アコースティックエンジニアリングが手がけた“理想の音楽制作を実現する”環境
- 2024/11/25
Line 6 / Helix Floor
Line 6 Helixシリーズを愛用するトップ・アーティストたちに、その活用法とインプレッションを披露してもらう本連載。その第8回目は、MR.BIGで一時代を築いたベース・ヒーロー=ビリー・シーンが登場! 彼のサウンドメイクにはPearceのBC-1などを組み込んだ複雑な機材システムが欠かせないが、なんとそれらの大部分をHelixで置換しているという。Helixに内蔵されたBC-1のモデリング開発秘話とともに、本邦初公開のビリー独自のHelix活用法をお届けしよう。
Helix/HXファミリーすべてに適用されるファームウェア2.80がリリースされた。当アップデートは、すべてのHelix/HX製品を同一のエコ・システム内に統合するための新しいHelixコア・エンジンを採用した最初のファームウェアとなり、すべてのHelix/HXユーザーが対象となる。その内容でまず注目したいのは、大量に追加された画期的な機能群。例えば、HelixをPCと接続して、DAW/DJソフト/照明ソフト/メディア・プレイヤー/動画ソフト/webブラウザ/画像編集ソフト/ビデオ・ゲーム/エクセル/パワーポイントなどのコントローラーとしても機能させることができる“ホットキー”(※HX Stompは対象外)、VDI経由で接続されたVariaxの個々の弦のレベルをリモートで独立して調整できる“Variax ストリングス・レベル”(※HX StompとHX Effectsは対象外)の追加、さらにHelixおよびHX間でプリセットを共有できるようになるなど、その内容は多岐にわたる。もちろん今回も新たなアンプ・モデルとエフェクト・モデルも追加されているので、ぜひ以下のURLから併せてチェックしてほしい!
■ニュース・ページはこちら
https://line6.jp/news/1168/
■ファームウェアのアップデート方法はこちら
http://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/10135/session/L2F2LzEvdGltZS8xNTYzODgzNTI0L3NpZC9WajIyVnNrbw%3D%3D
※2019/7/24追記
PODとはまた異なる観点からのギター・サウンド・プロセッシングを実現するため、6年にも及ぶ開発期間を経て2015年にリリースされたHelixシリーズ。現在までにフロア・タイプ2種とラック型、プラグインをラインナップしているが、中でも宅録/ライブといったシチュエーションを問わず人気を呼んでいるのが、フロア・タイプのHelix Floorだ。最新のVer2.71では、新開発のHXモデリングによる72タイプのアンプ・モデリングと37タイプのキャビネット、MシリーズやDL4などから移植された77種の“レガシー”エフェクトを含む194種類以上のエフェクトなどを内蔵し、まさにギター・サウンドメイクの中枢システムとして活躍してくれる。
Helix Floorはそのオーディオ・クオリティの高さもさることながら、ベーシストにとっては【SV Beast】【G Cougar 800】【Tuck n’ Go】【Agua 51】といった代表的なベース・アンプや、【Triangle Fuzz】【Mutant Filter】【70s Chorus】など定番エフェクターのモデリングもしっかり押さえているのがポイント。さらに、今回登場いただくMR.BIGのビリー・シーンのトレードマークにもなっている、Pearce BC-1(プリアンプ)のモデリング【Busy One】も内蔵。彼が愛用する個体は大幅なカスタマイズが施されているが、Helixのモデリングは彼の実機を解析して作成されており、再現性の高さは本人のお墨付きだ。また入出力の豊富さも魅力で、ステレオ・インプットは独立した2系統としても使用可能。例えば2ピックアップをパラで出力できる2つのアウトプット・ジャックを備えたビリーのシグネイチャー・ベース「YAMAHA / ATTITUDE LTD3」の信号を、Helixで集約しながらも各々を独立してアウトプットすることもできる。もちろんそれは特殊な例と言えるが、アップライトとエレクトリック、シンセとエレクトリック、エレアコ・ベースとエレクトリックといった、セッティングの異なる2種類の楽器を持ち替える場合にも重宝するだろう。ビリーがかつて抱えていたような、複雑かつ大掛かりなサウンド・システムを1台で置き換えることができるほどの汎用性の高さは、まさにHelixの面目躍如と言ったところだろう。
鋭い耳の持ち主だったパット・トーピー(Dr)も絶賛してくれた。
Helixを初めて使ったのは、ロサンゼルスでやったMR.BIGのショウだった。いつもなら、新しくて慣れていない機材をいきなりショウで使ったりはしない。ロサンゼルスやロンドン、東京といった都市での大きなショウならなおさらだ。でも、たまたま会場近くのLine 6本社が貸してくれたHelixをサウンドチェックの時に試した印象がとても良かったから、禁を破って本番でも使ってみることにしたんだ。結果は上々で、鋭い耳の持ち主だったパット・トーピー(Dr)でさえ絶賛してくれたし、サウンド・エンジニアの間でも大好評だった。ベース・ソロの場面では、Hiwattのモデリングを使ったジョン・エントウィッスルのようなトーンや、Marshallのモデリングを使ったジョン・ウェットンのようなトーンなんかを試したけれど、どれも素晴らしかった。とはいえ、僕がサウンド作りで使うのはPearceとコンプレッサーぐらいで、あとは歪みのオン/オフぐらいしかやっていない。僕自身のシステムはもともと、自分の身長よりも高いラックを使っていた頃から実は基本的にシンプルなものなんだけれど、Helixを導入してからはロータリー・スピーカーやハーモナイザーといったエフェクターを使うこともあるし、レコーディングではもっといろいろなプリセットを使っているよ。
僕が愛用するPearceのプリアンプは、買ったそのままのサウンドも気に入ったけれど、もう少しゲインが欲しかったから、仲の良い友達に頼んで手を加えてもらったんだ。その後、たくさんのPearceを買い集めて、その多くにも同様の改造を施しているけれど、Line 6がモデリングしたのは、僕にとって一番大切な、最初に買ったPearceなんだ。長年愛用してサウンドの特徴も細かい部分まで体で覚えていて、Helixのモデリングは弾いた瞬間にその耳慣れたサウンドが出たからびっくりしたよ。去年はMR.BIGやSONS OF APOLLOでたくさんのショウをやって、Helixを現場で使っても何の問題もなかった。作りも頑丈で、ツアーで酷使してもトラブルはなかったね。
Helixはステレオ・システムで、それぞれのチャンネルを独立した信号経路として使えるのも特徴で、トレブルとウーファーそれぞれのピックアップ用にシステムを組むという、僕の使い方にもピッタリなんだ(※編注:ビリーのシグネイチャー・ベース=YAMAHA / ATTITUDE LTD3には、トレブル・ピックアップとウーファー・ピックアップが1基ずつ積まれており、それぞれ別系統で出力することができる)。ベースとHelix Floor、Hartkeのベース・アンプが2セット、それだけでシステムが組めるわけ。僕の場合はトレブル・ピックアップ用のチャンネルが歪み用の【Busy One】とクロスオーバー用のハイパス・フィルターで、演奏時の操作は【Busy One】のオン/オフだけ。あとは、クリーン・サウンド用にコンプレッサーを加える程度かな。ウーファー・ピックアップ用のチャンネルも、【Busy One】とコンプレッサーだけなんだ。Helixは拡張性も優れているから、(今はSuncoast AnalogのBC2 Bass Preampをエフェクト・ループに組んでいるけど)僕の一番大切なオリジナルのPearceをループにつないで、【Busy One】と切り替えて使うのもおもしろいんじゃないかと思っているよ(笑)。
ビリー・シーン「長年の研究開発の成果を凝縮した、誰でも思い通りのサウンドが作れる1台」
価格:オープン
ビリー・シーン
1953年3月19日、米国ニューヨーク生まれ。タラス時代から超人的テクニックで注目を集め、その後デイヴィッド・リー・ロス・バンドに加入する。MR.BIGはビリーを中心に、ポール・ギルバート(Gt)、パット・トーピー(Dr)、エリック・マーティン(Vo)という凄腕ミュージシャンによって1988年に結成される。全米No.1ソング「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」を始め、テクニック×キャッチーというコンセプトのもと、多くのヒット曲を生み出す。2002年に一度解散するも、2009年にオリジナル・メンバーで復活している。ビリーはMR.BIGのほかにも、ナイアシンやザ・ワイナリー・ドッグス、SONS OF APOLLOを始め、数多くのバンド/プロジェクトにベーシストとして参加。精力的に活動し続け、今なおベース・ヒーローとしての存在感を示している。