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- 2024/11/16
Line 6 / Helix Floor
Line 6 Helixシリーズを愛用するトップ・アーティストたちに、その活用法とインプレッションを披露してもらう本連載。その第7回目は、アコースティック・ソロ・ギタリストの先駆者としてシーンを牽引する押尾コータローに登場いただこう。プリセットの作成については、Helixのテクニカル・サポート担当者の協力を仰いだと言うが、それにしても押尾が実践する、Helix Floorのクリエイティブな活用法は目を見張るものがある。そんな彼に、アコギにおけるHelixの創造性や可能性を大いに語ってもらった。
Helix/HXファミリーすべてに適用されるファームウェア2.80がリリースされた。当アップデートは、すべてのHelix/HX製品を同一のエコ・システム内に統合するための新しいHelixコア・エンジンを採用した最初のファームウェアとなり、すべてのHelix/HXユーザーが対象となる。その内容でまず注目したいのは、大量に追加された画期的な機能群。例えば、HelixをPCと接続して、DAW/DJソフト/照明ソフト/メディア・プレイヤー/動画ソフト/webブラウザ/画像編集ソフト/ビデオ・ゲーム/エクセル/パワーポイントなどのコントローラーとしても機能させることができる“ホットキー”(※HX Stompは対象外)、VDI経由で接続されたVariaxの個々の弦のレベルをリモートで独立して調整できる“Variax ストリングス・レベル”(※HX StompとHX Effectsは対象外)の追加、さらにHelixおよびHX間でプリセットを共有できるようになるなど、その内容は多岐にわたる。もちろん今回も新たなアンプ・モデルとエフェクト・モデルも追加されているので、ぜひ以下のURLから併せてチェックしてほしい!
■ニュース・ページはこちら
https://line6.jp/news/1168/
■ファームウェアのアップデート方法はこちら
http://yamaha.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/10135/session/L2F2LzEvdGltZS8xNTYzODgzNTI0L3NpZC9WajIyVnNrbw%3D%3D
※2019/7/24追記
PODとはまた異なる観点からのギター・サウンド・プロセッシングを実現するため、6年にも及ぶ開発期間を経て2015年にリリースされたHelixシリーズ。現在までにフロア・タイプ2種とラック型、プラグインをラインナップしているが、中でも宅録/ライブといったシチュエーションを問わず人気を呼んでいるのが、フロア・タイプのHelix Floorだ。最新のVer2.71では、新開発のHXモデリングによる72タイプのアンプ・モデリングと37タイプのキャビネット、MシリーズやDL4などから移植された77種の“レガシー”エフェクトを含む194種類以上のエフェクトなどを内蔵し、まさにギター・サウンドメイクの中枢システムとして活躍してくれる。
リリース以来、やはりエレキ・ギター・ユーザーからの反響が大きかったHelix Floorだが、今回の押尾コータローの実例を見てみると、アコースティック・ギター・ユーザーにも大きなメリットがあることがわかる。アコギをライブなどで使う場合、ピエゾ・ピックアップとマグネティック・ピックアップを併用することも多いが、Helix Floorの場合、それらを独立して入力し、自由なルーティングで出力できるというのがメリットのひとつ。押尾の場合は、信号レベルのマッチングも考えて各々をふたつのリターン端子に入力しているが、Helix Floor内部の信号経路をそれぞれで分けることで、例えばディストーション(とノイズ・ゲート)はマグネティック側のみにかかるといった、最適な設定を実現している。入出力の豊富さと、それらをルーティングのどこに入れるか、またどこで統合するかといった設定を自由かつ簡単に行なえるHelix Floorの強みだ。さらに、踏みやすいフットスイッチ1には、リターンからの入力信号をセンド経由でそのまま出力する設定をアサインしているので、メインとなるピュアなアコギ・サウンドに戻るのも簡単。“Water”など各奏法に合わせた多彩なエフェクトと、本来のナチュラルなアコギ・サウンドを、自在に行き来できるようにしているわけだ。
自分では想像もつかなかったことが現実になる
通常は、ライブでディレイなどをかけるときはPAエンジニアが卓席で操作しているんですが、DEPAPEKO(編注:押尾とDEPAPEPEによるコラボ・ユニット)でのライブの場合はPAの作業量が多いので、今回は足下でコントロールできるものをプラスして、ポイントで使えたらと。いろいろと機材を探したところ、このHelix Floorに辿り着きました。それと、マルチなエフェクターということでは、アコースティック・ギター用のものもいくつかありますけど、それらはやはり空間系のエフェクトがメインなんですね。その点、Helix Floorはディストーションやアンプ・シミュレーターなども入っている。自分はアコースティック・ギターを弾いていますけど、アコギじゃないような音などもよく使うので、それを叶えてくれるのはHelix Floorだったんです。そもそも、初めはオクターバーを使いたかったんですよ。しかも、4〜6弦にはかかるけど、1〜3弦にはかからないような使い方をしたかったんですね。それが、Helix Floorだとエフェクトがかかる帯域を周波数で分けられる機能(クロスオーバー機能)があって、それは感動しましたね。
DEPAPEKOのときはパーカッシブな役割が多かったので、ボディを叩いたりするとき用に【Tile】(リバーブ)とノイズ・ゲートを組み合わせたゲート・リバーブ(“Gate/Rev”)や、【Plate】(リバーブ)と【Mutant Filter】(フィルター)を組み合わせて水滴が滴るような効果が出せるプリセット(“Water”)などを作りました。あとは、「TECHNOPOLIS」で【ANGL Meteor】(プリアンプ)なども使っていますね。ただ、始めに組んだプリセットはPA側からエフェクト音のみの出力だと扱いづらいという意見が出たので、今はドライ音とエフェクト音を分けて出力できるようにして、それに合わせたスイッチングにしています。こういう自由な出力設定ができるのも、Helix Floorの良いところですね。
エフェクトのオン/オフを自分でもコントロールできることでイマジネーションが広がりました。PA側の最適なリバーブと、自分が演奏するうえで最適なリバーブは違うものですけど、Helix Floorならそれを分けて出力して、自分に最適なサウンドでモニターすることもできる。それに、アコギをピックアップなどで出力すると、どうしてもノイズが多くなってしまいがちですが、ノイズ・ゲートなどをかけることで弾いていないときのノイズを少なくすることもできます。アコギでこういうシステムを使う人はまだあまりいないと思いますけど、自分では想像もつかなかったことが現実になるっていうのは大きいですね。
押尾コータロー「プレイヤーのみならず、PAスタッフとの連携も抜群!」
価格:オープン
押尾コータロー
おしおこーたろー●2002年に『STARTING POINT』でメジャー・デビューし、同年10月全米メジャー・デビューを果たす。オープン・チューニングやタッピング奏法などのテクニックを駆使し、1本のギターで弾いているとは思えない鮮やかで迫力あるギター・アレンジや、温かく繊細なギター・プレイは世代を超えて多くの人々に支持を受けている。ソロ・アーティストとして全国ツアーなどのライブ活動を中心に、映画音楽、番組テーマ曲、CM音楽などの作曲も手がける。近年は、インストゥルメンタル・ギター・ユニットDEPAPEPEとコラボ・ユニット「DEPAPEKO」を結成し、2018年にJ-POPカバー・アルバム『PICK POP! ~J-Hits Acoustic Covers~』をリリース。2019年2月に自身の最新アルバム『Encounter』を発表した。