AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
コンプレッサー
エフェクター・ファンのバイブル『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。最新刊Vol.45は、自らの演奏を目立たせるための最強のエフェクターといっても過言ではない、コンプレッサーを大特集。音を伸ばす以上にサウンドの芯を磨き上げるための利便性の高いマシンへと進化した現行コンプレッサー・ペダル9機種の実力はいかに? “奇才”ギタリスト、坂本夏樹氏に試奏レビューしていただきました。ぜひ購入の参考にしてください。
「オレのギターにもっとサステインを!」── それこそが黎明期のロック・ギタリストたちが渇望していたこと。ギター用コンプレッサーの開発は、そこが原点の1つであったと考えられている。しかし時代は変遷し、2010年代のギタリストはコンプにもっと多くを求める。そんな要望に応え、音を伸ばす以上の機能を宿すに至った現代のコンプは、サウンドの芯を磨き上げる極めて利便性の高いマシンへと進化を遂げた。ギター・サウンドを伸ばす、整える、響かせる、そして磨き上げる。現在、市場に存在するコンプ・ペダルは“最強のエフェクター”と言っても過言ではない。今回もこれらの使い勝手をギタリストの坂本夏樹がレポート! コンプ好きを公言してはばからない坂本が各機種に見出した個性とは?
[Specifications]
●コントロール:Volume、Sustain、Gain、Tone、Attack ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:82mm(W)×127mm(D)×65mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥30,000(税別)
(問)03-3862-5041/モリダイラ楽器
個人的な話ですが、オリジナルのウェイ・ヒュージ・ラインナップの中では“Saffron Squeeze”が一番好きだったのです。だから、“Mk II”となって帰ってくると聞いたときの驚きと喜びと言ったら! オリジナル“Saffron Squeeze”のポイントは「音楽的な歪み」にありまして、なんと“Mk II”ではその歪みを“GAIN”ノブでコントロールできてしまうようにアップデートされています。もちろん“GAIN”を絞ればちゃんとクリーンになりますので、一般的な使用も問題ありません。
しかしなんと言っても、やはりこの歪みは大きな魅力。“GAIN”=15時、“SUSTAIN”=12時で歪み系ペダルの前段に繋いでみてください。トランスペアレント系オーバードライブをかけ合わせたときのような、気持ちの良いプッシュ感を得られるはずです。
加えて、歪み系の前段にコンプを繋ぐことで、ギター側ボリュームへの追従性もアップし、セッティングによっては、リード〜クリーンまでがギター本体で操作できてしまいます。その場合、シングルコイルPUの方が操作はしやすいでしょう。ボリューム全開の状態でリード・トーンになるように設定すると、ボリューム=3くらいでクリーン・トーンになります。歪み系ペダルの踏み分けが面倒という方はぜひ試してみてください。
[Specifications]
●コントロール:Level、Attack、Ratio、Comp ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×129mm(D)×59mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price (問)050-3101-2555/ローランドお客様相談センター
長いBOSSコンパクトの歴史の中でも、コンプレッサーはその黎明期からラインナップされ続けています。そのシリーズ最新版となるのが“CP-1X”。現代の音楽シーンへの完全対応を狙ったのか、内部昇圧によってレンジの広さと押し出しの強さを獲得している点がポイントだと感じます。
近年、アンサンブルの音数の増加により、ギターの領域はどんどん浸食されてきている……と言うと、大げさかもしれませんが、現代の音楽シーンでは与えられた帯域でいかに輝けるかが重要なテーマ。そんなアンサンブルの中で「負けない音の強さ」を強力にサポートしてくれるのが本機です。“ATTACK”や“RATIO”は、ギタリストにとってあまり馴染みのないパラメーターかもしれませんが、インジケーターの動きでコンプのかかり具合を判断できるので、特別な知識がなくても操作は意外と簡単。
薄くかけてもはっきりとした効果を感じることができるので、インジケーターが-1〜-2の辺りを行ったり来たりするくらいのセッティングをまずは試してみてください。奥行きのある自然なコンプレッションながら、明らかな音の近さを感じることができるはずです。伸びやかなリード・トーンをお求めならば、たまに黄色が点滅するくらいのセッティングがオススメ!
[Specifications]
●コントロール:Tone、Attack、Release、Level、Ratio、Sustain ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:64mm(W)×117mm(D)×57mm(H) ●電源:9VDC ●価格:open price(市場想定税別価格:¥26,000前後) (問)0570-056-808/ヤマハミュージックジャパン
奇抜でぶっとんだエフェクターを多数ラインナップするアースクエイカーデバイセス。僕もクセの強いエフェクターを特に好んで使用しているのでよくわかるのですが、いわゆる「飛び道具系」に括られるエフェクターにとって大事な点が、実は元の音の良さ。それが担保されていてはじめて、常軌を逸脱した個性が映えるのです。
ここに紹介する“The Warden”は、アースクエイカーデバイセス製品が備えたまさにそんな資質——「元の音の良さ」を十二分に実感することのできるコンプレッサー・ペダルと言えるでしょう。オーディオ・グレードのパーツで構成された上品ではっきりとしたレンジの広いチューニングを、中域に音楽的な温かさを持つオプティカル回路が有機的にまとめてくれています。“TONE”コントローラーがワイドかつダイナミックに動作するので、ベースでの使用にも有効でしょう。
しかし、コントローラーを6つも装備しているので、操作が難しそうだと感じる方がいるかもしれません。もしそう思ったら、まずは“ATTACK”、“RELEASE”、“RATIO”、“SUSTAIN”を12時にセットして、“LEVEL”で音量を調整するという方法から試してみてください。それだけで、すでに良い音になっているはずです。
[Specifications]
● コントロール:Blend、Attack、Volume、Sustain ●スイッチ:High/Flat/Mid、ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:66mm(W)×125mm(D)×37mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9〜18VDC ●価格:¥25,000(税別) (問)049-274-3810/ESP
世界的な知名度を誇るピックアップ・ブランド、セイモア・ダンカンは、即戦力となる使いやすさと品質の高さを兼ね備えたエフェクターを多数ラインナップしています。その中からここでは“Vise Grip”をご紹介しましょう。
本機はエレクトリック・ギターのノイズ問題について、様々な方面から長年にわたり研究を積み重ねてきたブランドだからこそ実現できた、クリーンな響きにまず驚きます。圧縮感は強めですが、ノイズは全くと言っていいほど気になりません。しかも、そんな驚くべき低ノイズ・コンプレッサーというだけに留まらないのが世界的ブランドならでは。
エフェクト音のトーンを操作できるモデルは他にもありますが、本機の3ウェイ・スイッチは原音のEQを調整できるのがミソ。エフェクト音のブレンドは薄めであっても、各モードの音色の個性を際立たせてくれるのです。直感的な操作を実現しつつ動作も的確なので、狙った効果を簡単に得ることができるでしょう。
初段に接続する王道セッティングは言わずもがなですが、音色へのアプローチが積極的なモデルなので、歪み系の後段でブースターとして活用する方法もぜひ試していただきたいです。コンプレッション・ブースター開拓の良いきっかけになるのではないでしょうか。
[Specifications]
●コントロール:Gain、Level、Ratio ●スイッチ:ON/OFF、Mode[Comp/Sustain]●端子:Input、Output ●サイズ:47mm(W)×100mm(D)×48mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price (問)info@lep-international.jp/LEP INTERNATIONAL
本機はまさにギタリストのためのコンプレッサー、ワンコントロール製品の中でも特にプロ・ギタリストの愛用が多いモデルです。その理由はとりあえずオンにしてみるだけでわかるはず。アンサンブル内で聴こえてきてほしいギターの帯域が一発で前に出てくるからです。そして操作がとても簡単。時間をかければ良い音に作り込めるエフェクターはたくさんありますが、音楽制作の現場ではとにかくスピードが命。その瞬間にほしい音を反射的に表現できるモデルが重宝されます。本機はそんな最前線での使用に最適なエフェクターと言えるでしょう。
コンプレッサーのコントローラーは効果の予想がつきにくいこともあって、セッティングに難航することもありますが、本機の場合、すべてのノブを12時の位置から始めるとまず迷うことはありません。“GAIN”と“LEVEL”で好みの音色・音量に設定したら、“RATIO”を回してコンプ感を足し引きしていくだけ。それが本機攻略のコツです。
あと余談ですが、“GAIN”でかなり歪ませられるので、歪み系ペダルの後段に配置してリード用ブースターとして使用するのもオススメ。その際、ボディ・サイドのスイッチはぜひ“SUSTAIN”で。いわゆるブースターでは得られない、クリアな音の伸びが格別です!
[Specifications]
●コントロール:Level、Sus ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:71mm(W)×121mm(D)×61mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥40,000(税別) (問)makinokoubou.com/マキノ工房
とにかく気持ち良い! こだわりにこだわり抜いたプロダクツで有名なマキノ工房が手掛けるコンプレッサー、“Silver Myth II”は、予想と期待をはるかに超えた良作でした。繋いでみてまず驚いたのが、オンにする以前から音が良いこと。「これはもしや?」と裏蓋を開けてみて納得しました。とても丁寧な結線に必要最低限のハンダで組み込まれているのです。そんなハンドメイドだからこそできる細部へのこだわりが、楽器としての基礎値を格段に高めているのでしょう。
これでエフェクト音が悪いはずもなく、初期のROSS製“Compressor”を彷彿とさせるクリスピーできらびやかな高域、浅すぎず深すぎずの絶妙なコンプ感が得られます。それだけにとどまらず、何台も弾いてきたからこそわかる、いゆわる「当たり個体」が有する中域の太さまで忠実に再現されていることに、研究と理解の深さ、そしてなによりも愛を感じました。
ビンテージのROSS“Compressor”はわりとノイズが多く、“SUSTAIN”をあまり上げられない個体もありますが、本機はノイズ対策も完璧なので、“SUSTAIN”をしっかり上げての使用がオススメ。厳選されたビンテージ・コンポーネンツによる忠実な再現は、ビンテージ・ペダル愛好家にも必ず満足してもらえるでしょう。
[Specifications]
●コントロール:Sustain、Squash、Volume、Boost、Bass、Treble ●スイッチ:ON/OFF、Boost ●端子:Input、Output ●サイズ:95mm(W)×120mm(D)×55mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price(市場想定税別価格:¥38,000前後) (問)pedal@allaccess.co.jp/オールアクセスインターナショナル
オッコーと言えば、“Diablo”を始めとする音作りの幅の広い、ワイドなレンジ感が特徴の歪み系エフェクターで有名ですが、その持ち味はクリーン・トーンにおいても大健在でした。特筆すべきは、アクティブEQが持つ、対応できない楽器はないのでは?と思わせられてしまうほどの効きの良さ。エレクトリック/アコースティック・ギターはもちろん、ベースの帯域も余裕でカバーしてくれます。市場にあるペダル・コンプの中でも最もオールマイティな対応力かもしれません。
根底にそんなレンジの広さがあるからこそ、コンプ効果に歪み感はありません。どこまでいっても、とにかくクリーン。“Compressor / Preamp”というカテゴライズが示すように、楽器本来の鳴りを引き立たせる音質補正的な使用に効果的です。おすすめの設定は、“SUSTAIN”、“SQUASH”をそれぞれ10時にした状態。劇的な音色変化はないのに、響きが明らかに際立ちます。“VOLUME”はユニティ・ゲインの12時から始めてください。
そしてもう1つの機能、“BOOST”がこれまた優秀なんです。コンプレッサー部でもかなり音量を上げられるので、歪み系ペダルの後段に繋いで2種類のリード・ トーンを使い分けるといった、高品質なブースター複合機としての使用もオススメです!
[Specifications]
●コントロール:Drive、Recovery、Blend、Level ●スイッチ:ON/OFF、LEDs ●端子:Input、Output ●サイズ:76mm(W)×125mm(D)×62mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥16,500(税別) (問)FENDER.CO.JP/フェンダーミュージック
あのフェンダーがエフェクター業界に電撃参入というニュースに驚いた人も多いでしょう。バックライトを搭載したノブ、斬新なマグネット式電池ホルダー、エフェクター・ボードに固定するためのマジック・テープを貼りやすいように工夫されたフラットな底面など、ユニークかつ現場での使用を第一に考えた作りに、世界的ブランドだからこその本気が窺われました。
本機のサウンドも有名なモデルへの追従などではなく、完全なるオリジナルである点が好感度大。アンプ・ビルダーによる設計であるためか、フェンダー・アンプにも通じる独特の鈴鳴りと艶を感じることができます。自然な圧縮感とレンジの広さを備えるので、ラック式コンプレッサーのような後段で音を整えてやるリミッター的使用に向いているのではないでしょうか。引っ込むことも、過剰に押し出すこともなく、楽器本来の鳴りを引き立ててくれます。
“BLEND”で原音とウェット音をミックスできるのも本機の特徴の1つで、エフェクトがかかっている間だけインジケーターの色が変わるようになっているため、操作はかなり簡単。楽器の老舗、フェンダーが作っているだけあって、初心者からプロまで幅広く楽しんでもらえる作りになっています。
[Specifications]
●コントロール:Vol、Sustain、Blend、Attack ●スイッチ:ON/OFF、Pad ●端子:Input、Output ●サイズ:71mm(W)×112mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥17,000(税別)(問)support@kyoritsu-group.co.jp/キョーリツコーポレーション
こんなに言い得て妙なモデル名は聞いたことがありません。エレクトロ・ハーモニックスがラインナップする“Tone Corset”は、重心の安定した低域、絶妙にシェイプされた中域、押し出しの強い高域という、まさにモデル名が表す通りの効果が得られるペダル型コンプに仕上がっています。低域にかなり強い個性を備えていますが、膨らみすぎると音が遅くなる中低域をすっきりと抑えているので、高域の抜けは良く、全体としてとても上質にまとまったチューニングに仕上げてあると言えるでしょう。
“SUSTAIN”と“ATTACK”コントローラーで操れる音色の設定幅も絶妙で、両方とも全開にしても音が破綻することはないので、どちらも全開にした状態から少しずつブレンドしていく方法がセッティングしやすいのではないかと思います。“VOL”は15時付近をニュートラルとしているようなので、その辺りから始めてみてください。
それにしても、この低域の強さと高域の抜けの良さは驚くべき個性。エフェクト音のブレンド具合を少なくしても決して薄まることのない主張の強さに、エレクトロ・ハーモニックスらしさというか、単に上質なだけの音作りは絶対にしないという、個性派ならではのプライドを感じました。
最近、赤いエフェクターばかり購入してしまっていまして。なんだか買っちゃうんですよね、赤い筐体のペダル。BOSSの“XT-2 Xtortion”、クロンの“KTR”、マッド・プロフェッサーの“Mighty Red Distortion”、フルトーンの“Full-Drive 2”(初期オレンジ)、デジテックの“Whammy”……などなど。もうペダル・ボードを赤で統一しちゃおうかなーと思えるくらい、赤いペダルが集まってしまいました。だったら、いっそのことパッチ・ケーブルもベルデンの“88760”で自作して、パワー・サプライにはバイタル・オーディオの“VA-08 MK II”を導入するのもアリかなーと。日々そんなバカなことを考えていたりしたんです。
そんな中、ある日いつものようにデジマートでペダルを漁っていたら、しももの目を猛烈に引くペダルが1台あるわけです。もう気になって気になってしょうがない。理性が否定しても、なぜか身体が求めて止まないという(笑)。そのブツとは、MXRの“Dyna Comp”。いやいや、コンプなんか要らないよ!と。もう既に結構な数を所有しているし、カッティングも上手くないし、使いどころが見つからないと。何度も自分に言い聞かせたのですが……結局、見事にポチってしまいました。結構高かったんですけどね(泣)。
どうしてこんなにも赤いペダルばかり集めてしまうのか。気になって調べてみると、赤は「食欲をそそる効果がある」んだとか。あーこれ、思い当たるフシがあるんですよね。しももはいつも昼飯時にデジマートを見ているんですよ。ハラが減っている時に検索しているので、脳が赤色に反応しちゃったんでしょう……うーん。みなさんも気をつけてください。デジマートは満腹時に! でないと、足元がいつの間にか“Dyna Comp”だらけになってしまいますよ! (下総淳哉/THE EFFECTOR book)
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book Vol.45 GROOVY KIND OF AUTUMN ISSUE 2019』での特集企画「“現行コンプレッサー・ペダル”試奏分析」を転載したものです。鈴木茂氏による名ペダル・コンプ試奏レビューや、ROSS&Xoticインタビュー、ペダル・コンプの発展史、コンプの響きが味わえる名盤50選など、マニアックにコンプの魅力に迫ります。
項数:112P
定価:1,800円(税別)
問い合わせ:シンコーミュージック
『THE EFFECTOR book Vol.45』のページ・サンプル
坂本夏樹(さかもと・なつき)
チリヌルヲワカ、She Her Her Hers、Over The Topでのバンド活動を経て、スタジオ・ミュージシャン、プロデューサーとして、Creepy Nuts、DE DE MOUSE、HOME MADE 家族、たんこぶちん、酸欠少女さユり、新山詩織など、数多のライブ、レコーディングに参加。