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- 2024/11/16
YAMAHA / CP73
ヤマハの伝統である“CP”シリーズ。1976年のCP70発売以来、ライブでの演奏に特化したステージ・ピアノが次々と登場してきたが、その最新モデルがCP73/CP88だ。サウンド面、操作性、鍵盤の品質のいずれにおいても長年の研究開発を重ねてきたヤマハらしいこだわりが感じられる。今回はキーボーディストの西村奈央氏に、73鍵モデルのCP73を試奏していただき、そのインプレッションについて尋ねた。動画では西村氏によるオリジナル・トラックの演奏、おすすめの音色とその活用方法、音作りのコツなどを紹介しているのでぜひご覧いただきたい。
CP73は88鍵モデルのCP88と内蔵サウンドに相違はなく、3種類のグランド・ピアノ(CFX/S700/ベーゼンドルファー290インペリアル)やアップライト・ピアノ(U1/SU7)、CP80やローズ/ウーリッツァー系のエレクトリック・ピアノのほか、オルガンやクラビネット、シンセ・ベース、シンセ・リード、ストリングス、パッドなど、シーンに合わせた繊細な表現を可能にする音色を多数搭載している。
また、大きな特徴のひとつとして各パラメーターに1ステップでアクセスできる直感的な操作性が挙げられる。音源部分はピアノ、エレクトリック・ピアノ、サブの3つのセクションに分かれている。それぞれ独立してオン/オフができ、セクションごとのボリュームやトーンの調整、インサーション・エフェクトの使用が可能だ。また、各音色はレイヤーして演奏することができる。さらに、全体に反映するマスター・エフェクトも搭載しているため、リアルタイムでの音作りがしやすい。作った音色の設定はライブ・セット・サウンドとして保存しておくことができるので、瞬時に呼び出して音色を切り替えることができる。
鍵盤には、新開発のバランスド・ハンマー・スタンダード(BHS)を採用し、Rhodesに代表される多くのエレクトリック・ピアノと同じく、全鍵盤の重さが均一で、滑らかな演奏感を得られる。また、コンパクトなサイズ感に加えて、別売の専用ケースが用意されているため可搬性が良く、マイ・ピアノとして持ち運んで演奏するのも良いだろう。CP73は、ステージに立つ演奏家のことを考慮した、まさにステージ・ピアノの名にふさわしい1台となっている。
学生の時からステージ・ピアノを電車で持ち運んでいたのですが、88鍵のフル・サイズのモデルを持ち歩くのは高さもあって危ないですし、階段しかないところでは持ち上げなければいけないので少しでも軽い方が良いと思い、初めて買った鍵盤は73鍵のステージ・ピアノでした。
普段は、木製グレード・ハンマー鍵盤のCP88を使っているのですが、BHS鍵盤のCP73もとても弾きやすかったです。エレピやクラビは短いタッチのフレーズが多かったりするので、重い鍵盤より軽めの鍵盤の方がちょうど良いんです。
CP73は、ライブでの操作性が良いのも魅力的です。例えば、バンドの中で演奏する時は抜ける音を作るために、サビやソロの演奏で使う印象的な音色のシンセ・リードはマスターEQのツマミで高域の成分を多く出し、コーラスやディレイをかけています。また、ピアノは上の方がキラッと抜けるように低域を切って使ったりすることが多いですね。あと、最近の楽曲でよく使われるような効果を出すために、弾き終わる瞬間にピアノにリバーブを深くかける操作をリアルタイムで行なうこともあります。
CP73をライブで使うとしたら、クラシックな曲を弾く場面がなければ88鍵は必要ないので、メインのステージ・ピアノとして普段のセッティングに組み込みたいです。もしくは、エレピやクラビなどの音色をCP73で弾き、ピアノは単体で用意するのもいいのかなと思いました。
弾き語りのアーティストやバンドマン、バンド女子でライブハウスに自分の音色、鍵盤を持っていきたいと思う人にとっては、サイズもちょうど良く、音色も簡単にいじれるので、CP73は良い選択肢だと思います。ジャンルで言うとR&Bなどのブラック・ミュージック系のサウンドは音域を広く使わず、エレピやクラビなどのピアノ以外の音色を使うことが多いので、合うのではないでしょうか。
キーボーディスト・西村奈央さんが動画内で演奏&解説している音色のライブセット・サウンドをヤマハ製品サイトで公開中です。ぜひダウンロードして、動画を観ながら音色の作り方や、演奏時の操作方法の参考にしてみてください!
■YAMAHA CP73 × 西村奈央 オリジナル・ライブセット(ヤマハ製品サイト)
価格:オープン
西村奈央(にしむら・なお)
1988年10月8日生まれ。2歳よりピアノを始め、6歳より作曲、8歳よりエレクトーンを始める。高校でクラッシック・ピアノを専攻、専門学校ではキーボードを専攻し、卒業後はアコースティック・ユニット、ガールズ・ロック・バンド、歌手活動を経て、サポート・ミュージシャンとしての活動を始める。様々なジャンルでの経験をもとに、アグレッシブなパフォーマンスとコーラスもできるキーボーディストとして多方面でライブ・サポートを行う。