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TORAIZ SQUID × O.N.O

TORAIZ SQUID

世界トップ・シェアのDJ機材を開発するPioneer DJが立ち上げたブランド=TORAIZ。今回、同ブランドから登場したハードウェア型の16trシーケンサー=SQUIDは、USBをはじめ、MIDI、CV/Gate、クロック、DIN Syncと多彩な接続端子を備え、DAWとの連携はもちろん、アナログ・シンセやモジュラー・シンセなどを操れる1台。スピーディで直感的にフレーズを生成する機能も多数備えており、ユーザーのクリエイティビティを大いに刺激するシーケンサーとなっている。テクノ~ヒップホップまで対応する気鋭ビート・メイカー、O.N.OにこのSQUIDを使って実際にパフォーマンスを行なっていただいた。

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TORAIZ SQUID × O.N.O

Overview
4パッドとツマミ/ボタンでフレーズを生み出すハードウェア・シーケンサー

TORAIZ SQUID / オープン・プライス(市場予想価格:税別70,000円前後)

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 SQUIDはシーケンス・フレーズを作成/加工することができるハードウェア・タイプの16trシーケンサー。プロジェクトは128個まで作れ、各プロジェクトは最大16trで構成。各トラックあたり最大64ステップ×64パターンが作成できる。パネル右側の4×4のパッドは16ステップのノート打ち込みのほか、記録したパターンの呼び出し、トランスポーズなどのパラメーター操作でも活用。リアルタイムにパッドをたたいての演奏もできる。

 SQUIDは音源は内蔵していないため外部音源とつなげて使うのだが、MIDI対応シンセにつなぐための2系統のMIDI出力端子のほか、USB MIDI(パソコン上のDAWソフトや音源など)、クロック、DIN Sync(かつてのROLAND TR-808など)といった豊富な入出力端子を装備。さらにCV/Gate出力端子も搭載しており、モジュラー・シンセとの接続も可能となっている。まさにシステムの中核を担うMIDIシーケンサーである。

リア・パネル。左からコード・フック、DCイン、電源ボタン、USB端子(USB MIDI対応)、MIDI IN、OUT、THRU/OUT、CV/Gateアウト×2、クロック・イン/アウト、DIN Syncイン/アウトを備えている。ソフト・シンセからモジュラー・シンセ、ビンテージ・リズム・マシンまで、まさにこれ1台あればさまざまな音源をコントロールすることが可能

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O.N.O's Performance

 今回は札幌の音楽シーンをリードするミュージック・カフェ/バー“PROVO”の一角にて、O.N.Oのパフォーマンス動画を収録した。TORAIZのアナログ・シンセAS-1(ベースで使用)、リズム・マシン/サンプラーSP-16(ビートで使用)、そしてO.N.Oが持ち込んだパソコンのソフト音源(上モノやサンプル・ビートで使用)をSQUIDのシーケンスのみでコントロール。また後半部では、全体にかけたフィルター・プラグインのカットオフをSQUIDからのMIDI CCでコントロールする様子も確認できるだろう。約10分間のパフォーマンスの中で主要機能をフル活用してもらったので、ぜひ動画でその効果をチェックしていただきたい。

パフォーマンス時のセッティング。1台のSQUIDからSP-16、AS-1、PCのソフト音源/プラグインをMIDIコントロールする

RUNNING DIRECTION〜フレーズを構成するシーケンスの再生方向をチェンジ

16パッド上に打ち込んだシーケンスは、通常、1段目左→右、2段目左→右、3段目左→右……とパッド上を流れ、そこにアサインされている単音が再生されていく。その再生方向を変えることで、1つのシーケンス・パターンから複数の新しいフレーズを簡単に生み出せるのがこの機能。動画では下記のように何度も使用されている。

00:53~ ドラム・フレーズを入れ替えてブレイクビーツのように
04:26~ シンセ・フレーズの再生順を変化させる
09:36~ ピアノのサンプル・フレーズを入れ替えて新しいパターンに

RUNNING DIRECTIONでは16パッドの再生順をボタンの矢印方向に変更できる。REVボタンでは逆方向、SWITCH BACKボタンでは往復し続けるシーケンスとなる(写真:八島崇)

SCALE MODE~曲調から外れない音のみを鳴らす

3:06 通常、16パッドには鍵盤のように半音ごとにピッチ違いの単音が並ぶため、スケールからディスコードしたパッドを鳴らしてしまうこともある。しかしSQUIDでは指定スケール内の音しか鳴らないように設定できる。直感的にパッドをたたいてフレーズが作れるだろう

SCALEボタンを押すと、16パッドで音階演奏ができるようになる。パッドにアサインする音階は半音単位のクロマチックのみならず、ペンタトニック、琉球、ハワイ、ブルースなどのスケールも選べる

GROOVE BEND〜フレーズの発音タイミングを変化させてノリを出す

3:28 パネル左にあるスライダー操作によってトリガー・タイミングをリアルタイムに変化させる機能。動画は“タ・タ・タ・ター・タ・タ”という上モノ・シンセにかけてノリを変えている

GROOVE BENDスライダーは、向かって左に動かすとトリガー・タイミングが早まり、右に動かすとトリガー・タイミングが遅れる

HARMONIZER & ARPEGGIATOR〜コード&アルペジオ・フレーズ生成

4:11~ HARMONIZERは単音をコード(和音)化してくれる機能(24種類のコードを用意)。任意パッドの音階をルート音としてコードを作成、コードは好きなものを1〜6のHARMONIZERボタンに割り当てておくことができる。動画では、自動的にアルペジオ演奏をするARPEGGIATOR機能を使い、HARMONIZERのコードからアルペジオ・フレーズを生み出している

任意パッドの音階をルートとしてコードを生成してくれるHARMONIZER機能。あらかじめ中央下の1〜6のボタンに好きなコードを割り当てておくとスムーズ

RANDMISER〜ピッチをランダム化して予想外のフレーズ生成

5:32~ 任意パラメーターをランダム化するRANDMISER機能。ここでは上モノのピッチをランダマイズ。5:45にてランダマイズを解除して元のフレーズに戻している

RANDOMIZER機能を使えば、現在再生されているパターンの各ステップにおけるピッチ/ゲート/ベロシティなどをランダム化することができる

SPEED MODULATION〜パターンの発音位置を前後させてグルービーに

5:52 シーケンス・パターンの再生速度に周期的な変化を加えることで、独特なグルーブを生み出せるのがSPEED MODULATION機能。動画では上モノ・シンセにかけることで、発音タイミングが早くなったり遅くなったりと、パフォーマンスのアクセントになっている

SPEED MODULATION機能では、シーケンスの再生速度を周期的に変化させてグルーブを作り出せる。モジュレーションに使用する波形は、三角波/サイン波/ノコギリ波など全6種類。独特なノリが出せる

TEMPO CHANGE〜テンポ・チェンジで曲の雰囲気をガラリと変える

7:46~ シーケンス全体のテンポを変更するのも容易。ここでは117BPMから96BPMまで落として、横ノリなビート感へと変化させている

マスター・テンポの変更ももちろん可能。曲全体のテンポ・アップ/ダウンなど、現場のノリに合わせてフレキシブルに変更できる

RHYTMIC CONTROL〜スタッター的なフレーズ変化を楽しむ

9:27~ パターンの一部をループさせる“リズミック・コントロール”や、ノートの出力確率を変える“トリガー・プロバビリティ”といった機能でグルービーな演出が可能。動画の中でも多用されている機能だが、特にここはピアノ・サンプルがスタッター的に鳴っていて分かりやすいだろう

RHYTMIC CONTROLセクション。EDMのフィル的に使える“タンタン、タタタタ、タタタタタタタタ……”といったリズミックなトリガーが簡単にできる

総評〜Total impressions

予期せぬ“偶然”で無限にフレーズ作りができる

 最初にSQUIDが出るという話を聞いたときは、“このご時世でハード・シーケンサーなんて久しぶりだな。それもPioneer DJから!”と驚きました。もちろん僕はハードウェアで育った世代なので大歓迎でしたね。しかも実際に使ってみたらトリッキーな機能のかたまりですぐに気に入りました。

 SQUIDが素晴らしいのは、“鍵盤の考え方から離れられる”ということ。キーボードが弾けなくてもパッドをたたいて直感的にフレーズが生み出せるし、面白いのはフレーズを加工してどこまでも行けてしまう。テクノやヒップホップを問わず、コラージュ感覚でダンス・ミュージックを作る人って多いと思うんですよ。予期せぬ何かが起こる偶然が楽しい。SQUIDはそういう“偶然待ち”ができる久しぶりの機材ですね。

 触っていて面白かったのはSPEED MODULATION。これはフレーズの発音タイミングを変える機能で、ミニマルなど少ない音数の音楽で使うと効果的でしょうね。それからRUNNING DIRECTION。フレーズ内の再生順を変えられる機能ですが、単にそれだけなら他のソフトでもできる。SQUIDがすごいのは、その変化を記録しておいて、それを元にまたRUNNING DIRECTIONで加工していける……もうエンドレスですよ! しかもSQUIDが優秀なのは“今のはあんまり良くないな”と思った変化のときは、TIME WARP機能で16小節前まで戻れてしまう。最初にスケールを決めておけば音楽的に破たんせずに作っていけるので、あり得ないピッチで変なフレーズにもならない。賢いんですよね。そうやって作ったフレーズはMIDIとして記録されるから、どんどんトライできますよ。あと、INTERPOLATIONはピッチ/ゲート/ベロシティをランダムに生成してくれるので、行き詰まったときに押してみると何かが起こる。運試し的な機能で面白いです。 

 今回のパフォーマンスではSQUIDのシーケンス×16トラックを使って10分ほどの楽曲を組み立ててみました。しかも機能を分かりやすく説明するために、1トラック(1パッド)あたり1小節のシーケンスしか組んでいません。いわば1小節フレーズをループさせて、それらを16個抜き差ししながら変化させていくだけで、これだけのものが作れるという部分を見てほしいですね。

 SQUIDはハード機材ですが、実はDAWと組み合わせて使うのも面白い。ソフトだけで作っていると、マンネリの壁にぶつかったりするので、SQUIDでフレッシュな感覚になって新しいフレーズが作れる。Aメロ/Bメロ/サビみたいな音楽的な作り方をしている人も、予想外のフレーズ作りに生かせると思います。ハードだけに操作は体に染みつくと直感的に行なえて、僕は実質2週間くらいでマスターできました。あくまでシーケンサーなのでMIDIの知識は必要ですが、シンセをディープに使いこなせる人はもっと深いアイディアが出る。これ自体に音源は入っていないけど、使い手のアイディア次第でいかようにも面白いことはできそうですね。作曲だけでなく、ライブでも十分使える機材だと実感しました。

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年9月号 発売中!

SunrecMag1907.jpg 本記事はリットーミュージック刊『サウンド&レコーディング・マガジン 2019年9月号』と連動したものです。誌面上ではTORAIZ SQUIDをクリエイターMASAHIRO KITAGAWA氏が徹底レビューし、より詳細な使い方をご案内しています。また今号のサンレコでは、アメリカ/UKを中心に盛り上がりを見せる“ダーク・ポップの姫”ことビリー・アイリッシュを表紙巻頭で特集。彼女の実兄でありトラック・メイカーである、フィニアス・オコンネルにダーク・ポップ制作についてインタビューを行ないました。特集は約50Pにわたる「一生モノの歌録り用コンデンサー・マイク~新定番のハイグレード20機種から選ぶ」。文字通り一生モノの高価なマイク20本を詳細レビューしています。さらに、小冊子として『セルフPAビギナーズ・ガイド』も付いてきます!

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製品情報

TORAIZ / SQUID

価格:オープン

【スペック】
■最大トラック数:16 ■最大パターン数(各トラック):64 ■最大ステップ数(各パターン):64 ■ステップ分解能:4/8/16/24/32分音符 ■最大ノート数(各ステップ):8 最大プロジェクト数:128 ■MIDI:MIDI IN×1、MIDI OUT×1、MIDI THRU / OUT×1 ■USB:USB B端子×1 ■CV/Gate:CV OUT×2(V/Oct、Hz/V)※CV output range:1V/2V/5V/10V/±5V(V/Oct)/8V(Hz/V)、Gate OUT×2(V-Trigger、S-Trigger)※Gate output range:5V/10V(V-Trigger) ■クロック:CLOCK IN×1(Step、1/2/4/24/48ppqn、Gate)、CLOCK OUT×1(1/2/4/24/48ppqn) ■外形寸法(WxDxH):374.8mm × 223.9mm × 72.1mm ■本体質量:1.9kg
【問い合わせ】
Pioneer DJ https://www.pioneerdj.com/ja-jp/
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プロフィール

O.N.O
現在までにTHA BLUE HERBおよびソロ・プロジェクトで合わせて12枚のアルバムを発表し(7月3日にTHA BLUE HERBの5枚目のニュー・アルバム『THA BLUE HERB』をリリース!)、シーンの中枢を鋭くえぐる独自の楽曲群を生み出し続けるクリエイター。豊かなインスピレーションによって"O.N.Oビーツ"を紡ぎ出し、その卓越したライブ・パフォーマンスが全国各地のフロアビート・ジャンキーたちを熱狂させている。

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