AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
シグネチャー・ベース
ベーシストとメーカーをつなぐ愛の結晶、シグネチャー・ベース。唯一無二のルックスもさることながら、現場の要望を取り入れ、斬新な技術が体現されたシグネチャーという世界は、読者のベース選びやカスタマイズにとって大いに参考となるものだ。今回は最新モデルを一挙ご紹介。御供信弘の試奏レポートに加え、メーカー・アンケート、さらに特別インタビューなど、多角的にその魅力をひも解いていきたい。
30年間にわたる研鑽が生んだ最高峰のスラップ・ベース
1989年、青木智仁のために誕生したアトリエZを象徴する逸品で、2018年に最終型が完成。ヘヴィウェイト・アッシュ・ボディが独特の風合いを演出している。ピックアップにJBZ-4を、プリアンプにバルトリーニTCTを搭載し、同MCT250のミッド・モジュールを用いることでロー/ミッドのブーストとカットが可能となり、ロー/ミッド・レンジが強調され、このモデルならではの高い音圧を実現してくれる。3mm厚のピックガードやピックアップ・フェンスの採用によるプレイ・アビリティの高さは、スラップを多用するプレイヤーにこそ体感してほしい点だ。そして、ヘッド・ストック先端には青木智仁のサインが記されている。
【Specifications】
●ボディ:アッシュ(2ピース) ●ネック:メイプル ●指板:メイプル ●スケール:34インチ ●フレット数:20 ●ピックアップ:JBZ-4×2 ●プリアンプ:バルトリーニTCT + MCT250 ●コントロール:ボリューム×2、トレブル、ベース(&アクティブ/パッシブ切替) ●ペグ:ゴトーFB-30 + シャーラーDチューナー ●ブリッジ:BB419 ●カラー:ビンテージ・ナチュラル(TAカスタム) ●価格:330,000円
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ATELIER Zギターワークス
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
今から30年前、アトリエZの(ブランド)スタート・モデルがM#245でした。そして青木智仁氏が最後に使用していたベースの最終型をM#245TAとして完成させました。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
周波数250Hzのミッド・モジュールを取り付けたこと。バック・プレートより、ドライバーにてロー/ミッド・レンジのブースト/カットが調節可能になっています。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
青木智仁氏所有の実器を細部にわたり詳しく調べました。カラーは青木さんが使い続けて経年変化した色に近づけるようにしました。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
青木智仁氏のベース・サウンドに興味を持たれている方々や、JBタイプの好きな方にオススメです。
往年のフュージョン・サウンドとして間違いないですよね。やっぱりハイとローがしっかりしていて、ミドルの調節もある程度できるから、スラップしたときにすごく抜けてくる。でも意外と、若い人がロックで使ってもすごくいいと思いますよ。最近の音楽は余計なミドルが不要だったりするし、打ち込み音が鳴っていても絶対に埋もれない楽器ですよね。そういう使い方をされているのを見たら、青木さんも天国で喜ぶんじゃないのかなあ。
ライブ第一線を闘い抜くド派手なルックスに秘めた多様性
バンド・ロゴがあしらわれた鮮やかなピンクのフィニッシュが目を惹く本器。軽量ペグや6点止めの強固なボルトオン・ジョイントに加え、蓄光素材のポジション・マークを採用。ライブ・パフォーマンスの強い味方となるだろう。ピックアップはMMタイプを2基搭載しており、“シリーズ/パラレル/コイル・スプリット”の3種の接続方法を選択可能。さらに3バンドEQを合わせることで豊富な音色バリエーションを実現した。ライブで使っていきたいユーザーの思いに応えつつも、緻密なコントロールにより幅広い層へ受け入れられるモデルと言えるだろう。カラーはピンクのほかにグリーンも展開。本人同様、左利き用もラインナップされている。
【Specifications】
●ボディ:ホワイト・アッシュ ●ネック:メイプル ●指板:メイプル ●スケール:34インチ ●フレット数:21 ●ピックアップ:セイモア・ダンカンSMB-4D×2 ●コントロール:ボリューム、バランサー、トレブル、ミドル、ベース、ピックアップ・バリエーション・スイッチ(シリーズ/パラレル/コイル・スプリット) ●ペグ:ヒップショットHB6C 1/2インチ ●ブリッジ:ゴトー404BO ●カラー:ピンク(写真)、グリーン ●価格:520,000円(左利き用は550,000円)
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ESP
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
本人がインディーズ時代から愛用していた、左利き用のESP AP-SL/Mを基準にしています。ピックアップ・バリエーション・スイッチなどの仕様を踏襲しつつ、スケールを通常の34インチに変更、さらに軽量ペグを採用することで、持ったときのバランスを良くしました。さらにステージ上での激しい動きでもタフなベースに仕上がっています。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
重く硬いホワイト・アッシュをチョイスしていること。また3バンドEQにESPのアクティブ回路CI-R-03を搭載している点。ミッドによる抜けの良さと、ロー・エンドの迫力があります。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
塗装です。ファッション・ブランドLEFLAHのpar-ceeさんがデザインしたグラフィックを入れていますが、ミリ単位の調整が必要でした。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
この見た目ですから、やっぱりWANIMAが好きな人ですかね。ただ音には汎用性があり、グラスルーツにはナチュラル、ブラック、イエローのバージョンもあるので、そちらもぜひ。
単純にWANIMAのファンなので僕もこれ欲しいです(笑)。まずピックアップ・パリエーション・スイッチの存在が大きくて、鳴らせる音の幅がめちゃくちゃ広いです。さらにEQで補正していけば、“とりあえずこの1本があればなんでも対応できる”くらいだと思いますよ。一番本人っぽいと思ったのはシリーズ接続で、ピックでガーッと弾いても音が立ちすぎず、中低音がしっかり埋まる。何よりネックの触り心地がよくて好きですね。
驚きのコスト・パフォーマンスとビンテージ愛好家も納得の仕様
2013年、日本人ベーシストとして初めてフェンダーとエンドースメント契約を結んだハマ・オカモト。彼の所有する1968年製プレシジョン・ベースを再現したのが本器で、細めのジャズ・ベース・ネック・シェイプ、楕円形の通称“パドル・ペグ”、フィンガー・レスト、ブリッジ・カバー、側面全面にすべり止め加工が施された通称“フラット・トップ・ノブ”などが採用されている。しかし再現を超える最大のポイントがボディ材にバスウッドをチョイスした点で、これにより10万円前後の販売価格を実現。ビンテージ・ファンにとどまらず、ベースを始めたばかりのライト・ユーザーへも訴求することに成功している。昨年からオリンピック・ホワイト・カラーも新登場。
【Specifications】
●ボディ:バスウッド ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●スケール:34インチ ●フレット数:20 ●ピックアップ:ビンテージ・スタイル・スプリット・シングルコイル・プレシジョン・ベース ●コントロール:ボリューム、トーン ●ペグ:ビンテージ・スタイル“ロリポップ” ●ブリッジ:4サドル・ビンテージ・スタイル ●カラー:3トーン・サンバースト(写真)、オリンピック・ホワイト ●価格:104,500円
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フェンダーミュージック
プレシジョンらしいゴホッとした粘り成分に加え、ジャズ・ベースのニュアンスもあるので、使いやすい印象です。このバランスの良さと、価格がいい意味で釣り合っていなくてビックリですね(笑)。楽器としての雑さがなくて、ハマくんのフェンダー愛も感じますよね。そして自分のスタイルがわからない初心者の人には特にオススメしたい。音楽性をそんなに選ばない音だし、ノブがふたつしかないから操作もわかりやすいですしね。
天才のDNAが息づく万人向けのフレットレス・ベース
ピックガードのないサンバースト・ボディにフラット・トップ・ノブがクールな印象の本器は、まさにジャコ・パストリアスのトレードマークである62年製ジャズ・ベースを彷彿させる。アルダー・ボディにメイプル・ネックというオーソドックスな組み合わせに加え、指板にパーフェローをセレクト。さらにエポキシ樹脂で保護された本人の愛器に倣い、指板全面がウレタン・コートされている。フレット・ラインを有するため、フレットレス初心者でも気軽に手に取ることができるはずである。弦はフラット・ワウンドが張られており、よりまろやかなトーンを演出。ネック・プレートに刻まれた“Jaco”の名も、実にファンの心をくすぐる仕様となっている。
【Specifications】
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ウレタンコーテッド・スラブカット・パーフェロー ●スケール:34インチ ●フレット数:フレットレス ●ピックアップ:アメリカン・ビンテージ・シングルコイル・ジャズ・ベース×2 ●コントロール:ボリューム×2、トーン ●ペグ:アメリカン・ビンテージ・リバース・オープンギア・ベース ●ブリッジ:4サドル・アメリカン・ビンテージ・ベース ●カラー:サンバースト ●価格:300,000円
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フェンダーミュージック
レリック加工されたバージョンのものを録音で使ったこともありますけど、これも素晴らしいです。立ち上がりが遅すぎず、トーンが甘い。フロントのボリュームを絞って、指もリア寄りで、硬くスピーディに弾くとジャコっぽい音を出せます。で、低音を補いたかったらピッキング位置をネック寄りにするのがいいですね。またジャコのようにラウンド・ワウンド弦を張ってみたりすると、意外と歯切れのいいピック弾きも合う気がしますよ。
不死鳥のごとく蘇る質実剛健な“漢のベース”
漆黒のボディに輝くホログラムのフェニックスが美しい逸品。PJタイプのピックアップ構成と、42mmのナット幅を持つネックから成る骨太なサウンドが特徴だ。コントロールはボリュームとバランサーのみという非常に男らしい作りである一方、4弦のみ裏通しに対応していること、エンド・ピンの位置やジョイント部のなめらかな加工など、細かいこだわりも見て取れる。何より深いカッタウェイと24フレットの仕様が、ハイ・ポジションを縦横無尽に駆け巡るTAIJIのプレイにひと役買っていたことだろう。また、中音域のバランスを良くするため、“ブレス・ホール”という溝がボディに彫られており、そのサウンドをより特徴的なものとしている。
【Specifications】
●ボディ:ホワイト・アッシュ(トップ)、メイプル(バック) ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●スケール:34インチ ●フレット数:24 ●ピックアップ:セイモア・ダンカンSPB-3(フロント)、同SJB-3(リア) ●コントロール:ボリューム、バランサー ●ペグ:ゴトーGB11W ●ブリッジ:オリジナル ●カラー:フェニックス・ヴィジョン ●価格:450,000円
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キラー・ギターズ
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
オーソドックスなシェイプ(PBタイプ)で、テクニカルなプレイもできる24フレット仕様であること。ロック向けにドライブ感のあるサウンド。低音が埋もれないこと。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
アッシュ・トップ/メイプル・バック/4弦裏通しによって締まった低音をイメージ。また音像が硬くなりすぎないよう、ボディ内部、トップ材とバック材の接着面に溝状のホール加工を施したこと。ワイド・タイプのナット幅と、ミディアム・ハイ・タイプのフレットで、タッピングなどテクニカルなフレーズにも対応。ネック内部にはトラスロッドのほかにカーボン・ロッドを導入することで、24フレットの長いネックに起こりがちなハイ部分の起き上がりを抑制。重量級ブリッジ(おそらく市販されているブリッジのなかで最重量かと)をボディ落とし込みで取付け。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
見た目ではなく、希望のサウンドが出るまで、パーツ、材などの試行錯誤をしました。フェニックスのグラフィックはTAIJIさんが書かれたイラストからデザインしています。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
TAIJIさんのファンの方はもちろん、幅広いジャンルの方に。ロック/テクニカル系のベーシストに。
レンジがすごく広いけど、ひと言で言うとガツっとした低音。抜ける硬さと、どっしりとしたローの迫力がありますね。ネックが太めだけど持ちにくくはないし、塗装が艶消しなのもいいですよね。フレット両端の削り方も丁寧で、ずっと弾いてても疲れない。ハイ・ポジションが弾きやすいわりに、ヒール加工のおかげか、カッタウェイがエグすぎないのも好き。どの奏法でも問題ないし、ハードな音楽以外でもガンガン使っていきたい1本ですよ。
シンプルさのなかにこそ光る老舗国産ブランドの技術力
岡峰光舟のシグネチャー・モデルのうち、“#5”と呼ばれる本器。基本スペックは最新“#6”と同等で、良質な材によるシンプルなパッシブ構造となっており、職人の手で一本一本生産される。フロントをリバース・マウントしたPJタイプのピックアップにはOXALISのクォーターパウンドを採用。音にパンチを求めつつ、ニュアンスを生かしたいユーザーは必見だ。さらに、ボディに大胆なカッタウェイを施すことでハイ・ポジションの演奏性が大幅アップ。パフォーマンスに対する本人の強いこだわりがうかがえる。ライム・グリーン・メタリックと呼ばれる鮮やかなフィニッシュもポイントだ。フレットレスなどのオーダー・オプションもありがたい。
【Specifications】
●ボディ:アルダー2ピース ●ネック:メイプル ●指板:エボニー ●スケール:34インチ ●フレット数:22 ●ピックアップ:OXALIS PJ-QP ●コントロール:ボリューム×2、トーン ●ペグ:ゴトーGB-640 ●ブリッジ:スパイラル・ブリッジ ●カラー:ライム・グリーン・メタリック(写真)、各オーダー・カラー ●価格:オープン・プライス(市場実勢価格:340,740円前後)
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ムーンギターズ
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
岡峰氏から“軽量で22フレット仕様のベースが必要”とのことでした。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
それ以前のモデルから、ペグをゴトーGB-640、ブリッジをスパイラル・タイプにするなど、軽量化を図りました。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
22フレット仕様ということで、22フレットをプレイしやすいようなボディ・カッタウェイの加工。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
岡峰氏のファンの方はもちろん、ガッツのある音が好みのすべてのプレイヤーに弾いていただきたいです。
バンドのなかでガシガシ弾いても埋もれない音って感じがします。エボニー指板ならではのくっきりと硬いサウンド。フロントのPBらしい暴れる音に、リアを足していくと安定感が増していきますね。カッタウェイやコンター加工が念入りでハイポジが弾きやすいし、耳障りな高音が抑えられてる。それでいてドラムの重心が低くても絶対抜けてくるっていう。伝統的な趣向とともに、ロックな楽器メーカーとしてのイメージを更新する逸品ですね。
実用的スペックのなかに少女の憧れが詰まった1本
平均年齢18歳のガールズ・バンドGIRLFRIEND、そのサウンドを支えるMINAのシグネチャー・ベースが本器で、深緑のフィニッシュにゴールド・パーツが映える1本だ。ボディはメイプルとアルダー2Pの積層構造。PJタイプのオリジナル・ピックアップからはキレのあるサウンドが出力される。24フレット仕様や、手元でオン/オフ切替が可能なアクティブ・サーキットを有するなど、実用的なスペックも魅力。ヘッド・ストックの4弦ペグ部はトップ・コートの塗装などが避けられ、ナットからの角度を稼ぐことで弦のテンションを増すなど、国産ブランド・サゴの高い技術力を誇る本器。ファンならずともぜひチェックしておきたい逸品だ。
【Specifications】
●ボディ:メイプル(トップ)、アルダー2ピース(バック) ●ネック:メイプル ●指板:メイプル ●スケール:34インチ ●フレット数:24 ●ピックアップ:L(x)カスタムPB(フロント)、L(x)カスタムJB4(リア) ●コントロール:ボリューム、バランサー、トレブル、ベース、パッシブ/アクティブ切替スイッチ ●ペグ:ゴトーGB350 ●ブリッジ:ヒップショットAスタイル ●カラー:カスタム・カラー ●価格:オープン・プライス(市場実勢価格:542,650円前後)
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サゴニューマテリアルギターズ
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
彼女がベースを始めた頃にひと目惚れした1本(深緑のボディ・カラー、ゴールド・パーツなどの仕様)をイメージし、弊社のDefiというスルーネック33インチ構造の5〜6弦モデルをもとに、彼女用の仕様で製作しました。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
軽量ペグ(ゴトーGB350)を使用し、斬新なボディ・シェイプの工夫もあり、全体的に軽量ながらも、ボディ・バランスが良いことがポイントです。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
ボディ・トップのカスタム・ペイントです。本人手描きのイラストからデジタル化し、すべて自社で仕上げていきました。 ファンの方はもちろん、軽い重量で、バランスのいい本器は、ライブやスタジオなどに楽器を持ち出すことが多い方にもオススメです。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
オーダーをメインとしたメーカーですので、お客様に合わせた1本をお作りいたします。
楽器としてのバランスがよく、レンジが広くて、簡単に言うと高級楽器の音がします(笑)。ただハイファイというわけではなくて、おいしいところが出てくれますね。そしてとにかく弾きやすいということと、体に対するフィット感がハンパない。すごいですよ、作りがしっかりしてる。女の子が弾くにはもってこいだろうし、これだけ自分にあったベースを作ってもらえるなら、僕もオリジナル・モデルをオーダーしたくなりますね。
スチューデント・モデルの常識を超えた本格ロック・ベース
サゴ名義で製作されていた神田雄一朗(鶴)のシグネチャー・モデルだが、こちらは姉妹ブランドのシードによって発売中のもの。スチューデント・モデルという位置づけだ。クラシックなルックスと神田のこだわりをうまく融合。ピックガードの形状や、中心が一段盛り上がったボディ形状に思わず反応してしまう人も多いのでは。サウンド面では2基のハムバッカー・ピックアップによるコシのある重低音に、デタッチャブル・ネックらしい歯切れのよさをプラス。ジャックやエンド・ピンの位置も特徴的だ。スチューデント・モデルの価格帯でこれらを実現したことで、伝統のロック・サウンドを初心者でも手軽に楽しめるようになった。
【Specifications】
●ボディ:バスウッド ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●スケール:34インチ ●フレット数:20 ●ピックアップ:オリジナル・ハムバッカー×2 ●コントロール:ボリューム×2、トーン ●ペグ:グローバー・タイプ ●ブリッジ:カレント・タイプ ●カラー:ドレス・ホワイト(写真)、ドレス・ブラック ●価格:83,000円
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サゴニューマテリアルギターズ
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
コンセプトは、あったようでなかった2本の融合。お互いの良さを残しつつ、サゴのエッセンスを盛り込んでいます。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
ジャックやストラップ・ピンの位置が特徴的なポイントです。日々のライブ・ステージから考えられた演奏性、取り回しのよさを実現しています。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
ピックガードやボディ・シェイプのデザインなど、個性を残しつつサゴらしさを形にしていく過程。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
初めてベースを手にする方や、2本目、3本目に買いたいという方。見た目としても、音色としても個性がたっぷりなベースですのでオススメできます!
低域の膨らみ方が完全に往年のハムバッカー・サウンドで、見た目のイメージを裏切らないですね。でもサステインが豊かで、近代的にアップデートされてる。特に100Hz以下の出方がこのベースの個性だと思うので、バスドラとケンカしないように音作りするとうまくいくと思います。低く構えて、ピックで弾きたくなりますね。ジャックやエンド・ピンの位置が通常と違うのもトラブルを避けやすいというか、現場仕様でいいですね。
妥協なき追求の末に生まれた“帝王”の名を冠する逸品
“マーカス・ミラーが満足できる最高品質のベースを手頃な価格で提供する”というコンセプトのもと開発された当モデルは、指板のエッジ加工や、細部のパーツをアップグレードすることで、より機能性が高められた“第2世代”のもの。プリアンプを始め、ピックアップ、ペグなどほとんどのパートが自社製となっている。プリアンプは18V駆動にすることでパワフルな音圧を実現。3バンドEQとは別にミドル・フリーケンシーやメイン・トーンを実装し、アクティブ/パッシブ切り替えも含めたさまざまな音色をひとつの楽器に集約している。ヘッドに刻まれた”Marcus Miller”の名は、ベース界の“帝王”による厳しい基準をクリアした証と言えるだろう。
【Specifications】
●ボディ:スワンプ・アッシュ ●ネック:メイプル ●指板:メイプル ●スケール:34インチ ●フレット数:20 ●ピックアップ:2nd ジェネレーション・ニュー・ピックアップ・セット ●プリアンプ:マーカス・ヘリテージ●コントロール:ボリューム/トーン、ブレンダー、トレブル、ミドル/ミドル・フリーケンシー、ベース、アクティブ/パッシブ・スイッチ ●ペグ:サイアー・プレミアム・オープン・ギア ●ブリッジ:ヘヴィ・マス・スタンダード ●カラー:タバコ・サンバースト ●価格:96,500円
【問い合わせ先】
サイアージャパン
Q1.アーティスト側からの要望、および開発コンセプトとは?
数年間にわたり、“若い世代にベースを通じて音楽が与える楽しさと喜びを感じてもらいたい! リーズナブルでプロ品質のものを!”という思いでマーカス・ミラーと開発し、誕生したのがSIRE BASSです。
Q2.スペック面の特徴的なポイントを教えてください。
マーカス・ミラーと作り上げたプリアンプです。1台の楽器でさまざまなトーンを出せ、あらゆるジャンルに対応することができます。3バンドEQ、ミドル・レンジの調節機能、アクティブ/パッシブ切替、パッシブ時にも作動するトーンなど、ベーシストが求める機能が詰まったこだわりの電気系統です。また、当モデルはJBタイプのV7シリーズよりパワフルなサウンドを出せることも特徴です。
Q3.製作過程で最も苦労した点はどこでしょう?
マーカス・ミラーはミドルのサウンドにとてもこだわっていたので、この部分の開発に2年かかりました。数えきれないほどのサンプル・テストを繰り返し、完成したプリアンプは、ミドル・フリーケンシーを200~1kHzの間で設定でき、多彩な音作りに貢献してくれます。
Q4.どんなベーシストにオススメしたいですか?
本格的なライブを行なっているベーシストの皆様、ロックだけでなくさまざまなジャンルへ携わるスタジオ・ミュージシャンの皆様、そしていろんなジャンルに挑戦している読者の皆様に、ぜひ使っていただきたいです。
まずネックを握った感じが最高! 指板両サイドのエッジ加工や、ネック裏の艶消し塗装のおかげですごく気持ちいいです。音はやっぱりマーカスっぽいサウンドで、それがこの値段で実現されるってありえないですね。Pタイプのピックアップがマウントされているのも特徴で、ミドルのパンチがありますし、手元のEQやミドル・フリーケンシーで調節できるのも便利。フロントだけでロックを弾くとか、いろんな使い方もできそうです。
意外といろんな音楽に対応できそうだなっていう可能性を感じる楽器が多くて、そこがおもしろかったですね。アンサンブル重視というか、バンドのことを考えた、すごく音楽的な楽器が多かった印象です。値段が抑えめなベースもけっこうありましたけど、そのレベルの高さはすごく驚きました。
一番好きだったのは、KanderbirdとKB-CRIMIN AL BASS Signatureです。でも全部良かったですよ。なんか歳を取ったということなのかもしれない、好みがぼんやりしてますね(笑)。ただ本当に、それぞれが楽器として素晴らしいというのは、薄利多売とかそういう感じではないんだなと実感させられます。ファン心理に訴求してベースを弾かない人にも買ってもらうのではなく、目的がちゃんと音楽にある。みなさん真面目にモノ作りされてますね(笑)。
シグネチャー・ベースって、もちろんファンならそのモデルを買えばいいと思うんですよ。例えばTHE BACK HORNを聴いて、そういう音楽をやるにはこの楽器を選べばいいんだなと、そうすれば失敗はないっていうのがまずデカいですよね。で、自分のオリジナル・モデルをオーダーしてみようとか、ちょっとカスタマイズしたいなっていうときの、参考になるヒントがたくさんあったんじゃないかと思います。使う楽器とやりたい音楽って地続きだから、そこをより明確にするために、いろいろ見比べてみるのもいいと思いますよ。
最後に試奏音源(ベース・マガジン2019年7月号には、本企画の試奏音源をダウンロードできる「音源ダウンロード・カード」が付属)については、同じベースでもこれだけ音が違うってことがわかるでしょうから、そこを楽しんでもらえればうれしいです。自分のやりたい音楽のヒントになってくれたらいいなと思いますね。すべての楽器で同じフレーズを、ピック、指、スラップの3奏法で弾いたので、例えばフレットレスのスラップとか、多くの人は“やっぱり合わないね”と思うかもしれないけど、“でも俺は好きだな”とか、自分の気持ちを大事にしてもらえたらと。そこが個性となって、やがてはシグネチャーになっていくのかもしれないですから。好きという気持ちを忘れずにいてください。
最後にメーカーにとってシグネチャー・シリーズの製作にはどんな意義があるのか。またアーティストとどのように関わっているのかを、ESPのアーティスト・リレーション担当、丹正篤史氏に聞いた。貴重な話を楽器選びの参考にしてもらいたい。
──メーカーにとってシグネチャー・ベースの立ち位置とは?
シグネチャー・モデルというのは、アーティストの欲するものが形になった楽器ですよね。ESPの場合は昔からオーダーメイドという要素が強いので、いい音だったり見た目だったり、本人の望むものを作り、それを使うアーティストに影響力が出てきて、一般の需要が増し、それなら市販しましょうと。そういう感じでやってきたんですよ。だから商売から始まったわけではないんですね。
──本人の要望とはつまり現場の、最前線の意見ですよね。
そう思います。例えば小さなライブハウスで弾くなら、もうサウナのような環境になることもあるわけで、じゃあそのなかで“タフな仕様って何?”ということは、現場に行かなければわからない。流行りにしても最前線だと思うのは、アーティストが“こうしたい、こういう音がいい”といった1年後くらいに、実際にそのブームが来たりするんですよね。だからそういう意見は重要です。
──それをキャッチするため、具体的に工夫していることはありますか?
僕自身が意識するのは、本人に会って楽器の状態を確認するときに、“なんか悪いところある?”という聞き方をすることです。“いいだろ?”とか聞いたら、“はい”しか言えないじゃないですか(笑)。あとは周りのテックさんやPAさんにも聞くことですね。本人はいいと思っても、アンサンブルとしては不十分なんてことはよくある話で。しかもそういう部分って、ジャンルに関係なく似てるポイントだったりするんですよ。もっと言えばESPは30年以上そういうことをしているので、データがたくさんあります。ときには過去の情報と照らし合わせながら、改善策を探っていくことができるわけです。
──1本作って終わりではないと。
そうですね、終わってくれたら楽なんですけど(笑)。100%の完成はない。しかもアーティストって突拍子もない注文を言うこともあるんですよ。それに対して、オーソドックスな枠や、ベースという概念を気にしていたら一緒に歩んでいけない。“それ無理でしょ”と言ったら終わりなんですね。だから“おもしろいじゃん”って乗るしかない。そうするからこそ、これまでになかった楽器を作っていけるのかなと思います。そしてESPブランドは、本人器とウリふたつのものを市販するというのが基本なので、これからもブレずに、いいものをお届けできたらと思っています。
本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン 2019年7月号』の特集記事を転載したものです。今月号の表紙は、新たにフェンダーのカスタムショップ製ベースを手にしたJ(LUNA SEA)。2019年を “新たな挑戦のはじまり"と定義する、彼の最新のモードに迫っています。ほかにも、亀田誠治や中尾憲太郎45才(NUMBER GIRL)を始めとするプロ・ベーシストが語る愛器のセッティング記事や、定番からビンテージまでコンデンサーを付け替えた音源対応の交換レビューなどなど盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!
御供信弘
みとものぶひろ●1977年5月18日生まれ、神奈川県出身。中学の頃、ドラムをやっていた兄の薦めでベースを始める。学生時代にさまざまなバンドで経験を積み、その後ベーシスト/アレンジャー/プロデューサーとしてのキャリアをスタート。これまでにAcid Black Cherry、及川光博、藤巻亮太、つじあやの、井上苑子などのレコーディングやライブをサポートしてきた。