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- 2024/11/16
ZOOM / B1 FOUR
ZOOMのB1 FOURは、ベース用に開発されたマルチ・エフェクター。直感的な操作を実現するシンプルなコントロールに加え、軽量設計でコンパクト・エフェクター感覚で扱うことができる。多彩なエフェクトが内蔵されているうえ、無料ダウンロードできる“Guitar Lab”アプリを使用すれば今後追加されるエフェクトやパッチを入手&エディットも可能だ。今回はパスピエのベーシスト、露崎義邦による試奏をとおして、その高いクオリティに迫る。
コンパクトなボディに多彩な機能が詰め込まれたB1 FOUR。入出力端子は背面にまとめられている。アウトプットはヘッドフォン端子を兼ねているので、AUXインに音楽プレイヤーを接続し、ヘッドフォンで音源を聴きながら練習することもできる。USB端子でパソコンに接続し、ズームのウェブサイトから無料でダウンロードできる“Guitar Lab”アプリ を使用すると、パソコン上でパッチ管理やエフェクトの編集・追加などが可能だ。電源はアダプターのほか、4本の単三乾電池やUSBバスパワーでも駆動する。
B1 FOURには定番ものから飛び道具まで71種類のエフェクトが搭載されている。本機があれば、およそ頭に思い浮かんだサウンドは再現できるだろう。搭載モデルはズーム・オリジナルのもののほか、レコーディング・スタジオの定番コンプレッサーであるUREI 117LNやダークグラスエレクトロニクス製品などの人気機種のモデリングも含んでいる。また、アンペグやアギュラーなどの9種類の定番アンプ、10種類のキャビネットのモデリングも搭載。これらのアンプ/エフェクトを最大5個まで、各エフェクトの並びも自由に入れ替えて使用することができる。また、それらエフェクトを組み合わせたファクトリー・パッチが40種類用意されているので、すぐにハイ・クオリティなサウンドを鳴らすことが可能だ。
なお、 無料ダウンロードできる“Guitar Lab”アプリを使用して、今後定期的に追加されるエフェクトやパッチを無償で入手できるというのも嬉しいポイントだ。
マルチ・エフェクターというと、操作が煩雑だというイメージを持っている人もいるかもしれないが、B1 FOURは直感的な操作性も魅力だ。筐体中央に設置されたノブは、全体の音質(ロー、ミッド、ハイ)と音量を瞬時に操作できるほか、各エフェクトのパラメーターに対応しているので、コンパクト・エフェクターを扱うようなアナログ感覚で音色をエディットしていけるはずだ。
実際にパッチを使用して演奏する際には、各パッチやバンク(パッチが10個単位でまとまったもの)を次々に切り替えていく“MEMORYモード”と、パッチ内のエフェクトを個別にフットスイッチでオン/オフする“STOMP”モードというふたつのモードを切り替えて使用可能。“MEMORYモード”では各パッチを並べた順に切り替えていくほかに、現在使用中のパッチの音色を保ったまま、離れた番号のパッチに切り替えることが可能なプリセレクト機能を搭載している。自身のエフェクトの使い方に合わせて、ライブ演奏でもスムーズに音色を切り替えていけるだろう。
また、4つのノブのすぐ下に配置された1〜5の番号が付けられたエフェクト/バンク・キーでもバンクやエフェクトの切り替えがひと押しでできるので、例えばDTMなどで机上で操作する際も扱いやすい。
ボタンひとつで起動可能なルーパーやリズムマシンを搭載。リズムマシンを再生しながらルーパーを使用することもできるので、ソロ・パフォーマンスのほか、自宅練習でも有効活用できるだろう。リズム・パターンはさまざまなビート/ジャンル別に68種類を内蔵している。ルーパーは最大でモノラル30秒をループ可能。手動で録音を停止するほかに、4分音符単位で録音時間を設定することもできるのがおもしろい。
そのほか、ローBやハイC、フラット・チューニングにも対応したチューナー機能も搭載している。
エフェクトのリアルタイム・コントロールが可能となるエクスプレッション・ペダルを搭載したB1X FOURもラインナップしている。
普段エフェクターを使わない人こそ
“この音、いいじゃん”って新しい発見に出会えると思うんです。
──B1 FOURを使った第一印象は?
小さい、軽い、電池で動くっていうのが、“そりゃそうでしょ”って思うかもしれないけど、実際に使ってみるとやっぱりすごく便利。家で練習するときでも、足下に置いて使いつつ、細かく設定したいときには机に置いたりすることって頻繁にあると思うんです。そういうときにこの軽さと小ささはすごく使い勝手がいい。外に持って行くときも、ケースに入れても重みにならないし、電池で使えるのも手軽でいいですよね。そのなかで、音色的にもちゃんとしっかりしたものが入っている。操作性も、今日も現場でいろいろと音をエディットしたんですけど、すぐにパパッと切り替えられるし、あまり説明書を読まなくても直感的に操作できてしまう。すぐに自分の武器として馴染む感じはあると思います。
──試奏ではエフェクト機能のほかに、ルーパーを活用していただきましたが、普段はあまりルーパーを使わないとか?
そうなんです。僕はあまりルーパーって使ってこなかったんですけど、シンプルな操作でできるのでとっつきやすかったし、導入のきっかけとしてもいいんじゃないかなと思いますね。ルーパーって、ライブで使うのももちろんいいんですけど、自宅練習で使うにもすごくいいなと思って。自分が弾いたフレーズに対してちゃんと当てていくって、練習としてもすごくいいんですよ。B1 FOURにはリズムマシン機能もいろんなパターンが入っているんですけど、ルーパーと組み合わせることもできるし、遊ぶっていう意味でも、練習の道具としてもすごくいいと思いました。
──B1 FOURの歪みサウンドの印象は?
“デジタル感”っていうのは正直あるとは思うんですけど、それがデメリットだとは全然思いません。特に、現代の主流になっている音楽的にも、デジタルならではの埋もれない、バッと音像にしっかり入ってくれる歪み方というのは使いやすいと思います。かといって、アナログのシミュレートのサウンドがダメかっていうと全然そんなことはなくて、温かみのある歪み方をしてくれる音色もたくさん入っているので使いやすいと思いますね。デモ演奏では“CrazyFuzz”や“PEACHY”というパッチを使ったんですけど、すごく派手でありながら、アンサンブルで鳴らしてもしっかりと芯が出てくれる音な感じがしました。
──アンプ・モデリングについてはいかがでしたか?
ここ最近、レコーディングの現場やスタジオ・ライブなどで、自分的にもアンプをあえて使わなかったり使えない状況はけっこうあるんです。そういうときにこのコンパクトさのなかにアンプ・モデリングのしっかりしたものが入っているのはすごく強みになると思いますね。モデリング元に対して“っぽいね”っていうのは第一印象としてあるんですけど、それよりも単純に、生々しさみたいなところの“アンプで鳴らしているリアル感”を感じたし、これがひとつあるだけで生々しい太い音になるので、すごく便利だと思います。
──ダイナミクス系のエフェクトでは、2種類のコンプを組み合わせた“Hard Comp”というパッチも気に入ったそうですね。
僕はコンプって、アタックがちょっと遅めで、思いっきり弾いてパコパコ鳴る感じが好きなんですけど、その再現度がすごく高かったですね。コンプレッサーって、違いがちゃんとわかるまでに時間がかかるというか、微妙な違いがこれまたけっこう大きな違いになってきたりするんですけど、そういったなかでの印象がすごく良かったです。しっかりかかってくれる感じっていうか。
──また、最近ではベース・シンセやオクターバーというエフェクトも、ベーシストにより身近なサウンドになりました。B1 FOURでのそれらのサウンドの印象はいかがでしたか?
ベース・シンセとかって、機種や音色によっては扱いが難しい場合があったりもするんですけど、B1 FOURに入っている音色は、わりとラフに弾いてもちゃんと反応してくれるので、すごく使いやすいですね。エフェクティブなサウンドを使うことは僕自身も多くて、特にここ最近では普通のエレキ・ベースが鳴っていない音楽も増えてきたので、そこにインスパイアされて、自分でもそういう音を出したいって思うことはありますし。デモ演奏では“MJ Synth”などを使いましたけど、すごくいい感じで気に入りましたね。あとは、“A-Wah”っていうオート・ワウのパッチはすごくよかった。ワウっていろんなタイプがありますけど、ローがへこんじゃうみたいなこともなかったですし、いい感じのかかり具合だなと思いました。
──露崎さんがB1 FOURを導入するとしたらどういう風に使いたいですか?
とりあえず自宅の練習用として常につないでおいてもいいくらいですね。それプラス、フル機材を持っていけない現場や、持ち込む機材をなるべく最小限にしないといけない場合でも助かると思います。僕はそういう場合にB3nを使うこともあるんですが、それよりもさらにコンパクトになっているので、使い勝手はいいと思います。あと、サイズ感的にも、メインのエフェクト・ボードに入れて、ループにつないでほかのコンパクトも使いつつ、今までの自分のボードではできなかったところを補うような使い方もできるんじゃないかと思いますね。
──マルチ・エフェクターを使うメリットとはどんなところでしょう?
やっぱり、あらゆる音が入っているというところ。今回も、自分が知らなかったエフェクターというのもありました。マルチ・エフェクターは、普段エフェクターを使わない人にこそ使ってほしい。いろんな音を試してもらって、“この音、いいじゃん”って新しい発見に出会えると思うんです。食わず嫌いしている人ほど使ってもらいたいなって思いますね。そういう意味では、B1 FOURはUSBでパソコンにつないでGuitar Labアプリに接続すれば、パソコン上で音をエディットしたり、新しい音色をダウンロードしたりしていろんなアップグレードができるということで、時代のニーズに合わせて進化していくというところに未来も感じるし、いい機材だなと思いました。
B1 FOURは、ズームのエフェクター製品に対応した無償のアプリケーションGuitar Lab(ズームのウェブサイトからダウンロード可能)を使用することができる。Guitar Labはパソコン上でエフェクトやパッチの編集、並び替え、バックアップなどの作業が、実機同様のグラフィカルなUIで操作可能なうえ、オンラインで随時配信されるアンプ・モデルやエフェクト、パッチを追加してB1 FOURをアップデートさせることができるのだ。
また、手のひらサイズの小型USBオーディオ・インターフェースGCE-3を使えば、B1 FOURなどの実機が手元になくてもGuitar Lab上で音作りや宅録ができるので、B1 FOURはエフェクト・ボードやケースに入れたままで自宅ではGCE-3という使い方も便利だろう。
本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン 2019年7月号』の特集記事を転載したものです。今月号の表紙は、新たにフェンダーのカスタムショップ製ベースを手にしたJ(LUNA SEA)。2019年を “新たな挑戦のはじまり"と定義する、彼の最新のモードに迫っています。ほかにも、亀田誠治や中尾憲太郎44才(NUMBER GIRL)を始めとするプロ・ベーシストが語る愛器のセッティング記事や、定番からビンテージまでコンデンサーを付け替えた音源対応の交換レビューなどなど盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!
価格:¥9,000 (税別)
価格:¥11,000 (税別)
露崎義邦(パスピエ)
つゆざきよしくに●10月27日生まれ、千葉県出身。小学6年でL’Arc〜en〜Cielをきっかけにベースを手に取る。影響を受けたアーティストは、ジャミロクワイ、the band apartなど。高校卒業後は音楽の専門学校に進学し、2009年にパスピエを結成する。パスピエは今年5月に5thアルバム『more humor』を発表し、現在は全国ツアー中。ファイナルは7月15日(月・祝)@Zepp Tokyo。