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  • 【連載】プロが語るソニー Hi-Res Recording Tools・第3回

島崎貴光 × Sony C-100

Sony / C-100

ソニーから音楽作品のハイレゾ録音を意識した製品が発売され、注目を集めている。それらを使用する第一線のプロにインプレッションを語ってもらうのが本連載だ。今回は、音楽プロデューサー/作編曲家として活動する島崎貴光が登場。島崎が拠点とするMiL Studio 目黒に導入されている2ウェイ・カプセル構成のコンデンサー・マイク、C-100の使用感を聞いてみた。

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Featured Product :
C-100

C-100 / オープン・プライス(市場予想価格:156,880円前後)

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 高域用カプセルと低域用カプセルを備えた2ウェイ構成のコンデンサー・マイク。可変指向性(全/単一/双)で、さまざまなソースに使用できる。ダイアフラム(24金蒸着)の薄膜/軽量化と背面電極のインピーダンス低減を図り、50kHzまで再現可能。背面電極とカプセル・ケースは真ちゅう製で、絶縁材にはポリエーテルイミドを採用。いずれにも高精度な切削加工を施し、各パーツを丁寧に組み立てることで色付け無きサウンドを実現しているという。

Shimazaki's impression :
中高域をきらびやかな質感で収音し
歌手の微細な表現を録りこぼさない

コンパクトで安心感のある筐体

 取材に伺うと、実際にC-100をスタンドへ設置して見せてくれた島崎。セッティングをしながら「2ウェイ・カプセル構成なのに筐体はコンパクトで、扱いやすさ抜群です」と語る。

 「位置決めしたマイク・ホルダーがマイク自体の重さに耐え切れず動いてしまう、といったことが起こらず、どんなスタンドにも安心して立てることができます。例えばアコースティック・ギターの録音用に、奏法の違いでその都度マイキングを変えなければならない場合でも、スムーズに進められます」と話す。

 島崎は「実は、MiL Studio 目黒を造るにあたって、実験的な気持ちで導入することにしたんです」と明かす。だが現場で使用してみると、プロ向けでリーズナブルな10万円台半ばのクラスからは全く想像もつかぬほど性能が高いと感じられたそう。

 「まず、真空管マイクのような電源ユニットがあるわけではなく、別売りでそろえなければならないものも特に無いので、開封したらすぐに使えます。またボーカル録りをはじめ、弦楽器やドラムの録音にも有用ですね。ちなみに、ボーカルやアコースティック・ギター、バイオリンなどは単一指向性で録音し、ドラム録りではタムを双指向性で拾うようなこともあります。バイオリンの録音では、ピチカートのようにアタックの強い音を出しても、高域が全然耳に痛くならないんですよ。試しにアンビエンス・マイクとして使ってみたときには、残響音がより高いところまで響いているような余韻を得られて、解像度の高さを実感できました。2ウェイ・カプセルと可聴帯域を超えた収音能力が、この価格で手に入るのは革新的だと思います。DAWの普及により、作家が自宅でレコーディングして曲を作り込む時代になっていますよね。もうワンランク上のマイクが欲しい作家やクリエイターにも、C-100は重宝するのではないでしょうか」

きらびやかな中高域と高い解像度

 直近で、島崎がプロデューサーを務めたキノコホテルのアルバム収録曲にもC-100が使用されていたのだという。

 「C-100は、中高域をきらびやかな質感で収音し、歌手の微細な表現を録りこぼさない点が魅力的ですね。キノコホテルのアルバム『マリアンヌの奥儀』のリード曲「ヌード」にも使用したのですが、声を張ったときに出てくることがあるピーク成分も耳に痛くなく、それでいてきらびやかに収めることができました。そのときは、マイクプリとしてAVEDIS AUDIO ELECTRONICSのMA5を使用したのですが、C-100は癖が無いので、個性の強いマイクプリによるカラーリングも楽しめます」

 続けて、島崎が最も気を配る、シンガーの微細な表現にC-100の解像度の高さが生きていると話す。

 「シンガーって感情や表現を“語尾”に込める傾向があると思うんですね。具体的には、少し息を抜いてみたり、ぐっと強く思いを込めてみたりということです。セルフ・ノイズが低く、かつ微細な領域まで収音できるマイクじゃないと、そうした表現を録り逃してしまいます。C-100は解像度が高いため、歌手の表現力が試される語尾ギリギリの音を拾うのに適しています。録りそびれも無く、録音後の処理もしやすいです。“全部”録れていることは、ミックスの観点でかなり重要ですから」

 人間の可聴帯域を超えた50kHzから20Hzの低域まで、C-100のレンジの広さは編曲をも支えるのだという。

 「高いところだけでなく中低域がしっかり録音できるので、音やせも無く過度な処理を必要としません。音の輪郭が見えて、色気のあるボーカルが録れますね。また、ロックのようににぎやかなバンド・サウンドの中でも、抜け良く響いてくれます。例えば、ボーカルとアコースティック・ギター、バイオリンのような小編成による静かな曲をレコーディングするときなどは、以前ではアンサンブル全体の中低域に不足を感じ、ビオラのアレンジを加えるなどして補完していました。しかし、C-100によって歌の中低域を豊かに録ることができたので、音数を減らして個々の演奏を聴かせる編曲が可能になりました。そのときに、C-100のレンジの広い収音能力は、楽曲全体のアレンジにも多大なる貢献をしてくれるのだなと実感したんです」

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