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- 2024/11/16
Gibson / ES-335、ES-345、Byrdland、Les Paul Gold Top
ブルースの歴史が作られていく過程で、ギブソンのギターが大きな役割を果たしてきたことは誰もが認めるところであろう。だが、現在その当時の個体のサウンドを体感できる機会は意外と少ない。そこで、東京・御茶ノ水の「クロサワ楽器 G'CLUB TOKYO」が、なかなか生で聴くことのできないビンテージ・ギブソンのサウンドを、ブルースを軸にして多くの人に体験してもらおうとイベントを企画。ゲストに菊田俊介氏を招き、豊潤なギブソン・サウンドをたっぷりと聴かせてくれた。ここではイベントに登場した各個体の解説と、イベントの模様をレポートしていこう。
リットーミュージック刊の『Ginson ES-335 Player’s Book』にも掲載されている個体。ドット・ポジション・マーク仕様、ピックアップはPAFを搭載しており、ビンテージ335の中でも最も高額で取引されているモデルだ。この個体、もともとはカスタム・オーダー品で、エピフォン・タイプのショート・ビブラート・ユニットが搭載されていたが(書籍掲載時もその仕様だった)、現在はストップ・テイルピースに変更されている。テイルピースの穴を「Custom Madeプレート」で隠すタイプだったため、新たにボディに穴を開けずに改造できたそう。もちろんオリジナルのCustom Madeプレートとトレモロ・ユニットは付属するので、購入を考えている方はご安心を。
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ES-335の上位機種として登場したES-345。当時としては画期的なエフェクトであるバリトーン・スイッチを搭載。オリジナルは専用のY字ケーブルを必要とするステレオ・アウト仕様だが、この個体は現代における実用性を重視して、ジャックがモノラル仕様に変更されている(そのためコントロール類はネック/ブリッジ共用で、どちらを回しても両方に効く。つまりマスター・ボリューム2個、マスター・トーン2個のような状態)。ピックアップはステッカード・ナンバードだ。ブリッジは60年代後半のPAT No.入りのものに交換されている。またペグの交換歴があるようで、グローバー痕がある。
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今回、ビンテージ・ギブソンとの比較用に用意された現行モデル。とは言っても、2018年のメンフィス製は完成度が高く、今後貴重になることは間違いない。近年、ギブソンの箱物の製造を担ってきたメンフィス工場が2019年に閉鎖されたからだ(2019年4月からはナッシュビル工場に集約される)。2018年製はメンフィス工場製の最後期となり、ジョイント部分やセンター・ブロックがニカワで接着された仕様となっている。ES-335の中でも人気の高い1963年製を忠実に再現しており、その作りの良さ、サウンドの素晴らしさはイベントでも実証されていた。
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1955年に登場した、17インチの薄型ボディとショート・スケールが特徴のフルアコ・モデル。バードランドという名前は、当時活躍していたスタジオ・ミュージシャンのビリー・バードとハンク・ガーランドから名付けられた。デイヴィッド・T・ウォーカーのかつての愛器としてあまりにも有名だろう。丸みを帯びたポインテッド・カッタウェイのモデルは多いが、本器は貴重なフローレンタイン・カッタウェイ仕様。単板のスプルース・トップ、ウォルナットを挟んだ強度の高い5Pメイプル・ネック、ステッカード・ナンバード・ピックアップの組み合わせから生まれるサウンドは、ウォームでありながらエッジさもしっかりと残り、歌もののバックなどには最高である。この個体はオリジナル・フレットを残している点も特徴。
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今回のイベントで唯一用意されたソリッド・ギター。ゴールドトップのボディにホワイトのP-90が映える1954年製のレス・ポールだ。バー・ブリッジ仕様もこの年代の大きな特徴で、フレディ・キングのレコード・ジャケットで見かけて、この仕様に憧れたという人も多いのではないだろうか。この個体は54年の中でも前期製とみられ、バーテイル・ブリッジが薄く、ネックの仕込み角が浅い。そのためテンションが緩めで、弾きやすいのが特徴だ。ナットはオリジナル。フレットはリフレットされており、ボディ・バックのエンド部分にオーバー・ラッカーが施されている。また、重量が約3.66kgと超軽量なのもポイント。そのおかげなのか、ひと際生音が大きいのが印象的だった。
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ビンテージ・ギブソン4本と現行モデル1本を、ブルース・ギタリストの菊田俊介氏が試奏するという贅沢なイベントが、2019年2月24日(日)、東京・御茶ノ水のクロサワ楽器 G’CLUB TOKYOで開催された。
この日に用意されたのは、1961年製ES-335TD、1963年製ES-345TD、2018年製ES-335、1969年製バードランド、そして1954年製ゴールドトップというラインナップ。そのサウンドを楽しみに駆けつけたファンで会場は超満員だった。
イベントでは、司会の黒澤楽器・藤川氏に続いて菊田氏が登場。まず61年製ES-335TDを手に、あいさつ代わりのスロー・ブルースを演奏した。「自分も60年のES-345を持っているのですが、60年代初期特有のネックの感じが僕の345とよく似ていますね」とコメント。ナット幅は普通だが、薄めで日本人の手によく馴染むという。さらに「ビンテージを弾くといつも思うのは、ピッキングに対するレスポンスの良さですね。優しく弾くと優しく鳴るし、強く弾くと少しつぶれるようなアタックが出て、たまらないです」と述べた。アンプは66年製のフェンダー・ベースマンを使用。足下にはオーバードライブやブースターなども用意されていたが、ほぼ素の音で演奏しており、「もとのギターの音が素晴らしいから、料理と一緒であまり手を加えずに味わいたいです」と言って、芳醇なビンテージ・トーンを響かせていた。
次に菊田氏が手にしたのは63年製のES-345TD。「345や355の豪華でピカピカした感じがブルースマンに好まれていましたよね。そのせいか、自分も335より345や355のほうがブルースらしい楽器だと感じます」と言って、B.B.キングのナンバーを彷彿とさせるブルースをプレイ。バリトーン・スイッチを使ったバリエーション豊かなサウンドを聴かせてくれた。さらにブルース系の音作りのポイントについても言及。菊田氏によると、ギター側のボリュームを絞って、アンプ側のボリュームを上げる。それができない時は歪み系のペダルでアンプのボリュームが上がったような状態を作り出してやり、手元(ピッキング、ボリュームやトーンの操作、バリトーン・スイッチなど)で音を作っていくのが重要だとのこと。
続いて、2018年製のES-335を手にした菊田氏は「さすがに音はビンテージと比べるとまだ若いですが、パワーがあるし、作りがしっかりしていて弾きやすい! これはいいですね!」と高評価。そのギターでオーティス・ラッシュを感じさせる演奏を披露した。「やっぱり新しいギターらしい瞬発力を感じます。オーバードライブをかけた時の歪みとの相性も良いですね。ビンテージよりもフレキシブルに使えるんじゃないでしょうか」とのこと。
菊田氏が4本目に弾いたのは、69年製のバードランド。このギターについては「フルアコと言ってもボディが薄いので、鳴り方がちょっとセミアコに近いですね。昔持っていたES-330にも似た印象があります」とコメント。少しジャジィなコードを使ったスローなモダン・ブルースをプレイし、「ジャズ、ブルース、ファンクには最高ですね。アンプの音に生音を少し混ぜてやっても良い雰囲気です」と述べた。
この日、唯一のソリッド・ギターである54年製のゴールドトップ。「これは軽いですね! ネックも太すぎず、弾きやすいです」とコメントし、フレディ・キング風のブルースをキメてくれた。演奏後には「特にミックス・ポジションの音が素晴らしいですね! こういう音は、やっぱりビンテージじゃないと出ないと思います」と、この個体をかなり気に入った様子。
Q&Aのコーナーでは練習法や音作りについて質問に答え(アンプを使って練習すること。練習の際はクリーン・サウンドで行なうこと。etc)、最後に最も気に入ったというゴールドトップでマディ・ウォーターズ風のスライドを披露し、プログラムは終了。1時間半以上に及ぶ中身の濃いイベントに、来場者全員が大満足で帰途についた。
菊田俊介(きくた・しゅんすけ)
1966年生まれ。栃木県出身。クラシック、フォーク、フュージョン、ハードロック、ヘヴィメタルなど多方面の音楽から影響を受ける。高校卒業後に武蔵野音楽学院で1年の留学準備期間を経て、1986年にボストンのバークリー音楽大学へ留学。バークリー1年目にB.B.キングの『Live at The Regal』を聴き衝撃を受け、ブルースに目覚める。卒業と同時にシカゴへ移住し、B.B.キングを始め、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュ、ジュニア・ウェルズ、ココ・テイラーなどの大物ミュージシャンと共演するなど、日本を代表するブルース・ギタリストへと成長。2016年から拠点を日本に移し、アジア各地のライブにも出演するなど精力的に活動中。現在、ソロのニュー・アルバム『Rising Shun Plus』、Shun Kikuta & BLUES COMPANYのニュー・アルバム『BLUES COMPANY』、そしてリットーミュージックより教則本『生きたブルースを身につける方法』が好評発売中。さらに、2019年4月4日(火)の東京・汐留BLUE MOOD公演を皮切りにBLUES COMPANYのツアーが行なわれる。ライブ情報はコチラをチェック!