アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Bose / S1 Pro Multi-Position PA system
可搬性と良質なサウンドを両立することで人気を博しているポータブルPAシステム、S1 Pro Multi-Position PA system。本機は低音を重視するベーシストにとっても非常に有用なスピーカーであるが、今回は、その実力を須長和広がチェック。実際にライヴハウスまで持ち込んでウッド・ベースを鳴らし、その感想を聞いた。ベース・サウンドを再生するためのアンプとしての真価について、須長が語る。
本機は、同社からすでに発売されているPAスピーカー・システム、L1 Compact system/F1 systemのテクノロジーを活用して開発されたもので、3系統の入力に対応したミキサーを搭載。Ch1とCh2にはマイクや楽器をダイレクトに接続でき、リヴァーブ機能に加えて、接続する楽器に最適なEQをワンタッチで切り替える“ToneMatch”EQを装備。Ch3はライン入力のほか、Bluetooth接続に対応、外部の音源を流すこともできる。そして、本機は7.1kgという軽量化により可搬性に優れているが、バッテリーも標準装備しており、最長11時間使用可能だ。なお、縦置きだけでなく、例えばモニター用として足下に置く場合は、横置きにしてキックバック・ポジションにするなど、本体の置き方もチョイス可能。内蔵のセンサーによってそのポジションを認識し、音の聴こえ方を保つAuto EQ機能を搭載している。 小型軽量で可搬性に優れ、ベースの帯域までしっかりカバーするオールインワン・ポータブルPAスピーカーである本機は、カフェやバーなどで行なうアコースティック・ライヴ、ストリート、さらに自宅での練習用など、さまざまなシチュエーションで活用できるはずである。
──ジャズやJポップなど、さまざまなフィールドでベースをプレイする須長さんですが、ベース・アンプに求めるものとは?
まずは“使いやすい”っていうことが一番なんですけど、サウンドについては、できるだけクリアであってほしいと思います。特にウッド・ベースに関しては、ベース・アンプの特性に左右されることなく、手元でコントロールするタッチのニュアンスだったり、ピックアップから出力される音をそのまま出してもらいたいっていう希望があるんですよね。何の曇りもないようなサウンドで、あとは音量レベルとEQがダイレクトに効いてくれるような、そういうアンプを求めます。
──今回のBose S1 Proについては、実際にライヴでも使ってみたそうですね。
使わせていただきました。そのライヴはウッド・ベース3台という編成だったんですが、そこで試しに、このS1 Proをつないで音を出してみたんです。立ち位置から少し離れた場所に置いて、みんなでモニターできるようにしたらちょうどいいんじゃないか、と。結果、それだけで全体のバランスが取れてしまったんですよね。
──そこで感じたサウンドの印象は?
そのとき、外音についてはS1 Proのライン・アウトからライン直で出力したんです。ラインの音なのに、マイクで拾ったような空気感も一緒に出力されているような印象を受けました。自分の音を聴くモニターとしては、みんなで共有できるような音場の広がりがありましたね。ステージ上のどの位置で聴いても、同じバランスで聴けるような感覚があって、これはすごいなって思いました。
──今回は、演奏動画も撮影しましたが、撮影時に感じた、このアンプに対する感想を聞かせてください。 今、以前にライヴで使ったという話をしましたが、そのときとまったく同じで、本当にナチュラルな音がしてくれる印象です。EQもフラットだったんですが、ステージ上で使ったときと同じような空気感がありました。そして、低音についても迫力があるので、物足りないっていうことが一切なくて、気持ちよく弾けましたね。逆に、高域の弦が擦れる音までもしっかりと再現されるので、弾いていて楽しかったです。あとは、設置する際にキックバック型のように横向きにしたり、傾けられるのも便利ですね。自分の音をしっかりモニターすることができるので安心です。加えて、今回のように、両サイドに置いてステージのPAシステムとして活用できるのは大きいですね。
──PAシステムとして活用できる本機ですが、今回、ベース・アンプとしても低音をしっかり再生していることがわかりました。
加えて、個人的にはBluetoothを活用して外部の音源を接続できることも大きいです。数日前、スマホをつないで自宅で試してみたんですが、音が良すぎて、家なのにフェスにいるような感覚になってしまって(笑)。バッキングやマイナスワンの音源を鳴らすこともできるので、自宅練習に役立つと思ったんですよね。しかも、その場合も最高のサウンドですからね。自宅などでヘッドフォンを付けて練習すると、どうしても空気感を感じられないので、そういったことをこれ1台でできるのは素晴らしいです。
──本機はとてもコンパクトなので、ストリート・ライヴでも活用できそうですね。
そうですね。充電もできますしね。僕も15年前ぐらいまではストリートでよくプレイしていたんですけど、当時は大きいアンプをわざわざ持って行って、そのアンプをみんなで共有して。音も割れまくっていたと思うんですけど(笑)。そういった、野外でのPAシステムとしても、これ1台で事足りますね。
──須長さんが思う、オススメの使い方は?
オススメするポイントがありすぎるんですけど(笑)、やはり楽器用としてだけでなく、オーディオ機器と同じ感覚で音楽を鳴らすことができるので、個人的にはCD音源やマイナスワン音源などをBluetoothでつなげて、音源と合わせて弾くときに活用したいです。
独自の高性能DSPエンジンで、スタジオ品質のEQ、ダイナミクス、空間系エフェクトを装備するコンパクトな4chミキサー。独自のToneMatchによって、あらゆる入力ソースに合わせて音質を補正し、ボーカルや楽器の魅力をナチュラルに引き出すことができる。カメラ用三脚にマウントが可能。8ch仕様のT8S(110,000円)もラインナップされている。
本記事は、リットーミュージック刊『ベース・マガジン 2019年9月号』から転載したものです。表紙巻頭では、次世代のベース・ヒーロー筆頭格の存在となる、THE ORAL CIGARETTESのあきらかにあきらが登場。2枚組のベスト・アルバム『Before It's Too Late』を発表するこのタイミングで、初の表紙巻頭特集を敢行。ベーシストとしての彼のすべてを明らかにします。セッション/曲作りに活用できるアプローチ方法&練習フレーズ詰め込んだ奏法特集『2019夏期講習アドリブ・サマー・セミナー』や、アルフォンソ・ジョンソンの独占インタビューなど、豪華な内容でお届けします!
価格:¥78,000 (税別)
価格:¥78,000 (税別)
須長和広
すながかずひろ●1981年6月6日、東京都出身。14歳より独学でベースを弾き始め、18歳の頃からセッション・ミュージシャンとしてキャリアをスタート。2003年からはジャズ・バンドquasimodeのメンバーとしての活動を軸に、aikoや東方神起、大橋トリオ、松任谷由実など、さまざまなアーティストのライヴやレコーディングに参加。2015年9月には自身初となるソロ・アルバム『MIRROR』をリリースしている。エレキ・ベース、ウッド・ベースの両方を自在に操り、現在もポルノグラフィティ、Salyu、HOUND DOG、タイナカ彩智のサポートなど、幅広い分野で活躍する。