AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
ミートショップこしみず
日本各地に点在するという、ハマったら抜け出せない機材の沼スポット。自他共に認める機材好きで1日に5回デジマートを見る男が、全国の沼を訪ねて歩く連載、それが「ニッポン沼めぐりっ」! 今回は、栃木県塩谷郡の「ミートショップこしみず」に突撃です!
栃木にすごい店があるという伝説は、10年以上前から聞いていた。その店は、肉屋さんでありながら、ギターを売っているという。何を言っているかわからないという人もいるだろうが、本当なんだ。しかも、国産の古いギターを中心に、ビザール好きにはたまらない品ぞろえの店だという。
ずっと行ってみたいと思っていたのだが、大都市や観光地にあるわけでもなく、店の近隣に用事があるわけでもなかったので、訪問する機会を失ったまま時間だけが5年、10年と過ぎていった。
そんなある日、デジマート・マガジン編集部から1本の電話があった。
「井戸沼さん、今度の『ニッポン 沼めぐりっ!』は、栃木県の……」
そこまで聞いた時、私はヒャッホウと叫んでジャンプするという、もはや漫画の世界でも絶滅したリアクションをとってしまった……。
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というわけで、上野から宇都宮線に乗り、約2時間。宝積寺(ほうしゃくじ)という駅に降り立つ。
ほほう。このホームの感じ。遠くまで来たなぁという雰囲気満点だ。
しかし、駅は立派! 見て、この天井!
見えないか……。こんな感じ! 凄いでしょ?
2020年の東京オリンピック新国立競技場を手がける建築家の隈研吾(くまけんご)さんが設計したんだとか。で、駅の階段を降りると古い蔵を改装して作ったという「ちょっ蔵ホール」を核とした「ちょっ蔵広場」が。
どれどれ、どんなホールかな。ちょっとのぞいてみよう……
ぬわー、すげぇいいホール!
なんで、こんなビンテージ・マーシャルが!? 74年? 思わず四つんばいになってチェック!
いいなぁ、これ! 持って帰っていいですか? あ、ダメ? ですよねー。
ホール管理者の寺田茂さんは、かつて『ギター・グラフィック』(リットーミュージック刊。電子書籍で復刻してます!)などに原稿を書いていた、ジャパン・ビンテージ・ギターの権威!
栃木出身の寺田さんがこのホールの管理人になった際、地元の友人や自身のマーシャル、フェンダーのビンテージ・アンプを置き、その後も時流に合わせて年代ごとのマーシャルを買い足していったところ、いつしか「ちょっ蔵ホール」はマーシャルの館に!(写真に写っていないのも、たくさんありました!)
ここ、1時間1,250円で貸してるの。高校生バンドなんか、ここで練習していると、どんどんうまくなるんだよね。あとはPVの撮影でもよく使われています。── 寺田さん
うんうん、そらそうでしょう。こんないいホールがあるというだけで、いい街だと思えてきた。なんだか好きになってきたぞ。記念に、寺田さんとパチリ!
で、話を聞くと「ミートショップこしみず」は駅の反対側とのことなので、そちらに移動した。
ほほう、道路にびっしりと入ったクラックはエイジド処理ではなく、リアル・ビンテージの趣。
実は駅を出ると、「ミートショップこしみず」はすぐ近く。でも、長旅のせいか、なんだかお腹が空きましたな〜ということで、まずは腹ごしらえ。
というわけでカツカレーが名物の「とんかつ渡辺」という店にイン! ほほう、やはりカツカレーを推しているな。
すいませーん、カツカレーください! といって待つことしばし、出てきたのがこれ!
ジャカジャーン
(ピート・タウンゼント風に!)
店のマダムに「これ一皿で、ご飯は2合以上(!)使っています。この辺りは米どころだから、お客さんにおいしいお米をたくさん食べて欲しいんですよ! 下は小学2年生の女の子から上は80歳まで、皆さん完食されていますから、残さないでくださいね」という強烈な圧をかけられ、おののく。
で、では、いただきます。もむもむ。ん? 家庭のカレー風で、美味しいじゃないの。
美味い!
しかし、減らない……。食べても食べても、減らない。まるで砂漠を歩いているようだ。店の奥からはマダムの視線を感じるので、逃げるわけにもいかず……。
完食!
渡辺
営業時間 11:30~14:00/17:00~21:00頃まで
木曜休み
食べログURL
くわー、食った。2合食べるなんていつ以来だろう……。いや、過去の話じゃなく、未来的にはもう死ぬまで1食2合なんて食べないわ、きっと。
ミッション・コンプリート!と言いたいところだが、まだ「ミートショップこしみず」にたどり着いていない……イントロの長さがプログレっぽくない? そうでもない? では、お勘定して行こうか!
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というわけで、「ミートショップこしみず」にいよいよ到着! この味わい深い外観! ついに来たぜ。じーん。
看板もいい感じ!
こんにちはー!
ここ、完全にお肉屋さんじゃん……
あ、揚げ物セット、安っ! 1パック100円だって。……で、台がフロア・タムだ(笑)。
お、よく見ると奥にギターがたくさんあるぞ!
ここで店主の小清水さんに話を聴いてみた。
「えーと、どうしてこうなっちゃったんですか?」
もともとは、30年くらい前に肉屋を継いだ時に、昔のバンド・メンバーが「委託で店にギターを置いてくれよ」と声をかけてきたのが始まりです── 小清水さん
当時は、ギター・コーナーと肉のコーナーは完全に分かれていたそうな。それがある時、雨漏りが原因で両コーナーを隔てる壁を取っ払い、さらに泥棒にギターを1本持って行かれてしまったことから、警察の指導もあって入口を1つにすることに。それで、現在の肉とギターの完全合体というスタイルができたんだとか。
見よ、この品ぞろえ。
よーく見ると、珍しいギターがいろいろと隠れているぞ!
3ピックアップのLPカスタム! いわゆるピーター・フランプトン・モデルですね、トムソンですが。逆にレアか?
小清水さんに「面白いギターを見せてください」といったら奥の倉庫から出してくれたのが、これ! 残念ながら非売品。
何が面白いのかというと、このピックガードのブランド名がWELL DONE! 「よくできました」って意味と、「よく焼けました」って意味がありまして。さすがお肉屋さんの秘蔵ギターだ(笑)。
ちなみに奥の倉庫はかつて「亭巣古の部屋」と名付けられるほど、テスコだらけだったとか。その名残がこちら。
秘密の倉庫からお店までの間、秘蔵ギターを弾かせてもらう。我ながら、完全に不審者ですな。
さすが、ビザール系も強い! 右はジャズマスター、ジャガーをリスペクトしたVOICEのデリケート!
アコギも充実! 実は小清水さん自身はアコギ好きなんだそうだ。
そして店内には、リペア・コーナーも!
しかもリペアを担当しているのは、都内有名店でその名を馳せたドクターT!
ドクターTの手腕により、トラスロッドの入っていないガット・ギターもきちんとメンテされているのが、この店の売りでもある。
おまけに、レコードも充実! この日も常連さんが掘りに来店。
うわー! アイドルのチューブ・アンプ、初めて見た! たぶん現存数はダンブルより少ないでしょう。
エフェクターの在庫は、ちょっと控えめ。ショップ・オリジナルのブースター、価格は11,290(いい肉)円(笑)!
オリジナル・ブースターのSirloin(サーロイン)、肉屋だけに(笑)。試奏させてもらったがいい音だったなぁ!
オードブル風に盛り付けられた、ショップ・オリジナルのメンテナンス・キット!
なんと、フェンダー・ジャパン初年度の1982年製のジャズベ最高機種、JB62-115!
最近はほとんど見かけないが、お肉屋さんにあった!
これもレア! 1979年のフェルナンデス、マホガニー・ボディでカシュー仕上げのSTタイプ!
最後に、秘蔵のWELL DONEを持って小清水さんと記念撮影! いえーい!
で、いろいろ終わったところでおもむろに、これください! コロッケ購入! 連載始まって以来(まだ3回目だが……)、初めてエフェクター以外のものを買う(笑)。
早速、外のベンチで食べちゃうぞ! うわ、このコロッケ、でっか! ちょっと甘めの美味しいコロッケ!
当然、ビールも飲んじゃう! もう仕事は終わったからね、いいのよ、明るいうちから飲んだって。
んまーっ!
で、今日イチのいい顔!
今回も、お腹もいっぱいになった(なんのコーナーじゃ……)。とりあえず、ミッション・コンプリート!
水深(ギターの品ぞろえ)★★★★
(肉の品ぞろえ)★★★★★
水質(スタッフの対応)★★★(お肉を買いに来るお客さんへの対応で忙しすぎるため)
沼の面積(フロアの広さ)★★
周辺状況(近隣の飲食店など)★★★★★(とんかつ渡辺とちょっ蔵ホールのマーシャルを含めての評価)
判定:国内唯一の、非常に珍しい沼。速やかに訪問すべし。
ミートショップこしみず
住所:329-1233 栃木県塩谷郡高根沢町宝積寺2374
電話番号: 028-675-0247
営業時間:10:00~19:00
定休日:木曜日
井戸沼尚也(いどぬま なおや)
日本で唯一の、沼鑑定士(自称)。
1日5回デジマートを見る、機材大好きのギタリスト/レビュアー/ライター/ワウペダル奏者。
インスト・ファンク・バンドZubola Funk Laboratoryのメンバー。
2019年3月より、ドラムとギターのみの変態インスト・バンド「Ragos」を始動。マスクをするとデジマート地下実験室の室長に似ているらしい。