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- 2024/11/16
BOSS / GT-1000
群雄割拠のシーンにおいて、日本が誇るトップ・ブランドBOSSが満を持して放ったギター・プロセッサーがGT-1000だ。本機は、チューブ・アンプの、アンプ全体が複雑な相互作用を起こすことで生まれるサウンドとレスポンスを再現した最先端の独自技術AIRDや専用スマホ・アプリと連携するBluetooth機能を搭載するなど、同社の技術を惜しみなく注いだ決定打と言えるだろう。今回は、LiSAやHYDEのサポートとして躍進を続けるギタリストPABLOに、その高い実力を検証してもらった。
1996年に登場したGT-5以来、そのリアルな音色と自由度の高い操作性で、プロ・ギタリストをうならせてきたギター・エフェクツ・プロセッサー、GTシリーズ。GT-100でひとつの完成形を迎えたかと思われた同シリーズだが、その進化は止まらず、新技術“AIRD”を採用した本機GT-1000で、新たなステージに突入した。もちろんサウンド面の進化だけでなく、これまで培ってきた自由かつ細部まで掘り下げられる音作りや、リアルタイムな対応も含めた操作性などもブラッシュアップして継承。また、Windows/Mac用に加え、スマートフォン(iOS/Android)にも対応した「BOSS TONE STUDIO for GT-1000」が用意されており、スマホ・アプリについてはGT-1000とBluetooth接続してワイヤレス・エディットが可能。さらに2019年4月に公開されたシステム・プログラムVer.3.00ではなんとベースにも対応と、フロアタイプ・プロセッサーが群雄割拠の時代に、満を持して登場した真打ちと言えるだろう。
まず本機の目玉となるのが、新たに開発された心臓部であるAIRD(Augmented Impulse Response Dynamics:エアード)だ。これは真空管アンプの挙動を徹底的に解析したことから生まれたTube Logicをもとにした技術で、各種真空管やバイアス回路、アウトプット・トランス、キャビネットといったコンポーネンツの個性だけでなく、例えばスピーカーの動的な抵抗値変化がアンプへ与える影響など、それらが相互作用したときのサウンドの変化までを忠実に再現したもの。さらに、その“生かし方”にこそAIRDの真髄があり、ラインやヘッドフォン、各種アンプなど出力環境を選択することで、特性やレスポンスを最適に設定してくれる(AIRD OUTPUT SELECT機能)。システム・プログラムのバージョン・アップを重ねるごとにアンプ・タイプが追加されており、最新のVer.3.00では23タイプのアンプを内蔵しているが、いかなる環境でもその本領を堪能できるだろう。
エフェクト・チェインやパラメーターが表示される大型ディスプレイと6つのツマミという、直感的な操作性は本機でも継承。ひとつのパッチ内でチェインを分岐させてアンプやエフェクトを直列/並列で接続することもでき、イメージを超えた音作りが可能だ。また、お気に入りのパラメーター設定を保存し、ほかのパッチでも使用できるSTOMPBOX機能も新搭載。例えばライブ会場でEQを微調整した場合などでも、変更はSTOMPBOXに保存した設定を使っているすべてのパッチに適用されるので、ひとつひとつ修正していかなくても良いのは助かるだろう。
GTシリーズの使いやすさを代表する機能が、各種フットスイッチへのさまざまな動作のアサインだ。例えば本機では3つに増えたCTLスイッチや現在選択しているパッチのスイッチ(カレント・ナンバー)などに、それぞれ最大16個の動作を設定可能。パラメーターの変更や複数のエフェクトの同時オン&オフ、踏んだときだけ駆動する[MOMENT]による瞬間的なエフェクト、EXPペダルによるリアルタイム・コントロールなど、あらゆる表現をサポートしてくれる機能であり、本機を120%使いこなすポイントと言えるだろう。
もともとGT-1000には、バンクとパッチ1〜5の切り替えが可能な一般的なマルチ・エフェクター用途に対応する【MEMORY】モードを内蔵していたが、Ver.3.00で2タイプのフットスイッチ・コントロール・モードが追加された。【MANUAL】モードはパッチごとにナンバー・スイッチ1〜5へエフェクトのON/OFFが割り当てられるモードで、同パッチ内でエフェクトの抜き差しを頻繁に行ないたいプレイヤーにお勧めのモードだ。【PEDALBOARD】モードはその名の通り、コンパクト・エフェクターを自由に並べてエフェクター・ボードを作る感覚が味わえるモード。演奏や表現に合わせてエフェクトを抜き差ししたい人には、扱いやすいモードだろう。以前のアップデート(システム・プログラムVer.2.00/2019年1月公開)の際には【AIRD PREAMPタイプ】や【DISTORTIONタイプ】、【MASTER DELAYタイプ】の追加もされているので、システム・プログラムを最新版にアップデートすることが、進化し続けるGT-1000を使いこなすうえでの必須項目だ。
“こういう音を出したい”とか“こういうことをやりたい”と思ったことが、
悩まずに確実に形にできる
GT-1000を使ってみて一番最初に感じたのは、すべての面において速いということでした。音を作るときの、目的を達成するまでの速度はもちろん、例えば画面などを切り替えたときのスピードも速い。自分がやりたいことにすぐアクセスできる速度感が良かったです。
AIRDのアンプ・サウンドは、僕の印象だと実際のアンプに迫っているという感じでした。ロー・エンドの体感がごく自然で、実際にアンプで弾いているときの感触との違和感がなかったです。特に僕はミュートをよく使うので、“ズズズン”って弾いたときの最後の“ン”がどうなるかはかなり重要なんです。普通だと、ヘッドフォンやモニター・スピーカー、アンプにつなぐなど、聴く環境によってロー・エンドの切れ方、減衰の仕方は変わってしまいます。だけど、GT-1000にはアウトプット先を選択できるパラメーターがあって、ライン出力はもちろん、コンボ・アンプでも実際の機種ごとに出力を調整してくれる。どんな環境でも同じ印象で演奏することができましたし、僕にとっては感じたことのないフィーリングでしたね。
スイッチのASSIGN機能も便利で、僕の場合はひとつのCTLスイッチで“エフェクト1をオフにし、エフェクト2をオンにする”という使い方のほか、“それまで使っていたコーラスをオフにし、ディレイをかけて音量も上げる”という動作をアサインして、一気にソロ・モードにするという使い方をしています。さらに、EQとチェインのA/B切り替えを[MOMENT]で設定しておいて、CTLスイッチを踏んでいるときだけラジオ・サウンドになるみたいな使い方もしてみました。“こういうことをやりたい”って思ったことが確実に形にできるんです。また、STOMPBOX機能は自分が作った設定を蓄積できる良さがあって、ライブラリが構築されていくおもしろさがありますね。僕の場合は、特にディレイに好きなセッティングがあるので、それを登録していろいろなパッチで使っていますが、それが自分の個性になっている印象があります。
3つのコントロール・モードは、例えばバンドで曲作りやリハーサルをする場合、僕は【MEMORY】モードを使いますね。まだ使う音色が固まっていないわけですから、パッチ1はクリーン、2はクランチという具合に並べておいて、イメージに合わせて切り替えていけるのはメリットです。【MANUAL】モードはライブ向けで、1曲の中でエフェクトの切り替えが多い場合に便利ですね。曲順でパッチを並べつつ、そのパッチ内で個々のエフェクトを自分で操作していくという対応ができます。【PEDALBOARD】モードは、それこそ好きなエフェクトでボードを組んでいく感じで、僕の場合はひとりで気軽に演奏しているときに楽しめました。
とにかく、使っていてかなり楽しかったです(笑)。サウンドの良さはもちろんですけど、やっぱりスピード感。“こういう音を出したい”とか“こういう機能をアサインしたい”と思ったときに悩まずにすぐ形になるっていうのは楽しいですよ。今までだったらやりたくてもできなかったことを、今回は詰め込めたと思います。
価格:オープン
PABLO
パブロ●1980年生まれ、兵庫県出身。1999年にGIRAFFEのギタリストとしてメジャー・デビューを果たす。2002年に同ユニットは解散するも、2004年にPay money To my Painを結成し、2006年にデビュー。日本のロック・シーンにおいて大きな存在感を示すも、2013年に惜しまれつつも活動休止。その後PABLOは、自身のバンドPOLPOを始動させ、並行してLiSAやHYDE、降谷建志などのトップ・アーティストのサポートとしても活動を続ける。機材ギークとしても知られている。