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- 2024/11/16
HISTORY HG-B4/25th HG-B5/25th
ブランド設立25周年を迎えたHISTORYが、高級木材を使用した記念モデルを発表した。今回はその中からベースHG-B4/25thとHG-B5/25thを紹介する。デモ演奏は、セッション・プレイヤーとして幅広い活動を展開しながら、音楽学校『Happy Go Lucky』の代表を務める宮下智氏。テクニカルな氏の実演と共にその魅力についてチェックしていこう。
HG-B4/25thは一見すると通常のJBタイプの楽器だが、実はトラディショナルなモデルよりもボディがやや小ぶりなディンキー・サイズで、体格の小さな日本人にとって扱いやすくなっている。アニバーサリー・モデルとして最初に目が行くのはやはり、トップ材のバストーン・ウォルナットだろう。ダークな色彩で見どころの多い木目を持つこの材を、ブックマッチで使用している。バック材はライト・アッシュで、ディンキー・サイズということもあり、重量感のある見た目とは裏腹に全体としては比較的軽量に仕上がっている。ネックには、北米の湖などの水底に200年近くも沈んでいる間にバクテリアによる不純物の除去などによって熟成され、楽器用のトーンウッドとして理想的な状態になったヘリテイジウッドのメイプル材、指板には漆黒のエボニー材をそれぞれ採用し、安定性と高級感のある外観を両立させている。HISTORYの特徴のひとつであるサークル・フレッティング・システムを採用し、明瞭な音程感を実現しているのは言うまでもない。
なお、5弦モデルはネックの剛性を高めるために、KTS社製のチタン・サポート・バーが2本埋め込まれている。
電装系に目を移すと、ピックアップはJJスタイルを基本としながらも、リアの位置をややブリッジ寄りにすることで、両方をミックスした際にはよりモダンでブライトなサウンドが得られるようになっている。ミニ・スイッチの切り替えにより、2つのピックアップをシリーズ接続することも可能だ。ピックアップはオリジナルのModern Bass Type-J4(5弦モデルはJ5)で、アクティブとの相性を重視してセラミック・マグネットを採用している。プリアンプは3バンド・イコライザーを備えたaguilarのOPB-3を搭載し、ミッドの周波数ポイントは400Hzと800Hzの2種類が選択できる。比較的ポピュラーなプリアンプなので、操作のコツもすぐにつかめるだろう。
ブリッジとペグには、精度の高いGOTOH製、ナットには、素材の利点を最大限に生かすために、無漂白の牛骨を採用している。ナットの溝切りをはじめとする楽器の最終調整は、専門のセットアッパーが1本ずつ丁寧に行なっており、細かい部分では、ネック・ジョイント部のボディを高音弦側にやや斜めにカットしたFast Action Jointを採用することで、21フレットの最高音まで指が届きやすくなっている。
また、JJやPBスタイルのベースの場合、21フレット目は延長指板上に打たれているものが多いが、この方式だと21フレットの音だけが薄っぺらくなったり、スラップのサウンドが細くなったりすることがある。その点、今回のモデルは21フレットの下までネック本体が伸びており、Fast Action Jointと相まって、文字通りすべてのポジションにわたって均質な演奏性と音質が確保され、スラッピングでも力強いサウンドが得られることは、注目する価値があるだろう。
基本的にJBタイプということで、JJのピックアップ・システムに慣れた人ならすんなり持ち替えられるモデルだと思います。4弦と5弦の弾き心地もそれほど変わらないし、右手の位置もあまり変わらないですからね。僕も普段は70年代後半の楽器をアクティブ専用に改造したものも使っていて、このHG-B4とB5もピックアップの位置がそれに近い感じなので、慣れ親しんだ部分もあります。
そのいっぽう、ピックアップをシリーズ接続にしたサウンドは新鮮で、音作りも多彩になるし、いろんなジャンルに対応できると思いました。僕なんかは単純だから、サウンド作りをする時にも、ジャコ・パストリアスやロッコ・プレスティアとか、自分の好きなベーシストに寄っていっちゃうんですが、それとはまた違った音も出せるんだなあと思いましたね。レンジも広い感じだし、AguilarのEQだけでも十分に使える音が作れるでしょう。あと、僕はフロントの音もよく使うんですが、これはスラップをしても太くて良い感じだし、普通のピックアップよりも自然な形でブライト感が加わっている印象でした。とにかくいろんな音が出る楽器なので、使い込んで研究していただきたいですね。
ネックはサークル・フレッティング・システムなのでピッチが良いのはもちろんなんですが、延長指板じゃないので、ハイ・ポジションでソロを弾いても音がパタパタしなくてどっしりしているのも良いですね。ボディはチェンバードではないのですが、それほど重くないので、長時間演奏する仕事でも負担が少ないでしょうね。個人的には、スラッピングした時に指が弦の下に入りすぎるのでピックガードを付けたいところですが、この木目だと透明のピックガードじゃないともったいないかな(笑)。
価格:¥350,000 (税別)
価格:¥360,000 (税別)
宮下智(みやした・さとし)
東京都出身。武蔵野音楽学院卒業後、ベーシストとしてプロ・ミュージシャン活動を開始する。4弦ジャズ・ベースというスタイルであらゆるプレイ・スタイルを弾きこなすマルチな実力は、国内外から高い評価を受けている。これまでにEXILE、RIP SLYME、ゴスペラーズ、MISIA、上戸彩、片瀬那奈、TRF、globe、V6、嵐、奥村愛子など、さまざまなアーティストのレコーディング・ライブを行ない、音楽シーンに多大な影響を与えているベーシストの一人である。また最近では声優の今井麻美、原由美のレコーディング・ライブや教則本の執筆など幅広く活動している。