空管アンプのようにトラブらないし、さっき言ったコンディションのバラつきもない。音色的には歪まないツイン・リバーブの音をちゃんと再現できているよ。意外と大きい音もするしね。
──フルテンだとかなり大音量ですね(笑)。あとこのアンプは、出力を小さくできるセレクターが付いてるんですよ。
ちょっと変えてみてくれる? ああ、歪まずクリーンなままで音量だけ下がるんだ。リバーブは付いているの?
──あります(リバーブをオン)。
これこれ、これだよ(笑)。これもデジタルなんだろうけど、スプリングっぽい感じがよく出てると思う。アンプを揺らしても“ガシャン!” って言わないところだけがもの足りないけど(笑)。……それで今、揺らしてみたら軽くてびっくりした。ツイン・リバーブは重いから、これは喜ばれるかもね。俺は昔、ツイン・リバーブを電車で持って移動したことがあるんだよ。あれは重かった(笑)。
──(笑)。続いて、同じシリーズのデラリバも試してみましょう!
やっぱりフェンダーの音だね。単純にスピーカーが一発になったとか、こっちのほうが歪むとか、ツイン・リバーブとの違いも感じるけど、基本的にはこのシリーズに共通するフェンダーそのものの音。使いやすいと思う。
──これも出力をコントロールできて、0.2Wから使えます。
やってみて。……うん、やっぱりこのアンプのほうが歪むね。音量を下げても歪んだ音が出せるから、家で弾くのに良いよ。普通は小さい音で歪ませると、どうしても雰囲気が違うんだけど……これはデジタルだからできるんだろうね。いいアイディアだと思うよ。これはツイン・リバーブと比べて、けっこう音が伸びるなぁ。
──Charさんが弾くフレーズも自然とよりロックですね。
ペラペラな音だとこんなの弾けないでしょ(クリームの曲などをプレイ)。音色に導かれるところって確実にあるんだよ。エレキ・ギターは幸か不幸か、生音じゃこんな音しかしないからさ(生音を鳴らす)。やっぱりアンプって大事なんだよね。
ギターを始めた頃、俺はベンチャーズから入ったんだけど、その頃彼らはフェンダーのギターとアンプを使っていて、そのセットがいつも頭の中にあったんだよ。その当時はフェンダーのアンプを買えるなんて夢にも思わなかったし、まぁ、あこがれの存在だったよね。
そのあと、70年代初頭に俺がプロとしてスタジオで弾き始めた頃に、ようやくフェンダーを弾けるようになった。その当時、フェンダー以外にコンパクトでちょうどいい音量のアンプなんてなかったから、どこのスタジオに行ってもフェンダーのアンプがあったんだけど、みんな状態は良くなかったね。ネットが破れていたり、アンプを斜めに立てる脚が曲がっていたりして。まぁ当時のエレキ弾きは、とにかく乱暴なやつが多かったから(笑)。とにかく、当時の録音方法はパーテーションを立てて音の被りを防ぎながらみんなで“せーの”で録っていたから、音がデカすぎてもダメだし、ちょうど良いアンプはフェンダーしかなかったんじゃないかな。“ちょうどいい音量の、音の良いアンプ”ということでエンジニアがフェンダーを選んでいたんだと思う。
それで、その頃にフェンダーを弾いていた俺が今日は現代のフェンダーを弾いたわけだけど、おもしろかったよ。ツイン・リバーブとデラックス・リバーブに関しては、昔のフェンダーと変わらないね。デジタルといっても99%変わらない、というか、言われなければわからないよ。バンドの中で鳴らしてみないとハッキリ言えないところもあるけど、少なくともひとりで弾いている分には全然わからない。“え、真空管アンプじゃないの?”っていう感じだった。
ムスタングは、まさに最先端なアンプ。音も悪くないし、最初の30種類のプリセットのうち20種類ぐらいは俺も“使える”と思った。日本はアメリカみたいに、大きなガレージがあって隣の家とも離れているみたいな環境じゃないから、そういう中で弾くにはすごく良いアンプだね。俺らの頃はエフェクターといったら、ワウとファズぐらいだったけど、こんなに多種多様な音があればいろんなアイディアも浮かぶじゃん。これ、一度に10台とか20台積んで使ったらおもしろいんじゃない、全部の音を変えて(笑)。どうなるのか、興味はある。まぁとにかく、これを弾いて“デジタル・アンプも良くなってきているな”と思ったよ。
Bassbreaker 30Rは、さすが真空管。30Wにしては音がでかいし、抜ける。見た目も進化してて、ツイン・リバーブ、デラックス・リバーブが1964年オリンピック、こっちは2020年オリンピックって感じだね(笑)。これはライブでもスタジオでも使えるし、昔ながらのフェンダーのクリーン、クランチ、それからメタルのような歪みも作れる。幅広く、いろんなジャンルに使えるアンプだよね。
どのアンプもそれぞれ良かったけど、俺は特にツイン・リバーブ、デラックス・リバーブが印象に残ったかな。特にデラリバ。俺がスタジオの仕事を始めた頃はモデル名なんか誰も気にしていなくて、みんなただ“フェンダー”としか言っていなかったけど、こうして弾くと当時よく使っていたのはデラリバだったのかもしれない。でもまぁ、俺が買うとしたらこっちかな(Bassbreaker 30R)。だってこっち(Tone Masterシリーズ)を買ったら普通に“え、Charさん新品のツイン・リバーブ買ったんですか”って言われちゃうじゃん(笑)。俺が使ってきたアンプの歴史って、みんな“人と違うから”とか、“見た目がカッコいいから”とか、そんなもんだからね(笑)。
それで、いわゆる電子機器の進化とともに、俺も50年ギターを弾き続けているわけだけど、今の若い子の中にはギターを買ったらアンプじゃなくてコンピュータに突っ込むやつもいるじゃん。それはそれでいいんだよ、ギターはどう始めてもいいから。だけど、やっぱりアンプに突っ込んで、デカい音出して無敵になる感じも味わってほしい。昔の言葉で“シビれる”って言うんだけど、その感覚だね。小さい音でギター弾いてもいいんだけどさ、いざバンドを始めようって時にはデカい音が絶対必要になってくるんで……早いうちからアンプにブッ込んで弾く経験もしてほしいよね。
そういった意味で、今の時代、フェンダーはこうして新しいものを作ってくれるから、今の若い人には選択肢があると思う。価格もそんなに高くない、というか俺に言わせれば安いしね。ムスタング・アンプなんか、フェンダーのロゴが入っているのに2万円程度で手に入るんだから、こんなにうれしいことはないというか。俺ら、お小遣いが30円の時代にフェンダーは20万円だったからね(笑)。
今はフェンダー以外にもいろいろなアンプがあるけど、フェンダーという老舗がこうやって現代のアンプを作っているっていう意味はすごく大きいよ。フェンダーはやっぱり、勇気があるブランドだよね。
試奏でCharがメインで使った最新のシグネチャー・ムスタング。Charが運営するレーベルZICCA限定で販売されているもので、こだわりの6色(オリンピック・ホワイト、濃藍、墨色、緋色、支子色、青磁色)のマッチング・ヘッド仕様となっている。写真は墨色の黒ピックガード仕様だ。価格は税込みで151,800円。詳しくはHPをチェックだ!
本記事は、11月13日(水)発売のリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2019年12月号』の特集を転載したものです。本号の表紙巻頭はフェンダー・アンプ! 1940年代のビンテージ・アンプから2019年製の現行機種まで、フェンダー・アンプ愛用者のインタビューやヒストリーなどをとおし、その魅力を大特集。そのほか、福山雅治やカネコアヤノ&林宏敏のインタビュー、マニック・ストリート・プリーチャーズのライブ機材なども掲載。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥135,000 (税別)
価格:¥115,000 (税別)
価格:¥130,000 (税別)
価格:¥20,000 (税別)
Char
本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。1955年6月16日、東京生まれ。ZICCA RECORDS主宰。8歳でギターを始め、10代からギタリストのキャリアを重ねる。1976年「NAVY BLUE」でソロ・デビュー。ソロ活動と並行してJohnny, Louis & CharやPsychedelix、BAHOでも活動を行なう。2009年にはWEBを主体としたインディペンデント・レーベル“ZICCA RECORDS”を設立し、自身が影響を受けたギタリスト(エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ベンチャーズ、ジミ・ヘンドリックスなど)のカバーであるTRADROCKシリーズ(DVD/CD)全7タイトルを発表。2018年、Fender Custom Shopにて日本人初のプロファイルド・モデルを発表。また、オリジナル楽器ラインZICCA AXも展開中。