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- 2024/11/16
RYOGA / SKATER-B532
SKATER-B532は既存デザインのベースの焼き直しではなく、ほとんどゼロからデザインされたベースであり、おもにJ-POP/J-ROCKシーンで活動する若手プレイヤーにターゲットを絞り込んだ5弦モデルだ。今回は、ご存知坂本夏樹氏のMCと、さまざまなアーティストのライブサポートを務め、「青木まりこ現象」でも活躍中の、浅倉高昭氏のデモ演奏で紹介する。
SKATER-B532は、5弦ベースでありながらあえて33インチという、標準よりも短いスケールを採用している。しかも、全体として4kgを切る軽量に仕上げられ、重量バランスも良好で、立奏でも座奏でも楽器を支えるのに余計な気を使わなくて済む。店頭で試奏するだけでは大きな違いには感じられないかもしれないが、リハーサルや本番が長時間にわたるプロの現場では、演奏のクオリティにも関わる非常に重要なポイントとなるのだ。
5弦ベースの場合、4弦ベースに比べてネックが太く、ペグも1個多く、増えたペグを取り付けるヘッドも大きくなる。すると、ネックの重量が増えて、いわゆる“ヘッド落ち”の問題が発生しやすくなる。これを解決するためにボディの重量を増やすと、こんどは楽器全体が重くなってしまう。そこで、SKATER-B532では定評あるゴトー製の超軽量ペグを採用し、ヘッドもできる限り小型に仕上げることで、ネックの重量増を極限まで抑えている。バランスを取るためにボディの重量を増やす必要もないので、楽器全体も軽量に仕上がっている。まさに一石二鳥だ。また、ヘッドは弦が真っ直ぐペグに向かう、いわゆるストレート・プルのデザインで、適切なアングルが付いてストリングス・ガイドが省略されているので、チューニングもスムーズで安定している。ネック本体は、ハード・メイプルとブビンガの5層構造で、通常のトラスロッドに加えて、5弦のテンションに耐える強度の確保とねじれ対策を兼ねた、超軽量なチタン製のサポート・バーを採用している。
若いプレイヤーの多くが楽器を低めに構えることを考慮に入れているところも、SKATER-B532の大きな特徴だ。切れ味の良いデザインのボディは、低音弦側のホーンがJBタイプよりも短く、ストラップが鎖骨から真っ直ぐ下がり、体へのフィット感が高められている。さらには、エンドピンの位置を中心から4cmほど低音弦側にずらすことで、ボディが水平方向に回転するのを抑えている。これらの工夫により、派手なステージ・アクションで演奏しても楽器自体が安定する。
演奏性ばかりでなく、サウンド面でも工夫がなされているのは言うまでもない。ピックアップはいわゆるPJスタイルだが、フロントのPタイプを通常よりもネック寄りに、リアのJタイプをブリッジ寄りに配置してある。このシステムだと、33インチでも重低音が得られるばかりでなく、通常のPJで両方のピックアップをミックスした時に、1、2弦が低音弦よりも細いサウンドになってしまうという問題の発生を抑える効果も期待できる。通常のPJでは、Pの高音弦側のコイルとJのコイルが近くなるのが主な原因からだ。コントロールは通常のJBと同じ2V1Tなので、演奏しながら操作しても混乱せずに済むだろう。
また、試奏したモデルはチャコール・フィニッシュという仕上げだが、ただ色を乗せるのではなく、アッシュ材にバーナーで焦げ目を入れて木目を強調した上でシースルー・ブラックを吹き付けるという、ひと手間かけたものになっている。ダークな色でも美しい木目がしっかり見えるので、ルックス的にも楽しめるわけだ。
坂本夏樹(以下、夏樹) さて、今回はSKATER-B532を試奏してもらいましたが、感触はどうでしたか?
浅倉高昭(以下、高昭) 僕は普段、5弦はJBタイプのものを使っていますが、重いんですよ(笑)。このベースは、持った時にすごく軽いなと思いました。
夏樹 4kgを切ってるベースって、メチャメチャ軽いですよね。しかも5弦で。
高昭 そうなんですよ。4弦より軽いんじゃないですか。重い楽器だと、リハや本番の長丁場で肩が凝ったりすることもあるので、このSKATERみたいに軽いベースは、現場で使ってみたいなと思います。ギグバッグで持ち運ぶ時にも、軽いと助かりますし。
夏樹 重いと、そういう負担が日々蓄積していきますからね。
高昭 軽いのに重量バランスが取れているのも良いですね。試奏していても、ヘッド落ちするような感覚が一切ありませんでした。ストラップの長さも、いつもと同じぐらいにしましたが、ボディのフィット感も良いし、とにかく演奏していてストレスがないですね。
夏樹 今どきオリジナル・シェイプの楽器を作ろうというのがまたおもしろいですね。あと、ローBのサウンドはどうでした? 1インチってけっこう違うと思うんだけれど。
高昭 やっぱり、弦の振れ幅はちょっと大きいなっていう感じはありますね。実際のリハで使ってみないとわからない部分もありますが、出音の感じからするとスケールが短いデメリットのようなものは感じなかったし、ちゃんとローBが鳴ってると思いました。
夏樹 ピックアップの音はどうですか。
高昭 JJに比べて、いろんなキャラのサウンドが出そうだなという印象でした。あと、音に芯がありますね。アタックの音圧があって輪郭もあるというのは、2つのピックアップ位置の効果なんだと思います。
夏樹 輪郭がしっかりしていると、オーバードライブさせても音がぼやけないというメリットもあるでしょうね。
高昭 そうですね。だから、歪ませてもイケるじゃん!と思いました。いつも使っているボードにつないでも、ペダルの設定をまったく変えずにオケと馴染むサウンドになりました。自分の使い方にもマッチしているかもしれませんね。
夏樹 今まで使ってきたベースとの持ち替えもスムーズにできるというわけですね。みなさんもぜひ、試してみてください。ありがとうございました!
価格:¥244,080 (税込)
浅倉高昭(あさくら・たかあき)
14歳からエレキ・ベースを始め、メタル、ハードロック、プログレッシブ・ロックに影響を受ける。甲陽音楽院神戸校出身。関西での講師、バンド活動等を経て上京。以降、ANIMAX MUSIX、沼倉愛美、東山奈央、ベイビーレイズJAPAN、織田哲郎、Q'ulle、Prico with DEARDROPS、松本梨香、L.I.N.Eなど、さまざまなアーティストのライブ・サポートやレコーディングに参加。また、自身のバンド「青木まりこ現象」でも活動中。
坂本夏樹(さかもと・なつき)
チリヌルヲワカ、She Her Her Hers、Over The Topでのバンド活動を経て、スタジオ・ミュージシャン、プロデューサーとして、Creepy Nuts、DE DE MOUSE、HOME MADE 家族、たんこぶちん、酸欠少女さユり、新山詩織など、数多のライブ、レコーディングに参加。