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- 2024/11/16
BOSS / DD-200、EQ-200
BOSSのラインナップに新たに200シリーズが加わった。その中から、今回はDD-200とEQ-200をレビューしていこう。なお、今回ギターはフェンダーのジャガー、アンプはJC-120を使用している。DD-200はアンプのセンド/リターンに接続し、モノラル・インプット/ステレオ・リターンとした。マイクは各スピーカーに立てており、ステレオ・サウンドとなっている。簡単に高品質なステレオ・サウンドが楽しめるので、ぜひスタジオで実践してほしい。また、EQ-200のレビュー時にはDD-200をはずして録音している。
まず、両モデルともにサンプリング・レート96kHz、AD/DA変換32bit、内部演算32bit floatによる圧倒的な高音質を持ちながら、ボードに組み込みやすいコンパクトなサイズを実現している点に注目したい。コンパクト・サイズでありながらアクセスしやすい位置に収められた2つのフット・スイッチには、設定によってさまざまな機能がアサインできる。さらに本体に4つまでセッティングをメモリー可能で、MIDIにも対応(別売りの専用ケーブル、BMIDI-5-35を使用)。また、外部フット・スイッチやエクスプレッション・ペダルを接続することで拡張機能が得られるなど、汎用性の高さも見逃せない。9Vアダプターのみならず、単3電池3本で駆動させることができる点も革新的だ。
ディレイ・ペダルのDD-200は12種類のディレイ・モードを搭載。最新モデルでありながら、いつものBOSSコンパクト・エフェクターを操作する感覚で音作りが行なえるので、欲しい機能やサウンドに簡単にたどり着けるだろう。PARAMノブは選択しているディレイ・モードによって操作するパラメーターが変わるので、以下、その一例を3つ紹介する。
・STANDARDモードはクリアなデジタル・ディレイ・サウンドで、PARAMノブではATTACKの調整が行なえる。このパラメーターを操作すると音の立ち上がりをなめらかにできるので、細かいフレーズでもディレイ・サウンドが邪魔にならない。
・ANALOGモードのPARAMノブは、ディレイのキャラクターと歪み量を調整することが可能。また、このモードではFEEDBACKを上げた際に、よりアナログらしさが強調されるように感じた。
・PAD ECHOはDD-200から新たに加わったモードだ。きらびやかなSHIMMERに対して、柔らかく包み込むようなサウンドが特徴的。浮遊感のあるディレイ・サウンドで、PARAMノブでエフェクト音のアタック感を調整可能。
いずれのモードも「とにかく音が良い」という印象だった。具体的にはディレイ音がクリアなだけでなく、音の角やトゲトゲしさがない。スタジオ・クオリティな機材にありがちな「際立ちすぎてしまう」ディレイ・サウンドではなく、本当に「楽器的な響き」に感じた。このあたりは言葉では説明しづらいので、ぜひ動画でチェックしてほしい。
さらに2つのフット・スイッチを同時に踏み込むとルーパー・モードへ切り替わる。このルーパーはディレイ・エンジンとは別に用意されているので、ディレイ・サウンドを生かしたループ・アクションが楽しめる。録音可能時間はモノラルで最大60秒となっているので、楽曲のアクセントや曲のネタ作りにも最適だろう。
EQ-200は、このコンパクトなボディになんと独立した2系統の10バンド・グラフィック・イコライザーを装備。極めて柔軟性の高いエレキ&アコースティック・ギター、およびベース用に特化したイコライザーだ。工場出荷時は10個のスライダーで30Hz~12.8kHzをコントロールすることができるが、設定によって32Hz~16kHzとより高域側へワイドな設定したり、基準周波数を「A」の音に合わせた28Hz~14kHzをコントロールするように切り替えることもできる。
注目してほしいのは、EQの設定をプリセットが可能なところ。本体のグラフィックEQの状態(実際のスライダーの設定)に加え、4つまで設定を保存できるので、計5セットのイコライジングをセットアップできる。メモリーを呼び出した際には内蔵LCDディスプレイにイコライジングの状況が表示されるので、視覚的にサウンド/セッティングの状態を確認することできるのもうれしい。
また、2基のEQはパラレル/シリーズ接続での使用が可能となっており、イン/アウトのつなぎ方次第で他のペダルをEQ-200にインサート接続できる。そうすることにより、例えば外部ペダルの前段/後段に、別々に設定されたイコライジングを行なうことが可能になる。ほかにも内部の2基EQをリンクさせれば、ステレオEQとしても使用可能。もちろん、単純に独立した2系統のEQとしても機能する!
もう少し深く見ていこう。EQ-200の各スライダーは、ほかのバンドの帯域を邪魔しないようにデザインされており、隣接する帯域に干渉することなくブースト/カットが行なえるのがポイント。アコギであればハウリング・ポイントの修正や、突き出したい帯域だけを部分的に修正できる。エレキ・ギターの場合は特定の帯域だけをブーストしてクリーン・ブースター代わりに使用したり、ほかのペダルとの組み合わせた際の音量や音質の補正ができるなど非常に便利だ。ベースではスラップ/フィンガーの音質補正を行なったり、極端なドンシャリ・サウンドとロー・ミッド・ブーストを切り替えるだけで、まるでアンプを交換したかのような劇的なサウンド・メイクも可能になる。ほかにも、例えばコンプを加えた際の高域を補正できたり、低音のダブつきを微調整できたり……一度使うと手放せなくなるだろう。
そして、各チャンネルに全体の音量を補正するマスター・レベル・スライダーを装備しているので、音量補正だけでなく音量を下げることも可能。これはマスター・ボリュームがないアンプを使うギタリストであれば非常にうれしい機能だ。
フット・スイッチとエクスプレッション・ペダルのアサインにも大注目してほしい。フット・スイッチにはEQのバイパスだけでなくメモリーのスクロール、各チャンネルのEQの個別オン/オフ、特定メモリーへのダイレクト・アクセスなど、任意の機能を割り当てることができる。また、外部フット・スイッチを接続すれば上記のコントロール/機能をそちらの外部スイッチに割り振って拡張することもできる。
さらにエクスプレッション・ペダルを接続し、トータル・レベルにアサインすることでボリューム・ペダルとして活用できてしまうところにも注目だ。ここにピピっときたあなた、そう……ラック全盛時代のVCA的な使用方法ができてしまうのだ。
とにかくハイクオリティなサウンド、機能、そして拡張性には驚くばかり。サウンド面は音質、ノイズ・レベルともに文句なしの高品質。機能的にも「こんなにもコンパクトな筐体にこれだけの機能が?」と思わせてくれる。しかも操作が簡単だ。加えて外部フット・スイッチ/エクスプレッション・ペダルなどを使用することで拡張機能が広がる奥深さ。エフェクター4〜5台分のサウンドと機能がEQ-200、DD-200ともに収められているように感じる。
もうひとつ。この200シリーズから採用された省スペースなステレオ・ミニ・ジャックのMIDI入出力端子に注目したい。MIDI機能を持った外部コントローラーやルーティング・システムからの制御で、さらに先進的なパフォーマンスが得られるだろう。例えばBOSSのES-8やES-5などと連動させるとどうなるか? 考えただけでもワクワクする。特に、今回紹介した2台はスイッチャーのループの外に置いてしまい、スイッチャーのプログラム・チェンジごとにオン/オフやメモリーの切り替えなどを行なうことで、非常に使い勝手の良いサウンド・システムを構築できるはずだ。もちろん、ルーティング・システムや外部MIDI機能を使用しなくとも、この200シリーズだけをMIDIチェーン接続し、それらのメモリーを一度に変更/選択することも可能になっている(ちなみに200シリーズ同士のMIDIチェーン接続は、市販のステレオ・ミニ・ケーブルを使用すればOK)。
特大ボードでもコンパクト・ボードでも圧倒的な存在感を放つであろうDD-200とEQ-200。常にエフェクター・ブランドの最前線を走り抜けるBOSSに我々が求める「新しさ」、「クオリティ」、そして「安定感と安心感」を見事に具現化しているペダルだ。最後に、当日収録に関わったスタッフ全員の口から「やっぱりスゲェなBOSS……」という言葉が漏れたことを記しておきたい。
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。