AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Roland/V-Drums & Noise Eater
ビギナーからトップ・プロまで対応する幅広いラインナップを誇るローランドのVドラム。先に公開した特集記事では、“ビギナーのための電子ドラム自宅導入チュートリアル”をテーマに、アコースティック・ドラムでの演奏を想定したセッティング術や目的別のラインナップ紹介などをお届けしてきましたが、初心者のみならず、電子ドラムの自宅導入を検討しているすべてのドラマーが不安に感じているのが、“防音/防振”の問題ではないでしょうか。ここでは、気になる防振/防音アイテムの効果を動画連動で検証! さらに山木コハル&山木秀夫によるVドラムをテーマにしたスペシャル親子対談もフィーチャー!!
電子ドラムを自宅に導入する上でどうしても気になるのが、防音/防振の問題。特にマンションなどの集合住宅にお住まいの方は、電子ドラムを導入するにあたって無視できない重要な課題でもあります。
まず防音に関してですが、そもそも電子ドラムはアコースティック・ドラムに比べてはるかに静音性が高く、特にVドラムに採用されているメッシュ・ヘッドは2プライ仕様で、防音という観点から考えたときに十分すぎるくらい配慮した上で設計されています。今回の動画撮影時に、デシベル・メーカーを使ってパッドを叩いたときの“打撃音”を計測したところ、マックスで85dB、平均で75dB程度でした。この数値を生活音に置き換えると、掃除機の音(最大76dB)や地下鉄の車内(76.9dB)と同等になります(東京都環境局調べ)。
しかしそれでも完全に音や振動を遮音できるわけではないので、部屋内での置き位置を工夫する、カーテンを防音性の高いものにするなど、ある程度の対策をしておくことでトラブルを未然に防ぎ、快適な練習環境を構築することができます。
自宅で電子ドラムを叩く際に、特に気をつけなければいけないのが、ハイハット・ペダルやキック・ペダルを踏むときに生じる振動と低音ノイズです。これらは床面を通じて階下や隣の部屋などにも伝わりやすく、一緒に住む家族や近隣の迷惑になることも少なくありません。電子ドラムを設置する場所には、最低限カーペット/マットなどを敷いてから使用することをオススメします。
ローランドではハイハットの脚やペダルの下にセットできる“ノイズ・イーター”という専用のアイテムを発売しています。NE-10はキック・ペダル、ハイハット・スタンドの下にセットして使用するボード・タイプの防振アイテム。半球型の防振ゴムが採用されていて、ペダル・ワークの振動を吸収しつつ、効果的に分散してくれます。そしてNE-1はスタンドの脚に装着するタイプ。これらを併用することで、階下への騒音を約75%軽減することができるということです。同じく防振処理が施されたVドラム専用マット、TDM-10、TDM-20と組み合わせると、振動の伝達を大幅にカットすることができます。その効果は、動画を見てもらえればわかるかと思います。
最後は編集部からの提案で、Vドラム用のマット+ノイズ・イーターに、TAMAのソフト・サウンド・ビーター=BSQ10Sを組み合わせてみました。BSQ10Sはビーター・ヘッドに防音室の壁などに使われる波型スポンジを採用したモデルで、打撃音を大幅にカットできるアイテムです。
防振効果の高いマット+ノイズ・イーターに、打撃音を大幅にカットしたビーターの組み合わせは効果抜群で、動画を見てもらえればわかる通り、階下への影響はほぼありませんでした。ただしソフト・サウンド・ビーターを使用する場合は、キック・パッドの感度を調整する必要があります。
これまで記述してきたような物理的な対策を施すことも大切ですが、練習時間などに関しても早朝や深夜を避けるなど、良識ある時間帯での自宅練習を心がけることが大切です。また、近隣の住民に対して一言挨拶をし、事前に断りを入れておくだけでもトラブルに発展する可能性が低くなるでしょう。
ここでは動画のモデルを務めてくれた山木コハルと、その父で日本を代表するドラマー、山木秀夫による特別親子対談をお届けしよう! 山木と言えば、アコースティック・ドラムに電子楽器を組み込んだ“ハイブリッド・セッティング”をいち早く導入した、日本におけるVドラムのオーソリティ的な存在。コハルはその山木が自宅練習用に置いていたVドラムを使ってドラミングを学び、今春よりドラマー&ソロ・アーティストとしての活動を本格化させたばかり。そんなVドラムと縁の深い“ドラマー親子”にたっぷりと語り合ってもらいました。
●コハルさんはVドラムでドラムを始めたんですよね?
コハル そうなんです! 小学生の頃なんですけど、当時はまだマンション住まいだったので、父が自宅練習用にVドラムを使っていたんです。それを触って遊ぶようになったのが、ドラムを始めたきっかけなんです。
山木 やっぱりマンションで生ドラムは叩けないですからね。その点Vドラムは音量がコントロールできるから心強いですよ。振動はちょっと心配だったけど、大きな硬めのスポンジを重ねて、その上にVドラムのマットを敷けば全然問題なかったですね。
●プロ・ドラマーの視点から見て、Vドラムでの練習は効果的でしたか?
山木 もちろんです。Vドラムの効果はすごいですよ。スクールを始めてもう6年くらいになるんですけど、進歩が遅かった生徒さんも、Vドラムを買った途端にグンとレベルが上がるんです。家にVドラムがあるのとないのでは大きな違いですよ。Vドラムは音色の種類が豊富で、イマジネーションが掻き立てられるので、生ドラムよりも想像力が鍛えられるように思いますね。生ドラムはある意味、1つの音色しかないから、イマジネーションという点では限られているというかね。Vドラムはいろんな音色に合わせて、いろんなニュアンス、いろんな気持ちで叩けるんです。ドラマーがグルーヴを表現する上において、音色に伴うイメージを持つことはすごく重要。だからVドラムを使って練習するドラマーは、成長していく度合いが圧倒的に早いんです。
●いろんな音色が楽しめるのは、確かに大きな魅力ですよね。だからこそコハルさんも飽きずに練習を続けられたんじゃないですか?
コハル そうですね。曲によってこの音色が合うんじゃないかって探すのは、すごく楽しかったです。あとドラムじゃない音色も入っているじゃないですか(笑)。小さい頃は、その音色で遊ぶことも多かったですね。
●撮影中に親子でドラムを触っているときに、Vドラムの方が小さい音をコントロールしやすいという話をされていましたが、それについて詳しく教えていただけますか?
山木 小さい音でバス・ドラムをコントロールするのは、生ドラムだと逆に難しいんですよ。ある程度力を入れないと鳴らないですから。その点Vドラムはちょっと触れるだけで音が鳴るから、小さい音でコントロールするための筋肉をつけることができる。
コハル 確かにそうかもしれない。踏み方によって“こんなに音が変わるんだ!”っていうのは、逆にVドラムで学んだ気がします。
山木 だからピアニッシモの演奏は、Vドラムを使って弱く正確に叩く練習をすればいいんです。Vドラムでそれができれば、生ドラムでもちゃんと表現できると思いますよ。あとはまだ身体が出来上がっていない子供も、Vドラムで覚えるのが良いと思いますね。生ドラムは力任せに叩いてしまう傾向があって、特に筋肉がないと余計にね。
コハル 父の言う通りだと思います。私はずっとVドラムで練習してきて、身体の動かし方や基礎的なところは、全部Vドラムで覚えたんですけど、だからなのか、力で叩くっていう意識はほとんどないですね。
山木 それが正解。ドラムは大きな音で鳴らさないといけないって、みんな勘違いしているけど、そうじゃない。ドラムは軽くスティックを落とせば十分に鳴るんだから、何よりもピアニッシモを大切にした方が良いと思う。ピアニッシモを大切にすれば、フォルテッシモが生きる。だからVドラムでピアニッシモと脱力を覚えるのは、生ドラムを叩く上でもすごく効果的。もちろん音楽によっていろいろあるけど、音の大きさに気をつけて叩くことはドラムの基本だからね。
●Vドラムの導入を検討している読者に、メッセージをお願いします。
山木 いつでも叩ける環境があるっていうことが何よりも大きいと思う。思い立ったときにすぐに触ることができるのは、Vドラムならではで、生ドラムだとそれはできないからね。ずっと楽器に触れていることが上達への近道なんだけど、日本の場合は住宅事情もあって、大きな音は出せないから、本当にVドラムの存在は重要で、ドラマーにとって必要不可欠になっていると思う。繰り返しになるけど、小さい音で練習することは、大きい音で叩けることにもつながってきますからね。
コハル 激しく同意です(笑)。基礎練も大切ですけど、自分の好きな曲と一緒に叩くのも練習じゃないですか? それが簡単にできるVドラムは本当にすごいと思うし、好きなことを楽しみながら、しかもいつでもできる。だからこそずっと続けられるんだと思いますね。
本記事は、リットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2019年8月号』の特集記事を転載したものです。表紙特集は、華やかな多点キットから重厚なドラミングを放つD'ERLANGERのTetsu。さらに恒例の誌上コンテストの課題曲発表や、KREVA×白根佳尚によるスペシャル対談、リハスタの個人練1時間を使ったトレーニング・メニューを紹介する特別企画など、盛りだくさんの内容。本特集では、アコースティック・ドラムの演奏を想定したセッティング方法の紹介や目的別ラインナップ一覧表、さらに上記で掲載した山木コハルと山木秀夫とのスペシャル親子対談の完全版も掲載しています。本記事と併せてぜひお楽しみください!
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
価格:オープン
山木コハル
やまきこはる●2012年、13歳でエントリーした大型オー ディションで受賞後、数々のテレビ・映画・舞台・ラジオに出演。2014年にはアイドル・グループの一員としてCDデビューも果たす。昨年まで第一線のグループで活躍した後、2019年よりソロ活動を開始。 歌唱、演技に定評が高く、トーク番組やイベントのMCまでこなすマルチな才能を持つ。今春、ソロとしての初ライブを開催するなど、精力的な活動を行っている。
山木秀夫
やまきひでお●1952年生まれ。熊本出身。中学よりドラムを始め、1974年に市川秀男のトリオに加入し、上京。プロ・ドラマーとしての活動をスタートさせる。以降、近藤等則、アート・リンゼイ、ビル・ラズウェル、井上陽水、B’z、福山雅治、JUJUなど、膨大な数のライブ/レコーディングに参加。現在は国内外での演奏活動の傍ら、自身が培った経験や知識を後進に伝えていくプロジェクト=山木秀夫コレクションも展開中。