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- 2024/11/16
Yamaha / THR30Ⅱ Wireless
Yamahaから登場した新たなTHR-Ⅱシリーズの実力を、3人のプロ・ギタリストが月替わりでチェック。第2回はKEYTALKの小野武正がフラッグシップ・モデルであるTHR30Ⅱ Wirelessを試奏してくれた。従来のモデルからの愛用者である小野が感じた、THR-Ⅱシリーズの進化を見ていこう。
高品質な卓上型ギター・アンプとして人気を集めているヤマハTHRシリーズ。音色の異なるTHR10、10C、10Xの3モデルで展開していた従来の10Wラインナップがこのたび出力も20Wに増強され、1台にまとまってさらに大幅リニューアル。また、出力の大きな30WモデルのTHR30Ⅱ Wirelessも登場した。その新たなTHR“ Ⅱ”シリーズの注目点は、何と言ってもギター・ワイヤレス機能(Line 6のRelay G10Tに対応/別売り)と、充電式バッテリーの搭載による“フル・ワイヤレス”の実現。自宅でアンプを鳴らす時、シールドなどのケーブル類は意外と取り回しが面倒だが、本機ならそんなわずらわしさは一切ナシ!
なお、30WモデルのTHR30Ⅱ Wirelessはフル・ワイヤレス対応機のみだが、20Wモデルでは充電式バッテリー&ワイヤレス機能なしのシンプルなモデル、THR10Ⅱも選べるようになっている。アンプ・モデルはエレキ・ギター用のほか、ベース用、エレアコ用、ライン機器用も含めた充実の計24種類。それもこれまでのアンプ・モデルを単に集約したわけではなく、新シリーズのために再モデリングが施されている。また、スピーカーも変更され、音質も一段とグレードアップ! サウンドと使い勝手が格段に向上したTHRシリーズ。ぜひ店頭でその実力のほどを体感してみよう!
THR-Ⅱシリーズのギター・ワイヤレス・システム対応20Wモデル。THR30Ⅱ Wirelessとは異なりアンプ・モードの切り替えが本体ではできないが、スマホ/タブレット上のアプリケーション=THR Remoteを使用することですべてのサウンドが使用可能となるため、機能的な差異はない。
本体充電とギター・ワイヤレス・システムを取り払ったシンプルな20Wモデル。そのほかの基本機能はTHR10Ⅱ Wirelessと同様だ。すでに自身のワイヤレスを所有している人、ケーブルを使った従来の操作性を求める人にはこちらのほうがお手頃だろう。
THR-Ⅱシリーズに搭載された数々の機能を、 フラッグシップ機のTHR30Ⅱ Wirelessを見ながら紹介していこう。
Bluetoothボタンを押せば、スマートフォンやタブレットと連動させてスマホ内の音源を流すこともできる。また、ユーザー・メモリー・ボタンは本体に5つ用意されており、自分で作り上げたサウンドをボタンで簡単に呼び出すことが可能。なお、アプリを使えばさらに多くのサウンドをメモリーできる。
ライン出力端子(THR30Ⅱ Wirelessのみ)から、信号を外部スピーカーやPA卓に送ることも可能。USB端子も備えているので、オーディオ・インターフェースとしても活用できる。クラスコンプライアント対応でスマート・デバイスにもドライバー不要で接続可能。
ワイヤレス・モデルにはLine 6のギター・ワイヤレス・レシーバーを装備。Line 6 Relay G10Tトランスミッター(別売り)をギター側に取り付けるだけで、快適なワイヤレス環境が楽しめる! Line 6のRelay G10/G10Sユーザーは別途Relay G10Tトランスミッターを用意しなくてもRelay G10/G10Sのトランスミッターが使えるのでWirelessモデルがオススメだ。
内蔵エフェクトのエコーやトレモロのディレイ・タイムが設定できるTAP/TUNERスイッチ。このスイッチを長押しすると、クロマチック・オート・チューナー・モードが作動する。
クラシック、ブティック、モダンのアンプ・モード切り替えスイッチと、アンプ・タイプ・ツマミとの組み合わせにより、エレキ・ギター用15種類のほか、ベース用、エレアコ用、ライン機器用を含めると充実の計24種類のアンプ・モデルを選ぶことができる。
コーラスやリバーブといった8種類の高品位エフェクトを搭載。エフェクト量が視認しやすく、なおかつほかのエフェクトへシームレスに移行できるコントロール・ツマミを採用。
PCやスマートフォン/タブレットと連動する専用アプリケーションTHR Remoteを活用すれば、さらに細かく音色を追い込んでいくことも可能だ。アプリにはアンプ本体には設けられていないパラメーターも多数用意。20WモデルはこのTHR Remoteでアンプ・モードの切り替えを行なう。
アプリはiOS/Android版も用意されており、PCやスマートフォン/タブレットによる遠隔操作もできる。ツマミの調節のために、わざわざアンプの場所まで戻る必要ナシ! また、アプリ上で外部Bluetoothフット・コントローラーをペアリングすれば、音色プリセットの切り替えやエフェクトのオン/オフまでワイヤレスで可能。
THR Head/Cabnetを除く、すべてのTHRシリーズが収納可能な専用キャリーバッグ、THRBG1も用意されている(別売り/税抜:7,000円)。
実は従来のTHRが家にあってよく使っているんですけど、それでも音は十分良いんですよ。でも、このTHR30Ⅱ Wirelessはそこから音質がさらに良い方向に変わっていて、サウンドの幅も広がっています。“ギターを楽しめる音が出る”という印象ですね。あと、ギター・ワイヤレスのレシーバーと充電式バッテリーが内蔵されているのは、本当に素晴らしい! 今まではコンセントの場所とか、配置なども考えないといけなかったけど、それらが全部なくなるわけですからね。ほかにもBluetoothスピーカーやDTMのインターフェースにもなるし、用途がギター・アンプだけじゃない。とにかく夢が詰まったアンプだと思います。
また、今回はTHR10Ⅱ Wirelessも弾いてみましたが、ワット数の違いというだけで、弾いた印象は30Wモデルとあまり変わりませんでした。ボリュームの大きさでアンプのパフォーマンスは変わると思うので、自宅で大きな音が出せないなら、控えめなボリュームの30Ⅱよりそれと同じ音量の10Ⅱのほうが良い音だと思う。逆に大きな音が出せるなら、30Ⅱのほうがパフォーマンスは上がりますよね。なので、弾く環境によって適したモデルを選ぶのが良いと思います。
このアンプの出音自体がタイトでブライトに感じられたので、そこを生かしたいと思ってローをちょっと抑えめにしました。このクリーン・サウンドはフロント・ピックアップで弾いてみたかったので、ハイとミッドを少しだけ足していますね。で、ドライのままでも良かったんですけど、せっかくエフェクトも付いてるので、スプリング・リバーブをかけています。ただ、リバーブを深くしすぎるとカッティングの音がボヤけてしまうので、抑え気味にするのがポイント。さらにフェイザーを少し足してみると気持ち良い。音のイメージとしては、“ロックなんだけどサイケ。だけどやってることはファンキー!”みたいな感じです(笑)。
このクランチ・サウンドはバッキング用のイメージですね。歪んでいるんだけど、テンション・コードを弾いた時でもコード感がわかるぐらいの音の抜けを意識しています。今回選んだブティック・モードは、ほかのアンプ・モードに比べてミッドが前面に出てくる印象なので、あえてそこを強調するためにミドル・ツマミをフルにしています。で、これはリア・ピックアップで弾いてみたんですけど、リアだとフロントよりもローが足りなくなりやすいので、クリーンの時よりもベースを足しました。なので、バランスを取るために、ハイもクリーンのセッティングより少し上げています。そして、音に少しツヤが出るようにエコーとコーラスを薄くかけました。
イコライジングのツマミはフルテンで、ゲインもフル。それにともなって音が割れない程度までマスター・ボリュームを上げた、というセッティングですね。それに加えて、フランジャーもスプリング・リバーブもほぼMAXにしています。ゲインの効きがかなり良くて、“アンプのサイズは小さいのにこんなに歪むんだ”って思いました。ただ、このセッティングはあまり音抜けまでは考えずに作りましたけど、ハイゲインになればなるほど音が埋もれやすくなるんですよ。だから、バンドの中で深く歪ませる時はもう少しロー感やハイミッドあたりも少し考えて、バンド・サウンドに埋もれないようにしつつ、まわりの音にうまく馴染むように調整しますね。
本記事は、リットーミュージック刊『ギター・マガジン 2019年12月号』にも掲載されます。
価格:オープン
価格:オープン
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小野武正(KEYTALK)
おの・たけまさ◎ロック・バンドKEYTALKのリーダーでギタリスト。ギブソンSGがトレードマークで、確かな知識と卓越したテクニックには定評がある。最新作『DON'T STOP THE MUSIC』が発売中。